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1,エピローグ

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お昼のニュースをお伝えします。
N県の山中で30代男性が熊に襲われ、死亡しました。


俺、田宮農太郎31歳、職業は米農家、死にました。ある日、森の中で熊さんに出会い、
逃げたら追っかけてきたんです。
童謡の「森の熊さん」では、白い貝殻の小さなイヤリングを
持って来てくれたけれど、現実は、俺を食う為でした。
段々意識が朦朧としていった……………。

「わあぁぁぁぁぁ!!!!」
突然冬眠中の動物も叩き起こせそうな大きな歓声が聞こえて、
驚いて目を開けると、
なんと、そこはゲームや漫画に出て来そうな
中世ヨーロッパの城のような建物だった。
豪華絢爛な玉座に、朱色のカーペット。
周りの人も秋葉原アキバで売ってそうな騎士の格好をしていた。
隣には、数人がぽかん………と目をまんまるにして
周りを見ていた。この人も俺と一緒だろう。
「ここは……?」
その中の一人が言った。
「貴方様達は勇者召喚の儀で異世界から召喚された勇者御一行さまだ。」
つまり、俺は異世界トリップしてしまったんだ。
電子書籍で、そう言う話を読んだことがある。
「ステータスオープンと言えば、職が分かる。言ってみよ。」
玉座にふんぞり返っている王様らしき人が言った。
「「「「ステータスオープン」」」」
ステータスパネルが表示された。
「すげぇ!俺勇者だ!」
隣の高校生らしき人が言った。
俺はなんだろう!期待を込めて、ステータスを見た。
「これって………」

田宮農太郎 ヒューマン 農夫lv1

ステータス

物理攻撃E
魔法攻撃D
HP120
MP1200
すばやさ68
運100

魔法

使えません

ユニークスキル

米農家
亜空間収納

称号

異世界の人

巻き込まれ

「………………」
勇者なんかではなかった。思い切り『農夫』と書いている。
しかもMP高いのに魔法使えないのかよ。
酷く無い?もっかい言うけど酷く無い?
「では、皆さん、ご職業は?」
「俺賢者!」
「私は聖女です!」
周りのみんなが勇者パーティの職業を言っていく。
言えない。俺は農夫って。
「貴方は?」
言うしかないか………
「農夫です。」
「「「「え?」」」」
「だから職業は?」
「だから農夫って言っているじゃ無いですか。」
「「「「「「えーーーーーーーーー!!!?」」」」」」」
何回言わせるんだ………俺だってショックなんだよ。
傷口に塩を塗るのは勘弁して欲しい。
俺は、お情け程度のお金を貰い、お城からつまみ出された。
俺、これからどうすればいいんだろう。
周りの人が、つまみ出された俺を物珍しそうに見ている。
門番は、笑いそうでプルプルしている。
職業が農夫なら、農業ギルドに向かえばいいって王様が言っていたから、
とりあえずそこに向かうことにしよう。
門番は、俺が行った途端ゲラゲラ笑っていた。腹立つ。
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