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1章

最強の力を手に入れたぁぁ!

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1.目の前が真っ暗で、とにかく頭が痛い。まるで頭蓋を万力まんりきで締め付けられているようだ。そう考えている間にもどんどん頭が締め付けられる。ついに我慢の限界に達し、悲鳴をあげる。
「いゃぁぁぁ!! いたいのはいゃぁぁぁ!!」
 そう叫んだ瞬間、真っ暗だった視界が突然明るくなった。しかし、頭の痛みはそのままだ。超痛い。今にも泣いてしまいそうだ。必死に手探りで頭を触ると、コの字型の物体が頭を挟むようにして取り付けられている。
 裕次郎ゆうじろうは泣きながら、いや泣きそうになりながらも必死に外そうとするが、頭にしっかりと固定されて外れない。手を頭の上で振り回していたその時、金属製のレバーのようなものが手に触れた。無我夢中でレバーを揺すってみるがなにも起きない。ならばと今度は回してみた。それ、ぐるぐるぐるぐるぐーるぐる。
「いたぁぁぁい!!」
 回せば回す度にどんどん痛くなってくる。これ、たぶん回す向き逆。そう気づいて今度は逆に回す。それ、ぐるぐるぐるぐるぐーるぐる。
 回す度に痛みは引いていき、ついにコの字型の物体は『ごとり』と音をたてて外れた。
「・・・・・・」
 万力だ。これ万力だ。工業高校とかに置いてある奴じゃん。痛みから解放されて余裕ができた裕次郎は辺りを見回した。
 ものすごく広い空間に寝かされていたようだ。床から天井までは200メートル位かな? 地平線の先にうっすらと壁が見える。ぐるりと辺りを見回すが、全面壁で覆われている。
 しかし問題は、今目の前にある小さな家の方だ。ただ1つだけ、『ポツリ』と家が立っている。どこにでもありそうな、そう、テレビのCMとかに出てきそうな感じだ。ただ色がひどい。屋根も、壁も、全部ピンク色だ。多分、ここに住んでいる人は頭がファンタジーで溢れているはずだ。
 裕次郎は勇気を出して家にゆっくりと近づいていった。ゆっくり、ゆっくり。
「あれぇー? 目が覚めたん?」
 いきなり後ろから大きな声が聞こえた。ビックリして心臓がジェットコースターに乗ったときのように『きゅっ』となりつつも後ろを振り返る。
 するとそこには、真っ白なローブを羽織った老人が立っていた。髪は白く、ひげは床に付きそうな位伸びている。その老人がまた喋りかけてきた。
「なんで頭の万力とったん?」
 なんだ。なんなんだこいつは。見た目は魔法学校の校長みたいな見た目しておいて、声高すぎやろ。ソプラノ歌手かなんかかよ。こんなに見た目と声があっていない奴は初めて見た。
「えっと、頭の万力はすごく痛かったですから取りましたけど、ダメでしたか?」
「いや、ダメじゃないけど面白かったやろ? 万力」
 ヤバい。変な声でしかも意味不明だ。なんで俺の頭を万力で締めたら面白いんだ? こいつただの頭のおかしい、じじいじゃないかな?
「別にわし、頭おかしくないやろ?」
 ・・・は?今俺声に出したっけ? なにこいつ気持ち悪っ。
「わし、気持ち悪くないやろ?」
 こっわ!! こいつこっわ!! 頭のなか勝手に読み取られてるやん!! エロい妄想したら即ばれやん!! こいつヤバいやつやん!!
「エロい妄想とかいいからわしの話聞いて」
 裕次郎は出来る限り気持ちを無にしながら、その老人の正面に座り込んだ。
「どうぞ、聞きますから話してくださいよ。」
「そう、実はお前さん、死んじゃったん。死んだ時のこと覚えてるやろ?」
 そういわれた瞬間、記憶がさかのぼる。

