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第三章「縮んでいくキョリ」
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大満足の夕食を終え、私達は近所のコンビニに向かって歩いている。甘崎君は牛乳、私は明日のパンを買いに。
「甘崎君のハンバーグ、ホントにおいしかったよ」
「もう何回も聞いたから」
「だって言いたくなるんだもん」
この前王寺先輩と月を見た時はまだ薄ぼんやりだったけど、今日ははっきりと輝いてる。
「あの月、卵の黄身みたい」
「白石は、食べもののことばっかりだな」
甘崎君が笑うから、私はプクッと頬っぺたを膨らませた。
コンビニに着くと、お互いにササッと買い物を済ませる。さっき来た道を、また並んで歩いた。行きと違うのは、二人が歩くたびにコンビニの袋がガサガサと音を立てることだ。
「白石の親って、何の仕事してるの?」
甘崎君が前を向いたまま、そんな質問をする。
「私の親?えっとね、お父さんは海外で自動車開発の仕事してて、お母さんは雑誌の編集だよ」
「へぇ、凄いな」
こんな風に両親のことを褒めてもらえるのは、娘として純粋に嬉しい。二人とも優しいし、いつも私のことを気にしてくれる。
だから私も、ワガママ言わないようにしてるんだ。この歳になって寂しいなんて、誰にも言えない。
「甘崎君のご両親も、仕事が忙しい人なの?」
「父さんがね。プログラマーだから、昼夜あんま関係ないみたい。それから母さんは、病気でもういない」
思わず言葉に詰まって、何も言えなくなる。甘崎君はそんな私を見て、柔らかく目を細めた。
「今はもう大丈夫だから。あれだけ家族がいれば、寂しいとか思う暇もなくなる」
「甘崎君…」
私は立ち止まると、甘崎君の方を見る。ギュッと強く拳を握ったせいで、手に持っているコンビニの袋がガサッと鳴った。
「甘崎君はお母さんの代わりに、家族を守ってるんだね」
「…俺は別に」
「私、甘崎君のこと凄く尊敬する」
ニコッと笑うと、甘崎君はビックリしたように目を見開いた。
「甘崎君のことが知れて、嬉しいよ。お隣さんにならなかったら、こんな風に話すこともなかったかもしれないもんね」
「白石」
「私も見習って頑張らなきゃ」
甘崎君はあんなにおいしいご飯を作って、弟達の面倒もしっかり見てて、それに優しい。
あれもできないこれもできないなんて言ってないで、私ももっとちゃんと家族の役に立ちたい。
甘崎君を見てたら、自然とそう思えた。
「白石は」
甘崎君が、ポツリと言葉を落とす。
「十分頑張ってると思う」
「え…?」
「教室でもいつも明るいし笑顔だし、翠達があんなに懐くのも、白石が優しいからだし」
パッと私の方を向いた彼と目が合って、思わずドキッと胸が鳴る。月明かりに照らされた甘崎君の瞳は、キラキラしていて凄く綺麗だった。
「それに、よく庭で素振りしてるでしょ?」
「み、見られちゃってた?あーもう恥ずかしいなぁ」
「たまたまだよ。別に覗いてるわけじゃないから」
「それは分かってるって」
クスクス笑うと、甘崎君は恥ずかしそうに指で前髪を触った。
「でも、電気の点いてない家に帰るのって結構寂しいよね」
そう言われて、いつもの私なら「そんなことないよ」って返すはずなのに。
「…うん、寂しい」
気が付いたら、私は甘崎君に向かって本当の気持ちを口にしていた。
「あのね、甘崎君。私いつも家ではイヤホンしてるって、前に言ったっけ?」
「うん」
ほとんど無意識にやってたことだけど、それは多分一人ぼっちの寂しさを紛らわす為。自分以外の物音がしない部屋が嫌いだったから。
「この間ね?イヤホン外して過ごしてみたんだ。そしたら、甘崎君の家の方から声とか音とか聞こえてきて、何だかほっこりしちゃった」
「ごめん、うるさかった?」
「ううん。何となく、一人じゃない気がして嬉しかったよ。って言うのも変かな」
