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6章
ねーさん
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1.裕次郎はだったん邪眼を、サキは黒砲弐式・雨を教えてもらった。
まあ、だったん邪眼はあんまり役に立ちそうにないけど。
裕次郎はそう思いながらサキを横目で見る。
正直、羨ましかった。なんかすごい威力の技速攻で覚えてるし。名前もだったん邪眼よりかはかっこいいし。
角か眼かでそんなに違うもんかなぁ・・・・・・
裕次郎はがっかりしていたが、希望を捨てた訳ではなかった。
いい流れは来ている気がする。そう思っていたからだ。
封印されているとはいえ、あの蠅の王の力を宿した腕に、サタンの力を得た邪眼も持っている。
あと何か少しきっかけ的なものがあればすぐに強くなれるはずだ。魔力量も超凄いらしいし、絶滅属性だって使える。
そう。ここまでは強くなる下準備に過ぎないんじゃないの? この戦争で裕次郎、覚醒しちゃうんじゃないの? モテモテハーレム作れるんじゃないの!?
何の根拠もなかったが、裕次郎はそう信じていた。言い方を変えれば、そう思わないと心が折れてしまいそうだった。
「裕次郎! 他の班が到着したぞ!」
顔をあげると、イザベルがこちらに向かって手を振っていた。
2.裕次郎が駆け寄ると、総勢約五十人の兵士がすでに到着していた。どうやらイザベルが言っていた五つの班すべてが揃っているようだった。山の斜面を登ってきたせいだろう。皆疲弊していた。そんな中、人一倍疲れていたのは、
ヤコだった。
なぜかがっくりと膝をつき、オロオロとゲロを吐いていた。
「えっ・・・ヤコ大丈夫?」
裕次郎は心配になり、背中を擦ってあげた。ヤコは少し楽になったのか、顔をあげた。
「なかなか・・・ハードだったんニャ・・・おぇ・・・」
ヤコはそう言いながらまたゲロを吐いた。
3.落ち着いたヤコから話を聴いたところ、裕次郎の知らない間にイザベルから命令され、兵士たちを探しに行っていたとのことだった。
そういえば、ヤコの姿見なかったもんなぁ。
そんなことを考えていると、突然怒鳴り声が聞こえてくる。
「何をそんなに甘いことを言っているのだ!! 敵は女子供も皆殺しだ! これは決定事項だぞ! 逆らえば斬る!」
ああ、イザベルさんがまたなんか揉めてらっしゃる。
裕次郎は嫌々ながら怒鳴り声のする方へと歩いていた。しかしすぐに全力ダッシュ。
なぜなら大剣を振り上げ、今にも兵士に斬りかかろうとするイザベルの姿が見えたからだ。
「ちょっと! なんで仲間割れしてんの! いくらなんでも短気すぎない!?」
裕次郎はイザベルの腕にしがみつき、間一髪で兵士の命を救った。
「離せ裕次郎! こいつは使いものにならん! ここで切り捨ててやるべきなのだ!」
「だからなんでそんなに殺したがるの! 今のイザベルは正義じゃなくて悪だよ悪! 全然正義じゃない!」
裕次郎がそう言うと、イザベルの動きがピタリと止まった。
「我が、我が悪だと言ったのか?」
裕次郎はすぐに悟った。
やばい。言い過ぎた。我とか言ってるし、これ俺もしかしたら死んだかもしれん、と。
そう思うのは仕方がなかった。イザベルの目がらんらんと輝きながらも据わっていたからだ。
イザベルが、振り上げていた大剣を裕次郎めがけて振り下ろそうとする。
うん。死んだ。そう思った瞬間、イザベルの体が横に吹っ飛んだ。
どれだけの力で吹っ飛ばされたのだろうか。イザベルは地面にバウンドするように叩きつけられるが、それでも止まらない。木々をなぎ倒し、山の斜面に激突してやっと動きが止まった。
・・・あれ、イザベルじゃなかったら即死してんじゃないの? いや、イザベルでも死んじゃうんじゃないの?
そう思いながら、イザベルを吹き飛ばした張本人の顔を確認しようとしたが、怖すぎて顔があげられない。
この人はイザベルが大剣を振り下ろそうとした瞬間、イザベルの体をただ蹴っただけだ。
しかしその威力は凄まじいものだった。
俺だったらデコピンされただけでも死んじゃう。死ななくても絶対泣いちゃう。
そんなことを考えていると、そのスーパーキックの持ち主が話しかけてきた。
「ごめんね? イザベルが迷惑かけて。大丈夫? 怪我無かった?」
そう言いながら手を差しのべてきた。恐る恐る顔をあげる。驚いたことにその人は顔も佇まいもイザベルに瓜二つだった。しかし鎧は身に付けておらず、軽装、と言っていいような格好だった。もちろん剣も持ってはいない。
「えっと・・・・・・」
裕次郎は困惑しながらも立ち上がった。
「ああ、自己紹介してなかったね。私は今回班長を務めるイエリスだ。さっき吹っ飛ばしたのは私の妹だよ」
「イザベルの・・・お姉さんですか?」
「そうそう。よろしくね」
イエリスは右手を差し出し、握手を求めてきた。裕次郎は一瞬迷ったが、ビビりながらも握手をした。
続く。
まあ、だったん邪眼はあんまり役に立ちそうにないけど。
裕次郎はそう思いながらサキを横目で見る。
正直、羨ましかった。なんかすごい威力の技速攻で覚えてるし。名前もだったん邪眼よりかはかっこいいし。
角か眼かでそんなに違うもんかなぁ・・・・・・
裕次郎はがっかりしていたが、希望を捨てた訳ではなかった。
いい流れは来ている気がする。そう思っていたからだ。
封印されているとはいえ、あの蠅の王の力を宿した腕に、サタンの力を得た邪眼も持っている。
あと何か少しきっかけ的なものがあればすぐに強くなれるはずだ。魔力量も超凄いらしいし、絶滅属性だって使える。
そう。ここまでは強くなる下準備に過ぎないんじゃないの? この戦争で裕次郎、覚醒しちゃうんじゃないの? モテモテハーレム作れるんじゃないの!?
