転生するなら人間がいいな〜 〈零〉

参章 飛ベナイ“スカイ”噴水

ご 飛べない狼。

酷い風が吹き、激しい雨が銃弾のように顔を殴る。

風の音が鳴り響く。

街は人のいた痕跡が残したまま、静かに月を見守る。

血の池は満月の光で輝き、くすんだルビーのよう。

唸り声を上げ、今にも飛びかかろうと虎視眈々とその機会を待つ人狼。

血に飢え、親友を想い、涎を垂らす。

右手に包丁を持つ少女バケモノは、それを嘲笑うかのような笑みを浮かべる。

｢ふふふっ……まるで汚らしい野良犬みたい。…炙り殺してあげる♪｣

即座に動く。

月の光が雨を照らし、輝かせる。

『グルルルル………ごろす……殺しでやるっ…！』

理性をなくし、狼男はただ我武者羅に飛びかかる。

しかし、狼は空を飛べなかった。

飛びかかろうとしたその瞬間。

……ボチャリと鈍い音が響く。

水溜まりは紅に染められ、少しづつ黒ずんでいく。

｢脚を切られたらもう動けない…ふふ、お友達と同じだね♪｣

痛みに苦しみ、狼男は人間へと戻る。

力を使いすぎた影響か、

耳もしっぽも失った。

『ぐぅ……いだ……ぅ………ぁし…脚が……い……うぅう……！！！』

悶え苦しむ様子を…ただニヤニヤと笑って眺める。

その様子はさながら、獲物を仕留めた狩人のよう。

いや、違う。

それは、ただ純粋な

ケーキを頬張る子供のような、

純粋な笑顔を浮かべていた。

ゆっくりと対象クウマに近づく化物ユキ。

血が滴る刃を逆手持ちして、雨音に交じり鼻歌を歌う。

｢……私の事…好きなんでしょ？｣

そう言って、不気味な笑顔をうかべる。

『ぅ……ぎらっ……好きじゃ……うぐ……！』

痛みで答えられないようだ。

涙目で彼女を見つめる。

そして、彼女は



キスをした。



口の中に血の味がする。

脚をきられ、痛いはずなのに。

…ずっと望んできたことなのに。

………ああ

なんで…。

なんで何も感じないんだ。


血が流れる。

助けを求めるかのように、目を瞑る。

意味は無い。

そのまま……そのまま胸を刺される。

『う………ゆ………るさ…ぅ……』

息絶える。

なぜこの行動を行ったかは知らない。

響く雨音。

濡れたアスファルトの匂い。

さびた鉄の味

彼女ユキはそのまま歩みを進めた。