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40 母親とは名乗れない ②
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どうして、ロロミナ様がこんな所にいるのかしら。ジンシ侯爵が知らないわけがないわよね。
「ロロミナ、君はジンシ侯爵にメイドとして雇われているのか?」
「セオドア……、いえ、セオドア殿下、そういうわけではございません。彼に復縁を求めたんですけど首を縦に振ってくれなくて、せめて近くで働かせてくださいとお願いしたんです」
ロロミナ様はそう答えると目を潤ませ、セオドア様を見上げた。
普通ならこれで男性は彼女に甘くなるのだろうけれど、セオドア様には効かない。
「メイドとして雇ってくれただけでもありがたいと思ったほうがいい」
「あの……、セオドア殿下は私を誤解しているのです!」
「誤解?」
「はい! あなたは私が浮気していると言って婚約を破棄しましたが、私は浮気などしていません!」
「君はガナヤナ王国の王家が仕入れた情報が間違っていたと言いたいのか?」
セオドア様から睨みつけられたロロミナ様は、視線を泳がせながら話す。
「は、はい。あ、い、いいえ。あの、間違っていたというか、勘違いしたのではないかと思います」
さすがのロロミナ様も情報が間違っていたとは言えないみたいね。必死な様子が滑稽に見えて、失笑してしまいそうだ。
「勘違いじゃないよ。ちゃんと調べたし、君の家族が証言していると言っただろう」
「……わかりました。その理由で婚約を破棄したというのなら、浮気を認めましょう!」
ロロミナ様はふんと鼻を鳴らした。
どうして偉そうなのかしら。メイドが王子様に声をかけるだけでも恐れ多いことなのに、この態度はなんなの?
窘めようとした時、ロロミナ様は私に持っていたシルバートレイを押し付けてきた。
載せられていたグラスがぶつかり合い、カチャカチャと音を立てたものの、割れたり中身がこぼれたりすることはなかったので安堵したが、すぐに怒りの感情がこみ上げる。
「ロロミナ様、あなたは一体、何をしたいのですか?」
「あなただって浮気者なのに、どうしてセオドア殿下の隣にいられるの!? 私と同じように見放されないとおかしいじゃないの!」
「私は浮気なんてしていません」
シルバートレイを返そうとしたが、彼女は頑なに受け取らない。仕方がないので、近くのテーブルの上に置く。
セオドア様が近くを通りかかったウェイターに声をかけ、ジンシ侯爵を呼んでくるように指示をした。
ロロミナ様にある程度は好き勝手に言わせる計画だった。だから、セオドア様も我慢してくれている。
そろそろ茶番は終わらせましょうか。
「浮気しているじゃないの! 元夫だけでなく、セオドア殿下まで騙して! 酷い! 酷すぎるわ」
「騙すとは? 私がセオドア様をどう騙していたか具体的に教えていただけますか?」
「浮気ばかりしているくせに、セオドア殿下の前では大人しいふりをしているのでしょう? 彼は浮気する人は好きではないのよ!」
「私は浮気なんてしていません。あなたと一緒にしないでください」
大きく息を吐き、護衛のために正装をして一緒に出席してくれていた騎士に目を向ける。すると、彼は私たちに近寄ってきて抱きかかえるようにして持っていた大きな封筒を渡してくれた。
パーティーの出席者の注目を浴びていることを確認してから、私は封筒の中から書類を取り出す。
「ここに何が書かれていると思いますか?」
「……わからないわ。何が書かれているんです?」
警戒する様子を見せるロロミナ様に、私は笑顔で答える。
「これはあなたの男性遍歴をまとめたものです。数が多くて本当に驚きました」
「なんですって!?」
ロロミナ様は顔を真っ赤にして、私に掴みかかろうとしたのだった。
「ロロミナ、君はジンシ侯爵にメイドとして雇われているのか?」
「セオドア……、いえ、セオドア殿下、そういうわけではございません。彼に復縁を求めたんですけど首を縦に振ってくれなくて、せめて近くで働かせてくださいとお願いしたんです」
ロロミナ様はそう答えると目を潤ませ、セオドア様を見上げた。
普通ならこれで男性は彼女に甘くなるのだろうけれど、セオドア様には効かない。
「メイドとして雇ってくれただけでもありがたいと思ったほうがいい」
「あの……、セオドア殿下は私を誤解しているのです!」
「誤解?」
「はい! あなたは私が浮気していると言って婚約を破棄しましたが、私は浮気などしていません!」
「君はガナヤナ王国の王家が仕入れた情報が間違っていたと言いたいのか?」
セオドア様から睨みつけられたロロミナ様は、視線を泳がせながら話す。
「は、はい。あ、い、いいえ。あの、間違っていたというか、勘違いしたのではないかと思います」
さすがのロロミナ様も情報が間違っていたとは言えないみたいね。必死な様子が滑稽に見えて、失笑してしまいそうだ。
「勘違いじゃないよ。ちゃんと調べたし、君の家族が証言していると言っただろう」
「……わかりました。その理由で婚約を破棄したというのなら、浮気を認めましょう!」
ロロミナ様はふんと鼻を鳴らした。
どうして偉そうなのかしら。メイドが王子様に声をかけるだけでも恐れ多いことなのに、この態度はなんなの?
窘めようとした時、ロロミナ様は私に持っていたシルバートレイを押し付けてきた。
載せられていたグラスがぶつかり合い、カチャカチャと音を立てたものの、割れたり中身がこぼれたりすることはなかったので安堵したが、すぐに怒りの感情がこみ上げる。
「ロロミナ様、あなたは一体、何をしたいのですか?」
「あなただって浮気者なのに、どうしてセオドア殿下の隣にいられるの!? 私と同じように見放されないとおかしいじゃないの!」
「私は浮気なんてしていません」
シルバートレイを返そうとしたが、彼女は頑なに受け取らない。仕方がないので、近くのテーブルの上に置く。
セオドア様が近くを通りかかったウェイターに声をかけ、ジンシ侯爵を呼んでくるように指示をした。
ロロミナ様にある程度は好き勝手に言わせる計画だった。だから、セオドア様も我慢してくれている。
そろそろ茶番は終わらせましょうか。
「浮気しているじゃないの! 元夫だけでなく、セオドア殿下まで騙して! 酷い! 酷すぎるわ」
「騙すとは? 私がセオドア様をどう騙していたか具体的に教えていただけますか?」
「浮気ばかりしているくせに、セオドア殿下の前では大人しいふりをしているのでしょう? 彼は浮気する人は好きではないのよ!」
「私は浮気なんてしていません。あなたと一緒にしないでください」
大きく息を吐き、護衛のために正装をして一緒に出席してくれていた騎士に目を向ける。すると、彼は私たちに近寄ってきて抱きかかえるようにして持っていた大きな封筒を渡してくれた。
パーティーの出席者の注目を浴びていることを確認してから、私は封筒の中から書類を取り出す。
「ここに何が書かれていると思いますか?」
「……わからないわ。何が書かれているんです?」
警戒する様子を見せるロロミナ様に、私は笑顔で答える。
「これはあなたの男性遍歴をまとめたものです。数が多くて本当に驚きました」
「なんですって!?」
ロロミナ様は顔を真っ赤にして、私に掴みかかろうとしたのだった。
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