全てを失う悲劇の悪役による未来改変

近藤玲司

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一人になんて、させない

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あの後、ペレク家の始末を終えて、俺はしばらくさっきまで貴族たちがいたであろう場所を眺めていた。

「……」

……奴らにケジメをつけさせるためとはいえ……やっぱり罪のない人達を殺すのは、来るものがあるな。

そんなことを考えていると、後ろから二人の気配を感じた。

「アクセル」

「……ローレンスに、ユニーレか」

何か用か?と言おうとして振り向いた時……二人から急に抱きしめられた。

二人のその対応に呆気に取られてしまい、放心状態になってしまう。

「貴方が苦しみを負う必要はないのよ。どうしていつも一人で抱えようとするの……」

ユニーレの哀愁漂うその声に動揺してしまう。だってそもそもこの事は一人で抱え込むつもりなんてなかったのだ。

だから二人に弁解をしようとした時、表情が酷く歪んでいたローレンスの言葉が俺に突き刺さる。


「だってアクセル……なぜ今、そんな苦しそうにしているのだ…?」

「……え?」

二人に言われて顔に触れてみると……変わってないはずの表情が少し強張っている気がした。

「はは……なんでだろうな?」

「もう、いいのだ…!」

その言葉と共に、俺の頭を抱き抱える力が強くなるのを感じた。それは、自分を慰めているようにも思えるほど強く……壊さないように、彼女の優しさを表してるようにも見えた。

「もう、お主が苦しむ必要なんてないのだ!この一件でお主がどれだけ頑張ったか…我らが一番分かっておる……だから!!」

「ローレンス」

また、辛い思いさせちゃったかなと思いながら、彼女の背中を手を当たる。

「……ありがとう、そう思ってくれてて俺は嬉しいよ…ごめんな、俺の独りよがりで苦しい思いさせちゃって」

「そ、そんなの……我はただお主がこれ以上一人で抱え込むのが耐えられなくて…それで……」

彼女の声がだんだんと小さくなっていく。恥ずかしいのかなと思っていると「むぅ…」と少し嫉妬が混じった声が聞こえた。

「お前のことも忘れてないよユニーレ。心配してくれてありがとうな」

そんな彼女に苦笑しつつ、顔を向けてお礼を言うと、それでいいのよとでも言ってるかのように、ローレンスと同じように抱き抱える力が強くなった。

「……最近、私のこと、ほったらかしにしてないかしら?」

「いや、そんなことないけど……まさか、まだあの件のことについて引きずってるのか?」

「当然よ。ズルいじゃない……私も頑張ったのに……」

少し寂しそうに漂わせた声にまたまた苦笑してしまう。

あの件とは先日、ナーシャが訪れた時に渡したイヤリングのことだ。

どうやら相当羨ましかったようで、ナーシャが帰った後、物欲しそうに俺のことを見続けていたのだ。

「お前に似合いそうなものがまだ見つかってないんだ。よかったら一緒に見に行くか?」

「……いいの、かしら?」

「あぁ、お前も今回の件で頑張ってくれたんだ。そのお礼と思って…な?」

「……ふふっ、しょうがないわね」

そう言いつつも、彼女がとても嬉しそうにしているのが分かった。

何せ、いつもの余裕に満ちた顔が嘘のようにニヤケさせており、最早混沌の魔女なんて最初からいなかったのではないかと思わせられちゃう。

「な…!?ず、ずるい……ずるいのだアクセル!!我も頑張ったぞ!!」

「分かってるよ。お前も頑張ってくれたもんな。今度お前の欲しいもの買ってやるからそれで許してくれ」

「ッ!そ、それでいいのだ…!それで……」

怒ってたり、恥ずかしがったりと忙しい奴だな。そんな彼女達を見ていると不思議と心が楽になってくる。

「二人ともありがとう…もう大丈夫だ」

だから、二人にそう言ったのだが……何故だか、離れてくれない。えっ、なぜに?

「しばらくこうしておくのだ」

「同じくよ」

「い、いやだから……もう大丈夫って…」

「最近、ソフィア達ばかりアクセルに構っててズルかったのだ。こういう時ぐらい、アクセルを堪能させろ」

「えぇ……」

ローレンスのその言葉に俺は何故か姉のマリアを思い出してしまった。

本人も言っていたけど、やっぱりこの二人、根は似ているんだな。まぁ、一応血縁だしそれもそうか。

「それよりユニーレ、お主少しアクセルのこと強く抱きしめすぎじゃないか?」

「………………………なんのことかしら?」

「さては自覚しておるな!?お主のせいでアクセルがそっちに寄っているのだ!もっと我にもアクセルを堪能させろぉ!!」

「いーやーよ。それに貴方のそんな貧相な身体よりも、私の豊満な身体の方が彼も喜ぶはずよ」


「………………………………………あ゛?」

え、待って、今声出したのってローレンス?今まで聞いたこともないようなドスの利いた声だったんだけど……それも、あの時の魔族の時よりも根本的に恐ろしいもののようで……。


