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混沌の魔女の力の片鱗
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「………やっぱり、君だったんだね」
悲観に帯びてしまう声色。
俺は出来るだけ表情を出さずに目の前にいる人物……不敵な笑みを浮かべているモルクに問いかける。
「あれ、バレてたんですか?ははっ、流石っすねアクセル様~その卓越した頭脳。あの神童やマエル様にも劣らないじゃないんすか?」
「とぼけるのはやめろ」
無意識に口調が荒くなる。彼女らの情報と照らし合わせて考察したとはいえ……実際にそれを目の当たりすると、やはり動揺してしまう。
「まぁまぁそう焦らなくてもいいじゃないですか~でもどうして分かったんすか?」
その問いかけに関して俺は黙秘を貫く。
原作のことなどこの世界の、ましてや敵である人物に教えるわけにはいかなかった。
「教えてくれないんすか?釣れないですねぇ」
そう言いながらモルクは自身に腰にある剣を抜き始める。
「まぁ、ここでネタバラシしても俺的にはつまらないので……こういう時は剣で語り合いましょうよ?どうせ時間なんて幾らでもあるんですから」
いつもの気だるそうにしているナンパ騎士はこの場には存在せず、そこにいるのはまるでこの状況をゲームのように楽しんでいる遊び人。
「……」
それに答えるように無言で剣をモルクに向け、心を殺すように甘えを捨て、目の前の敵に殺意を向ける。
「いいっすねぇ、その表情。やっぱり貴方を見ていると……面白い」
その言葉とともに、嘗てレステンクール家に仕えていた騎士の剣と俺が持っていた刀が交ざりあった。
◇
アクセルとモルクの戦闘が始まろうとしている中、空を戦場の舞台とするローレンスと魔族達との戦闘も激しくなっていた。
「「激流の波!!」」
二体の魔族が自身の魔法で目の前にいる敵であるローレンスに使う。
ワイバーンは先ほど現れたアクセルにより殺されたため、自分たちで戦うしかなかったのだ。
「魔法増強《スペル・エンハンス》!」
ほか四体よりも少し後ろにいる女魔族がそう唱えると、先ほどの魔族たちが撃った魔法の勢いが強まる。
どうやら魔法の威力や精度を上げるものだと考えたローレンスは今も自身に迫る水魔法を特に顔を変えずに手を前に向け、同じ魔法を唱える。
「激流の波」
静寂に、だが確実にその魔法はローレンスの前に出現した魔法陣から繰り出された。
同じ技であるが、その威力は天と地の差があると言っても過言ではないだろう。
言うなれば、二体の、それも強化した魔族が放つ魔法がコップから溢れる水だとしたら、
ローレンスの放つ魔法は全てを呑み込む津波と表現してもおかしくない。
そして案の定、魔族が放った激流の波はローレンスの激流の波により津波の一部として呑み込まれる。
だが、敵も予想したのだろう。顔を顰めさせながらも全身の肌が紫の魔族が異能を発動させる。
(……奴がさっきの我の攻撃を防いだ者か。
見た限り、自身や味方の攻撃を例外なく守るということで良さそうだな)
ローレンスが冷静に敵の異能を分析していると、煙が晴れて……少し傷が増えたように見える五体の魔族が目に見える。
「……だが、穴がないように見えるその異能も欠点はあるようだな」
「ば、化け物め…!」
アクセルが帰ってきた事やレステンクール家の騎士達の勢いが取り戻したことにより、ローレンスは彼らに付与していた結界を解いて、心の余裕を取り戻していた。
「なんだ、こんな程度か?もっと我を楽しませんか」
「くっ…!舐めるなよ、小娘がぁ!!」
すると、今度はリーダーであろうツノが生えた魔族の身体から蒸気が溢れ出ており、それに比例するように全身の筋肉が増大する。
「それがお主の異能か?単純な奴だのぉ」
それがローレンスが一目見た感想であった。
さらに舐められたと感じたのだろう、顔を赤くさせながら彼らが乗っていたワイバーンと同様のスピードで真正面から突っ込む。
「喰らえぇえええ!!」
身体が強化した彼の拳は一発一発が普通の人間なら死んでもおかしくはない程の威力を誇っていた。
だが、ローレンスはその攻撃をなんの脅威も感じないのか小柄な身体で相手の攻撃の軌道を予知するように避け続ける。
「くそっ!何故当たらん!当たりさえすれば貴様など…!!」
