おとなりさんはオカン男子!

清澄 セイ

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第六章「手作りクッキーの意味」

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「よかったぁ…」

心の中で呟いたつもりだったけど、声に出てたみたい。

「えっ、何が?」

「最近の甘崎君なんとなく元気がない気がしたから、また体調崩しちゃったのかなって」

「…」

甘崎君は一瞬目を見開いて、それから気まずそうにふいっと視線を逸らした。

「体調は別に、悪くない」

「うん、よかった」

「でも…」

甘崎君にしては珍しく、歯切れの悪い言い方をする。

「ずっと、モヤモヤはしてた」

「えっ?」

「ホントのこと言うと、今日あんまり教えたくないって思った」

そう言われて、石でも飲み込んだのかと思うくらい、お腹の中がズシッと重くなる。やっぱり甘崎君、私のことよく思ってなかったんだ。

「えっと、ごめ、ごめん…ね?」

鼻の奥がツンとして涙が溢れそうになるのを、必死に堪える。さっきまでは甘い匂いもちゃんと感じてたのに、今はカレーのスパイスがグサグサ鼻を刺激してくる。

「私甘崎君に甘えてばっかりで、嫌な思いさせてることに気づかなくて…」

「違う、そうじゃないよ。そういうことじゃなくて…」

甘崎君のほっぺたがみるみるうちに赤く染まっていく。前髪からチラッと覗く瞳が潤んでいるように見えて、ドキッと胸が高鳴る。

「上手く作れるようになったら、あの先輩にあげるんだ…って思うと、なんか…嫌だって思った」

「で、でも別に私は、王寺先輩にあげる為に教えてもらってるわけじゃ」

「この前、好きだって言ってたでしょ?教室で」

そう指摘されて、記憶を思い返す。そういえば「声が大きい」ってはーちゃんに注意されたような気がする。あの時は確か私、甘崎君のことを考えてたら恥ずかしくなって、それで…

「き、聞いてたの!?」

ボンッと赤くなる顔をごまかしたくて、つい大きな声が出る。甘崎君はそれを肯定と受け取ったのか、ますます表情を暗くした。

「ち、違うのあの時は…」

「いやごめん。おかしいこと言ってるのは、俺の方だから」

「あ、あの甘崎君」

甘崎君はますます下を向いて、もう顔が見えない。自分の声より、心臓の音の方が大きく聞こえる。

「白石は最初から、あの先輩の為にずっと頑張ってるもんね。部活も、お菓子作りも」

「私は…」

俯いたままの甘崎君に手を伸ばしかけた時、後ろから誰かに抱きつかれる。アオ君が澄んだ瞳で私を見上げていた。

「僕お腹空いちゃった」

「俺もお腹空いた!」

アオ君に続いてミドリ君も私のところにやってくる。そんな二人の首ねっこを、シュタローくんが無表情でガシッと掴む。

「今兄ちゃんとツバサちゃんは二人の世界だから、お前ら邪魔すんなよ」

「ちょ、シュタロー君!?」

「お前はまた変なこと言って…」

甘崎君は呆れたように溜息をつくと、私の方を見ないままあっちへ行ってしまった。
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