2.そうだ。俺、裕次郎は死んでしまった。あれは学校の帰りだった。幼馴染みの由紀ゆきと一緒に次の休みの日にどこに遊びに行こうかと話していると、公園から小学生くらいの子供が飛び出してきた。そのままの勢いで道路に飛び出し、前方からはトラックが猛スピードで迫ってきている。考えるよりも体が先に動き、気が付いたときには俺は道路に飛び出し、子供を守るように胸に抱え込んだ。次の瞬間、背中に強烈な衝撃を感じ道路に倒れた俺は、由紀の泣き声を聞きながら静かに目を綴じた・・・
「違うやろそれ。」
 記憶を辿たどっていると突然、老人が声をかけてきた。また心を読みやがった。せっかくいい気分で回想していたのに台無しだ。俺は老人を睨んだ。
「何が違うんだよ」
「全部やろ。まず君は不登校だぞ。幼馴染みはいないし、小学生助けてないし、まあ死んだ後だから記憶が混乱してるんかな。めんどくさいからわしが説明するね。現場見てたし」
 そう言うとその老人は話を始めた。この時に俺は少しだけ嫌な予感がしていた。しかし、とりあえず話を聞かないと始まらない。そう思い俺は黙っていた。 
「あの日、まずコンビニによってエロ本を買っていたやろ。たしかふわふわボディの高城由紀を丸裸? だったかな。そのあとコンビニを出たところで、レジ袋を小学生にかっぱらわれたんだぞ。夢中で取り返しに道路へ出たところを、まずトラックに引かれてたぞ。その後撥ね飛ばされた君はその後また車に引かれ・・・を4回? 5回だっけ? を繰り返した後死んだ感じだったやろ」
 そうだ。全て思い出した。この老人の言うとおりだ。俺には幼馴染みはいないし、彼女もいないし、童貞だし、いいことなんにも無かった・・・
「うぉぉぉぉぉん!! ・・・俺もモテモテハーレム作って『えっ? 何だって?』とか言ってみたかったよ! なんだよ・・・恋愛イベントゼロかよ・・・もう死にたいよ・・・」
「大丈夫やろ! もう君死んでるやろ!」
「うるさいよ! 分かってるよ! 死んでも死にきれないってことだよ!」
 裕次郎は泣きながらその場にうずくまった。
「うぉぉぉぉぉん! びぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
 声を上げて泣いていると、老人がしょうがないなあ、とわざとらしく表情を作ってみせた。
「じゃあこれから人生やり直すん?」
「・・・やり直せるの?」
 裕次郎は泣き止み、老人を見る。
「でも俺、なんにも才能ないし・・・生き返ってもどうせモテないよ。無理だよ」
「いや、いけるやろ。君が魔術が使える世界に行ってスッゴい魔術使ったら結婚してーてなるやろ」
「でも俺魔術とか使えないし・・・」
「大丈夫。ちょこーっと遺伝子組み換えしたら最強に出来るやろ。ちょっとこっちに来てみ」
 半信半疑で裕次郎は老人に近づく。すると突然呪文を唱え始めた。
「キミマジュツツカエルヨウニナルーノチチンプイプイプイノプイ!」
 あまりにふざけた呪文だった為、裕次郎は怒り、思わず老人を押し退ける。
ふざけるなザケル!!」
 その瞬間てのひらから閃光が飛び出し、宙を切り裂いた。その閃光は遥か彼方へ消え、しばらくたって地響きとなって戻ってきた。
 意味がわからない裕次郎は老人に疑問の眼差しを投げ掛けた。
 それに気づいた老人はこう答えた。
「別に魔術は呪文は何でもいいん。イメージを、より強固にする為に言の葉を発しているだけ。だからこんなのでもいいぞ」
 老人はそう言うと両手を上に上げ呪文を発した。
アホウドリアルバトロス!!」
 ふと小さな火球が老人の頭の上に現れた。と、みるみるうちに大きくなり、直径10メートル以上に成長した。老人が手を前に振ると火の玉は老人の100メートル程前に落ち、その瞬間、火の玉は爆発し、ものすごい衝撃と爆風が裕次郎を襲った。
「すごい! これが魔術か! これが使えれば俺もモテモテやん!」
「そうやろ! そうやろ! じゃあすぐ異世界に飛ばすん!」
 老人はニコニコしながらそう言うと、いきなり左手を裕次郎の頭の上に乗せて呪文を唱えた。
「イセカイニ卜バスーノチチンプイプイプイノプイ! ・・・あれっ?」
 その声を聞いた瞬間、裕次郎の視界は暗転し暗闇に落ちていった。

