天端怪奇伝

湯殿たもと

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天端怪奇伝11

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天端怪奇伝11



「そしてここは駅前商店街」

「ナレーションは別にあるから大丈夫だよ」

「ナイス突っ込み、ボケに付き合ってくれる奴は俺と相性が良い。なかなかだな」

「ねぇねぇしげ君、ゲームセンターって入ったことある?」

「あるぞ、いろはは何のゲームが好きなんだ?」

「ボク実は入ったことが無いんだよ」

「ぬわにぃー?まじか」

「お母さんに入っちゃダメって言われたんだよ、治安が悪いからって、でも、一度入ってみたいんだよ」

「よし、入ろう。ばれなきゃ良い」

俺にとっては慣れたゲーセンでも、いろはにとっては初めてのゲーセン。ならまずはこれ、って奴がある。

「まずはこれ。ホッケーだ」

「なにこれ、面白そう、わ、ふわってする!」

空気が出てるのに興味津々。俺はルールを一通り教えてやってみる。いろははなかなか筋が良い。・・・・・・ちょっとまて、これは一人でやったら視線がヤバい奴じゃないのか。まあ、空いているからいいか。今度から気を付けないと。

・・・何故か本気を出していたにも関わらず負けてしまった。ホントに初めてなのかいろは。

「あれも面白そうだね」

「うん・・・?」

「あの銃で撃つやつ」

「あれ、いろはってあんな趣味だったっけ?」

「お父さんが銃のマニアだったんだよ、それでボクも小さいときから見ててね、一度やってみたかったんだよ」

「よし、やろうか」

少しずついろはのイメージが崩れて来たぞ・・・しかも滅茶苦茶うまい。俺のが明らかに下手だ。・・・アーケードゲームってのは基本的にクリアが非常に難しく作られているのにいろはは(俺が死んだあとひとりで)クリアしたのだった。才能あるぞ。

そんな感じでいろいろな快進撃を見せつけられて疲れた。そして最後に彼女が指差したのは・・・プリクラ。できたら俺が元気なうちに撮ってほしかった。ちょっとげっそりしてる写真が出てきた。いろはは二百点の笑顔。

撮ったあといろははトイレにいったが、その時ゲーセンの知り合いに話しかけられた。

「なーに、やつれた顔で写ってるんだよ久保田ー、そもそも男ひとりで撮るなんて・・・こいつ誰だ」

「ん、そりゃ俺の友達の明智ってやつ・・・」

・・・ん?・・・ちょっと待て。すっかり忘れてた。いろはは幽霊だよな。それじゃうっかりプリクラに写ったりしちゃまずかったんだよな。気を付けないと。

・・・こいつ誰だ?ってどういうことだ?写真を見直す。・・・写ってる。誰が?俺と・・・いろは。いろは写ってる。何に?写真に。ってことは・・・えーと。

「もしかして心霊写真

「え、ああ、そうだ。そこで男ひとりで写ると女の霊が写るんだよ」

「ひえーっごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいつ」


・・・帰宅。なんか疲れた。テストがどうでもよくなってきた。

「お兄さん勉強は?」

「やる気でねぇ」

「何してきたのさっきまで、もう」

「あっ」

急いでプリクラの写真を見せる。

「これが明智いろはだ」

・・・・・・

「心霊写真?」

「まあ、そんなとこだな」

「・・・確かにこのひと、見たことあるかも・・・いろはちゃんかも」

「な、勉強する気失せただろ?」

「別問題です」


続きます。
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