リア充、異世界で死にかける

はしもと

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三話 リア充、苦労話をする

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「で~、私のお話を~してもよろしいので~しょうか~」

浮遊しながら目と体をグルグル回すアホパルル。グリグリが思いの外効いたらしい。

「そうだな、話すだけ話せ」

俺はというと、ヤケクソ気味だった。最後の希望だった地球に帰るという意味をなくしてしまった。もうこの世界でなんとかやっていくしかないだろう。

「リュウ様にやっていただきたいことはただ一つ。魔王の討伐です」

「寝言は寝て言え」

俺は、アホパルルの後頭部を掴んで窓からポイッと放り投げた。

「ひどいじゃないですか!?なんてことするんですか!?」

「お前はマジシャンか・・・・・・?」

振り返ると、たった今放り投げたはずのアホパルルがお怒りの様子でこちらを睨んでいた。

「異世界から人を呼ぶと言えば、魔王討伐が基本でしょう!寝言とはなんですか!」

「お前こそ現状を知ってて言ってんのか!?」

俺が働く店、アルヴァには魔王討伐に一番近いパーティの一人が遅い時間にひっそりと飲みに来ることがある。アルヴァは細い道沿いにある小さな飲み屋だし、遅い時間ならほとんど人はいない。有名人御用達といったところだろう。

その人から、現状を何度か聞いたことがある。

「現時点では魔王の居場所すら特定に至っていない。それどころか現最強のパーティ『ヴァルキリオン』ですら、魔王の幹部に手を焼いているという話だ。ヴァルキリオン以外にも勢力はあるけどイマイチパッとしない、人間側に不利な均衡状態が続いているんだ」

「へえ、よく知ってますね」

「なんでお前は知らないんだよ!?」

天然なのか、無知なのか。普通に聞き返してくるこの妖精は本当に世界の情勢など興味があるのか。

「ようは人手不足なんですよね?そのために私はリュウさまをお呼びしたのですよ、世界を救ってもらうために」

「あのな、俺は生きるので精一杯で魔法はもちろんのこと、剣の扱いも知らないんだぞ。魔王の討伐に加われるわけないだろう」

「ですから私が力を授けるのです。お呼びする以上、不自由な暮らしはさせるわけにはいきません!」

「・・・・・・・・・・・・はっ?」

さらっと力を授けると口にしたアホパルルのせいで、血管が千切れそうになった。不自由な暮らしはさせない、だと?

「お前さ、俺がこっち来て何が一番大変だったか分かるか?」

「えーっと、友達作りでしょうか?リュウ様なんかコミュ症っぽいというか」

「言葉の壁だよ!最初、ここの奴らがなんて言ってるか分からなかったんだぞ!?」

もしコイツが最初からいたなら、ホンヤクコンニャクみたいな魔法を使って言語の壁を取っ払ってくれたかもしれない。

でもコイツはいなかった。放り出された。しかもこの街よりももっと治安の悪い場所で。

あそこで言語を教えてくれたノノハという少女には本当に頭が上がらない。俺があそこを離れるときも寂しそうにしてくれたし、いっそあの子と懇ろになるというのも悪くないかもしれない。

言葉の壁の解消にかかった時間はほぼ一年、不自由な暮らしはさせないとかどの口が言うのかという話だ。

「すごい!確かに今思えば話せてますね、独学で勉強したのですか!?」

「その話はもういい、お前に褒められても白々しく感じるしな」

「むう、素直に褒めただけなのに・・・・・・」

アホパルルはなにやら不満げだった。先ほどまではふわふわ浮いていただけなのに、なんか不規則な動きをしている。感情と飛行が一致するのか、なんか面白い。

「で、どうされますか?」

「はっ?」

切り替えの早いアホパルルは、すぐにニコニコしながら俺に尋ねてきた。

「力ですよ、どういったものをご所望かと」

「あのな、俺は魔王討伐に行く気はさらさらない」

「えっ、どうしてですか!?」

「そりゃお前が二年前にすぐ力をくれて言語の壁も取っ払ってくれてたら考えてたかもしれない。でもな、ここまで生きてこれたのは自分の力だ。他人の助けもあったけど、自分でこうするって決めて過ごしてきたんだ。仮に魔王討伐を検討したとしても、自分で力を身につける。お前の力なんて必要ねえよ」

言い終わった後、ボーとアホパルルが俺を見ていることに気づいた。

うん、自分で言うのもあれだが、なかなかかっこいいことを言った気がする。

人の力は借りずに自分の力を信じて突き進む、いやあこれなかなか男前なので――
「まあまあそう言わず!私が持ってても仕方ないので受け取ってください!」

「ええっ!?お前俺の話聞いてた!?」

ニコニコしながら光り輝いている両手を近づけてくるアホパルルに危険を感じ、思わず距離をとる俺。今の話聞いて、よく力を渡そうとしたなおい。

「魔王討伐検討したから力ほしい、ですよね?」

「すごーい脚色しちゃった!かっこいい台詞だったのに他人頼りになっちゃった!」

もう喉が痛い。アホパルルのせいで明日声が出なくなったらどうするんだよ。アルラさん怖いんだぞこの野郎。

「はい隙ありー!」

「ああてめえ!?」

明日の不安を憂い出る隙に、アホパルルは光を押しつけてきた。俺の体に吸い込まれると、光はゆっくりと消えていくのだった。

「これで戦闘には支障はありません。リュウ様はどの力もいらないとおっしゃったので、すべての力を授けました」

「イソップ寓話かよ・・・・・・」

「さて、どうしますか!?早速明日から旅しちゃいますか!?」

なんだがテンションが上がってきているアホパルルだが、俺はというと仕事の疲れもあり、さっさと眠りにつきたかった。

「寝る。明日も仕事だし」

「はああああ!?何言ってるんですか!?何のために力を託したと思ってるんですか!?」

「お前が勝手に押しつけてきたんだろうが!俺は知らんぞ!」

「きいいいい!これだから若者は、魔王が進軍してからでは遅いんですからね!」

「そのときはおまえ、俺を地球に戻してくれ」

「鬼畜うううううううう」

キンキン耳元で騒ぐ虫をあしらいながら目を閉じた。


どうしよう、力手に入っちゃった。
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