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十五歳の誕生日。
私の人生に、大きな転機が訪れた。
夢を見たんだ。
その中で、声を聞いた。
聞いたことがない声だったけど、どこか懐かしさを感じる。
誰かが泣いている。
誰かが嘆いている。
悲しい声と、知らない誰かの記憶が断片的に流れ込んできた。
目が覚めて気づいたのは、それが自分の前世の記憶であることだった。
そして――
私の身体には、異能の力が発現していた。
今まで抑え込まれていた力が爆発するように、圧倒的で強大な力を宿していた。
能力の特異性もさることながら、身に宿すエネルギーの総量は桁違い。
おそらくは、今の姉を凌ぐ力を手に入れた。
この力があれば、私は無能なんて呼ばれることはないだろう。
ただ、私は自分の力を隠すことにした。
断片的であいまいな記憶は感情移入こそできなかったけど、強大な力を持つことが、必ずしも幸せに繋がるとは限らないことを教えてくれた。
何よりも、私の力を知れば両親は喜ぶだろう。
想像ができてしまう。
手のひらを返して、満面の笑みで祝福するだろう。
ふざけないで。
両親が、その周囲が。
これまで私にしてきた仕打ちを忘れることはない。
今さら家族のように接せられても嬉しくない。
なら私はこれまで通り無能のまま、人生を平穏に過ごせればそれでいい。
そう決意し、二年が経過した。
◇◇◇。
私は十七歳になった。
歳が増えても、私の置かれた状況はなんら変化していない。
朝起きて、身支度はすべて自分でする。
エレナはきっと、使用人にすべてやってもらっていることでしょう。
私はこうなってから、一度も貴族らしい扱いを受けていない。
それにも慣れてしまったし、案外一人のほうが気楽でいいから、今さら変えたいとも思わないけど。
着替えを済ませ、朝食を食べるために部屋を出る。
廊下で偶然、姉のエレナと会う。
「おはよう、エレナ」
一応、今日初めて会うのだから挨拶くらいしてみた。
けど当然、彼女から返事はこない。
エレナは私の隣を通り過ぎて、ぼそっと冷たい声で言う。
「気安く私に話しかけないでよ。無能がうつるわ」
「……」
エレナは私のことを疎ましく思っている。
双子だから、お互いの考えがわかって仲良し、なんてものは幻想でしかない。
むしろ双子だからこそ、彼女にとって私の存在は足かせでしかないんだ。
いっそ一人で生まれたかったと。
エレナも思っているに違いない。
双子ではなくても、エレナの考えていることなんてわかる。
それくらい私は嫌われていた。
朝食は両親の私たち、四人でとる。
一応、私の分の食事も用意されているのは二人の優しさなのだろうか?
いいや、単に使用人にわざわざ命令していないだけだろう。
五歳までは普通に接していたわけだしね。
もっと、同じ食卓にいても会話はない。
「エレナ。今夜は王家のパーティーだ。気を引き締めなさい」
「はい」
「王位継承権をもつお方が参加される場よ。しっかり自分をアピールして、王族の方々に気に入られるようにするのよ?」
「頑張ります。お父様とお母様の期待に応えられるように」
当然のごとく私には何もない。
私は何も期待されていない。
私の人生に、大きな転機が訪れた。
夢を見たんだ。
その中で、声を聞いた。
聞いたことがない声だったけど、どこか懐かしさを感じる。
誰かが泣いている。
誰かが嘆いている。
悲しい声と、知らない誰かの記憶が断片的に流れ込んできた。
目が覚めて気づいたのは、それが自分の前世の記憶であることだった。
そして――
私の身体には、異能の力が発現していた。
今まで抑え込まれていた力が爆発するように、圧倒的で強大な力を宿していた。
能力の特異性もさることながら、身に宿すエネルギーの総量は桁違い。
おそらくは、今の姉を凌ぐ力を手に入れた。
この力があれば、私は無能なんて呼ばれることはないだろう。
ただ、私は自分の力を隠すことにした。
断片的であいまいな記憶は感情移入こそできなかったけど、強大な力を持つことが、必ずしも幸せに繋がるとは限らないことを教えてくれた。
何よりも、私の力を知れば両親は喜ぶだろう。
想像ができてしまう。
手のひらを返して、満面の笑みで祝福するだろう。
ふざけないで。
両親が、その周囲が。
これまで私にしてきた仕打ちを忘れることはない。
今さら家族のように接せられても嬉しくない。
なら私はこれまで通り無能のまま、人生を平穏に過ごせればそれでいい。
そう決意し、二年が経過した。
◇◇◇。
私は十七歳になった。
歳が増えても、私の置かれた状況はなんら変化していない。
朝起きて、身支度はすべて自分でする。
エレナはきっと、使用人にすべてやってもらっていることでしょう。
私はこうなってから、一度も貴族らしい扱いを受けていない。
それにも慣れてしまったし、案外一人のほうが気楽でいいから、今さら変えたいとも思わないけど。
着替えを済ませ、朝食を食べるために部屋を出る。
廊下で偶然、姉のエレナと会う。
「おはよう、エレナ」
一応、今日初めて会うのだから挨拶くらいしてみた。
けど当然、彼女から返事はこない。
エレナは私の隣を通り過ぎて、ぼそっと冷たい声で言う。
「気安く私に話しかけないでよ。無能がうつるわ」
「……」
エレナは私のことを疎ましく思っている。
双子だから、お互いの考えがわかって仲良し、なんてものは幻想でしかない。
むしろ双子だからこそ、彼女にとって私の存在は足かせでしかないんだ。
いっそ一人で生まれたかったと。
エレナも思っているに違いない。
双子ではなくても、エレナの考えていることなんてわかる。
それくらい私は嫌われていた。
朝食は両親の私たち、四人でとる。
一応、私の分の食事も用意されているのは二人の優しさなのだろうか?
いいや、単に使用人にわざわざ命令していないだけだろう。
五歳までは普通に接していたわけだしね。
もっと、同じ食卓にいても会話はない。
「エレナ。今夜は王家のパーティーだ。気を引き締めなさい」
「はい」
「王位継承権をもつお方が参加される場よ。しっかり自分をアピールして、王族の方々に気に入られるようにするのよ?」
「頑張ります。お父様とお母様の期待に応えられるように」
当然のごとく私には何もない。
私は何も期待されていない。
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