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第1章 始まり 始まり

第1話 チュートリアル

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Crystal Connect Story、略して『クリコネ』。
VRゲームが発売されるようになってから、1年も経たずに発売されたこのゲームは、初のVRMMOとして注目を集めた。
発売から1年、クリコネは、今や親愛なる鬼畜ゲームとしての評価を受けているという。

(親愛なる鬼畜ゲームって前後で言ってることおかしくない?)

というツッコミはなんのその。
今日から私は、鬼畜ゲームをプレイする。

・・・
今は昔、厶の星結びし大地の上で
突如荒れ狂う幾多の者共
混沌極めしその様相の中
失われしコの神の器
唯一残りし光る石
天が残した数多の象形も
口伝の道も途絶えてしまえば
収束した今では既に遅く
明かすことは誰も叶わず
・・・
(おお~なかなかの作り込み!BGMと詩も雰囲気Good Job!)
そう思っていると、暗かった視界が、白い世界へと変わった。

「Hello World」



後ろからそんな言葉が聞こえ、振り返ると白いキューブが浮いていた。
(このキューブから声が聞こえたんだよな?)
そう不思議に思いつつも、恐る恐る近づき、触れようと右手を伸ばす

「ようこそCrystal Connect Storyへ」

「ひぅ、す、すみません」

(変な声とともに、不覚にもAIに謝ってしまった)

「私は箱型AIの、キューブです。これからこの世界についての説明と、オリエンテーションを行います。質問も受け付けます」

(確かこのゲームはキャラクターとか、オブジェクトは事前にプログラム設定されているだけじゃなくて、AIが搭載されていて普通に話すことができるって聴いたことあるな。科学って偉大)

「この世界はヘクスグランドと呼ばれ、魔法と魔物が存在する世界です。あなたはこれからこの世界で紡晶ボウセイの書を完成させるための冒険に出発します」

紡晶ボウセイの書、、、それは何ですか?」

「紡晶の書は、この世界の物語を記録していく書物のことで、新しい発見、イベントが発生する度に更新されていきます。この書物の全ページを埋めることが、本ゲームのクリア条件です」

「なるほど、なんとなくわかりました」

「では、まずあなたのプレイヤー名を決定してください」

ピコン!!
音とともに目の前にダイアログとキーボードが表示される。
キャラクター名はMaRiKu、そうキーボードに打ち込む。

「MaRiKu様ですね。設定しました」

「次に、MaRiku様のキャラクターデザインを決定してください」

ピコン!!
目の前に四角形の大きな鏡と操作用のパネルが表示された。

急に現れた鏡やパネルよりも、目の前に現れる自分の姿に目が行った。

(白Tに黒い短パンがデフォルトかよ。最終的なイメージがし辛いじゃないか)

デフォルトの服装にキャラデザが引っ張られないように苦労しながら、なんとか私は緑色の長髪、瞳も薄い緑、そしてメガネをしたキャラを設定する。

(よし!これは魔法使いっぽくなったんじゃないか?)

そう自分では無理やり納得したが、白T黒い短パンをまとっているためアンバランスは払拭できていなかった。
(てか他のプレイヤーから初心者ってまるわかりの格好だな)

「では次に初期ジョブを選んでください。ジョブの説明を受けますか?」

「はい。お願いします」

「このゲームではジョブ活動や魔物狩りを通じて、ゲーム内通貨であるクーツや、ギルドポイントを稼ぎつつ、装備等を充実させて冒険を行います。ジョブを選ぶと、選んだジョブのライセンスを獲得でき、ツールスキル、ジョブスキルの中から各ジョブの基礎的なスキルをいくつか獲得できます。ライセンスは現実世界での免許と同義と考えてください。選択できる初期ジョブは11種類。生産系、職人系、特殊系と3つのカテゴリーに分かれています。
なお、特殊系に属する行商人は、初期ジョブ選択時以外での習得機会はないのでご注意ください」

「ではジョブの選択をしてください」

目の前にダイアログが表示される。

(ファンタジーと言えば異世界、異世界と言えば魔法、魔法といえば魔法師だよね!行商人とも悩んだけど唯一、異世界っぽい職業だし)

私は”職人系”ジョブである『魔法師』を選択した。

「『魔法師』でいいですね?」

「はい。」

ピコン!!