3.ふと目を覚ますと、目の前に太陽が2つと青空が飛び込んできた。どうやらここが転生先の異世界みたいだ。あのじじい、いきなり飛ばしやがった。説明とかもっとこう、あるだろう。普通はさあ。
 そう思いながら、裕次郎は起き上がり辺りを見回す。どうやら町の広場のような所に転生されたみたいだ。辺りには人がたくさんいる。
 ・・・違う。人間も沢山いるが半数ぐらいは耳が生えている。漫画とかでよく見るエルフみたいだ。ざっとみるだけで、他にも鱗が生えている者、毛玉のような者、光っている者。影のような者。ここの世界には沢山の種族がいるようだ。
 辺りを呆然と見回していると、左側の方に人? だかりが出来ている。気になった裕次郎は、人混みをかき分けかき分け最前列までたどり着いた。どうやら喧嘩みたいだ。
「お前何言っているんだぶー! ぶっ殺すぞ! ぶひー!」
 怒鳴っている男は体は人間だが、頭がまるで猪のようだ。見るからに悪そう。いや絶対悪い奴だ。裕次郎は決めつけた。
 その猪男いのししおとこに怒鳴られている方は大剣を持ち、全身を豪華絢爛ごうかけんらんな鎧でおおわれている。中世の騎士のような出で立ちだ。表情もまるで読めない。鎧しかみえないし。
「ここはお前のようなものが居てよい場所ではない! 立ち去れ!」
 凛とした声で騎士がそう言うと、猪男は唾を飛ばしながら騎士に近づいていく。
「お前むかつくぶー! 女騎士の分際で! くっ、殺してやるぶー!」
 猪男は震えるこぶしを握りしめると、騎士の顔に向かってパンチをくりだした。
『ガン!』
 鎧は音を立てて猪男のパンチをガードする。しかし弾みで頭の鎧が外れてしまい、下に隠されていた素顔が現れた。頭の鎧が音をたてて転がって行く。その顔を見た瞬間、裕次郎は思わずつぶやいていた。
「めっちゃかわええやん・・・ 」
 その時、裕次郎の頭の中ではある言葉が浮かんでいた。それは『大魔術を使い、暴漢からヒロインを助けた俺カッコいい』だ。 
 ここは行くしかないだろう。裕次郎は老人の言葉を思い出していた。『呪文は何でもいいん。イメージをより強固にするために言の葉を発しているだけ』。

4.裕次郎は静かに猪男の前に出ていき、出来るだけ強そうな声で話しかけた。
「まてい!女騎士への暴力、見逃すわけにはいかん!俺が相手をしてやろう」
 猪男はこちらへ視線を向け、嘲笑うかのような表情をみせた。
「ぷっ。お前みたいなひょろひょろの人間に負けるわけないぶー!」 
 裕次郎は女騎士を横目で見ながら猪男を挑発する。
「黙れ! 消えろ! ぶっとばされんうちにな!」
 裕次郎はそう言うと掌を猪男に向け、呪文を唱えた。
獄炎大爆球ヘル.フレイムボール!」
『ポッ』
 マッチの火より少し大きい位の炎が目の前で光って・・・消えた。・・・大丈夫。まだ慌てる時間じゃない。
雷光一閃サンダー.スラッシュ!」
『パチッ』
 掌に静電気が走った。少しピリッとする。何かなこれは。夢か何かかな? ドッキリかな?
 裕次郎は涙目になりながら全神経を集中させ、左手を地面にかざしながら呪文を唱えた。
「顕現せよ!うっ・・・ひっく・・・双頭狗獣ケルベロス!!」
 砂ぼこりが舞い上がり、その中から獣が飛び出してくる。
「わん! わんわん!」
 なんだこいつ。二つ頭の豆柴まめしばかな? 裕次郎は豆柴のそばに屈みこみ、右手を差し出した。
「お手」
「わん!」
 やっぱり犬やんこいつ。ダメ。この世界魔術めっちゃ弱いっぽい。こんなんただの手品やん。裕次郎はやけくそになり猪男に突っ込んでいった。
超爆裂拳スーパーパンチ!」
 意味がわからず、キョトンとした表情の猪男は、泣き目で飛び込んできた裕次郎のこめかみに躊躇なくこぶしを打ち込んだ。
『ばきっ!』
 その瞬間、裕次郎の視界は暗転し、暗闇に引きずられていった。
(気を失うの何回目だよ・・・)

