全てを失う悲劇の悪役による未来改変

近藤玲司

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後始末と明かされる過去

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あの大騒動から数日後、ペレク家との戦争と言える規模の戦いは終わりを迎えた。

ゼノロア・ペレクはカロナイラ家の騎士達に連行されており、最後まで俺たちから…‥正確には俺から目を離さなかった。

まるで親の仇を見ているかのように思えるほどの迫力があった。

ただ俺はそれに対して無表情で見下すだけだ。
本当なら俺も奴のことを軽蔑の色を宿して見るつもりだったが……。

『………………』

……ソフィアを筆頭に、みんなの奴を見る目が、とてつもない怒りと憎悪を宿していたので、どちらかというとその迫力に俺は圧倒されてしまったのだ。

まだ奴らの始末は終わりを迎えてはないが……少なくともこれでこの街に被害が出ることはないであろう。

「ナーシャ、ペレク家に加担していた王都の貴族達はどうなりましたか?」

そして現在は、複数の女騎士達と共にレステンクール家に訪れたナーシャと会話をしている。

主に、今回の件についてだ。

「まだ、全て回った訳ではありませんが、私たちが調査した貴族は全員、黒でした……流石は神童と呼ばれたお人ですね。ここまで正確に捉えられるとは」

彼女はそう言いながら、兄上のことを思い出しながらそう呟いている。

一応、二人とも長期休暇の許可を貰ってるため、まだ屋敷にいる。

「そうですか…仕事を増やしてしまいそうなのですが……頼みを聞いてくれますか?」

「アクセル様の頼みであれば構いません……ですが、その前に聞きたいことが……」

すると俺にべったりとくっついている人物に目線を向けて、目を細めながら俺に聞く。

「……何故!ソフィアちゃんとそこまで密着しているのでしょうか!!」

そう言いながら、バンッ!と長机を盛大に叩くナーシャ。

それに対して俺は苦笑いしか出来なかった。

「当たり前ではありませんかナーシャちゃん。私たちはお互いを支え合うなのですから、当然です」

ソフィアはまるでそれが当然かのようにナーシャに言い放つ。

それに対してナーシャはジト目で俺たちの方を睨んでくる。

……うん、つまりソフィアのブラコン度がさらに増してしまったということだ。

いや、確かに落ち着かせようと頑張ったよ?一回離れようとか言ってなんとか対処しようともしたよ?

でもその時のソフィア……この世の終わりを見ているような表情をしながら、ポロポロと泣き崩れてしまったのだ。

あの時は大変だった。なんとか宥めて落ち着かせての繰り返しだったのだから。

『お兄様……ずっと……一緒ですよね?』

……最終的にそんな様子の彼女に強く言い出せず、このような結果になったのだ。

「……まぁ、そのうち自立しますよ」

そう言ってこの話をはぐらかして、ある人物を呼ぶ。

「ユニーレ」

「なにかしら?」

……もう指摘しないからな?
いつの間にか現れた彼女に対してそう思いながら、ある資料を彼女から受け取りナーシャに見せる。

ナーシャは不思議と彼女を見る目が険しくなりながらも、俺が渡した資料を眺める。

「これは?」

「王国全体でペレク家に加担していた貴族の情報です。おそらくそれで全員かと」

「……そう、ですか」

流石ですね…と目を瞑りながら落ち着かせるようにナーシャは深呼吸しながら言う。

「すみません。負担を掛けてしまうような真似をして……出来れば僕も動きたいのですが」

「いえ、寧ろ貴方に頼られることはとても嬉しいのです。ただ……この国の貴族がこれほど腐ってるとは思わず……頭が痛くなります」

ハァ…と重いため息を吐きながら、憂いてる
様子だ。ナーシャの負担を少しでも和らげるために、俺はそれを彼女に渡す。

「アクセル様?これは…?」

「父の知り合いから貰った魔道具です。それをつけていれば少しは身体の負担が減らせると思います」

寝不足でしょう?と問いかけると、ナーシャは恥ずかしそうに顔をかきながら、長机にあるそれを……イヤリングを手に取る。

「……やはり貴方はお優しいのですね。こんな私のためにここまでしてくれるなんて」

「いえ、今回の件のお礼とお詫びです……出来るだけ無理しないでくださいね?」

「はい…ありがとうございます……アクセル様」

そう言って、彼女は俺から貰ったイヤリングをすぐに自分の耳にかける。

「……似合い、ますかね?」

「えぇ、とても綺麗ですよ」

そう言うと、恥ずかしそうにしながらも、ナーシャは耳に手を当てながら控えめに笑っていた。

「……ズルイ」

……ユニーレの嫉妬と捉えれるその言葉を聞きながら、俺は彼女達と今回の件の後始末について話し合ったのだった。





「………」

深夜になり、静寂が支配する廊下。俺は今、ある場所に向かうべく、その廊下を一人で歩いていた。

《…‥アクセル、今日私の部屋に来てくれないかしら?》

怯えながらも、決意を込めたような声色を出している人物のことを思い出していると……どうやら着いたようだ。

その部屋に入るための扉に向かって軽めにノックする。

「姉さん、アクセルです。入ってもいいですか?」

俺がそう言うと、しばらく間はあったが、扉の向こうからマリア姉さんの声が聞こえてきた。

「えぇ、入ってきて頂戴」

姉さんから許可の返事を貰ったことで、俺はその部屋……昔の姉さんの部屋に入った。

そこに広がっていたのは、お世辞にも姉らしいとは言えない、とても女の子が使ってるような部屋。

机の上にはたくさんの本が並んでおり、その本は全部古びており、きっと長年使われていたであろう物だ。

また、そのベットもとても可愛らしい。貴族にありがちな重量感のベットで、色合いはピンクやラベンダーのような物がメインでリボンのような飾りも複数ついており、まさに可憐な令嬢が使ってもおかしくない程のデザインだ。