息を切らしながらそんなことを言う目の前の魔族。その言葉にローレンスは呆れたようにため息を吐いてしまう。
「さては戦闘慣れしておらんな?これならばまだ昔戦った兵の方がマシであるぞ」
そう言いながら彼女は指先に小さな物体を創造し、それを銃のごとく魔族の足に直撃させる。
「ぐわっ…!」
「ほらどうした、まだ動かぬか?そこの後ろにいるお主らも動かなければ此奴が死ぬぞ?」
そう指摘すると、今まで動いていなかった魔族達がまるで親に言われた通りに動き始めている。
だが、目の前にいる魔族然り、戦闘経験が少ないのかそれともローレンスの圧倒的な強者感に怯んでしまうのか、どう動けばいいか分からずにいた。
「……あれを使う」
「ッ!しかしリーダー、あれは…!?」
「出し惜しみなど、こいつには命取りだと思え!試作段階だが仕方ない……やれ!!」
そんな会話が繰り広げられ、すると女魔族は何かを唱え始め、自分含む周りに何か不吉なオーラを纏い始める。
「……やっとやる気になったか」
そう呟き、黙って見守るローレンス。
そしてその長い詠唱を唱え終え、静かにその魔法名を呟いた。
「……狂人化《ビーストモード》」
すると五体の魔族が理性を失ったかのように空に雄叫びを上げた。
目は赤く光り、不思議と身体の体勢が四足歩行のようになる。アクセルが見たら狼かよと発言するだろう。
「……妥協点、と言った所だな。理性を失うのは否めんが……怯え続けながら戦う奴らと比べたら随分とマシだ」
そう言い、様子見と言わんばかり大量の鋭利の槍のような物体を精製し、戦闘の準備をする。
「……こい」
そしてローレンスがそれらを放った時、理性を失った5匹の狼は動き始めた。
「………ほう」
狂人化状態の彼らの動きはローレンスからしても目を見張るものがあった。
その野生の感とも言える鋭い感覚により、槍の雨とも言ってもいい大地を穿つ物体の数々を容易く避け、またその物体を足場にして彼女に近づいてく時もある。
先ほどのワイバーンではないにしろ、その動きはまさに熟年狩りをし続けた獣。
「がああああ!!!」
すると一体の魔族がローレンスに迫り、自身の自慢の爪で切り裂こうとする。
彼女は特に焦ることなく、その攻撃を物体で受け止める。
距離を離そうとローレンスが後ろに下がった時、二体の魔族が自身の両腕を捕まえる。
「「あああああああ!!!!」」
そして目の前まで迫った二体の魔族が喰らいつくかのように、ローレンスの小柄な身体に鋭利な歯で噛み引き裂こうとする。
「随分やるようになったではないか。一体に我のヘイトを負い、隙をついた所を二体で動きを封じ、残りで我を叩く……連携としては中々だ……だが」
ガキンッ!
二体の魔族の歯がローレンスの肌に当たった時、そんな鋭い音が響いた。
そして二体の魔族の歯は……彼女の皮膚に通ることなくそのまま虚しく折れ、地へと堕ちていった。
「……忘れておらんか?我は……魔法使いだ」
すると彼女のその小柄と言ってもいい身体を掴んでいる魔族達をローレンスは容易く振り解き、一体一体に深い蹴りを腹に一発いれる。
「魔力活性:身体強化《フィジカルブースト》」
そして次の標的を決めると、彼女は目の前にいた二体の魔族の間を通り抜け、後ろにいた魔族の腹に渾身の一発を決めるように拳で殴る。
「がぁあっ!?」
一瞬にしたその動きに狂人化をした彼らも驚きを隠せない。だが、彼女の猛攻は止まらない。
腹に一発決めた後、集中攻撃とも言ってもいいように顔面、上半身、脚、様々なところを自身の強化した拳や蹴りで攻め続ける。
魔法の真価に辿り着いたと言ってもいいローレンスの身体強化は同じ存在であるユニーレと比べても数段勝っており、おそらく身体能力で強化した彼女の猛攻を止められるのは一握りのだろう。
「ふんっ!」
最後に相手の魔族の顎に渾身のアッパーを決め、そのまま無様に散っていく一体の魔族。
「我が動けない魔法使いと思ったらそれは大間違いだぞ魔族ども。魔法に貪欲な我が身体能力に怠るわけなかろうに……しかし」
唖然としている四体の魔族を前にしてローレンスは肩に手を置いて腕を回し続ける。
「やはり久々に使用したからか、身体が鈍ってしまうな。少し肩が痛いのだ」
そう発言したが、彼女のそのなんともない様子に恐怖を抱いてしまう。
それは野生化した影響でもあるのか、より一層に感じてしまう。
———ここからは命掛けて戦えよ。
そこで思い出されるのは自分たちのワイバーンを葬り、下にいる騎士共を圧倒的な魔法で蹂躙した男の言葉。
