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 つぎの日、ぬまのほとりにはたくさんのことりがあつまりました。青いのやみどりいろのや、毛糸玉のように太ったのもいます。
 ワニのおなかが、ぐるるーーっとなりました。

「みんな、こちらがワニさんよ! わたしのお友だちなの」
 ももいろのことりがむねをそらせて言いました。

 ことりたちはみんな、はじめこそこわがっていましたが、ワニがおとなしくしているとだんだんなれて、近くによってくるようになりました。

 太ったことりといっしょに、3びきほど丸のみにしよう。ワニはそう考えて、タイミングをはかりました。

 そのときです。
 草のねもとをそろそろと近づいてくる、なにかのけはいをかんじました。
「ヘビだ! にげろ!」
 ワニがさけぶと、びっくりしたことりたちはいっせいに羽をひろげ、じめんをとび立ちました。

 ちゃいろいヘビが草むらからとび上がり、ももいろのことりにおそいかかります。とがったキバがしっぽにかすりましたが、なんとかつかまらずににげられました。

「チェッ」
 ヘビはじめんにおちると、くやしそうにことりたちを見上げてから、ワニをにらみました。ですが、ワニの大きな目でにらみかえされると、すごすごとにげていきました。

 ワニはただ、ヘビにえものをよこどりされたくなかっただけでした。けれども、たすけられたことりたちはワニのまわりにあつまり、
「ワニさん、ありがとう」
「やさしいワニさん」
「ぼくたちを助けてくれたんだ!」
口ぐちにそう言いました。

 そしてそれまでは少しとおくにいたおくびょうなことりたちまで、ワニのせなかや頭の上であそぶようになったのです。
 ことりたちは小さなくちばしで花をつみ、ワニの頭にかんむりをかざってくれました。

 チッチチッチとあそぶ声はにぎやかで、ねむくなったワニが目をとじても、ひとりじゃないとわかります。
 ワニは、からっぽのおなかにやさしい春のかぜがふいているみたいに、くすぐったくかんじました。
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