記憶がありませんが、身体が覚えているのでなんとかなりそうです

羽鳥むぅ

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16.解決の糸口

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 そろそろと身体を離せば、水音とともに引き寄せられる。香油のおかげで湯の中は乳白色になっているから見えないはずなのに、どうしても腕や手で隠してしまう。小さく縮こまる私の背後から、クスクスと笑いが聞こえてきて苛立ちを覚えた。
「だって、恥ずかしいもの!」
 本当ならば振り向いて抗議したいけれど、恥ずかしくてできずに水面を睨みつける。腰辺りに主張している何かが気になりすぎて身動きがとれないのだ。
「仕方がないだろう。これは習慣なんだから」
「だからって……」
「職は同じとはいえ、それぞれ違う任務で生活がすれ違うこともあるんだ。二人で過ごせるときはなるべく、くっついているというのが俺たちのルールなんだから」
 何かきっかけでもあれば戻るのかもしれない。それならばとりあえず今まで通りの日常を、と主張するエリックの言うとおり、今も突破しそうになる恥ずかしさをなんとか堪えて一緒の湯船に浸かっているわけだけれど。
 
「でも、そんなの私は知らないもん。一人で入りたい……」
「寝落ちしているのを見つけたときは、心臓が止まるかと思ったなぁ。あ、あと泡をしっかり落とすのを面倒くさがって、滑りそうになったと聞いたときも……」
「わーーー! ごめんなさい! 私が悪かった!」
 聞いているうちに青くなった私は、振り向いてエリックの口を手で塞いだ。挙げられる数々の失態を彼の前でした覚えはなくとも、身に覚えはあった。どれもこれもやらかしては周りに怒られたことがある。数年経っていようが、成長のなさに溜息が零れた。
「成長してないのね……私」
 肩を落としてエリックの口から手を離す。
「……いや、成長したとは思うけど」
「何が……きゃあっ!」
 背の高いエリックの口を塞ぐために、膝立ちになったせいで彼の鼻に触れそうな場所に胸があり……。エリックの目線はもちろんそこに注がれていた。彼の言う『成長』が何を指しているのか気付いて口元が引き攣る。清廉潔白だと思っていたのは幻だったのか。
「ひゃっ、ちょ、ちょっと!」
 水しぶきをあげながら、エリックは私の腰を片腕で固定し、もう片方の手で胸を下から持ち上げるようにして掴んだ。動かされて自由に形を変える膨らみ。
 エリックがあまりにもジッと見つめるものだから、慌てて腕で隠したものの意味がないことくらい分かっている。
 
「……そこを見つめながら言うのは止めてよ!」
「未だに初めてラリアの全てを直接見た時のことを思い出すよ。あまりにも眩しくて……」
「も、もう! 黙って!」
 聞いていられずにエリックの口を手で塞ぐも、素早く手首を掴まれて阻止される。彼の瞳が少し弓形に細められ……。
 
「あっ……」
 ゆっくりと開いた口を見つけて声を上げたと同時に、パクリと音が聞こえた気がした。先端が彼の口に隠されたのだ。口内で待ち構えていた舌で弾かれて、背中がぞくりと震える。突然襲って来た快感に、腰が抱えられていなければ湯の中に落ちていただろう。
 
 チュウと音を立てて吸いながらも、舌の動きは止まらない。さらには胸を持ち上げていた手を下へ滑らせて、茂みの中へと侵入してくる。そのままお尻の方まで進んできた指は、引き返すと嫌というほど敏感な部分であると覚えさせられた芽を撫でた。
 
