最強の魔術を習得した俺でしたが、異世界転生してもダメでした。

4章

開始！

1.緊急クエストをクリアし、いっぱいゴールドを貰って奴隷を買う。うん。これしかない。
 裕次郎は心に誓った。もう今回を逃したら一生童貞のままな気がする。今回こそは、今回こそは何としても成功させなければ。
 裕次郎はやる気も気合いも十分だった。
 しかし、ふと考えてしまう。
 いっつもこんな感じで失敗してるよなあ・・・今回もダメじゃないかな・・・と。
 裕次郎はブンブンと首を振った。
 弱気になっちゃダメだ！ 諦めたらそこで終わり！ 成功するまでやれば成功率は百パーセントだ！
 ほっぺをパチンと叩き、気合いを入れ直した。

2.裕次郎達の四人一組パーティーは、裏庭ガーデンの前に集合した。
 裕次郎はそれとなくルイーゼと接触を試みたが、完全に無視され失敗に終わっていた。
「よし！ それでは緊急クエストに出発するぞ！」
 イザベルが剣を振り上げそう言った。そのまま裏庭ガーデンに入っていく。
「行きましょうか～豆芝ちゃん！」
 シャルロットは裕次郎に目もくれず、イザベルについていった。
「・・・・・・」
 ルイーゼも無言で歩いていった。裕次郎は少しだけ苛ついていた。
 何で異世界に転生されてまでこんな扱いを受けなきゃいけないの？ おかしくない？ そう思っていた。しかし、いくら苛ついた所でモテない現実は一切変わらなかった。
「・・・行こうか、ベル」
「・・・ウジウジ」
 裕次郎は置いていかれないように、早足で裏庭ガーデンに入っていった。

3.「はぐれちゃった・・・・・・」
「ウジウジ・・・」
 裕次郎はそう呟いた。ベルは裕次郎の肩の上に乗ったまま震えていた。
 みんなさっさと裏庭ガーデンに入っていき、裕次郎が入った時にはイザベル達の姿は見えなくなっていた。
 当てずっぽうで入ってみたは良いものの、みんなを探しているうちに完全に迷ってしまっていた。
「ギャーギャーギャー」
「ゴアァァ！」
 魔物の雄叫びや叫び声が聞こえてきていた。完全にビビってしまった裕次郎は気合いもやる気も消し飛んでいた。
「もう帰ろう・・・グスッ・・・」
 裕次郎は泣きながら来た道を戻ろうとする。
「・・・・・・俺、どっから来たっけ？」
 裕次郎は完全に方向感覚が狂っていた。
 右から来たっけ？ 左から？ ふらふらと歩けば歩くだけ方向感覚は狂っていった。
「イザベル！ ルイーゼ！ シャルロット！ 豆芝！ 誰かぁ！」
「ギャーギャーギャー！」
 裕次郎の助けを求める声に答えてくれるのは魔物だけだった。
「・・・どうしよう・・・このままじゃ死んじゃうよ・・・」
 裕次郎はその場に座り込んでしまった。
「ウジウジ！」
 ベルが裕次郎を立ち上がらせようと奮闘するが、無駄だった。
「ウッ・・・・・」
 裕次郎は泣き出してしまった。こんな恐ろしい世界で一人なんて・・・イザベル達に会いたい・・・そう思いながらサキの待っているわが家を思い出していた。
『ガサガサ・・・・・・』
 突然、目の前の草むらが動いた。裕次郎は恐ろしさのあまり腰を抜かしその場から動けない。
 ああ・・・俺食べられちゃうのかな・・・
 裕次郎は死を覚悟した。その間にも草むらの動きはどんどん激しくなり、ついに魔物が飛び出してきた。
「きゃああああ・・・あ？」
 裕次郎は悲鳴をあげる。が、草むらから飛び出してきたのは幼い子供だった。もっと言えば角の生えた幼女だった。
 その幼女が草むらから飛び出してきた途端、ばたりと倒れそれっきり動かなくなってしまった。
「・・・あの、大丈夫？」
 裕次郎は震えながらも、倒れたままの幼女に触れた。
 あ・・・俺今角っ子幼女に触ってる・・・そんな意味不明な事を考えていると、幼女から突然右腕を掴まれた。
「きゃあああッギャアアアアア！！」
 裕次郎はびっくりして悲鳴を上げた瞬間、右目が燃えるように痛み絶叫した。今までに経験してきたどの痛みよりもずっと痛かった。
 裕次郎はあまりの激痛に転げ回る。
「うっぎゃああああああ！」
「ウジウジウジ！」(暴れないでください！)
 ベルは草むらに吹っ飛び、裕次郎は暴れまくっていた。
「うっさいのじゃ！」
 突然そう言われ、右目を思いっきり突かれた瞬間、裕次郎は激痛から解放され気を失ってしまった。


続く。