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二話 リア充、妖精と会話する(できない)
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「あも、えろえろとごめえまくおかけしてもうしまけあれまへん」
「いや、てかなんでおまえここにいるんだ」
少しはすっきりして家に入ると、どこかへ飛んでいったはずのクソパルルが空中で土下座をしていた。左頬がおたふく風邪のように膨れあがっている。可哀想に。
「えと、おあましがあるもでふがよろひ――」
「そのまえにちゃんとしゃべろ、なんて言ってか全然わからん」
一応罪を感じているのか、治療せずに話そうとするクソパルルを制止した。
確か妖精には治癒能力があったはずだ、酷使はできないがそこそこ強力な魔法の一つである。
クソパルルが自分の頬に手を当てた瞬間頬が光り出し、消えた頃には元の胸くそ悪い顔に戻っていた。
「いらいらしてきた。もう一回殴っていいか?」
「ごめんなさい!本当に反省しているので許してください!」
そう言いつつ土下座の安売りをするクソパルル。コイツ、本当に反省してるのか。
まあいい、コイツが俺を連れてきた本人だと言うなら訊かなきゃいけないことがある。
「お前の話の前に頼み、というか命令があるんだがいいか」
「は、はあ、なんでしょうか?」
「俺を元の世界に帰せ」
「え、ええええええええ!」
当然の要求のはずだが、クソパルルは予想もしてなかったように絶叫した。
「そんな、それは困ります!」
「お前の気持ちは分かる。ここに連れてきたってことは俺に何かさせたかったんだよな?だがそれは俺以外の人間でもいいはずだ。一旦俺を帰して、異世界でも好きそうなやつ連れてきてそいつにやらせろ。気乗りしない俺がやるよりよっぽどいいはずだ」
二年間、コイツに会わなかったせいで生き地獄を味わっていた俺だが、わざわざ地球から俺を連れてきた以上、使命があることは分かっている。
でも、あの黒壁を見つけたのは偶然だ。つまり、俺でなくてもよかったはずだ。
シルヴァさんはよくしてくれているが、正直こんなところにいたくはない。帰れるものならさっさと帰りたいのだ。
「いや、その、それは困るというか、なんというか・・・・・・」
クソパルルは、俺から視線を外すと、あからさまに口笛を吹き始めた。しかも吹けてない。
「おい。お前なんか隠してないか?」
「いやあの、隠すというか、向こうのことを考えれば得策ではないというか・・・・・・」
「向こうのこと?いいからはっきり話せ」
なんとも歯切れの悪いクソパルルに一喝すると、クソパルルはなにやら申し訳なさそうに俺を見た後、空中に四角形の何かを取り出した。四角形の中では、懐かしい家並みが映し出されている。
「これは?」
「地球、日本を映しています。もうそろそろリュウ様のお家が映るころかと」
「おお!」
素直に驚かされた。どこから撮っているのか分からないが、こんな簡単に地球と干渉することができるのか。妖精ってのもなかなかすごいのかもしれない。
しばらく見ていると、見慣れた家、つまるところ俺の家が映し出された。次第にズームされていき、部屋の中まで映し出されていく。
すると和室に、小さな仏壇が置いてあるのが見えた。
えっ、あんなのなかったろ。まさか母さんが・・・・・・?
「お、おい!あの仏壇、いったい誰の何だよ!?」
「リュウ様です」
「お、俺ええええええええええ!?」
今度は俺が絶叫する番だった。えっ、はい?俺って、死んだことになってんの?