5.裕次郎が目を覚ますと、見慣れない天井が目に入った。誰かがこの部屋まで運んでくれたようだ。痛むこめかみを押さえながら起き上がる。治療までしてくれたようだ。その時、扉が開いた。
「君、もう大丈夫か? とりあえず家まで運んだが迷惑だったか?」
 そこにいたのは、あの女騎士だった。今は鎧を脱いで身軽な格好をしている。顔は少し怖そうだが、恐ろしいほど美人だ。長い髪を無造作に後ろへ束ねている。身長は俺より少し高いくらいか。
「あまりじろじろ見られる事は好きではないな」
 見すぎたようだ。裕次郎は慌てて視線をそらす。
「ごごめんなさい。えっと、俺が殴られた後どうなったんですか?」
「あのイノケンティウスは叩きのめしてやったぞ。その後、気を失った君をここまで運んできたというわけだ」
 女騎士はそう言いながら裕次郎の隣に座った。しかし少し距離があるのは残念、そんなことを考えながら裕次郎は質問した。
「イノケンティウス? なんですかそれ?」
「あの猪みたいな男だよ。君、ぶちのめされていたじゃないか。それにしても、なぜいきなり飛び出してきたんだ? 危ないじゃないか」
 ああ。思い出した。恥ずかしさのあまり、顔が赤くなってきた。裕次郎は誤魔化すように辺りを見回す。
 すると、右側の部屋の隅で毛玉が震えている。確かめようとその毛玉に手を伸ばす。
「わんわんわん!」
 突然その毛玉が裕次郎の胸に飛び込んできた。顔をみると・・・それは俺が召喚した魔獣だった。これがあの伝説のケルベロスか。可愛すぎか。
 ちぎれんばかりに尻尾を降っている双頭狗獣ケルベロスを抱きかかえ、女騎士のところまで戻る。
「やはりそいつも君の仲間だったのだな」 
「・・・まあそうです。それより女騎士さんに聞きたい事があるんです」
「聞きたいことがあるのは良いが、その女騎士さんと呼ぶのは止めてくれないか」
 気のせいか女騎士の機嫌が少し悪くなったように見える。慌てて裕次郎は尋ねる。
「なんと呼べば?」
 するといきなり女騎士が立ち上がった。
「私の名はイザベル=ベフトォンだ。君はぶちのめされたとはいえ、私を助けようとしてくれたようだし、気安く、『イザベル』と呼んでくれて構わんぞ」
 いきなり立ち上がって自己紹介か。普通しないよなあこんなこと。もしかしてこの人少し残念系なのかな?
「・・・わかりました。イザベル。俺の名前は裕次郎=石神です。裕次郎でいいですよ」
「分かった。よろしく、裕次郎」
「あっはい。よろしくお願いします。それでイザベル、少し聞きたい事があるんですが」
「いいぞ。何でも聞いてくれ」 
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あの、イザベル」
「なんだ?」
「とりあえず座りませんか?」
「・・・そうだな」
 やっぱりこの人少し変わってる。完璧に見えてそうでもないパターンの人やん。絶対。
 イザベルが少し恥ずかしそうに座ると裕次郎は話を始めた。
「実はある人から言われて、ここに魔術を学びにきたんですが魔術がほとんど使えないんですよ。」
 本当の事を言っても信じてもらえない。裕次郎は少し脚色しながら話を進める事にした。
「実際にやってみますね。」
 裕次郎はそう言うと掌をかざして呪文を唱えた。
大絶氷塊弾アイス.ガン.バレット!」
『カラン』
 そこでイザベルが思い出したように立ち上がった。
「そういえば飲み物を出していなかったね。裕次郎はジュースでいいかな?」
「・・・はい」
「じゃあその氷、後2、3個出しておいてくれないか。今氷が切れていてね。お願いできるかな?」
「・・・・・・はい」
 裕次郎はやけくそで呪文を唱えた。
大絶氷塊弾アイス.ガン.バレット!」
『カラン』
大絶氷塊散弾アイス.ガンズ.バレッドぉ!!」
『カランカラン』
 ・・・違う。これ絶対魔術師じゃないやん。ただの宴会芸やん。もっとこう、地面ドカーンてして、『またやっちゃったか・・・』とか言いたい。俺これじゃあただの『イタいおバカな奴』やん。そんなことを考えているとイザベルがジュースを持ってきた。
「おっ、氷ありがとう。こっちが裕次郎の分だ」
 イザベルは裕次郎にジュースを渡すと、大絶氷塊散弾アイス.ガンズ.バレッドを2つ取り、ジュースの中に入れた。

