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第1話 飼育員の男

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日本のとある動物園。
その一角にいるミシシッピワニの飼育をしている男。

この男の名前は川口大河。
28歳、独身だ。

両親は大河が3歳の時に交通事故で亡くなった。
そんな両親の代わりに大河を育ててくれていたのが祖父だ。
だがその祖父も昨年病気で亡くなり、今は祖父の家で1人で暮らしている。

大河は高校卒業後、この動物園に就職し、約10年間ミシシッピワニの飼育を行っている。

そのミシシッピワニの中で一際大きなワニがいる。
このワニの名前はゴロウ。
ゴロウはすでにこの動物園で60年もの間飼育をされている。

大河が幼少期、祖父と初めてこの動物園を訪れた時からここのボス的な存在だ。
しかし、今は歳のせいかほとんどの時間を寝て過ごしている。

ある日、大河が飼育小屋に行くとゴロウだけが動かない。

いつもの様に寝ているのだろうと思っていたのだが、餌を近くに置いても一向に動く気配がない。

様子がおかしいと思った大河が近づくとゴロウの呼吸はすでに止まっていた。

急いで獣医の先生を呼びにいく。
覚悟をしていたがやはりゴロウは息を引き取っていた。
死因は老衰だった。

一般的にミシシッピワニの寿命は30~50年といったところだ。
ゴロウの60年という生涯は大往生と言っていい。

しかし、ゴロウが居なくなってしまったことで大河の心には大きな穴が開いてしまった。

祖父が他界した時もとても大きな喪失感に苛まれたがゴロウが居てくれたことで祖父が近くにいてくれている様な気がしていた。

その日の帰り道、大河は珍しくコンビニで酒を買った。

いろいろな種類の酒の缶で膨れた袋を両手に持ち仏壇の前に座り込む。

両親と祖父母の遺影が飾ってある仏壇の前で缶ビールを飲みながら今日あったことを仏壇に向って話し始めた。

買ってきた酒が全て空いて視界がボヤけ始めた頃、遠くから声が聞こえてくる。
外で誰かが騒いでいるのだろうと気にも留めていなかったが、どうやらこの声は脳内に直接語りかけている様な気がした。

酔いすぎたかと思い急いで水を飲む。
しかし、声は止まない。

少し集中してみると

((ですか・・・?ゴロウともう一度会いたいですか?))
と問いかけてくる女性の声が聞こえた。

大河は少し動揺をしたが酔っているせいかすぐに声に出した。
「会いたい!ゴロウに会いたい!」

そう叫ぶと

((本当に会いたいですか?))
また女性の声で問いかけられた。

大河は少しイラつきながら叫んだ。
「会いたい!何を捨ててもゴロウに会いたい!もう一度会ってちゃんとお礼が言いたい!」

すると、次の瞬間あたりが眩しいくらいの白い景色へと変わった。
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