「二年経ちますからね、そうなっていてもおかしくないと言いますか」
なんか涙を拭う仕草をしてるクソパルルだが、どうにもわざとらしく見える。俺の心が荒んでいるのだろうか。
「そうか、じゃあ母さんは今一人で・・・・・・」
あの家は俺と母さんの二人暮らし、よく祖父母が遊びに来てくれていたが、それでも今は一人。
俺が黒壁に手なんか突っ込んだせいで、母さんを一人に・・・・・・
「そこは心配ありませんよ!私がお母様のおなかに子種を蒔いておきましたから!」
「えええええええええええええええええええええ!?」
「うるせえぞ隣!!」
「す、すみません!」
お隣さんに怒られるほどの奇声を発してしまった俺。「頑張りましたよ私」的な笑みを浮かべるクソパルルをもう一度ぶん殴りたくなってきた。
「お前、子どもがどうやって生まれてくるか知ってんのか!?父さんいないのにどうやって身籠もるんだよ!?」
「えっ、お父様いらっしゃらないのですか?」
「病気でな。だからどう考えてもおかしくなるだろう?」
「ご病気・・・・・・それは本当に可哀想に・・・・・・」
「今それいいから!心配してくれて嬉しいけど!」
「じゃあおじいさまから身籠もったというのは」
「アウトだよ!!お前って馬鹿なの!?頭おかしいの!?」
「でもお母様、『龍ちゃんの生まれ変わりが宿ったのね』と嬉しそうに」
「お母様!?」
叫びすぎて、喉が痛くなってきた。この妖精は、どれだけ常識を知らないのだろうか。
「そうだ、母さん40近いのに大丈夫なのかよ、無事生まれたのか!?」
高齢出産は母胎に負担がかかると訊いたことがある。いくら元気な子が生まれても母さんが無事じゃなければ・・・・・・
「それも問題ありません!全国津々浦々、安産祈願のお守りを送っております!」
「それお前の力じゃなくね!?日本の神様の力じゃね!?」
「失礼ですね、全国からお守りを集結させるのけっこうな手間なんですよ?」
「そういうことを・・・・・・!言ってるんじゃ・・・・・・!ねえ・・・・・・」
もはやツッコミが追いつかない。確かにこの異世界は変なところだけど、コイツは確実に頭がおかしい。
「ついでに申し上げますと、あなたの彼女は新しい彼氏を作られております」
「そ、そうだよな」
泣きっ面に蜂。ただでさえダメージを負ったのに、容赦なく追撃してくるクソパルル。
「で、でもよかったじゃないですか!私が死んでたら、恋人には新たな恋を見つけてほしいと思いますし!」
「死んでたらな!俺生きてるからな!?お前は慰めが下手か!」
恐らくもう戻っても居場所がないことを伝えたいのだろうけど、ところどころに棘を感じるのは何故だろうか。殴られたことをまだ怒っているのか。
「ちなみに、リュウ様は行方不明ということで捜索されていましたが、三日で打ち切られております」
「三日!?早くね!?」
「それは私がリュウ様は死んだと暗示をかけたからでしょう。全国を3日間で、私ってなかなか優秀ですね!」
「・・・・・・あ”あ”?」
ドスのきいた声が、部屋に響き渡った。クソパルルが危険を察知する前に、後頭部を掴む。
聞き捨てならない言葉が、そこにあった。
「あ、あの、なんでしょうか?」
「なんで俺が死んだと暗示をかけた?」
「そ、それは、リュウ様にはやってもらいたいことがありましたし、無駄に捜索を続けてもらうよりは死んだことにした方が手っ取り早いと思いまして」
「なるほど。まあそれはいい、今となっては。解せないのはそれじゃない」
涙目で震えるクソパルルの後頭部に力をこめる。
「お前、俺を見失ったって言ったけどよ、それ、日本で三日も暗示かけてたからじゃねえのか?」
ギクリと、クソパルルの体が動いた。ほんと、わかりやすい性格で助かるわ。