音とともにダイアログが表示される。

〈MaRiKuは『魔法師』ジョブを取得し、魔法『魔晶操作』とジョブスキル『魔材操作』を習得した〉

「魔法が習得できた?説明の時に聴いていたのと違うけどもう魔法使えるの?」

「今習得した魔法とスキルは『魔法師』の基礎活動に必要なものです。魔法は基本的にプレイヤーは使えませんが、例外として魔法師のみ、『魔晶操作」という魔法を使えます。
この魔法を使うことでクリスタリスを加工したり、クリスタルを素材に付与したりできます」

「え、この世界、魔法をバンバン使えるんじゃ?」

「それは、ここの世界で活動をするとわかることですが、一言だけ説明できるとしたら”誰でも”、”バンバン”使えるわけではありません」

「何その意味深、、、まぁ何となくゲームを進めていけば僕は使えるってことだよね?」

、、、

「最後に、初期転移場所を選択してください。初期転移場所では、場所に応じた大きさの住居兼、仕事場を与えられます。『魔法師』は4箇所から選択できます」

(え、無視した?無視したよこのAI)

ピコン!!

ダイアログに4箇所の説明書が記されている。

□首都セントラル 
→クリコレ内において最大の人口と面積を抱え、円形状の城壁都市。
ただし、狩人以外の生産系は選択不可。

□港町コーストタウン
→クリコネ内最大の港町。
生産系である『漁業』のジョブプレイヤーはここを選ぶプレイヤーが多い。

□日之里
→クリコネ内第二の人口を抱える地にして有名な温泉街がある。
いくつかの里が密集しており、全プレイヤーが選択可能。

□農村A
→プレイヤーが自由に使える面積が大きいため、初期の住宅面積が他の都市より大きく利用できる。
ただし、最低限度の施設しか村内にはない。

よくわからない状態のまま話が進んでいく状況にパニックになりながらも頭は正常に回転している。
(農村Aって雑すぎない?他は結構凝ってるのに、、、まあでも安定を取るか!)

私は、『首都セントラル』を選択した。 

「首都セントラルですね。設定しました」

「そしてこれがプレイヤー1人に1台与えられるCドローンです。ドローンには名前をつけることができます。名前をつけますか?」

「へ~名前つけられるんだ。つけます!」

ダイアログとともにキーボードが表示される
私は”相棒”と打ち込んだ。
説明しよう。相棒とは、私的『読んでみたいランキング』で最優秀賞を飾っている読み名である。
「まあ、ゲームってそうゆう欲望を詰め込むものだしいいよね!」

ですねフフフ、設定しました」

(今、嘲笑しなかった?さすがにしていないよね?AIってそんなにお笑いに理解ないよね?)

「ではこれから動作確認をします。"ウィンドウ・オープン"とおっしゃってください」

「ウィンドウ・オープン!」

すると相棒から顔の前にスクリーンが映し出された。

「今表示されている画面はオプション画面といい、手をかざすことで操作可能です。また、この画面は自分で色々と設定できるので、時間があるときに設定してみてください。
また、ドローンに向かってショートカットワードを言うことで一気に必要な画面を映し出すこともできます」

(何その万能機能。これ、現実世界にも1人に1台、案件でしょ)

「また、この世界のことについて詳しい説明を、ドローン内アプリに記載しているので、確認してみてください」

「以上がチュートリアルになります。紡晶の書完成、頑張ってください。不遇ジョブなりのプレイを楽しんでください」

(え、最後なんて言った?)

そう思ったのも束の間、白い視界が一瞬にして黒くなった。

****************
クリコネ図鑑(ドローン内アプリ)
【ジョブ】
ジョブは3つのカテゴリーに分かれ、初期ジョブでは11のジョブが存在する。

『生産系』
→農業・林業・漁業・狩人
『職人系』
→鍛冶師・織物師・調理師・大工・薬剤師・魔法師
『特殊系』
→行商人
※行商人は初期ジョブのみで選択可能。

ジョブに関するスキル
①ジョブライセンス(パッシブスキル)
→特定のジョブ活動を行うための免許と同義
②ツールスキル(パッシブスキル)
→特定の器具や機具を使用するためのスキル。
③ジョブスキル(アクティブスキル)
→SPを消費し、使用者の身体能力に関わらず行動を自動制御、または補助する。

②や③は初期に習得するものもあれば、レベル上昇ごとやスキルをポイントやクウォーツで購入することもある。

NEW!!
魔法師は減少傾向にあり、この世界では不遇職と呼ばれている。
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