24 / 45
第四章「スナオになりたい」
③
しおりを挟む
「今日もご馳走様でした!」
「翠達にぬいぐるみ、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそいつもお世話になってるから!」
甘崎君はいつもこうして、私を見送ってくれる。お隣だから大丈夫だって言っても、譲ろうとはしなかった。
電気の点いてない家に帰るのがいつもゆううつだったけど、最近はそんなこともなくなった。隣に甘崎君家族がいるんだと思うと、寂しさもどこかへ飛んでいってしまう。
「甘崎君のお好み焼き食べたら、元気出た!明日からもまた部活頑張ろうっと」
「部活だけじゃなくて、授業もね」
「う…は、はい」
先生に怒られたみたいにシュンとする私を見て、甘崎君が笑う。その笑顔を見ながら、私はポツリと呟いた。
「もし」
「え?」
「もし今の甘崎君をクラスのみんなが知ったら、甘崎君人気者になるだろうなって」
料理上手で家事も何でもできて世話好きで、笑うと可愛い。
こんな甘崎君を見たら、特に女の子達は騒ぎそうだ。
「そういうの別にいいかな。友達たくさん出来ても、遊ぶ時間ないし」
「そっかぁ、そうだよね。甘崎君忙しいもんね」
「白石は」
甘崎君が下を向いたから、彼の顔に髪がかかってその表情が見えなくなる。
「白石は、人気者が好きなの?」
「えっ?」
「クッキーあげたい相手って、同じテニス部の先輩なんだっけ」
「あ…うん」
どうしたんだろう。何だかいつもの甘崎君らしくないような気がする。
私は心配になって、おずおずと彼の顔を覗き込む。その時パチッと目が合って、私は思わず動きを止めた。
「え、えっと…」
甘崎君のまっすぐな視線から、目が逸らせない。固まったままの私に、甘崎君は小さく「ごめん」と呟いた。
「来週、ウチで作り方教えるから。部活終わった後、来れそう?」
「あっ、う、うん」
「じゃあ、帰るね」
甘崎君はクルリと向きを変え、家の中へ入っていく。いつもドアを閉める前にもう一回振り返ってくれるけど、今日はそれがなかった。
私は凄く寂しい気持ちで、家の鍵を開けた。
「翠達にぬいぐるみ、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそいつもお世話になってるから!」
甘崎君はいつもこうして、私を見送ってくれる。お隣だから大丈夫だって言っても、譲ろうとはしなかった。
電気の点いてない家に帰るのがいつもゆううつだったけど、最近はそんなこともなくなった。隣に甘崎君家族がいるんだと思うと、寂しさもどこかへ飛んでいってしまう。
「甘崎君のお好み焼き食べたら、元気出た!明日からもまた部活頑張ろうっと」
「部活だけじゃなくて、授業もね」
「う…は、はい」
先生に怒られたみたいにシュンとする私を見て、甘崎君が笑う。その笑顔を見ながら、私はポツリと呟いた。
「もし」
「え?」
「もし今の甘崎君をクラスのみんなが知ったら、甘崎君人気者になるだろうなって」
料理上手で家事も何でもできて世話好きで、笑うと可愛い。
こんな甘崎君を見たら、特に女の子達は騒ぎそうだ。
「そういうの別にいいかな。友達たくさん出来ても、遊ぶ時間ないし」
「そっかぁ、そうだよね。甘崎君忙しいもんね」
「白石は」
甘崎君が下を向いたから、彼の顔に髪がかかってその表情が見えなくなる。
「白石は、人気者が好きなの?」
「えっ?」
「クッキーあげたい相手って、同じテニス部の先輩なんだっけ」
「あ…うん」
どうしたんだろう。何だかいつもの甘崎君らしくないような気がする。
私は心配になって、おずおずと彼の顔を覗き込む。その時パチッと目が合って、私は思わず動きを止めた。
「え、えっと…」
甘崎君のまっすぐな視線から、目が逸らせない。固まったままの私に、甘崎君は小さく「ごめん」と呟いた。
「来週、ウチで作り方教えるから。部活終わった後、来れそう?」
「あっ、う、うん」
「じゃあ、帰るね」
甘崎君はクルリと向きを変え、家の中へ入っていく。いつもドアを閉める前にもう一回振り返ってくれるけど、今日はそれがなかった。
私は凄く寂しい気持ちで、家の鍵を開けた。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)
天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。
+:-:+:-:+
ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。
+:-:+:-:+
「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。
+:-:+:-:+
「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。
+:-:+:-:+
寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです!
+:-:+:-:+
2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。
+:-:+:-:+
未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。
ぼくのだいじなヒーラー
もちっぱち
絵本
台所でお母さんと喧嘩した。
遊んでほしくて駄々をこねただけなのに
怖い顔で怒っていたお母さん。
そんな時、不思議な空間に包まれてふわりと気持ちが軽くなった。
癒される謎の生き物に会えたゆうくんは楽しくなった。
お子様向けの作品です
ひらがな表記です。
ぜひ読んでみてください。
イラスト:ChatGPT(OpenAI)生成
パンティージャムジャムおじさん
KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。
口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。
子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。
そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる