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第1章 始まり 始まり

第2話 ギルド試験

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暗かった視界に光が入ってくる。

コンコンコン

ドアを叩く音が聞こえた。どうやら私は部屋の一室にいるようだ。
ただ、自分で起き上がろうにも体が言うことを聞かない。

(どうなっているんだ?)

そう思っていると、体が突然起き上がり、目を擦りながらベットから立ち上がった。
体が勝手にドアを開ける。
部屋との光量の影響で一瞬目の前が白く見えなくなったが、少しすると男性が腕を組んだ状態で立っているのがわかるようになった。
少し観察をしてみると、目の前に大部分が白髪で根本に黒髪が少々、日本人風の顔立ちをし白い髭はダンディーな雰囲気を醸し出している。

「MaRiku、今日は試験の日だが準備はできているか?」

突然の質問に、びっくりする。
(ん、試験?急すぎて準備できてるわけ)

「わかってます!準備もできていますよ!」

!?。どうやら、ストーリーモードのような状態になっており、勝手に身体が話したり動いたりしているようだ。
ただ、頭ではいつも通りの私が活動をしている。

(嘘つくな!意味がわからんし、今起きただろ!)

自分の身体に咄嗟にツッコむという不思議な状況と勝手に声が出るという状況に困惑しつつも、やはり身体は言うことを聞かない。

「おし、じゃあ今から職人ギルドの部屋で試験を行うからついてこい!」

「わかりました。」

部屋を出ると通路になっていて、同じようなドアが左右の壁に並んでいた。
ドアが開いている部屋もあったため、中がちらっと見えたが、先程居た部屋と同じような間取りになっているようだ。

そして改めて、目の前の男性を注視してみる。
身長はそこまで高いわけじゃないが、身体はガッチリしている。
いかにも職人、といった感じの体格である。
ふと、よく見ると『ムネチカ・ロウ・キラッセ(NPC)』と表記されていた。

(名前なが!)

というツッコミとともに、親に初めての人には敬称をつかいなさいと言う言葉を思い出す。ただ、AIに対してはどうするべきか悩む。ただ、このまま長い名前をフルで呼ぶのも時間の無駄である。という無駄なことを考えながらも最終的に私は今後AIに対しては付けで呼ぶことに決めた。

そう考えつつも、身体は勝手にとぼとぼとムネチカさんに付いていく。
通路を抜けると階段が見えてきて、その階段を下りていく。
階段を下りると、階段の隣が大きなカウンターになっており、部屋の中央には椅子や机がある程度整理して置かれていた。
どうやらここが職人ギルドのギルドホールらしい。
ムネチカさんはカウンターの奥に入っていく。
私も続いて入っていくと、恐らく受付であろうカウンターのところに、2人の女性が見えた。

左の黒髪ロングの女性は『イズナ・ジム・キラッセ(NPC)』、右の黒髪セミロングの女性は『ヒナセ・ジム・キラッセ(NPC)』と表記されていた。

(前言撤回。仲良くなったら敬称変更もありとする)

そう心に決めつつ、カウンターの奥に進んで試験会場であろう部屋に着くと、ムネチカさんが身体の方を見てこう尋ねた。

「ここで、試験を行う。今日の試験では今着ている防具に、この火炎スライムのクリスタルを付与してもらう。準備はいいか?」

(防具?ただの白Tだろこれ)
そんなツッコミは響きもしない

「はい!大丈夫です。お願いします」

(いや、準備なんてできていません)
という自我を無視して、自分の身体は白Tを脱ぎ、深呼吸をし始めた。
すると、なぜか段々、身体がやろうとしていることが感覚的にわかるようになってきた。
意識が胸に集中し始め、心臓の箇所がモヤモヤと熱くなる。
その熱いモヤモヤを手に流し込むようにし始める。
身体は中指と人差し指をくっつけて、親指は伸ばしたまま、小指と薬指は曲げるように手の形を作った。
その後、モヤモヤがくっつけた中指と人差し指の先端に移動する。
その手をクリスタルに近づけ、触れるとクリスタルの形が変形して自分のモヤモヤと同化する。
同化したモヤモヤを軽く白Tに触れ手を左右に振りながら上部から下部にゆっくりと移動させていった。
全ての箇所を触れ終わると白Tは今や赤Tとなっており、作業が終わると身体がリラックスしたのがわかった。

ピコン!
MaRiKuは紅の防具クレナイのシャツを手に入れた。

(うわ、名前が)

「よし、うまくできたな!試験は『』だ。今日からMaRikuは魔術師としての活動をすることを許可する。これが魔術師のジョブライセンスだ」

ピコン!
MaRiKuは魔術師のジョブライセンスを手に入れた。

「試験合格の報酬として、その『紅の防具』と『住居』を与えようと思うのだが、住居の場所をどこにするか選んでくれ」

ここで自分の身体を意識的に動かせるようになった。 

(ここで開放!?なんかいろいろ疲れた、、、)

と思いつつ、背伸びをしながら身体をほぐす。
(今までの状況が特殊すぎて気づかなかったけど、VRってこんな感じなんだ。現実とそんなに変わる感じじゃないけど、動きに違和感を感じるし何より文字が浮いてるっていうのが新鮮)

ピコン!

初めてのVRに感動、困惑しているとダイアログにセントラルの地図が表示された。

表示された地図を見てみると、円形上のこの都市は水路を隔てて北東、南東、南西、北西の4つの区画に分けられ、各区画の中央あたりには広場があるようだ。
また、地図にはその区画の中で選択できる土地が黄色で表示されている。

(やっぱり広場に近いところとかギルドに近いところは埋まってるなぁ)

結局、北東エリアの北門に1番近いところを選択した。

「よし、わかった。明日以降またギルドホールの受付に来てくれ。それまでは使っていた部屋に宿泊してかまわない。これからよろしくなMaRiKu。」

そう言うと、握手をした後ムネチカさんはこの部屋を出ていった。

残された私は、悩んだ末に部屋で相棒内アプリを設定しつつ時間を潰すことにした。

****************
クリコネ図鑑(ドローン内アプリ)
NPC図鑑 NEW‼
〈ムネチカ・ロウ・キラッセ〉職人ギルド長
はるか昔、この地に流れ着いた一族の末裔
白髪に黒髪少々、白髭である。
??革命を起こした1人
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