それを本能で理解した時、彼らの身体からは大量の汗が流れ始め、目の前にいる敵がより恐ろしいものに変貌してしまった。
「我もあまり時間をかけたくないのでな……だから、これで終わらせるぞ」
そして、そう宣言するとローレンスは自身の得意分野である魔法を展開する。
その迫力は先ほどのアクセルが放ったものと比べても負けないものであった。
「五天龍」
すると現れたのは、この世界でも伝説の存在、古龍と呼ばている龍達。
それが様々な属性魔法として顕現し、魔族の前に立ち塞がった。
「アクセルの真似ではないが、我もあやつを見ていたらつい奮発したくなってな……この世界の生物を具現化させてもらったぞ」
そう言い放ち、彼女の威圧、覇気を前にして動くことが困難であろう四体の魔族を前にして彼女は無慈悲にも手を目の前にいる魔族に向ける。
「本当はお主らの目的を知りたかったが……これ以上は我の理性が制御しきれん」
すると彼女の表情から感情が消え失せる……いや違う、消え失せたのではない。
「……よくも、アクセルを殺そうとしたな」
……その煮えたぎる憎悪と激しい怒りを必死に出さないようにしていたのだ。
「……あやつは我らを救ってくれた。そんな優しい彼を殺そうとした罪」
そして、それらの感情を放出するように五体の龍は動き出す。
「とくと味わえ、ゴミどもが」
過剰とも言えるその威力を待った魔法は残り四体の魔族に直撃し、核爆発とも表現していいほどの爆発が空を支配した。
「……ふぅ」
ローレンスが息を吐き、爆発が治まった時には……既に跡形もなく消え失せていた。
「少し手間を取ったが、なんとかなったようだな」
そう言ってローレンスは戦場を彼らに任せ、今の自分のやるべきことを全うしようと再び街へと転移する。
「あとは頼んだぞ……アクセル」
世界が敵になっても味方で居てくれる彼の名前を呟いて、ローレンスは空という舞台から消え失せていった。
空中での壮絶な戦い。
激戦の末、見事その栄冠を勝ち取ったのは、混沌の魔女 ローレンス・アンドレ・ライファス。
悲観に帯びてしまう声色。
俺は出来るだけ表情を出さずに目の前にいる人物……不敵な笑みを浮かべているモルクに問いかける。
「あれ、バレてたんですか?ははっ、流石っすねアクセル様~その卓越した頭脳。あの神童やマエル様にも劣らないじゃないんすか?」
「とぼけるのはやめろ」
無意識に口調が荒くなる。彼女らの情報と照らし合わせて考察したとはいえ……実際にそれを目の当たりすると、やはり動揺してしまう。
「まぁまぁそう焦らなくてもいいじゃないですか~でもどうして分かったんすか?」
その問いかけに関して俺は黙秘を貫く。
原作のことなどこの世界の、ましてや敵である人物に教えるわけにはいかなかった。
「教えてくれないんすか?釣れないですねぇ」
そう言いながらモルクは自身に腰にある剣を抜き始める。
「まぁ、ここでネタバラシしても俺的にはつまらないので……こういう時は剣で語り合いましょうよ?どうせ時間なんて幾らでもあるんですから」
いつもの気だるそうにしているナンパ騎士はこの場には存在せず、そこにいるのはまるでこの状況をゲームのように楽しんでいる遊び人。
「……」
それに答えるように無言で剣をモルクに向け、心を殺すように甘えを捨て、目の前の敵に殺意を向ける。
「いいっすねぇ、その表情。やっぱり貴方を見ていると……面白い」
その言葉とともに、嘗てレステンクール家に仕えていた騎士の剣と俺が持っていた刀が交ざりあった。
◇
アクセルとモルクの戦闘が始まろうとしている中、空を戦場の舞台とするローレンスと魔族達との戦闘も激しくなっていた。
「「激流の波!!」」
二体の魔族が自身の魔法で目の前にいる敵であるローレンスに使う。
ワイバーンは先ほど現れたアクセルにより殺されたため、自分たちで戦うしかなかったのだ。
「魔法増強《スペル・エンハンス》!」
ほか四体よりも少し後ろにいる女魔族がそう唱えると、先ほどの魔族たちが撃った魔法の勢いが強まる。
どうやら魔法の威力や精度を上げるものだと考えたローレンスは今も自身に迫る水魔法を特に顔を変えずに手を前に向け、同じ魔法を唱える。
「激流の波」
静寂に、だが確実にその魔法はローレンスの前に出現した魔法陣から繰り出された。
同じ技であるが、その威力は天と地の差があると言っても過言ではないだろう。
