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45 ミレイラの母の想い ①
カウン公爵夫人から、ミレイヤについての詳しい話を聞いたフェルリアは、自分の考えが間違っていなかったことを確信した。
ミレイヤはとても穏やかで優しい性格だが、純粋だからこそ裏切りは許せないタイプだった。
(ジェラス様は気を遣ったつもりだったようだけれど、ミレイヤ様にとっては大きなお世話だったんだわ。そうだとわかるものが残っていればいいんだけど……)
フェルリアはお茶会の返事をする前に、存命しているという、ミレイヤの母に会いに行くことを考えていた。
今回の侯爵家の隣の領に住んでいるため、先触れを入れており、日中であればいつでもかまわないと許可をもらっていた。
明日に伺う予定をしていて、ミレイラにはまだ詳しいことは伝えていない。
子育てはしたことがないが、事前にミサファーから楽しみな所へ行く時は、その日に伝えたほうがいいとアドバイスされていたのだ。
『みんながみんなというわけではないと思うけれど、ゼッシュはそうだったわ。数日前にピクニックに行くと言うと、その日の朝になって熱を出したりするのよ』
そんなものなのかと驚きつつ、経験者の意見は素直に受け入れることにした。
(ミレイヤ様もこんな気持ちだったのかも。乳母を雇ってもらっていないみたいだし、ミサファー様はミレイヤ様にとって、好きではないけれど頼りにしていた人だったのかもしれない)
その辺のこともミレイヤの母に詳しく聞いてみたいと思っていたが、孫がいることも知らなかった。
結婚後のジェラスは、ミレイヤを束縛し義両親にさえ会わせていなかった。
理由は遠出をすれば体を壊すというもので、フェルリアにしてみれば、子供を生むほうが余程大変なのにと、聞いた時には呆れ返った。
(しかも、ミレイラ様が生まれた時には、お祖父様にあたる方はご存命だったのよね)
娘の死を知って体調を崩したミレイラの祖父は、後を追うように半年後に亡くなっている。
(孫の存在を知っていれば、また違っていたかもしれない)
たられば論になってしまうので、口に出すつもりはない。だが、フェルリアはそう考えずにいられなかった。
カウン公爵夫人と話し終え、ミレイラのもとに戻った時には、はしゃぎ疲れたのか椅子に座り目をとろんとさせていた。
「眠たいのですか?」
「んーん。ねむたくないです!」
ぱちっと目を開けて答えたものの、すぐに瞼を閉じてしまった。
(はしゃいで疲れているところに、お腹いっぱいになったら余計に眠くなるわよね)
それだけ安心できる場所でもあったのだと、フェルリアは安堵した。
「本当に可愛らしいわ。ベッドで眠ってママを待ちますかと聞いても、ママが見えるとこにいると言って聞かなくて」
「ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」
近づいてきた侯爵夫人に頭を下げた。
「いいのよ。気になさらないで。それよりも聞きたいことがありますの」
「……どのようなことでしょうか」
侯爵夫人は眠ってしまったミレイラを気遣うように、小声で尋ねた。
「ミレイラ様はカダマオ公爵の話をすると怯えているようでしたわ。ミレイラ様の存在を隠していたことといい……」
そこで言葉を止めたが、フェルリアには何を言おうとしているのか理解できた。
「申し訳ございませんが、この場で詳しくお話することはできません。ただ、カダマオ公爵は隠し通すつもりだったようです」
「では、あなたとの結婚は……」
「後継ぎ問題を解決させるためでした」
「まあ! あの方は妻を子供を生む道具としか思っていないのかしら」
侯爵夫人は憤慨した様子で言った。
「ミレイヤ様のこと以外はそう思っているのかもしれません」
(だから、ミサファー様やゼッシュ様のことも簡単に捨てたのよね)
ミレイラへの対応が良くないものだったと、ジェラスにわからせることができるのはミレイヤだけ。しかし、彼女はもうこの世にはいない。
