リア充、異世界で死にかける

はしもと

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七話 リア充、天国と地獄へ行く

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「よっこらしょ!」

部屋に入ってすぐ、眠っているリリーアさんを俺のベッドに寝かせる。重かったせいでちょっと雑に寝転がしたが、どうやら起きる気配はない。

「・・・・・・疲れたぁ」

俺はというと、軽くなった体を労るようにソファに沈み込んだ。今日はここで寝ようかな。

「んん・・・・・・」

ふとリリーアさんの方を見ると、鎧のせいで体勢が辛いのか何度も寝返りを打っている。

・・・・・・もしかして、鎧は脱がせた方がいいんだろうか?

それ自体は難しいことではない、肩と足の防具を外し、上半身に装着している鎧を脱がせるだけ。それだけでリリーアさんの寝苦しさは改善されるだろう。


・・・・・・問題は、ようなことをしてもよいかである。

リリーアさんがそういうことに関して潔癖なのは先ほどの会話からでも判断できる、もし仮に鎧を外している途中に起きようものなら本気で死を覚悟する必要がある。

だったらちょっと寝苦しいのなんて我慢していただいて俺も寝る方が賢明だ。


でも、今日は遠征から帰ってきたばかりのはず。その最初の休みがこんな形というのはなんだか申し訳ない。いや、リリーアさんの自業自得ではあるんだけど。


「・・・・・・リリーアさんが起きませんように」

俺は一度神に祈ってから、満を持してリリーアさんの眠るベッドの前に立った。

アルラさん、常連さんが来なくなったらほんとすみません。

そんなことを考えながら、仰向けで眠るリリーアさんの肩に手を伸ばす。

固く結ばれている鎖をいくつか外すと、防具はあっさりと外れてしまった。逆側も外して肩は終了、驚くほど呆気ない。これなら問題はない。

「・・・・・・」

リリーアさんも多少は寝心地が良くなったのだろう、起きるどころか静かな寝息を立てている。

よし、次は脚だ脚。

肩のとき動揺に結ばれた鎖を外して防具を外す。この防具だけでも少し重いし、リリーアさんも楽にはなるだろう。

そして最後、大本命鎧である。

さっきまでは割とスピード意識で雑にやっていたけど、鎧ではそうはいかない。仰向けのままでは終わることができない、少しずつ体勢を変えていかなくてはならないのだ。

とりあえず簡単なところ、脇腹付近にある留め具のようなものを外す。それが思いの外しっかりと留めてあるもので、逆側も外すとそれだけで鎧は首から外せるようになっていた。

なんだ、防弾チョッキみたいな作りなのか。もっと紐とか鎖とかあってゴチャゴチャしてるのかと思ってた。

そうと分かれば話は簡単、この重い鎧を頭の方へ持って行き、首から外す。

後はリリーアさんが寝返りでも打ってくれれば、背中にある鎧を外してコンプリート、リリーアさんはすやすやと眠れるはず。

少し強引にリリーアさんを体の向きを変えようと肩に手をかけた瞬間、白の上着に隠れるが目に入った。


――で、でかい。

鎧のせいではない、リリーアさんのそれは確かに豊満であり、呼吸をするたびに上下に動いていた。

以前お世話になったノノハさんもいいものを持っていたが、リリーアさんは別格だ。これはついつい見てしまいますよバハヌスさん。

ここで一発豪快にいってしまうのが男の甲斐性というやつなのかもしれないが、いかんせん大好きな彼女と一年付き合って結局キスもできない草食野郎の俺にはハードルが高すぎる。

リリーアさんありがとう、目の保養にはなりました。最低だけど許してください。

というわけで肩を少し持ち上げ無理矢理寝返りを打たせる俺。そこでようやく鎧の背中部分を引き抜くことができた。

「よし」

重い鎧を机に置き、再びソファへとダイブ。緊張も相まってリリーアさんをここに連れてきたときより疲れてしまったかもしれない。

これでさっきよりも寝心地がよくなればいいんだけど、あっ、もしかして枕とかもしてあげた方がいいかな。頭が低い位置だと嫌って人けっこういるし。

そうとわかれば再びベッドまで、そう思った瞬間だった。

立ち上がってベッドに向かう途中、おきっぱだった脚の防具に躓く俺。向かう先は、リリーアさんが眠るベッドの上。


ボンッ!!


リリーアさんのいない場所に思い切り手を付き、全体重をかけることだけはなんとか阻止した俺。

とはいえ、体は完全にリリーアさんに被さってしまった。体重も少しかけてしまっている。

すぐにどかなかったのは、リリーアさんの上が柔らかくて心地よかったから。思わず女性の体を堪能してしまったから。

――そういうやましい心が、地獄へと足を進めているとは知らずに。

「んっ」

起き上がろうとする前に、リリーアさんの腕が俺の背中に回った。そして、一気に力をこめてくる。

「い”っ!」

豪腕で抱きしめられ、思わず俺は体重を支えていた左手と足を浮かしてしまった。当然、体重がリリーアさんにかかってしまう。

するとリリーアさんは俺を抱えたまま90度寝返り、いつの間にか添い寝をするような形になってしまった。

・・・・・・ど、どうしてこんなことに?ただ俺は、リリーアさんに枕を使ってほしかっただけなのに・・・・・・

「んんっ」

俺の思考など無意味、リリーアさんは俺の頭を抱きしめるように自身に引き寄せた。

そうなればもちろん、先ほどまでただ見ているだけだったそれに、顔からダイブすることになる。

結論から言えば、柔らかくて温かくて、最高の感触だったと言える。

でもそれは、最初の数十秒だけで、俺は呼吸困難に陥りそうだった。

すぐさま抜け出そうとするも、ホールドが強すぎてとてもじゃないが無理。こんなところでヴァルキリオンの騎士の力を見せつけられるとは思いもしなかった。

「あっ・・・!」

空気を探そうと激しく顔を動かすと、リリーアさんから艶めかしい声が聞こえてきた。

これ以上はまずい!これ以上はまずい!

生的にも性的にも死ぬ一歩手前、一生懸命ベッドをタップした。こんな死に方をしたらアルラさんは亡骸に唾を吐いてきそうだ。

意識が朦朧としてきたころ、ようやく強いホールドは解かれ、俺は新鮮な空気を吸うことができた。

よかった・・・・・・謎の窒息死だけは免れた。胸を堪能なんてとてもじゃないができなかった。


・・・・・・あれ、そういえばホールドが解かれたということは・・・・・・?


「・・・・・・リュウ・・・・・・?何故同じベッドに・・・・・・」


あんな死に方はせずとも、普通の死に方なら体験できそうだと、そう思いました。
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