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3章

実戦?

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1.裕次郎はスキップしながら帰り道を歩いていた。後ろから、四つの眼球がふわふわと着いてきていた。
「パンツ~パンツ~パ・ン・ツ!」
 鼻唄混じりで家の前に着くと、四つの眼球を配置につける。
 よし。まずは風呂場からいくか・・・・・・
「裕次郎! 何してるニャ?」
 いきなり後ろから声をかけられ、裕次郎は飛び上がった。慌てて振り返り、言い訳する。
「違うんだ! 俺はただ新しい魔術を試そうとしていただけで、決してやましい気持ちがあったわけじゃないんだ! 信じてくれ!」
 裕次郎は一人、勝手にべらべらと喋った。
「? そうなのニャ? なら見せるニャ」
 ヤコは興味津々、目をキラキラさせながらこちらを見てきた。
 裕次郎は仕方なく、開発した魔術の説明をした。
「・・・・・・なるほどニャー。発想は悪くないニャ」
 ヤコはうんうんと頷いている。
 裕次郎は不満だった。てっきり、
『すごい魔術ニャ! 天才ニャ! 抱いてニャ♥』
 ぐらいは言ってくれると期待していたのに。
「なんだよ。発想は悪くないって、この魔術はもう完成してるんだけど?」
「なら、ちょっといいかニャ?」
 ヤコはにやにや笑いながら呪文を唱えた。
フラッシュ! ニャ!」
 呪文を唱えると、ヤコの体が光り・・・・
「目があああああ! めがあああああ!」
 裕次郎の視界が真っ白になった。痛覚が遮断されていても、眩しいものは眩しい。と言うか半端なく眩しい。目からは、涙が次から次へと溢れてくる。
 一通り暴れた後、やっと落ち着いてきた。涙を流しながらも、うっすらと目を開けた。
「ニャハハ! フラッシュ!」
 裕次郎はまた目がくらみ、暴れ始めた。

2.「・・・裕次郎、ゴメンニャ。やり過ぎたニャ」
 ヤコが頭を掻きながら謝ってきた。
 裕次郎は涙を流しながら、豹眼パンテラ・アイを解除した。
 この魔術は、まだ改良の余地がありそうだ。眼球にサングラスでも掛けるとか。そう思っていた。
「・・・・・・」
 裕次郎は無言のまま家に入った。今日はもう疲れたし、早めに寝よう。そうしよう。
「ウジウジウジ!」
 ドアを開けた瞬間、ベルがロケットのように飛んできた。
「・・・・・・?」
 裕次郎は困惑する。
 ベルの言っている事が分からなくなっていたからだ。
「・・・・・・まあ、いっか」
 しかし、深くは考えなかった。
「パパ~おかえり~」
「やっと帰ってきたか! 心配したぞ!」
「ごめん。ちょっと色々あって・・・・・・」
「ん? 何かあったのか?」
「実は――」
 裕次郎は右腕が封印されてしまった事、新しい魔術が使い物にならなかった事を話した。
 デート云々は一切話さなかった。
「・・・そうか。そんなことが」
「よくわかんない~」
「ウジ! ウジ!」
 それぞれ思い思いの反応をした。ベルに関しては、もう何を言っているのか全く分からなかった。
「うん。今日はもう疲れたから先に寝るね」
 裕次郎はそう言うと、自分の部屋へ戻ろうとした。ベルが足を伝って肩まで這い上がってきた。
「風呂はどうするのだ?」
 イザベルが訊いてくる。
「明日の朝に入るよ」
「そうか。なら入った後風呂掃除も頼むぞ」
「うん。分かった」
 裕次郎はそう言うと、リビングを出た。

3.裕次郎はベッドに入ると、ベルを横に置いた。
「ウジウジ~」
「ごめんね。右腕封印されちゃったから、何て言ってるか分からないんだ」
「ウジ・・・・・・」
 ベルはしゅんと項垂れた・・・気がした。
「じゃあ、明かり消すね」
 裕次郎は明かりを消すと、毛布を被った。ベルにもしっかりとかけてやる。
 しかし、俺はこれからどうしたらいいのだろうか。
 裕次郎は考える。
 ルイーゼは怒らせてしまったし、ハーレムのハの字もない。邪力が使える右腕は封印されてしまったし、魔法は煙属性だけ。結局魔術は上手くいかなかった。まあ、魔術が上手くいって、パンツ見れた所でハーレム作れるわけじゃないしなぁ・・・・・・
 ほんと、これからどうしようかな・・・・・・
「ウジ・・・・・・」
 隣を見ると、すやすやと眠っているベルが寝言を言っていた。裕次郎はしばらくベルを見つめ、眠りについた。


 続く。





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