キックスのことは気になるが、カウン公爵夫妻が動いてくれている。それなら、ミレイラの親権を確実にすることを優先しようと改めて決意した。
ミレイヤはとても穏やかで優しい性格だが、純粋だからこそ裏切りは許せないタイプだった。
(ジェラス様は気を遣ったつもりだったようだけれど、ミレイヤ様にとっては大きなお世話だったんだわ。そうだとわかるものが残っていればいいんだけど……)
フェルリアはお茶会の返事をする前に、存命しているという、ミレイヤの母に会いに行くことを考えていた。
今回の侯爵家の隣の領に住んでいるため、先触れを入れており、日中であればいつでもかまわないと許可をもらっていた。
明日に伺う予定をしていて、ミレイラにはまだ詳しいことは伝えていない。
子育てはしたことがないが、事前にミサファーから楽しみな所へ行く時は、その日に伝えたほうがいいとアドバイスされていたのだ。
『みんながみんなというわけではないと思うけれど、ゼッシュはそうだったわ。数日前にピクニックに行くと言うと、その日の朝になって熱を出したりするのよ』
そんなものなのかと驚きつつ、経験者の意見は素直に受け入れることにした。
(ミレイヤ様もこんな気持ちだったのかも。乳母を雇ってもらっていないみたいだし、ミサファー様はミレイヤ様にとって、好きではないけれど頼りにしていた人だったのかもしれない)
その辺のこともミレイヤの母に詳しく聞いてみたいと思っていたが、孫がいることも知らなかった。
結婚後のジェラスは、ミレイヤを束縛し義両親にさえ会わせていなかった。
理由は遠出をすれば体を壊すというもので、フェルリアにしてみれば、子供を生むほうが余程大変なのにと、聞いた時には呆れ返った。
(しかも、ミレイラ様が生まれた時には、お祖父様にあたる方はご存命だったのよね)
娘の死を知って体調を崩したミレイラの祖父は、後を追うように半年後に亡くなっている。
(孫の存在を知っていれば、また違っていたかもしれない)
たられば論になってしまうので、口に出すつもりはない。だが、フェルリアはそう考えずにいられなかった。
カウン公爵夫人と話し終え、ミレイラのもとに戻った時には、はしゃぎ疲れたのか椅子に座り目をとろんとさせていた。
「眠たいのですか?」
「んーん。ねむたくないです!」
ぱちっと目を開けて答えたものの、すぐに瞼を閉じてしまった。
(はしゃいで疲れているところに、お腹いっぱいになったら余計に眠くなるわよね)
それだけ安心できる場所でもあったのだと、フェルリアは安堵した。
「本当に可愛らしいわ。ベッドで眠ってママを待ちますかと聞いても、ママが見えるとこにいると言って聞かなくて」
「ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」
近づいてきた侯爵夫人に頭を下げた。
「いいのよ。気になさらないで。それよりも聞きたいことがありますの」
「……どのようなことでしょうか」
侯爵夫人は眠ってしまったミレイラを気遣うように、小声で尋ねた。
「ミレイラ様はカダマオ公爵の話をすると怯えているようでしたわ。ミレイラ様の存在を隠していたことといい……」
そこで言葉を止めたが、フェルリアには何を言おうとしているのか理解できた。
「申し訳ございませんが、この場で詳しくお話することはできません。ただ、カダマオ公爵は隠し通すつもりだったようです」
「では、あなたとの結婚は……」
「後継ぎ問題を解決させるためでした」
「まあ! あの方は妻を子供を生む道具としか思っていないのかしら」
侯爵夫人は憤慨した様子で言った。
「ミレイヤ様のこと以外はそう思っているのかもしれません」
(だから、ミサファー様やゼッシュ様のことも簡単に捨てたのよね)
ミレイラへの対応が良くないものだったと、ジェラスにわからせることができるのはミレイヤだけ。しかし、彼女はもうこの世にはいない。
キックスのことは気になるが、カウン公爵夫妻が動いてくれている。それなら、ミレイラの親権を確実にすることを優先しようと改めて決意した。
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