言うなれば、二体の、それも強化した魔族が放つ魔法がコップから溢れる水だとしたら、
ローレンスの放つ魔法は全てを呑み込む津波と表現してもおかしくない。
そして案の定、魔族が放った激流の波はローレンスの激流の波により津波の一部として呑み込まれる。
だが、敵も予想したのだろう。顔を顰めさせながらも全身の肌が紫の魔族が異能を発動させる。
(……奴がさっきの我の攻撃を防いだ者か。
見た限り、自身や味方の攻撃を例外なく守るということで良さそうだな)
ローレンスが冷静に敵の異能を分析していると、煙が晴れて……少し傷が増えたように見える五体の魔族が目に見える。
「……だが、穴がないように見えるその異能も欠点はあるようだな」
「ば、化け物め…!」
アクセルが帰ってきた事やレステンクール家の騎士達の勢いが取り戻したことにより、ローレンスは彼らに付与していた結界を解いて、心の余裕を取り戻していた。
「なんだ、こんな程度か?もっと我を楽しませんか」
「くっ…!舐めるなよ、小娘がぁ!!」
すると、今度はリーダーであろうツノが生えた魔族の身体から蒸気が溢れ出ており、それに比例するように全身の筋肉が増大する。
「それがお主の異能か?単純な奴だのぉ」
それがローレンスが一目見た感想であった。
さらに舐められたと感じたのだろう、顔を赤くさせながら彼らが乗っていたワイバーンと同様のスピードで真正面から突っ込む。
「喰らえぇえええ!!」
身体が強化した彼の拳は一発一発が普通の人間なら死んでもおかしくはない程の威力を誇っていた。
だが、ローレンスはその攻撃をなんの脅威も感じないのか小柄な身体で相手の攻撃の軌道を予知するように避け続ける。
「くそっ!何故当たらん!当たりさえすれば貴様など…!!」
息を切らしながらそんなことを言う目の前の魔族。その言葉にローレンスは呆れたようにため息を吐いてしまう。
「さては戦闘慣れしておらんな?これならばまだ昔戦った兵の方がマシであるぞ」
そう言いながら彼女は指先に小さな物体を創造し、それを銃のごとく魔族の足に直撃させる。
「ぐわっ…!」
「ほらどうした、まだ動かぬか?そこの後ろにいるお主らも動かなければ此奴が死ぬぞ?」
そう指摘すると、今まで動いていなかった魔族達がまるで親に言われた通りに動き始めている。
だが、目の前にいる魔族然り、戦闘経験が少ないのかそれともローレンスの圧倒的な強者感に怯んでしまうのか、どう動けばいいか分からずにいた。
「……あれを使う」
「ッ!しかしリーダー、あれは…!?」
「出し惜しみなど、こいつには命取りだと思え!試作段階だが仕方ない……やれ!!」
そんな会話が繰り広げられ、すると女魔族は何かを唱え始め、自分含む周りに何か不吉なオーラを纏い始める。
「……やっとやる気になったか」
そう呟き、黙って見守るローレンス。
そしてその長い詠唱を唱え終え、静かにその魔法名を呟いた。
「……狂人化《ビーストモード》」
すると五体の魔族が理性を失ったかのように空に雄叫びを上げた。
目は赤く光り、不思議と身体の体勢が四足歩行のようになる。アクセルが見たら狼かよと発言するだろう。
「……妥協点、と言った所だな。理性を失うのは否めんが……怯え続けながら戦う奴らと比べたら随分とマシだ」
そう言い、様子見と言わんばかり大量の鋭利の槍のような物体を精製し、戦闘の準備をする。
「……こい」
そしてローレンスがそれらを放った時、理性を失った5匹の狼は動き始めた。
「………ほう」
狂人化状態の彼らの動きはローレンスからしても目を見張るものがあった。
その野生の感とも言える鋭い感覚により、槍の雨とも言ってもいい大地を穿つ物体の数々を容易く避け、またその物体を足場にして彼女に近づいてく時もある。
先ほどのワイバーンではないにしろ、その動きはまさに熟年狩りをし続けた獣。
「がああああ!!!」
すると一体の魔族がローレンスに迫り、自身の自慢の爪で切り裂こうとする。
彼女は特に焦ることなく、その攻撃を物体で受け止める。
距離を離そうとローレンスが後ろに下がった時、二体の魔族が自身の両腕を捕まえる。
「「あああああああ!!!!」」
そして目の前まで迫った二体の魔族が喰らいつくかのように、ローレンスの小柄な身体に鋭利な歯で噛み引き裂こうとする。
「随分やるようになったではないか。一体に我のヘイトを負い、隙をついた所を二体で動きを封じ、残りで我を叩く……連携としては中々だ……だが」
ガキンッ!
