狼の巫女

湯殿たもと

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狼の巫女 1

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蝉が鳴く、風で木がざわめく、そんな田舎の道を歩いていた。ジリジリと夏の日差しが照りつける。しかし、風があるせいか暑さはそれほどでもない。

大学生の夏休み。僕は汽車やバスで全国を旅することにした。旅費が尽きたらその地で働いて稼ぐ。それを繰り返してここまで旅を続けてきた。

なぜこんな田舎道を歩いていたか、と言えば駅員さんからこちらの方にモスラ岩という観光名所があると聞いたからだ。ゴジラ岩ならともかくモスラ岩ってなんだ?と思い歩いてきた。

集落に入り、誰かに岩の所在を確かめようと思ったのだが、誰もいない。集落をそのまま進み、いよいよ出口といったところで人影を発見した。高校生くらいの男。

「すみません」

「ああ、煙草か、あいにく俺は高校生なもんで煙草は持ってねぇな」

「えと、煙草じゃなくて道を尋ねたいんですけど・・・」

「なんだ、でどちらに行くんだ」

「モスラ岩に」

「じゃ、俺が案内してやる」

「どうも」

高校生に案内してもらい、モスラ岩を目指す。

「兄さんはどこの人なんだ?」

「東京だよ」

「大学生か?」

「ん、そうだよ」

「ふーん、でここには研究かなんかで来たのか?」

「いや、ただの観光だよ」

「そうなのか、この村にはいろいろ研究しがいがあるものがあるんだぞ」

「へぇ、どんなのがあるんだい?」

「ニホンオオカミとか」

「絶滅したんじゃなかったっけ」

「そう言われてるな、しかしこの村の裏山で目撃証言があるんだよ」

「ふぅん、なるほどねぇ」


狼の巫女  1


モスラ岩。いったい誰がそんな事言い出したんだ。全然モスラに似てない。無理にこじつけたんだろ。

「あ、それ似てるとかじゃないんだ、モスラの監督のお爺さんがその岩を見て絵を描いたとかなんとか」

やっぱりこじつけじゃないか。


さっきの村に戻る。昼時になったので腹がへってきた。この村の美味しい料理店を高校生に尋ねる。

「旨いもなにもここには食堂は一軒しかない、そこで良ければ」

高校生が案内してくれるというのでそこへつれていってもらう。モス食堂という名前だった。この名前大丈夫なのか?

店に入ると店の主人はテレビを見てくつろいでいた。自分が来たのに気づくとびっくりして飛び起きる。

「お客をつれてきたぞ」

「ほう、見ない顔だね、旅人さんか」

「はい、えぇと、ここのおすすめは何ですか?」

「ハンバーガーだよ」

完全にアウトだったよ!


ハンバーガーを腹に入れて、次はどうしようかと地図を見ていると、さっきの高校生が」紹介したい人がいるという。せっかくなので案内してもらう。

そこは神社だった。掃除が行き届き、鳥居は鮮やかな赤であった。そこにたたずむ一人の巫女装束を着た少女。

「つれてきたぞ」

「はじめまして」

「あなたが例の大学生だね、よろしく。私はこの神社の巫女の藤島雪音(ふじしまゆきね)」

「俺は雪音の兄の藤島かおる」

「えと、僕は東京から来た八代瑞穂(やつしろみずほ)」

「八代くんはこの村に何しにきたのさ」

「モスラ岩を見に来たんだよ」

「ふうん、大学はどこの学部なの」

「経済学部だよ」

「・・・経済学部かぁ」

何か残念そうに言う。経済学部だって面白いのに。

「雪音さんはどこか目指してる大学あるの?」

「あ、私は高校卒業したら巫女専業になるから大学は行かないんだぁ」

「なるほど、かおる君は?」

「俺はこの辺で働くことになってる、ここはどこも人手が足りないからな」

「大学生の瑞穂くんに調べてほしいことがあるの、この山の狼のこと」

「狼?絶滅したんじゃないのかい?」

「目撃者がいたんだよ」

本当なのかなぁ、野犬とか熊とかと間違えたんじゃないのかなぁ・・・


続きます  気長にお待ちください
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