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48 父としての謝罪 ①
フェルリアたちがモリアの家に着いたのは昼前だったが、話が長引いたことや、モリアがミレイラを離さなかったため、帰る頃には日が傾き始めていた。
泊まっていってほしいとお願いされたが、ミレイラが宿で待っているミサファーを気にしたため止めた。
昔はミサファーのことを怖がっていたが、謝ってもらった上に優しくしてもらっているので許すことに決めたらしい。
大人ならそう簡単に許せるはずがないことをされている。あっさり許してしまったところは子供らしいとフェルリアは思った。
「どうしても駄目かしら」
「だめ。ミサファーさん、びょーき。ひとりはさみしい。ミレイラも、そうだったからわかります」
きっぱりと断られ、モリアは眉尻を下げて諦めた。
またミレイラを連れてやって来ると、約束して馬車に乗り込む。
見送り続けていたモリアの姿が見えなくなったところで、ミレイラは隣に座るフェルリアに話しかけた。
「どうして、おばあさまは、みんなやさしいのですか?」
「……そうですね。ミレイラ様が優しくて可愛いからではないでしょうか」
「ほんとに?」
「はい。本当です」
「でも、ミレイラはわるいこです」
「どうしてそう思うのですか?」
驚いて尋ねたフェルリアに、ミレイラは眉をひそめて答える。
「ミレイラはパパとママとくらすんです。おばあさまたちとはくらせません」
ミレイラとキックスと三人で暮らせれば、どんなに幸せだろうか。
フェルリアの胸は高鳴ったが、それは現実的な話ではない。
「私はミレイラ様のお父様のお嫁さんなのです。ですから、ミレイラ様のパパと一緒に暮らすことはできません」
「……どうして?」
一瞬にしてミレイラの目に大粒の涙が溜まった。
今にもこぼれ落ちそうな涙を、白いハンカチで拭ってやる。
「ミレイラ様が理解するには、まだ難しいことです。もう少し大きくなったらわかると思います」
「やです! いっしょにくらすです!」
珍しく癇癪を起こしたミレイラに優しく話しかけた。
「私はずっと一緒にいます。それだけでは駄目ですか?」
「……それだと、ママがしあわせじゃない。それに、おとうさま、きらい」
ミレイラはとても優しい子だ。嫌いと言われたら傷つくことだって知っている。それでもジェラスに対しては、そんな思いやりの心が持てなかった。
フェルリアもさすがにそんなことを言ってはいけないと叱ることができない。
「ミレイラ様、安心してください。お父様とは離れて暮らせるように頑張りますから!」
「ほんと?」
「はい」
(キックスの監禁について、ジェラス様がまったくの無関係ではなくなっている。このこととミレイヤ様が残した日記があれば、ミレイラ様の親権は取れるはず)
フェルリアはそう確信し、ミレイラの頭を撫でながら微笑んだ。
「でも、パパともいっしょにすみたいなぁ」
(どうしてそんなにキックスのことを気に入っているのかしら。もしかして、彼に会った?)
口止めされているのだろうが、一応確認してみようと思った時、馬車が停まった。
宿に着いたのかと思ったが、窓の外は人の往来が激しい通りで、宿屋の近くではなかった。
「どうかしたの?」
窓を開けて尋ねたフェルリアに、御者が答える。
「フェルリア様に伝言があるそうです」
彼女が聞き返す前に、馬に乗った騎士が近づいてきた。カダマオ公爵家の騎士の一人だと気づき声をかける。
「どうかしたの?」
「大変です。フェルリア様!」
興奮していた騎士は周りを確認し、冷静になって小声で話し始める。
「まだ公にされていないのですが、当主様がカウン公爵に拘束されたそうです」
「……そう。報告をありがとう」
とうとうこの日が来たのだと、フェルリアは気を引き締めた。
泊まっていってほしいとお願いされたが、ミレイラが宿で待っているミサファーを気にしたため止めた。
昔はミサファーのことを怖がっていたが、謝ってもらった上に優しくしてもらっているので許すことに決めたらしい。
大人ならそう簡単に許せるはずがないことをされている。あっさり許してしまったところは子供らしいとフェルリアは思った。
「どうしても駄目かしら」
「だめ。ミサファーさん、びょーき。ひとりはさみしい。ミレイラも、そうだったからわかります」
きっぱりと断られ、モリアは眉尻を下げて諦めた。
またミレイラを連れてやって来ると、約束して馬車に乗り込む。
見送り続けていたモリアの姿が見えなくなったところで、ミレイラは隣に座るフェルリアに話しかけた。
「どうして、おばあさまは、みんなやさしいのですか?」
「……そうですね。ミレイラ様が優しくて可愛いからではないでしょうか」
「ほんとに?」
「はい。本当です」
「でも、ミレイラはわるいこです」
「どうしてそう思うのですか?」
驚いて尋ねたフェルリアに、ミレイラは眉をひそめて答える。
「ミレイラはパパとママとくらすんです。おばあさまたちとはくらせません」
ミレイラとキックスと三人で暮らせれば、どんなに幸せだろうか。
フェルリアの胸は高鳴ったが、それは現実的な話ではない。
「私はミレイラ様のお父様のお嫁さんなのです。ですから、ミレイラ様のパパと一緒に暮らすことはできません」
「……どうして?」
一瞬にしてミレイラの目に大粒の涙が溜まった。
今にもこぼれ落ちそうな涙を、白いハンカチで拭ってやる。
「ミレイラ様が理解するには、まだ難しいことです。もう少し大きくなったらわかると思います」
「やです! いっしょにくらすです!」
珍しく癇癪を起こしたミレイラに優しく話しかけた。
「私はずっと一緒にいます。それだけでは駄目ですか?」
「……それだと、ママがしあわせじゃない。それに、おとうさま、きらい」
ミレイラはとても優しい子だ。嫌いと言われたら傷つくことだって知っている。それでもジェラスに対しては、そんな思いやりの心が持てなかった。
フェルリアもさすがにそんなことを言ってはいけないと叱ることができない。
「ミレイラ様、安心してください。お父様とは離れて暮らせるように頑張りますから!」
「ほんと?」
「はい」
(キックスの監禁について、ジェラス様がまったくの無関係ではなくなっている。このこととミレイヤ様が残した日記があれば、ミレイラ様の親権は取れるはず)
フェルリアはそう確信し、ミレイラの頭を撫でながら微笑んだ。
「でも、パパともいっしょにすみたいなぁ」
(どうしてそんなにキックスのことを気に入っているのかしら。もしかして、彼に会った?)
口止めされているのだろうが、一応確認してみようと思った時、馬車が停まった。
宿に着いたのかと思ったが、窓の外は人の往来が激しい通りで、宿屋の近くではなかった。
「どうかしたの?」
窓を開けて尋ねたフェルリアに、御者が答える。
「フェルリア様に伝言があるそうです」
彼女が聞き返す前に、馬に乗った騎士が近づいてきた。カダマオ公爵家の騎士の一人だと気づき声をかける。
「どうかしたの?」
「大変です。フェルリア様!」
興奮していた騎士は周りを確認し、冷静になって小声で話し始める。
「まだ公にされていないのですが、当主様がカウン公爵に拘束されたそうです」
「……そう。報告をありがとう」
とうとうこの日が来たのだと、フェルリアは気を引き締めた。
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