「……お主のその太った身体など、暑苦しいだけだろう。それならば我の方がアクセルも喜ぶはずなのだ」

「…………………………………………は?」

え、今度はユニーレ?いや確かに初対面の時は恐ろしい奴だとは思ってたけど……今それ軽く超えたぞ、俺に向けられてないのに一瞬ゾッとしてしまった。


一応弁解しとくが、ユニーレは太ってるわけじゃない。というか、スタイルで言ったら母のリアーヌと渡り合える。

というのも、引き締まってる所は引き締まっており、出す所はしっかりと出すという、まさに理想的の体型だ。

流石は未来のローレンスの姿と言われている。

だからローレンスに関しては仕方ないのかもしれない。

そもそもユニーレのせいで身体の成長が止まったのか、その……うん、幼い体型ではある。

だか、こっちも弁解しておく。
身長は140センチぐらいの小柄だが、それが愛らしく感じ、彼女の魅力でもある。
また、無駄な肉もついておらず、スリムでバランスが取れてるから、ユニーレとは違う美しさがあるのだ。

そんな二人なんだけど……多分、お互いの逆鱗に触れてしまったのか、凄い形相だ。


「ふ、二人ともおちつ」
「「アクセルは黙ってて」」
「……は、はい……」


こ、怖い……俺、何か悪いことしたのかな?

「……ユニーレ、今謝れば許してやるぞ」

「……なら先に貴方が言った言葉を撤回してちょうだい。そしたら謝ってあげるわ」

「「………」」

ねぇ待って、これもしかして相当やばいやつ?もしこんなところで戦ったら……!?

「ま、待て二人とも!今ここでそれはまずい!ってローレンス魔法!規模がでかい、でかいって!?お、おいユニーレ!お前なんだそれ兵器か!?た、頼むから落ち着いてくれぇええええ!!」


——その後、彼女達を止めるのに何時間もかかってしまい、気づいたら夕方になっていた。

……あれ?確か俺、朝にここに来たよな?





「……ふ、二人とも……せ、せめて、争う時は……もうすこし、場所と、規模を……考えてくれ…」

「う、うむ……」

「……ごめんなさい」

走ってもないはずなのに、何故か息を切らしており、その状態のまま二人に言う。

流石に俺の様子を見て、悪いと思ったのか、気まずそうに目を逸らして俺に謝ってきた。

「…はぁ、それで二人はなんでこんなところに?」

俺がそう言うと、ユニーレはあらそういえば…とさっきまで忘れてたような反応を見せた。おい、忘れんな。

「今回の件に関わっていた魔族の目的について話し合いたいわ」

「……なるほど」

確かに、奴らの目的について、分かってないことが多い。

ペレク家に関与していたことから、くだらない事だとは思うが……彼女の様子を見る限り、どうやら話し合った方がいい話題のようだ。

「我はその付き添いだ。で話し合った方がいいであろう?」

「?あぁ、そうだな…?」

彼女の言葉に不思議に思いつつも、実際にその通りなので、肯定する。

「それじゃあ場所を移しましょうか…貴方の部屋でいいかしら?」

「あぁ、そうしてくれ」

ユニーレの言葉に肯定するように、そう言うと、俺とローレンスを巻き込むように、彼女は普通よりも大きい魔法陣を展開させる。

(さて……奴らの目的がなんなのか……原作でも、ここは触れられていなかったからな)

あそこまで魔族が関わるとは思っていなかったから……二人から得られた情報で一体どれくらい、核心に迫れるか。


そんなことを考えていると、いつの間にか自分の部屋に転移してきたみたいだ。

「じゃあ早速…………」

だが、俺は言葉を失ってしまった。
だって部屋には……既に三人滞在していたのだから。それも、俺たちを待っていたかのように。

「あ、アクセル様……その、お邪魔しております……」

「なに貴方は緊張してるのよジーク、そんなキャラじゃないでしょ?あ、アクセル!随分と遅かったわね、待ってたわよ!」

「すみませんお兄様。勝手ながら、お部屋に入らせていただきました」

ジーク、マリア姉さん、ソフィアが順に俺に話しかけてくる。その言葉に正気を取り戻した俺は三人の所まで近づきながら、話しかけた。


「な、なんで三人とも、俺の部屋に…?」

「そんなの、決まっております」

まるで代表のように、ソフィアは俺の疑問に答えてくれた。



「お兄様、ソフィア達も参加させてくれませんか?そのお話について」


その表情は、まるで俺を一人にさせないと、抱え込ませないとでも言ってるような気がしてならなかった。
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