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3章
緊急!
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1.「裕次郎! いつまで寝ているのだ!」
イザベルの凛とした声に叩き起こされる。
「・・・・・・もう起きるから・・・」
裕次郎はのそのそとベッドから這い出た。
「・・・ウジ」
ベルが裕次郎の体をよじ登り、肩に到着する。
裕次郎はあくびをしながら部屋を出ると、リビングに向かう。
「早く準備しないと遅れてしまうぞ!」
鎧を完全装備したイザベルは、床に並べていた大剣を凝視しながらそう言った。
「・・・・・・なにしてるの?」
裕次郎は用意されていたご飯を食べながら訊いた。
「今日の鎧に合う剣を決めているのだ。やはり毎日同じ剣では恥ずかしいからな」
イザベルは真剣な表情で、たくさんの大剣を眺める。
「これがいいな!」
とてとてと歩いてきたサキが、一番キラキラとしている大剣を指差した。
「・・・・・・これか」
イザベルは大剣を握りしめ、軽く素振りを始めた。
「裕次郎はこれで良いと思うか?」
突然話を振られ、慌てる裕次郎。
「えっと・・・いいんじゃない?」
裕次郎は正直に答えた。
ぶっちゃけ、大剣の良いとか悪いとか全然分からないし、同じ剣じゃいけない理由も分からなかった。
「そうか。ならこれにしよう」
イザベルは少しだけ嬉しそうにそう言った。
「ママかっこいい~」
サキはパチパチと手を叩いた。
「そうか。ありがとう。今日も留守番を頼むぞ」
イザベルがサキの頭を撫でようとした。しかし、裕次郎は慌てて止める。
「イザベル! 刺さっちゃう!」
今日のイザベルが着ている鎧はトゲトゲが多かった。ギリギリの所で流血沙汰は回避され、裕次郎はため息をついた。
サキは、撫でて貰えなかったからだろうか? 少し不機嫌そうな表情をしていた。
「もうこんな時間じゃないか! 早く行くぞ!」
イザベルは裕次郎の手を掴む。そのまま引きずりながら家を出ると走り出した。
裕次郎は手をガッチリと掴まれ、ガッツリとトゲトゲが刺さっていた。
2.「治癒回復!」
魔法学校まで引きずられた後、裕次郎は怪我をした手を治療してもらっていた。
「裕次郎。すまない」
イザベルが申し訳なさそうに謝ってくる。
「まあ、大丈夫だよ。今度から気をつけてね」
裕次郎は苦笑しながらそう言った。
今までたくさん大怪我をしてきたせいで、痛みにはそこそこの耐性がついたようだった。痛いことは痛いが、泣き叫ぶほどでは無かった。
俺、成長したよなあ・・・・・・
裕次郎は一人、自分に感心していた。
異世界に転生してくる前は、足がつっただけで涙目になっていたし、タンスで足の小指をぶつけたらマジ泣きしていた。
その俺が、ガッツリトゲトゲが刺さってもこの余裕の表情。これ、結構かっこよくないか?
