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十話 リア充、敵情視察する
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気球船パルル号との会話もすっかり忘れるほど忙しい時間を過ごした後、今日は無理言って早上がりさせてもらうことになった。
アルラさん終始愚痴をこぼしていたが、シルヴァさんがすんなり許してくれた。この夫婦、かかあ天下に見えないところがすごいんだよな。
そして今日の目的、『ヴァルキリオンのメンバーを知ろう』を実行するときが来た。
強くなるためには自信のスキルアップが重要となるが、可能なら相手のことを少しでもいいから把握しておきたい。
テストがどういうものかは知らないが、ヴァルキリオンのメンバーと一戦交えるというものならなおさら知っておく必要がある。
そこで俺が向かったのは、というか正直向かいたくなかった場所ではあるが、先日勧誘を受けたマルチビーアである。
ここは飲み屋の中では最大手、周りの目を気にしない有名人はよくここに来るそうだ。つまるところ、ヴァルキリオンのメンバーに会うことができるかもしれない。リリーアさんの話によればしばらくはオフみたいだし。
仮にいなかったとしても、普段ヴァルキリオンを見ている人がメンバーの力について何か知っている可能性がある。ここに行かずしてどこで情報を得るといったところだ。
「あっ、リュウさん!」
店内に入ると、早速カルエさんに見つかってしまった。いや、客なんだからそりゃ店員にバレるだろうけど。
しかしながら、けっこう遅い時間なのに人が多いな。この中にヴァルキリオンはいるんだろうか。
「とうとうウチに来ることにしました?」
「いえ、ちょっと飲みに来ただけです」
「ぶー、つれないです。ご新規1名様ご案内です!」
そして店内に響く『いらっしゃいませ』の声。かなり騒がしい店内でもしっかり聞こえる、本当に訓練されているんだな。
空いているカウンター席に通され、俺はそこに座った。
「ご注文はどうなされますか?」
「えーと、カシスオランジで」
「えっ!ここ来てビーア飲まないんですか!?」
「すみません、あんまり得意じゃなくて」
「そういうことなら仕方ないですね、ご新規カシオラ1丁いただきました!」
今度は『ありがとうございます』の声が響く。こうしたちょっとした声出しの積み重ねが人気の秘訣なんだろうな。客としても聞いていて気持ちがいいし。
ドリンクが来るまでの間、改めて店内を見渡す。ところどころ人が集まっている場所があるがヴァルキリオンのメンバーか分からない。そもそもの話、俺リリーアさん以外の顔知らないし。
隣の客、もしくはカルエさん辺りに聞くのが妥当なところか。少しでも情報があれば俺は――
「ふぅ」
「ひゃっ!?」
いきなり耳に息を吹きかけられ、思わず変な声が出てしまう俺。
誰!?こんなエッチないたずらしてくる子!?
「あらら、反応可愛い~」
振り向いた先にいたのは、マルチビーアの制服を着た店員さん。座っていたせいか、目の前のダイナマイトバディに一瞬言葉を失ってしまった。これは、リリーアさんにも負けていないのでは・・・・・・?
「あなたがカルエの言ってた子でしょ?一応久しぶりになるのかしら?」
目線を上げると、そこには艶めかしい笑みを浮かべる女性の顔があった。セルビアさんと同じく綺麗な黒髪だが、ウェーブがしっかりかかっていて大人っぽさ演出している。小悪魔的な切れ目といい、俺が想像する『背徳的お姉さん像』にぴったりだ。
「はい、お久しぶりです。俺はリュウって言います」
顔まで正確に覚えてなかったが髪型で記憶が蘇る、カルエさんと一緒にアルヴァに飲みに来てた女性の一人だ。
「あたしはジェーン、ここ入ることになったら改めてよろしくね」
「あっ、はい」
なんかもう一挙動一挙動が扇情的に見えるのは俺が病気だからだろうか。カルエさんみたいに元気な女の子もいいが、ジェーンさんみたいに大人な感じもたまりません!
