一心君は、人狼です!

清澄 セイ

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最終章「ずっとずっと、そばにいる」

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 一心君がウチを出ていってから、もう一週間。学校は夏休みに入り、わたしは宿題のかたわら毎日キッチンにこもってる。

 タブレットとにらめっこしながら、せっせと料理作りに励んでいた。

 ちなみに今日は、パンナコッタ作りに挑戦中だ。

 パンナコッタっていうのは、生クリームに牛乳や砂糖を加えてゼラチンで固めた、プリンに近いイタリアのスイーツだ。

 ふるふるで滑らかで、冷蔵庫で冷たく冷やして食べるから、夏にぴったり。

「キャンキャン!」
「ココア!もうちょっと待ってね。これが終わったら、一緒に遊ぼう」
「キャイン!」

 キッチンにはゲートがしてあるから、ココアは入ってこられない。その向こうから元気な鳴き声が聞こえて、わたしはニコニコしながら手を振った。

 フワフワのわたあめみたいな体が、可愛く揺れてる。もう今すぐ、思いっきり撫でまわしたい。

「っと。今はパンナコッタに集中しなくちゃ」

 わたしは気合いを入れ直して、カチッとコンロのツマミを回して火を入れる。

 ウチのキッチンがIHじゃないのは、お母さんのこだわりらしい。

 今日はイチゴを入れたいから、あとで洗って切っておかなきゃ。

 そう思いながら、火にかけた牛乳がフツフツと温まっていくのを、ジッと見つめた。

 一心君、元気にしてるかな。

 あれからなんの連絡もなくて、ちょっとさみしい。

「……」

 ううん。ホントはすっごくさみしい。

 もしここに一心君がいてくれたら、このパンナコッタも一緒に食べてくれるんだろうな。

 ぶっきらぼうに、だけど「おいしい」って言いながら、あっという間に完食するんだ。

 一心君、見た目は細く見えるのに、意外とよく食べるんだよね。

 この間のパーティーの時だって、たぶん一番食べてた気がする。

 まだ一週間しか経ってないのに、もうずいぶん長い間会ってないような気がする。

 今まで離れてた八年間、どうして平気でいられたのか、もう思い出せない。

 ピンポーン

「あれ、誰か来た」

 ボーッとしていたわたしは、慌てて火を止める。モニターも確認しないまま、ガチャッと玄関のドアを開けた。

「久しぶり」
「い、一心君……っ!」

 そこに立っていたのは、一心君。白いTシャツと黒いスキニー、それから同じ黒のキャップ。シンプルな服装なのに、キラキラ輝いてる。

 一週間ぶり、しかも心の準備ができてなかったから、ドキドキが止まらない。

「はいはーい、俺もいますよーっと」

 一心君の後ろから、ロン君がひょっこりと顔を出す。

「ロン君も!」
「ていうか一心、久しぶりではなくない?こないだ会ったばっかじゃん!」
「…いいんだよ、うるさいな」

 ロン君は相変わらずの金髪で、目を細めてニコニコしてる。

 突然でビックリしたけど、二人に会えてすごくうれしい。

「二人とも、会いに来てくれたんだね!」
「いや、会いにきたというか」
「そうそう、ご挨拶的な?」

 顔を見合わせる二人に、わたしの頭上にはハテナのマークがいくつも浮かぶ。

「明日から、となりに住むことになったから」
「ちなみに、俺も大神ファミリーに混ざらせてもらいまーす」
「そういうこと」

 え……?どういうこと……?

「アッハハ!すっごい顔!ね、一心!だから言ったでしょ?日向ちゃん絶対いいリアクションしてくれるから、黙ってようって!」

 わたしの顔を指さしてロン君が大爆笑してるけど、今はそんなことにかまっていられない。

「と、となりって…ウチのとなり?」
「そう。売りに出てたからって、父さんが」

 いや、そりゃあ確かに、おとなりさん一家は仕事の都合で海外に行っちゃって、立派な一戸建てが売り家になってた気がするけど。

 となりがお店だし、敷地も結構広いからって、なかなか次の人が決まらないみたいって、お母さんが言ってたような。

 でもだからって、これはさすがにタイミングがよすぎるんじゃあ……

「まぁ、そうなったものはそうなったわけだから!これからもよろしくってことで!」

 ずいぶん適当なまとめ方だ。ロン君が握手を求めるみたいに、わたしの前に手を差し出したのを、一心君がパシッと叩いた。

「った!もー、なにすんの一心」
「ロンはうるさい。ちょっとだまってて」

 一心君はヒジでグイグイとロン君を押しながら、パッとわたしの方を向く。

「これからもよろしく、日向」

 柔らかなその表情を見て、わたしもたちまち笑顔になった。

「こちらこそ、よろしくね!」

 これからますます、わたしの周りはにぎやかになりそうな予感です。
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感想 3

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みんなの感想(3件)

琴音
2024.09.30 琴音

ファンタジー賞、おめでとうございます!
相変わらず一心くんが好きです、何度読み返しても。

2024.10.02 清澄 セイ

琴音様、ずっと応援してくださりありがとうございました!!琴音様の感想を読んで、本当に嬉しく最後まで書き切ることが出来ました!
お祝いの言葉まで、ありがとうございます(涙)

解除
琴音
2024.08.22 琴音

これで毎日会えるね!よかったあ。一心くんが久しぶりって言ったのは、一心くんも日向ちゃんみたいにすっごく寂しかったから、思わず、かな?
ロン君とも仲良くなれてよかったね!
それにしても一心くんのお父さんがまさかあの人とは!グラニータの話で、私は日向ちゃんの言葉に記憶が反応したのかと予想してたんだけどね、途中までは。
日向ちゃんのおかげで、この物語を読むと私まで元気になれるし、一心くんの、「ロンはうるさい」の、パシッのくだりが好きです。嫉妬というか、何というか。
おもしろいお話を書いてくださりありがとうございます♪

2024.09.05 清澄 セイ

琴音様、最後までお付き合いくださり本当にありがとうございます!以前にも素敵な感想をいただき、それを励みに最後まで書ききることが出来ました!日向や一心を好きになってくださり、心から感謝いたします!本当にありがとうございました!

解除
琴音
2024.08.01 琴音
ネタバレ含む
2024.08.07 清澄 セイ

琴音様、感想をくださりありがとうございます!主人公日向のことを好きだと言っていただけて、とても嬉しいです!!貴重なお時間を使って細かいところまで読んでくださり、本当に感謝しかありません!拙い部分もあるかとは思いますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです!本当にありがとうございました!!

解除

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