「大変ですよ! これを見てください!」
「わんわんわん!」
裕次郎は、懐かしい鳴き声に辺りを見回す。
「豆芝!」
裕次郎が振り返ると、全力で豆芝が走ってきていた。
「わんわん!」
「豆芝ぁ!」
二人は熱い抱擁を交わした。
「いつまで抱き合ってるんですか!」
突然豆芝を奪われた。思わず見ると、そこにはシャルロットが立っていた。
「豆芝ちゃんは私の方が好きですよね~」
シャルロットは豆芝をギュッと抱きしめた。
「あっ・・・いいなぁ・・・」
「何か言いました?」
「いえ。特には」
裕次郎は冷静な顔で誤魔化した。勿論、脳内では自分が抱きしめられている妄想をしていた。
「そうでした! これを見てください!」
シャルロットが思い出したように一枚の紙を見せてきた。
『緊急クエスト発注。この緊急クエストは全ての生徒が参加するように。詳細は追って連絡する』
紙にはそう書いてあった。
続く。
イザベルの凛とした声に叩き起こされる。
「・・・・・・もう起きるから・・・」
裕次郎はのそのそとベッドから這い出た。
「・・・ウジ」
ベルが裕次郎の体をよじ登り、肩に到着する。
裕次郎はあくびをしながら部屋を出ると、リビングに向かう。
「早く準備しないと遅れてしまうぞ!」
鎧を完全装備したイザベルは、床に並べていた大剣を凝視しながらそう言った。
「・・・・・・なにしてるの?」
裕次郎は用意されていたご飯を食べながら訊いた。
「今日の鎧に合う剣を決めているのだ。やはり毎日同じ剣では恥ずかしいからな」
イザベルは真剣な表情で、たくさんの大剣を眺める。
「これがいいな!」
とてとてと歩いてきたサキが、一番キラキラとしている大剣を指差した。
「・・・・・・これか」
イザベルは大剣を握りしめ、軽く素振りを始めた。
「裕次郎はこれで良いと思うか?」
突然話を振られ、慌てる裕次郎。
「えっと・・・いいんじゃない?」
裕次郎は正直に答えた。
ぶっちゃけ、大剣の良いとか悪いとか全然分からないし、同じ剣じゃいけない理由も分からなかった。
「そうか。ならこれにしよう」
イザベルは少しだけ嬉しそうにそう言った。
「ママかっこいい~」
サキはパチパチと手を叩いた。
「そうか。ありがとう。今日も留守番を頼むぞ」
イザベルがサキの頭を撫でようとした。しかし、裕次郎は慌てて止める。
「イザベル! 刺さっちゃう!」
今日のイザベルが着ている鎧はトゲトゲが多かった。ギリギリの所で流血沙汰は回避され、裕次郎はため息をついた。
サキは、撫でて貰えなかったからだろうか? 少し不機嫌そうな表情をしていた。
「もうこんな時間じゃないか! 早く行くぞ!」
イザベルは裕次郎の手を掴む。そのまま引きずりながら家を出ると走り出した。
裕次郎は手をガッチリと掴まれ、ガッツリとトゲトゲが刺さっていた。
2.「治癒回復!」
魔法学校まで引きずられた後、裕次郎は怪我をした手を治療してもらっていた。
「裕次郎。すまない」
イザベルが申し訳なさそうに謝ってくる。
「まあ、大丈夫だよ。今度から気をつけてね」
裕次郎は苦笑しながらそう言った。
今までたくさん大怪我をしてきたせいで、痛みにはそこそこの耐性がついたようだった。痛いことは痛いが、泣き叫ぶほどでは無かった。
俺、成長したよなあ・・・・・・
裕次郎は一人、自分に感心していた。
異世界に転生してくる前は、足がつっただけで涙目になっていたし、タンスで足の小指をぶつけたらマジ泣きしていた。
その俺が、ガッツリトゲトゲが刺さってもこの余裕の表情。これ、結構かっこよくないか?
「大変ですよ! これを見てください!」
「わんわんわん!」
裕次郎は、懐かしい鳴き声に辺りを見回す。
「豆芝!」
裕次郎が振り返ると、全力で豆芝が走ってきていた。
「わんわん!」
「豆芝ぁ!」
二人は熱い抱擁を交わした。
「いつまで抱き合ってるんですか!」
突然豆芝を奪われた。思わず見ると、そこにはシャルロットが立っていた。
「豆芝ちゃんは私の方が好きですよね~」
シャルロットは豆芝をギュッと抱きしめた。
「あっ・・・いいなぁ・・・」
「何か言いました?」
「いえ。特には」
裕次郎は冷静な顔で誤魔化した。勿論、脳内では自分が抱きしめられている妄想をしていた。
「そうでした! これを見てください!」
シャルロットが思い出したように一枚の紙を見せてきた。
『緊急クエスト発注。この緊急クエストは全ての生徒が参加するように。詳細は追って連絡する』
紙にはそう書いてあった。
続く。
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