「これカシオラね、また注文あったら呼んでね」
「あっ、ジェーンさん!」
「ん?何かしら?」
綺麗な女性に目を奪われるのはけっこうだが、本業を忘れてはいかん。ここに来ているのは、一週間後のテストのためなのだから。
「今けっこう人いますけど、ヴァルキリオンの人っているんですか?」
「いるわよ、今日は二人かしら」
ジェーンさんは、俺に分かるように指を差してくれる。そこは、特に人が溢れている場所だった。
「赤い髪をした痩せている人がレインさん、魔法騎士といって剣を取りながら魔法もこなす万能な人ね。隣の大柄で坊主頭の人がバハヌスさん、豪腕で斧を使って戦うタイプの人よ」
「お詳しいですね」
「そりゃ二人は常連だしね、特にバハヌスさんは女好きだもの」
確かに、レインさんは周りの男ども馬鹿騒ぎしている感じだが、バハヌスさん両隣に女性を侍らせている。ん?あれお胸を触ってないか?
「有名人ってのはそれだけで得よね、強ければ騒がれて、ある程度は自分の思い通りになる。それにつけ込んでゲスな真似をするやつもいるから気をつけなきゃなんだけど」
まるでバハヌスさんに言っているように聞こえるが、ジェーンさん的にはそういうつもりはないのだろう。隣にいる女性も、別に嫌がっているようには見えないし。
「他の方は来ないんですか?」
「6人中4人はよく来るわよ、今日はたまたま来なかったってだけで。残りの2人はまったく来ないわね、落ち着いて飲みたい人たちじゃないかしら」
そのうちの1人がおそらくリリーアさんだろう。いつもアルヴァに来てくれてありがとうございます!
いやいやしかし、思ったより情報を得られたんじゃないだろうか。レインさんとバハヌスさんに関しては戦い方まで分かった。
もしかして、よく来るらしい2人の情報もジェーンさんに訊けば分かるのでは・・・・・・?
「あの、ジェ――」
ジェーンさんに声をかけようとした瞬間、パリーンという皿が割れる音が店内に響いた。
一瞬店内に静寂が訪れるが、笑いながら少しずつ騒がしくなっていく。
音の発信源に目を移すと、カルラさんでもジェーンさんでもない店員が男に頭を下げているところだった。
・・・・・・これは、なにやら不穏な空気か・・・・・・?
アルラさん終始愚痴をこぼしていたが、シルヴァさんがすんなり許してくれた。この夫婦、かかあ天下に見えないところがすごいんだよな。
そして今日の目的、『ヴァルキリオンのメンバーを知ろう』を実行するときが来た。
強くなるためには自信のスキルアップが重要となるが、可能なら相手のことを少しでもいいから把握しておきたい。
テストがどういうものかは知らないが、ヴァルキリオンのメンバーと一戦交えるというものならなおさら知っておく必要がある。
そこで俺が向かったのは、というか正直向かいたくなかった場所ではあるが、先日勧誘を受けたマルチビーアである。
ここは飲み屋の中では最大手、周りの目を気にしない有名人はよくここに来るそうだ。つまるところ、ヴァルキリオンのメンバーに会うことができるかもしれない。リリーアさんの話によればしばらくはオフみたいだし。
仮にいなかったとしても、普段ヴァルキリオンを見ている人がメンバーの力について何か知っている可能性がある。ここに行かずしてどこで情報を得るといったところだ。
「あっ、リュウさん!」
店内に入ると、早速カルエさんに見つかってしまった。いや、客なんだからそりゃ店員にバレるだろうけど。
しかしながら、けっこう遅い時間なのに人が多いな。この中にヴァルキリオンはいるんだろうか。
「とうとうウチに来ることにしました?」
「いえ、ちょっと飲みに来ただけです」
「ぶー、つれないです。ご新規1名様ご案内です!」
そして店内に響く『いらっしゃいませ』の声。かなり騒がしい店内でもしっかり聞こえる、本当に訓練されているんだな。
空いているカウンター席に通され、俺はそこに座った。
「ご注文はどうなされますか?」
「えーと、カシスオランジで」
「えっ!ここ来てビーア飲まないんですか!?」
「すみません、あんまり得意じゃなくて」
「そういうことなら仕方ないですね、ご新規カシオラ1丁いただきました!」
今度は『ありがとうございます』の声が響く。こうしたちょっとした声出しの積み重ねが人気の秘訣なんだろうな。客としても聞いていて気持ちがいいし。
ドリンクが来るまでの間、改めて店内を見渡す。ところどころ人が集まっている場所があるがヴァルキリオンのメンバーか分からない。そもそもの話、俺リリーアさん以外の顔知らないし。
隣の客、もしくはカルエさん辺りに聞くのが妥当なところか。少しでも情報があれば俺は――
「ふぅ」
「ひゃっ!?」
いきなり耳に息を吹きかけられ、思わず変な声が出てしまう俺。
誰!?こんなエッチないたずらしてくる子!?
