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3章

デート?

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1.裕次郎は学校に向かって走っていた。
 今日俺はアジオを倒し、ルイーゼとデートする権利を勝ち取ったのだ。悪魔の力を封印された今、このチャンスを逃す事はできない。それに封印されたせいで、やっちゃっても問題ない。
 まさに塞翁が馬、だ。
 裕次郎はにやにやと笑いながら妄想していた。

2.裕次郎は学校へ到着すると、急いで魔法訓練施設に向かった。
 勢い良く扉を開けると、中ではまだ戦闘が繰り広げられていた。
 急いでルイーゼの姿を探すが、見当たらない。
「どうしたのだ裕次郎? 挙動不審だぞ?」
 後ろから声が聞こえ、振り返ると、イザベルとサキがこちらに近づいてきていた。
「ちょうど良かった! ルイーゼがどこにいるか知らない?」
 裕次郎はサキの頭を撫でながら尋ねる。
 サキは嬉しそうに目を細めた。
「たしか二階の観客席にいたと思うが・・・」
 そう言われた瞬間、裕次郎は駆け出していた。
「分かった! ありがとう!」
 そう言うと、イザベルとサキに手を振った。
「ああ。また後でな」
「パパ~またね~」
 サキも手を振り返してくれていた。俺はそれを見ながら心の中でサキに話しかける。
『パパ、もしかしたらもう一人子供ができちゃうかもしんない。そうなってもサキは俺の子だから!』
 急いで二階へ駆け上がり、ルイーゼの姿を確認する。
「いたあああああ!」
 退屈そうに肘をつき、闘いを観戦しているルイーゼがそこにいた。
 大声で気がついたのか、ルイーゼが裕次郎の方を見た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 お互いの沈黙の後、ルイーゼは立ち上がり、逃げるように背を向けた。
「ちょっと待って!!」
 裕次郎は大声を出し、ルイーゼを追いかけなんとか捕まえた。
「・・・ハアハア・・・約束通りデートしてよ」
 裕次郎は息を荒げながらルイーゼにお願いした。
「・・・・・・やっぱりデートは嫌よ」
 ルイーゼがガードするように腕を組み、そう言った。裕次郎は思わず聞き返す。
「え? なんて?」
「だから、デートは無し! なんで私が裕次郎の言う事聞かなきゃいけないのよ!」
 ルイーゼは顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らしてきた。
「約束したじゃん! デートしてくれるって言ったじゃん!」
 裕次郎は、半泣きになりながらもくいさがった。
 ここで諦める訳にはいかない。裕次郎の頭の中で、変なおじさんが『諦めたら、そこで試合終了だよ』とアドバイスをしてきた。
 そうだ。ここで諦めたら逆転満塁ホームランが打てないんだ!
 しかし、ルイーゼの答えは非常なものだった。
「あれは・・・そう、嘘をついたのよ! まさか本気にしたの?」
 ルイーゼは目を泳がせながらそう言った。
「・・・うそついたの?」
「・・・そうよ」
 裕次郎は目の前が真っ暗になった。真の絶望とはこの事だったのかと悟った。
 試合終了どころか、試合始まってもいなかった・・・
「うえぇぇぇぇぇん!」
 裕次郎は号泣した。目からは大粒の涙を溢れさせ、大声で泣き叫んだ。
「ちょっと! なに泣いてるのよ!」
「びえぇぇぇぇぇん!」
 裕次郎の泣き声のせいで、周りの生徒たちの視線は二人に注がれていた。
「恥ずかしいじゃない! もう泣き止んでよ!」
 ルイーゼはあたふたと慌てるが、裕次郎は泣き止まない。
「うっ・・・・・・だってルイーゼうそついたじゃん・・・うえぇぇぇぇぇん!」
 裕次郎が泣き叫んでいると、周りの生徒達がヒソヒソと話始める
「あれ絶対痴話喧嘩だよ......」
「ルイーゼさんがなにか嘘ついたのか......」
「あんなに泣いてる......」
 ルイーゼが、泣き続ける裕次郎の方を掴み、無言で歩き出した。
 裕次郎は引っ張られ、引きずられながら階段を降りていった。
「・・・・・・そんなに私とデートしたいの?」
 階段の踊り場で立ち止まったルイーゼが尋ねてきた。髪の毛をくるくるといじくっている。
「うん! お願い! デートして!」
 裕次郎は頭を深々と下げた。
「・・・・・・分かったわよ。そこまで言うなら、デ、デートしてあげるわよ。裕次郎がどうしてもって言ったからだからね!」
 ルイーゼは顔を真っ赤にしながらまくし立てる。
 この時、裕次郎はこの試合、勝ったも当然だと考えていた。
 後は、ごり押しからのなし崩しで何とかなるだろう。
「それで、いつ行くのよ」
「今から」
「え?」
「今からデート行こう! ほら!」
 裕次郎はそう言うと、ルイーゼの手を取り、歩いていった。
「ちょっと! なに勝手に手を握ってんのよ!」
「デートで手を繋がないわけないじゃん!」
 裕次郎はうきうきで廊下を歩いていた。
 人生の初デートはルイーゼとかぁ・・・裕次郎は嬉し涙を堪え、廊下を歩く。
 しかし、突然後ろから呼び止められる。
「裕次郎探したニャ! それじゃあデートしにいくニャよ!」
 裕次郎が後ろを振り返ると、ニャアニャアと笑っているヤコが、裕次郎の空いている手を握ってきた。
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