「そうか、そんな無駄なことをしたせいで、俺は何も分からない異世界に一人で放り出されたのか」
「いえ、無駄ということは・・・・・・日本の捜索費を抑えたというかなんというか」
「パルル、俺が何したいか分かるよな」
「あのほんとに、痛いのはかんべ――」
両手中指の第二関節をクソパルルのこめかみにあてがい、思い切りねじ込んだ。
「歯ぁ食いしばれえ!!」
「ぎゃあああああああああ!!」
二回目の怒り放出。
分かったのは、日本に俺の居場所がないということだけだった。
「いや、てかなんでおまえここにいるんだ」
少しはすっきりして家に入ると、どこかへ飛んでいったはずのクソパルルが空中で土下座をしていた。左頬がおたふく風邪のように膨れあがっている。可哀想に。
「えと、おあましがあるもでふがよろひ――」
「そのまえにちゃんとしゃべろ、なんて言ってか全然わからん」
一応罪を感じているのか、治療せずに話そうとするクソパルルを制止した。
確か妖精には治癒能力があったはずだ、酷使はできないがそこそこ強力な魔法の一つである。
クソパルルが自分の頬に手を当てた瞬間頬が光り出し、消えた頃には元の胸くそ悪い顔に戻っていた。
「いらいらしてきた。もう一回殴っていいか?」
「ごめんなさい!本当に反省しているので許してください!」
そう言いつつ土下座の安売りをするクソパルル。コイツ、本当に反省してるのか。
まあいい、コイツが俺を連れてきた本人だと言うなら訊かなきゃいけないことがある。
「お前の話の前に頼み、というか命令があるんだがいいか」
「は、はあ、なんでしょうか?」
「俺を元の世界に帰せ」
「え、ええええええええ!」
当然の要求のはずだが、クソパルルは予想もしてなかったように絶叫した。
「そんな、それは困ります!」
「お前の気持ちは分かる。ここに連れてきたってことは俺に何かさせたかったんだよな?だがそれは俺以外の人間でもいいはずだ。一旦俺を帰して、異世界でも好きそうなやつ連れてきてそいつにやらせろ。気乗りしない俺がやるよりよっぽどいいはずだ」
二年間、コイツに会わなかったせいで生き地獄を味わっていた俺だが、わざわざ地球から俺を連れてきた以上、使命があることは分かっている。
でも、あの黒壁を見つけたのは偶然だ。つまり、俺でなくてもよかったはずだ。
シルヴァさんはよくしてくれているが、正直こんなところにいたくはない。帰れるものならさっさと帰りたいのだ。
「いや、その、それは困るというか、なんというか・・・・・・」
クソパルルは、俺から視線を外すと、あからさまに口笛を吹き始めた。しかも吹けてない。
「おい。お前なんか隠してないか?」
「いやあの、隠すというか、向こうのことを考えれば得策ではないというか・・・・・・」
「向こうのこと?いいからはっきり話せ」
なんとも歯切れの悪いクソパルルに一喝すると、クソパルルはなにやら申し訳なさそうに俺を見た後、空中に四角形の何かを取り出した。四角形の中では、懐かしい家並みが映し出されている。
「これは?」
「地球、日本を映しています。もうそろそろリュウ様のお家が映るころかと」
「おお!」
素直に驚かされた。どこから撮っているのか分からないが、こんな簡単に地球と干渉することができるのか。妖精ってのもなかなかすごいのかもしれない。
しばらく見ていると、見慣れた家、つまるところ俺の家が映し出された。次第にズームされていき、部屋の中まで映し出されていく。
すると和室に、小さな仏壇が置いてあるのが見えた。
えっ、あんなのなかったろ。まさか母さんが・・・・・・?
「お、おい!あの仏壇、いったい誰の何だよ!?」
「リュウ様です」
「お、俺ええええええええええ!?」
今度は俺が絶叫する番だった。えっ、はい?俺って、死んだことになってんの?