 なんて器用な、と歯嚙みをするが、なんせ相手はエリックだ。これくらいどうってことはないのだろう。でも……。
 
「悔しい……」
「は?」
 
 思わず零れた言葉が聞こえたらしいエリックが、口を離して顔を上げた。その表情はわけが分からないと書いてある。そりゃそうだろう。
 
「勝手に大人になっちゃって、こんなことを難なくこなしちゃうなんて」
「そりゃあ、殆ど毎日していれば誰でも上達するだろう。ラリアだって学園に通ったばかりと今とでは違わないか?」
「……でもそのときはエリックも同じだったわ。一緒に通ったもの」
 口に出してから気付く。こんなの八つ当たりだ。エリックと一緒に身体を重ねることを覚えた私を、私は知らない。
「確かに記憶はないかもしれないけど……」
 再び秘裂の奥に侵入してきた指先は心得えていた。迷うことなく中に潜り込んでくる。優しいけれど、内側を擦るように刺激されると花芽とはまた違った快感が生まれた。徐々に追い上げられるような、這い上がってくる気持ちよさにエリックの頭にしがみつく。
「ラリアの身体は覚えているようだ。ここ、気持ちいいだろ? 一緒に見つけたんだ」
「……変態!」
「否定はできないな。俺自身もラリアに対しては異常かと思っているぐらいだ」
「ああっ、やっ……」
「でも止められない」
 胸への愛撫が再開されてピクリと身体が跳ねた。粘着質な水音を立てて掻き混ぜるような指先と、胸の先端にもたらされる甘い刺激。それは確かに身体が知っていた。最初から違和感なんてなくて(実際はそれが違和感だったのだけれど)、素直に受け入れてしまっている。
 勝手知ったる指が内側の一点を押すように擦ると、徐々に溜まっていたものが一気に破裂したかのように頭が真っ白になった。エリックが私を抱えて立ち上がると同時に、温かな風が吹いて髪や肌を濡らす水滴が消える。
 巻かれたタオルの摩擦ですら切なくて、早くエリックを欲していた。
 
「逆上せてしまったか」
 私をベッドに下ろして心配そうに覗き込むエリックの首を引き寄せて唇を重ねた。
「大丈夫、だから。早く欲しいの。確かにこの感覚は未だに慣れないけれど、ずっと前から知っている気がする」
「……! ああ、分かった。お望み通り何度でもしよう」
 蕩けた表情はここ数日で随分慣れたけど、やっぱりこれも見覚えがあった。けれど何度でも、なんて言っていない。そう抗議したかったけれど、出てくるのは自分のものとは思えない嬌声だった。

  * * * 
 
 それからエリックの宣言どおり、全身がくたくたになるまで愛された。ぼんやりとする頭で、
「もう無理、やだ」
 と、泣き言をいう私にいい笑顔のエリックが、
「もうちょっとだけ、気持ちいいところを教えて」
 なんて言うものだから、毎晩のように責められ続けた日々が脳裏に浮かんだ。
 
 何も覚えていない? 本当に? こうやって愛されてきたでしょう?
 
 眩しい感覚に目を覚ますと、すぐそばにエリックの寝顔があった。
 重い身体が昨夜のことを思い出させた。朧気ながらも明け方まで続いていた気もする。記憶は未だに十六歳のままだけど、アレコレのお陰で解決の糸口を見つけた気がした。記憶はなくても、身体はエリックを、彼とともに歩んできた八年間を知っているのだということを。
 けれどエリックに伝えるのは癪だし、父にはなんて話したらいいのか分からない。身体で思い知らされましたって? 無理むり! ……なんかちょっと上手くいえるように考えておこう。
 
 眼鏡を外しているエリックの寝顔には、幼い頃の面影がある。彼の胸元に擦り寄れば欠片がぴったりと合わさったかのような安心感があった。悔しいけれど私の身体も心もエリックが『好き』だと言っている。
 なんとかして空白のエリックとの数年を思い出したい。自分の為だけでなく、彼の為にも。
 
 それと今のエリックは余裕綽々で、大人で、正直言ってとても素敵だ。だから私ばかり振り回されているのが面白くないなんて、やっぱり彼からしたら子供なのだろう。
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