その上にはくま、うさぎと言った可愛らしいぬいぐるみがたくさんある。その中には刺繍した痕跡もあり、きっと大切な物なのだろうと予想できる。

そのぬいぐるみの隣にベットの上で、拳を膝に置いて、姿勢よく座っている白い絹を使ったネグリジェを着た姉さんの姿があった。

「姉さん……緊張しすぎてませんか?」

「だ、だってアクセルが私の部屋に入ってくるのよ!?」

その様子に俺は呆れ果ててしまう。すると姉さんは身体をビクつかせながら、訴えかけるように言ってくる。

「呼んだのは姉さんでしょう?」

「そ、それは…そう、だけどさ」

膝に置いていた手は離れ、指をもじもじしながら頬を赤らめ、こちらを見てくる姉さん。

うん、なんだこの可愛い生き物は。

「そ、その……隣に、座ってくれないかしら?」

「……分かりました」

ひとまず思っている事を顔に出さないように、そのまま姉さんのベットに乗って、隣に座る。

「「………」」

さっき通った廊下の静寂がここに侵食するように、再び静寂が支配する。

姉さんはまるで落ち着かせるように深呼吸をしながら、俺に話す準備をしており、俺は敢えて、姉さんのその姿を見ないで、ただ前を向いている。

「……ねぇ、アクセル」

「……なんですか?」

そして、心の準備が出来たのか、姉さんは俺に話しかけた。

「……私ね、今…凄く幸せなの」

「……はい」

「ずっと、ずっと望んでいた未来が、日常が……私の手の中にあるの」

「……」

「最近は、長期休暇取っていることもあって、暇が出来たの。そしたらね、ソフィアとお母さんと一緒にお洋服を買いに行けたの。とっても楽しかったわ」

姉さんの顔を見ると、とても幸せそうに微笑んでおり、彼女の視線の先にはきっと最近買ったであろう洋服が並んでいる。

「ローレンス様……ローレンスと一緒にね、本を読んだわ。あの人と私、似ているのかしらね?本好きってことで意気投合しちゃったわ。ほらっ見て見て、これローレンスにおすすめされた本なの。まだ読んでないから楽しみだなぁ…」

すると、ローレンスにおすすめされた本を俺に見せるようにこちらに向けてくる。

「最近はユニーレさんとジークと鍛錬してるの。あの人の強さ、卑怯すぎない?ジークと二人がかりでも全く歯がたたなかったわ…その後、ジークと大喧嘩よ。その勢いであいつと戦闘して……お互い、倒れちゃったわ」

そう言いながら、あははと力なく笑っている姉さん。

「……お父さんと兄さんとも、最近はよく話すわ。前までは、何話せばいいか分からなかったけど……今はそれが嘘のように話せてるの!でもあの二人……何故か微妙な表情になってるのよね……」

きっと貴方の話が長かったから、二人は微妙な表情をしたんだと思いますよ。





「……………ねぇ、アクセル?私が今、こんなに幸せなのは……貴方のおかげよ?」

ポロリ、一粒の涙が彼女のベットに落ち、俺の方を顔を歪ませながら見ている。

「姉さん……」

「こ、こんなに幸せな日常が過ごせるのは……みんなとあの日みたいに過ごせるのは……私が笑えてるのは、アクセルのおかげなんだよ?」

俺の手をそっと触れて、力強く握っている。

「……ねぇ、アクセル……どうしてそこまで私たちのために頑張ってくれるの?」

「……そんなの決まってますよ」

俺は姉さんの目を見つめながら、その答えを言う。


「……家族を、大切な人たちを守りたいからです」

「ッ!」

そう言うと、ついに耐えられなくなったのか、俺のことをギュッと全身を抱きしめられる。今も、震えている彼女の身体を俺はそっと抱きしめ返す。

「……だって……だって、私、何度も…何度もみんなのこと……助けること、出来なくて……そんな罪人みたいな…私なんかが…!」

「……姉さんがどんなこと抱えてるかは分かりません……ですが、僕は姉さんのこと……大切な人だと思ってますよ?」

「ッ!!」

「……姉さん……?そのために、僕を呼んだのでしょう?」

俺がそう言うと、少しずつ姉さんは離れていっていく。

「…………私が、どんなこと言っても……信じて、くれる?」

「えぇ……どんな事だろうと、貴方を信じます」

脆く、少しでも触れたら壊れそうな心のまま不安そうに聞く姉さんに対して、当たり前だと断言するように俺は姉さんに言う。


「……すぅ……はぁ……」

信じてくれると分かったのだろうか、姉さんは再び深呼吸を繰り返し、俺に向かって力なく微笑み……答えてくれた。







「……じゃあ、聞いてくれる?現実だとありえない、夢物語のような………そんな、私の滑稽な過去《物語》を」


———胸にあるネックレスを抱えながら。
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