「二年経ちますからね、そうなっていてもおかしくないと言いますか」
なんか涙を拭う仕草をしてるクソパルルだが、どうにもわざとらしく見える。俺の心が荒んでいるのだろうか。
「そうか、じゃあ母さんは今一人で・・・・・・」
あの家は俺と母さんの二人暮らし、よく祖父母が遊びに来てくれていたが、それでも今は一人。
俺が黒壁に手なんか突っ込んだせいで、母さんを一人に・・・・・・
「そこは心配ありませんよ!私がお母様のおなかに子種を蒔いておきましたから!」
「えええええええええええええええええええええ!?」
「うるせえぞ隣!!」
「す、すみません!」
お隣さんに怒られるほどの奇声を発してしまった俺。「頑張りましたよ私」的な笑みを浮かべるクソパルルをもう一度ぶん殴りたくなってきた。
「お前、子どもがどうやって生まれてくるか知ってんのか!?父さんいないのにどうやって身籠もるんだよ!?」
「えっ、お父様いらっしゃらないのですか?」
「病気でな。だからどう考えてもおかしくなるだろう?」
「ご病気・・・・・・それは本当に可哀想に・・・・・・」
「今それいいから!心配してくれて嬉しいけど!」
「じゃあおじいさまから身籠もったというのは」
「アウトだよ!!お前って馬鹿なの!?頭おかしいの!?」
「でもお母様、『龍ちゃんの生まれ変わりが宿ったのね』と嬉しそうに」
「お母様!?」
叫びすぎて、喉が痛くなってきた。この妖精は、どれだけ常識を知らないのだろうか。
「そうだ、母さん40近いのに大丈夫なのかよ、無事生まれたのか!?」
高齢出産は母胎に負担がかかると訊いたことがある。いくら元気な子が生まれても母さんが無事じゃなければ・・・・・・
「それも問題ありません!全国津々浦々、安産祈願のお守りを送っております!」
「それお前の力じゃなくね!?日本の神様の力じゃね!?」
「失礼ですね、全国からお守りを集結させるのけっこうな手間なんですよ?」
「そういうことを・・・・・・!言ってるんじゃ・・・・・・!ねえ・・・・・・」
もはやツッコミが追いつかない。確かにこの異世界は変なところだけど、コイツは確実に頭がおかしい。
「ついでに申し上げますと、あなたの彼女は新しい彼氏を作られております」
「そ、そうだよな」
泣きっ面に蜂。ただでさえダメージを負ったのに、容赦なく追撃してくるクソパルル。
「で、でもよかったじゃないですか!私が死んでたら、恋人には新たな恋を見つけてほしいと思いますし!」
「死んでたらな!俺生きてるからな!?お前は慰めが下手か!」
恐らくもう戻っても居場所がないことを伝えたいのだろうけど、ところどころに棘を感じるのは何故だろうか。殴られたことをまだ怒っているのか。
「ちなみに、リュウ様は行方不明ということで捜索されていましたが、三日で打ち切られております」
「三日!?早くね!?」
「それは私がリュウ様は死んだと暗示をかけたからでしょう。全国を3日間で、私ってなかなか優秀ですね!」
「・・・・・・あ”あ”?」
ドスのきいた声が、部屋に響き渡った。クソパルルが危険を察知する前に、後頭部を掴む。
聞き捨てならない言葉が、そこにあった。
「あ、あの、なんでしょうか?」
「なんで俺が死んだと暗示をかけた?」
「そ、それは、リュウ様にはやってもらいたいことがありましたし、無駄に捜索を続けてもらうよりは死んだことにした方が手っ取り早いと思いまして」
「なるほど。まあそれはいい、今となっては。解せないのはそれじゃない」
涙目で震えるクソパルルの後頭部に力をこめる。
「お前、俺を見失ったって言ったけどよ、それ、日本で三日も暗示かけてたからじゃねえのか?」
ギクリと、クソパルルの体が動いた。ほんと、わかりやすい性格で助かるわ。
「そうか、そんな無駄なことをしたせいで、俺は何も分からない異世界に一人で放り出されたのか」
「いえ、無駄ということは・・・・・・日本の捜索費を抑えたというかなんというか」
「パルル、俺が何したいか分かるよな」
「あのほんとに、痛いのはかんべ――」
両手中指の第二関節をクソパルルのこめかみにあてがい、思い切りねじ込んだ。
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