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仕事仲間
天王
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天王が来る前に、食べ終わったテーブルを片付けることにした。少女を縛っていた紐をはずしテーブルから引きずり出す。
多少乱暴に扱ったせいで、頭に残っていた酒がこぼれそうになる。慌てて口をつけるが間に合わず、数滴床に落ちてしまった。
料理は残すものではないな。そう反省しながら床を雑巾で拭いた。
「ぱぱ~このあとなにするの?」
來唯が食器を片付けながら尋ねてくる。
「この後か? 天王が来るからこれを渡さないといけないな」
「てんおう? あのしろいおっちゃん?」
「......天王の前では『お兄さん』と言いなさい。分かったね?」
「ん? わかった」
本当に分かっているのか? 私は來唯の表情を見ながらそう思った。
前回天王が訪ねてきた時に來唯が
『おっちゃんだれ?』
と言ったせいでしばらく落ち込んでいた。天王はその青白い見た目の通り、メンタルが非常に弱い。また來唯が『おっちゃん』なんて言えば寝込んでしまうかもしれない。そうなっては作品を天王に渡しにくくなってしまう。
「絶対に『お兄さん』と言うんだぞ」
私は念のためもう一度そう言った。
チャイムがなった。私は天王を迎え入れるため玄関へ向かい、扉を開ける。
しかしそこにいたのは天王ではなかった。全く予想していなかった人物が立っていた。丸々と太った警察官がハンカチで汗を拭いていたのだ。
「夜遅くすいません。近くの高校で行方不明になった生徒がいまして、ああ、写真を今見せますね」
警察官はそう言うと隆一くん、深雪ちゃん、葵の写真を手渡してきた。
私は写真を見たあと、警察官に返した。写真の中の隆一くんたちは幸せそうに笑っていた。
「......そうですね、見たことはないです」
私はそう言いながらもこうなる展開は予想していた。ただ予想以上に展開が早かったのだ。早くても後一、二週間は先だと思っていた。
念のため警察官に探りをいれる。
「その生徒はこの近くで行方不明になったのですか?」
「いえいえ、まだ情報が何もないものですから、しらみ潰しに聴き込みしているだけです。夜遅くに本当にすいません。私はこれで失礼しますね」
警察官はそう言いながら玄関から出るとドアを閉めた。
私は鍵を閉め、警察官の足音が遠ざかったのを確認し急いで天王に電話をかけた。電話はすぐに繋がった。
「もしもし私だ。今日は家には来るな。警察が来たのだ」
『それは本当かい? それでなんと言われたんだ?』
「集会の時に渡した作品についてだ。まだ行方不明になったとしか分かっていないようだが、念のため今日は来ない方がいいだろう」
『眼球がダメになってしまうのはもったいないけど......まあそう言うことならしょうがないね。諦めるよ』
天王はそう言うと電話を切った。
さて、警察がここにきたからには前倒しで証拠を隠滅しなくてはならない。私は少女の死体や拷問部屋を隠すための作業を始めることにした。
多少乱暴に扱ったせいで、頭に残っていた酒がこぼれそうになる。慌てて口をつけるが間に合わず、数滴床に落ちてしまった。
料理は残すものではないな。そう反省しながら床を雑巾で拭いた。
「ぱぱ~このあとなにするの?」
來唯が食器を片付けながら尋ねてくる。
「この後か? 天王が来るからこれを渡さないといけないな」
「てんおう? あのしろいおっちゃん?」
「......天王の前では『お兄さん』と言いなさい。分かったね?」
「ん? わかった」
本当に分かっているのか? 私は來唯の表情を見ながらそう思った。
前回天王が訪ねてきた時に來唯が
『おっちゃんだれ?』
と言ったせいでしばらく落ち込んでいた。天王はその青白い見た目の通り、メンタルが非常に弱い。また來唯が『おっちゃん』なんて言えば寝込んでしまうかもしれない。そうなっては作品を天王に渡しにくくなってしまう。
「絶対に『お兄さん』と言うんだぞ」
私は念のためもう一度そう言った。
チャイムがなった。私は天王を迎え入れるため玄関へ向かい、扉を開ける。
しかしそこにいたのは天王ではなかった。全く予想していなかった人物が立っていた。丸々と太った警察官がハンカチで汗を拭いていたのだ。
「夜遅くすいません。近くの高校で行方不明になった生徒がいまして、ああ、写真を今見せますね」
警察官はそう言うと隆一くん、深雪ちゃん、葵の写真を手渡してきた。
私は写真を見たあと、警察官に返した。写真の中の隆一くんたちは幸せそうに笑っていた。
「......そうですね、見たことはないです」
私はそう言いながらもこうなる展開は予想していた。ただ予想以上に展開が早かったのだ。早くても後一、二週間は先だと思っていた。
念のため警察官に探りをいれる。
「その生徒はこの近くで行方不明になったのですか?」
「いえいえ、まだ情報が何もないものですから、しらみ潰しに聴き込みしているだけです。夜遅くに本当にすいません。私はこれで失礼しますね」
警察官はそう言いながら玄関から出るとドアを閉めた。
私は鍵を閉め、警察官の足音が遠ざかったのを確認し急いで天王に電話をかけた。電話はすぐに繋がった。
「もしもし私だ。今日は家には来るな。警察が来たのだ」
『それは本当かい? それでなんと言われたんだ?』
「集会の時に渡した作品についてだ。まだ行方不明になったとしか分かっていないようだが、念のため今日は来ない方がいいだろう」
『眼球がダメになってしまうのはもったいないけど......まあそう言うことならしょうがないね。諦めるよ』
天王はそう言うと電話を切った。
さて、警察がここにきたからには前倒しで証拠を隠滅しなくてはならない。私は少女の死体や拷問部屋を隠すための作業を始めることにした。
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