二体の魔族の歯がローレンスの肌に当たった時、そんな鋭い音が響いた。
そして二体の魔族の歯は……彼女の皮膚に通ることなくそのまま虚しく折れ、地へと堕ちていった。
「……忘れておらんか?我は……魔法使いだ」
すると彼女のその小柄と言ってもいい身体を掴んでいる魔族達をローレンスは容易く振り解き、一体一体に深い蹴りを腹に一発いれる。
「魔力活性:身体強化《フィジカルブースト》」
そして次の標的を決めると、彼女は目の前にいた二体の魔族の間を通り抜け、後ろにいた魔族の腹に渾身の一発を決めるように拳で殴る。
「がぁあっ!?」
一瞬にしたその動きに狂人化をした彼らも驚きを隠せない。だが、彼女の猛攻は止まらない。
腹に一発決めた後、集中攻撃とも言ってもいいように顔面、上半身、脚、様々なところを自身の強化した拳や蹴りで攻め続ける。
魔法の真価に辿り着いたと言ってもいいローレンスの身体強化は同じ存在であるユニーレと比べても数段勝っており、おそらく身体能力で強化した彼女の猛攻を止められるのは一握りのだろう。
「ふんっ!」
最後に相手の魔族の顎に渾身のアッパーを決め、そのまま無様に散っていく一体の魔族。
「我が動けない魔法使いと思ったらそれは大間違いだぞ魔族ども。魔法に貪欲な我が身体能力に怠るわけなかろうに……しかし」
唖然としている四体の魔族を前にしてローレンスは肩に手を置いて腕を回し続ける。
「やはり久々に使用したからか、身体が鈍ってしまうな。少し肩が痛いのだ」
そう発言したが、彼女のそのなんともない様子に恐怖を抱いてしまう。
それは野生化した影響でもあるのか、より一層に感じてしまう。
———ここからは命掛けて戦えよ。
そこで思い出されるのは自分たちのワイバーンを葬り、下にいる騎士共を圧倒的な魔法で蹂躙した男の言葉。
それを本能で理解した時、彼らの身体からは大量の汗が流れ始め、目の前にいる敵がより恐ろしいものに変貌してしまった。
「我もあまり時間をかけたくないのでな……だから、これで終わらせるぞ」
そして、そう宣言するとローレンスは自身の得意分野である魔法を展開する。
その迫力は先ほどのアクセルが放ったものと比べても負けないものであった。
「五天龍」
すると現れたのは、この世界でも伝説の存在、古龍と呼ばている龍達。
それが様々な属性魔法として顕現し、魔族の前に立ち塞がった。
「アクセルの真似ではないが、我もあやつを見ていたらつい奮発したくなってな……この世界の生物を具現化させてもらったぞ」
そう言い放ち、彼女の威圧、覇気を前にして動くことが困難であろう四体の魔族を前にして彼女は無慈悲にも手を目の前にいる魔族に向ける。
「本当はお主らの目的を知りたかったが……これ以上は我の理性が制御しきれん」
すると彼女の表情から感情が消え失せる……いや違う、消え失せたのではない。
「……よくも、アクセルを殺そうとしたな」
……その煮えたぎる憎悪と激しい怒りを必死に出さないようにしていたのだ。
「……あやつは我らを救ってくれた。そんな優しい彼を殺そうとした罪」
そして、それらの感情を放出するように五体の龍は動き出す。
「とくと味わえ、ゴミどもが」
過剰とも言えるその威力を待った魔法は残り四体の魔族に直撃し、核爆発とも表現していいほどの爆発が空を支配した。
「……ふぅ」
ローレンスが息を吐き、爆発が治まった時には……既に跡形もなく消え失せていた。
「少し手間を取ったが、なんとかなったようだな」
そう言ってローレンスは戦場を彼らに任せ、今の自分のやるべきことを全うしようと再び街へと転移する。
「あとは頼んだぞ……アクセル」
世界が敵になっても味方で居てくれる彼の名前を呟いて、ローレンスは空という舞台から消え失せていった。
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