何の根拠もなかったが、裕次郎はそう信じていた。言い方を変えれば、そう思わないと心が折れてしまいそうだった。
「裕次郎! 他の班が到着したぞ!」
顔をあげると、イザベルがこちらに向かって手を振っていた。
2.裕次郎が駆け寄ると、総勢約五十人の兵士がすでに到着していた。どうやらイザベルが言っていた五つの班すべてが揃っているようだった。山の斜面を登ってきたせいだろう。皆疲弊していた。そんな中、人一倍疲れていたのは、
ヤコだった。
なぜかがっくりと膝をつき、オロオロとゲロを吐いていた。
「えっ・・・ヤコ大丈夫?」
裕次郎は心配になり、背中を擦ってあげた。ヤコは少し楽になったのか、顔をあげた。
「なかなか・・・ハードだったんニャ・・・おぇ・・・」
ヤコはそう言いながらまたゲロを吐いた。
3.落ち着いたヤコから話を聴いたところ、裕次郎の知らない間にイザベルから命令され、兵士たちを探しに行っていたとのことだった。
そういえば、ヤコの姿見なかったもんなぁ。
そんなことを考えていると、突然怒鳴り声が聞こえてくる。
「何をそんなに甘いことを言っているのだ!! 敵は女子供も皆殺しだ! これは決定事項だぞ! 逆らえば斬る!」
ああ、イザベルさんがまたなんか揉めてらっしゃる。
裕次郎は嫌々ながら怒鳴り声のする方へと歩いていた。しかしすぐに全力ダッシュ。
なぜなら大剣を振り上げ、今にも兵士に斬りかかろうとするイザベルの姿が見えたからだ。
「ちょっと! なんで仲間割れしてんの! いくらなんでも短気すぎない!?」
裕次郎はイザベルの腕にしがみつき、間一髪で兵士の命を救った。
「離せ裕次郎! こいつは使いものにならん! ここで切り捨ててやるべきなのだ!」
「だからなんでそんなに殺したがるの! 今のイザベルは正義じゃなくて悪だよ悪! 全然正義じゃない!」
裕次郎がそう言うと、イザベルの動きがピタリと止まった。
「我が、我が悪だと言ったのか?」
裕次郎はすぐに悟った。
やばい。言い過ぎた。我とか言ってるし、これ俺もしかしたら死んだかもしれん、と。
そう思うのは仕方がなかった。イザベルの目がらんらんと輝きながらも据わっていたからだ。
イザベルが、振り上げていた大剣を裕次郎めがけて振り下ろそうとする。
うん。死んだ。そう思った瞬間、イザベルの体が横に吹っ飛んだ。
どれだけの力で吹っ飛ばされたのだろうか。イザベルは地面にバウンドするように叩きつけられるが、それでも止まらない。木々をなぎ倒し、山の斜面に激突してやっと動きが止まった。
・・・あれ、イザベルじゃなかったら即死してんじゃないの? いや、イザベルでも死んじゃうんじゃないの?
そう思いながら、イザベルを吹き飛ばした張本人の顔を確認しようとしたが、怖すぎて顔があげられない。
この人はイザベルが大剣を振り下ろそうとした瞬間、イザベルの体をただ蹴っただけだ。
しかしその威力は凄まじいものだった。
俺だったらデコピンされただけでも死んじゃう。死ななくても絶対泣いちゃう。
そんなことを考えていると、そのスーパーキックの持ち主が話しかけてきた。
「ごめんね? イザベルが迷惑かけて。大丈夫? 怪我無かった?」
そう言いながら手を差しのべてきた。恐る恐る顔をあげる。驚いたことにその人は顔も佇まいもイザベルに瓜二つだった。しかし鎧は身に付けておらず、軽装、と言っていいような格好だった。もちろん剣も持ってはいない。
「えっと・・・・・・」
裕次郎は困惑しながらも立ち上がった。
「ああ、自己紹介してなかったね。私は今回班長を務めるイエリスだ。さっき吹っ飛ばしたのは私の妹だよ」
「イザベルの・・・お姉さんですか?」
「そうそう。よろしくね」
イエリスは右手を差し出し、握手を求めてきた。裕次郎は一瞬迷ったが、ビビりながらも握手をした。
続く。
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