「あらら、反応可愛い~」
振り向いた先にいたのは、マルチビーアの制服を着た店員さん。座っていたせいか、目の前のダイナマイトバディに一瞬言葉を失ってしまった。これは、リリーアさんにも負けていないのでは・・・・・・?
「あなたがカルエの言ってた子でしょ?一応久しぶりになるのかしら?」
目線を上げると、そこには艶めかしい笑みを浮かべる女性の顔があった。セルビアさんと同じく綺麗な黒髪だが、ウェーブがしっかりかかっていて大人っぽさ演出している。小悪魔的な切れ目といい、俺が想像する『背徳的お姉さん像』にぴったりだ。
「はい、お久しぶりです。俺はリュウって言います」
顔まで正確に覚えてなかったが髪型で記憶が蘇る、カルエさんと一緒にアルヴァに飲みに来てた女性の一人だ。
「あたしはジェーン、ここ入ることになったら改めてよろしくね」
「あっ、はい」
なんかもう一挙動一挙動が扇情的に見えるのは俺が病気だからだろうか。カルエさんみたいに元気な女の子もいいが、ジェーンさんみたいに大人な感じもたまりません!
「これカシオラね、また注文あったら呼んでね」
「あっ、ジェーンさん!」
「ん?何かしら?」
綺麗な女性に目を奪われるのはけっこうだが、本業を忘れてはいかん。ここに来ているのは、一週間後のテストのためなのだから。
「今けっこう人いますけど、ヴァルキリオンの人っているんですか?」
「いるわよ、今日は二人かしら」
ジェーンさんは、俺に分かるように指を差してくれる。そこは、特に人が溢れている場所だった。
「赤い髪をした痩せている人がレインさん、魔法騎士といって剣を取りながら魔法もこなす万能な人ね。隣の大柄で坊主頭の人がバハヌスさん、豪腕で斧を使って戦うタイプの人よ」
「お詳しいですね」
「そりゃ二人は常連だしね、特にバハヌスさんは女好きだもの」
確かに、レインさんは周りの男ども馬鹿騒ぎしている感じだが、バハヌスさん両隣に女性を侍らせている。ん?あれお胸を触ってないか?
「有名人ってのはそれだけで得よね、強ければ騒がれて、ある程度は自分の思い通りになる。それにつけ込んでゲスな真似をするやつもいるから気をつけなきゃなんだけど」
まるでバハヌスさんに言っているように聞こえるが、ジェーンさん的にはそういうつもりはないのだろう。隣にいる女性も、別に嫌がっているようには見えないし。
「他の方は来ないんですか?」
「6人中4人はよく来るわよ、今日はたまたま来なかったってだけで。残りの2人はまったく来ないわね、落ち着いて飲みたい人たちじゃないかしら」
そのうちの1人がおそらくリリーアさんだろう。いつもアルヴァに来てくれてありがとうございます!
いやいやしかし、思ったより情報を得られたんじゃないだろうか。レインさんとバハヌスさんに関しては戦い方まで分かった。
もしかして、よく来るらしい2人の情報もジェーンさんに訊けば分かるのでは・・・・・・?
「あの、ジェ――」
ジェーンさんに声をかけようとした瞬間、パリーンという皿が割れる音が店内に響いた。
一瞬店内に静寂が訪れるが、笑いながら少しずつ騒がしくなっていく。
音の発信源に目を移すと、カルラさんでもジェーンさんでもない店員が男に頭を下げているところだった。
・・・・・・これは、なにやら不穏な空気か・・・・・・?
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