6.裕次郎は本当は魔術が使えるにも係わらず、何故ほとんど発動しないのかをイザベルに尋ねた。
「それは当たり前だ。この世界は約50年前に魔術は滅んだ。」
 魔術が滅ぶという意味が分からなかった裕次郎はイザベルの肩を揺すりながら詳しく説明を求めた。
「え? 魔術が滅ぶ? なにそれ!! 詳しく説明してください!!」
「おい・・・あまり肩を揺すな・・・あと近いぞ・・・ちょっと離れてください・・・」
 何を顔を赤くしてるんだこいつは! 魔術が使えない? 俺の才能意味無いやん! ハーレム作れんやん! 肩を揺らし続ける裕次郎についにイザベルが切れた。
「離れて・・・離れんか・・・私から離れろぉぉ!!!」
 無我夢中でイザベルの肩を揺ら続けていた裕次郎は、その叫び声でやっと我に返った。
「す、すいません。取り乱しました」
「・・・これからは気を付けてくれ。2度目はないぞ。本当だぞ」
 イザベルは乱れた服を直しながらそう言った。

7.「それでさっきの話の続きなのだが、魔術師は大気中にある『マナ』を集めて『魔力』を生成、『魔術』を発動する。ここまでは良いな?」
「はい。何となく理解は出来ていると思います」
「そうか。それでは続きだ。実はその『マナ』を魔術師が使い過ぎてしまったせいで、今大気中の『マナ』は 50年前の0.1パーセント程しかないといわれている。いわゆる枯渇状態という奴だな」
「・・・はい」
「それで新しい『魔法』が編み出されたわけだ。これは大気中からではなく、みずからが持っている『魔力』を使う。起こる現象は『魔術』と『魔法』はとても似ているが、仕組みがまるで違う。君は魔術が使えると言っていたが、魔法はどうなんだ?」
「・・・いえ、わかりません。魔術しか教えてもらっていませんから・・・」
「それじゃあ魔法適正を確認する為に魔法学校に行くのはどうだろうか?」
「魔法学校ですか・・・それじゃあ明日いってきます」
「それじゃあ今日はここに泊まるといい。私も明日は学校がある。中を案内してやろう」
 ・・・は? 学校がある? なに言ってんだ? こいつ職業『女騎士』じゃないのか?
「えっと、イザベルは学生なんですか?」
 イザベルが首を傾げながら不思議そうに答える。
「何を言っているんだ?私はまだ17才、魔法学校高等部二年だぞ?」
 嘘だろ。こいつ学生であんな鎧着てるのかよ。もしかしてこいつ変人なのか?
「失礼ですけど、イザベルさんてお友達とかいらっしゃるんですか?」
「いるぞ!お前はもう友達と思っている!」
 ・・・ああ。この人友達いないタイプだ。そりゃそうだ。あんな鎧を町中で着ているなんて普通じゃあない。
「はい。わかりました。それじゃあ明日はよろしくお願いします。」
「分かった。任せておけ。私は今から町をパトロールしてくる。ここの家は好きに使ってくれて構わんぞ」
「・・・あの鎧着ていくんですか?」
「そうだ。カッコいいからな」
「・・・それじゃあ頑張って下さい」
 裕次郎はそう言うと、まだ少し痛む頭を押さえながら横になった。



続く。

















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