頭をかきながら笑うと、甘崎君も同じように笑ってくれて。
それを見て、ほんの少しだけ胸の奥がキュウッと苦しくなった。
「甘崎君のハンバーグ、ホントにおいしかったよ」
「もう何回も聞いたから」
「だって言いたくなるんだもん」
この前王寺先輩と月を見た時はまだ薄ぼんやりだったけど、今日ははっきりと輝いてる。
「あの月、卵の黄身みたい」
「白石は、食べもののことばっかりだな」
甘崎君が笑うから、私はプクッと頬っぺたを膨らませた。
コンビニに着くと、お互いにササッと買い物を済ませる。さっき来た道を、また並んで歩いた。行きと違うのは、二人が歩くたびにコンビニの袋がガサガサと音を立てることだ。
「白石の親って、何の仕事してるの?」
甘崎君が前を向いたまま、そんな質問をする。
「私の親?えっとね、お父さんは海外で自動車開発の仕事してて、お母さんは雑誌の編集だよ」
「へぇ、凄いな」
こんな風に両親のことを褒めてもらえるのは、娘として純粋に嬉しい。二人とも優しいし、いつも私のことを気にしてくれる。
だから私も、ワガママ言わないようにしてるんだ。この歳になって寂しいなんて、誰にも言えない。
「甘崎君のご両親も、仕事が忙しい人なの?」
「父さんがね。プログラマーだから、昼夜あんま関係ないみたい。それから母さんは、病気でもういない」
思わず言葉に詰まって、何も言えなくなる。甘崎君はそんな私を見て、柔らかく目を細めた。
「今はもう大丈夫だから。あれだけ家族がいれば、寂しいとか思う暇もなくなる」
「甘崎君…」
私は立ち止まると、甘崎君の方を見る。ギュッと強く拳を握ったせいで、手に持っているコンビニの袋がガサッと鳴った。
「甘崎君はお母さんの代わりに、家族を守ってるんだね」
「…俺は別に」
「私、甘崎君のこと凄く尊敬する」
ニコッと笑うと、甘崎君はビックリしたように目を見開いた。
「甘崎君のことが知れて、嬉しいよ。お隣さんにならなかったら、こんな風に話すこともなかったかもしれないもんね」
「白石」
「私も見習って頑張らなきゃ」
甘崎君はあんなにおいしいご飯を作って、弟達の面倒もしっかり見てて、それに優しい。
あれもできないこれもできないなんて言ってないで、私ももっとちゃんと家族の役に立ちたい。
甘崎君を見てたら、自然とそう思えた。
「白石は」
甘崎君が、ポツリと言葉を落とす。
「十分頑張ってると思う」
「え…?」
「教室でもいつも明るいし笑顔だし、翠達があんなに懐くのも、白石が優しいからだし」
パッと私の方を向いた彼と目が合って、思わずドキッと胸が鳴る。月明かりに照らされた甘崎君の瞳は、キラキラしていて凄く綺麗だった。
「それに、よく庭で素振りしてるでしょ?」
「み、見られちゃってた?あーもう恥ずかしいなぁ」
「たまたまだよ。別に覗いてるわけじゃないから」
「それは分かってるって」
クスクス笑うと、甘崎君は恥ずかしそうに指で前髪を触った。
「でも、電気の点いてない家に帰るのって結構寂しいよね」
そう言われて、いつもの私なら「そんなことないよ」って返すはずなのに。
「…うん、寂しい」
気が付いたら、私は甘崎君に向かって本当の気持ちを口にしていた。
「あのね、甘崎君。私いつも家ではイヤホンしてるって、前に言ったっけ?」
「うん」
ほとんど無意識にやってたことだけど、それは多分一人ぼっちの寂しさを紛らわす為。自分以外の物音がしない部屋が嫌いだったから。
「この間ね?イヤホン外して過ごしてみたんだ。そしたら、甘崎君の家の方から声とか音とか聞こえてきて、何だかほっこりしちゃった」
「ごめん、うるさかった?」
「ううん。何となく、一人じゃない気がして嬉しかったよ。って言うのも変かな」
頭をかきながら笑うと、甘崎君も同じように笑ってくれて。
それを見て、ほんの少しだけ胸の奥がキュウッと苦しくなった。
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