55 / 56
54 操り人形ではありません ②
「亡くなられる前のミレイヤ様のあなたへの愛は、日に日に失われていっていたのです」
現実を受け止められないジェラスに、フェルリアは冷たい口調で言った。
「絶対に嘘だ! ミレイヤがそんなことを思うはずがない!」
「なぜ日記帳が実家に送られたのか、あなたは不思議に思いませんか?」
「そ、それは……、私に見られたくなかったからだろう」
「いいえ。最後の日付の日記にはこう書かれていました」
フェルリアは首を横に振り、冷ややかな目でジェラスを見つめる。
「この日記を読めば、現実を見たくない彼はこの日記帳を焼き捨てることでしょう。そうなった時、私の苦しみは誰にも知られないことになってしまう。それは嫌だと」
「な、なら、どうして家族に見せなかった?」
「ミレイヤ様のご家族は、本当にミレイヤ様を愛しておられました。傷ついていたミレイヤ様を助けられなかったことを知れば、きっと自分を責めることだろうと書かれています」
この気持ちは、家族に愛されていないフェルリアには理解しがたかった。
だが、家族を愛しているからこその気持ちだということは納得できた。
「誰かに知られたかったのに、どうして今まで公にされていないんだ?」
キックスに尋ねられ、フェルリアは苦笑して答える。
「日記には、相談もなくミサファー様に子供を生ませ、ゼッシュ様を自分の子として育てろと言ってきたジェラス様が憎いと思う気持ちや、ミレイラ様が愛しくてたまらないと書かれていたわ。最後のほうは、ミレイラ様に宛てたメッセージのようなものも多かったの」
「……じゃあ、いつかミレイラ嬢が自分の実家を訪ねてくることがあれば読ませたかったのか?」
「そこまで書かれてはいないのですが、少なくとも、ジェラス様の手に渡らなければ、日記帳がなかったことにされることは避けられると思ったのではないでしょうか」
日記帳にはミレイラが生まれるまでは、ジェラスへの恨み言が多く書かれていた。
ミレイヤのためだと言うが、結局は跡継ぎがほしかっただけなのだろうと――
それならなぜ、ジェラスと別れるという選択をせず、ミレイラを生むことにしたのか。
その時にはまだ、彼を愛していたからだ。愛していたから、彼の子を生みたいと思った。
自分が生きていた証を残したかった。
しかし、時が経つにつれ、ミレイヤは後悔し始めた。子供を生むことが怖くなったのではない。ただ、ジェラスの子を生むことが嫌になった。
それでも自分の願いでお腹に宿った子供の命を奪うことはできない。だから、父親がジェラスということを忘れ、注いでいた愛情の全てをミレイラだけに注ぐことにした。
(ジェラス様がミレイラ様を邪険に扱う理由は逆恨みだった)
ミレイヤは気づかなかった。自分の子供に愛情を注ぐことは当たり前で、ジェラスよりもミレイラを優先することは当然である。
そう思っていた。
しかし、ジェラスは違う。何よりも自分だけを愛してほしかった。死ぬ間際までミレイラのことばかり口にしていたミレイヤに、自分のことだけ考えていてほしいと思っていた。
ミレイラへの嫉妬は憎しみに変わり、いつしか、自分の愛する人を奪った憎き者へと変化した。
「絶対に嘘だ! ミレイヤは私だけを愛していた! ミレイラを生んで死ぬくらいなら、生まなきゃ良かったと思っていたはずだ!」
これ以上聞きたくないと言わんばかりに、ジェラスは両手で耳を押さえた。
「いいえ。そうではありません。この字はミレイヤ様の字でしょう?」
「……う……あ、いや……」
目の前に突きつけられたのは日記帳のあるページ。
『彼は私のことを自分の操り人形だと思っている。違う。私は彼の操り人形なんかじゃない。どうしたら彼と離れて、ミレイラと共に幸せに暮らせるのかしら』
ミレイラが生まれてすぐの日付にはそう記されていた。
「あなたがミレイヤ様の筆跡を見間違えるわけはないですよね?」
ミレイヤを愛しているなら、この筆跡を否定できるわけがない。
フェルリアが尋ねると、ジェラスの目から大粒の涙が溢れた。
現実を受け止められないジェラスに、フェルリアは冷たい口調で言った。
「絶対に嘘だ! ミレイヤがそんなことを思うはずがない!」
「なぜ日記帳が実家に送られたのか、あなたは不思議に思いませんか?」
「そ、それは……、私に見られたくなかったからだろう」
「いいえ。最後の日付の日記にはこう書かれていました」
フェルリアは首を横に振り、冷ややかな目でジェラスを見つめる。
「この日記を読めば、現実を見たくない彼はこの日記帳を焼き捨てることでしょう。そうなった時、私の苦しみは誰にも知られないことになってしまう。それは嫌だと」
「な、なら、どうして家族に見せなかった?」
「ミレイヤ様のご家族は、本当にミレイヤ様を愛しておられました。傷ついていたミレイヤ様を助けられなかったことを知れば、きっと自分を責めることだろうと書かれています」
この気持ちは、家族に愛されていないフェルリアには理解しがたかった。
だが、家族を愛しているからこその気持ちだということは納得できた。
「誰かに知られたかったのに、どうして今まで公にされていないんだ?」
キックスに尋ねられ、フェルリアは苦笑して答える。
「日記には、相談もなくミサファー様に子供を生ませ、ゼッシュ様を自分の子として育てろと言ってきたジェラス様が憎いと思う気持ちや、ミレイラ様が愛しくてたまらないと書かれていたわ。最後のほうは、ミレイラ様に宛てたメッセージのようなものも多かったの」
「……じゃあ、いつかミレイラ嬢が自分の実家を訪ねてくることがあれば読ませたかったのか?」
「そこまで書かれてはいないのですが、少なくとも、ジェラス様の手に渡らなければ、日記帳がなかったことにされることは避けられると思ったのではないでしょうか」
日記帳にはミレイラが生まれるまでは、ジェラスへの恨み言が多く書かれていた。
ミレイヤのためだと言うが、結局は跡継ぎがほしかっただけなのだろうと――
それならなぜ、ジェラスと別れるという選択をせず、ミレイラを生むことにしたのか。
その時にはまだ、彼を愛していたからだ。愛していたから、彼の子を生みたいと思った。
自分が生きていた証を残したかった。
しかし、時が経つにつれ、ミレイヤは後悔し始めた。子供を生むことが怖くなったのではない。ただ、ジェラスの子を生むことが嫌になった。
それでも自分の願いでお腹に宿った子供の命を奪うことはできない。だから、父親がジェラスということを忘れ、注いでいた愛情の全てをミレイラだけに注ぐことにした。
(ジェラス様がミレイラ様を邪険に扱う理由は逆恨みだった)
ミレイヤは気づかなかった。自分の子供に愛情を注ぐことは当たり前で、ジェラスよりもミレイラを優先することは当然である。
そう思っていた。
しかし、ジェラスは違う。何よりも自分だけを愛してほしかった。死ぬ間際までミレイラのことばかり口にしていたミレイヤに、自分のことだけ考えていてほしいと思っていた。
ミレイラへの嫉妬は憎しみに変わり、いつしか、自分の愛する人を奪った憎き者へと変化した。
「絶対に嘘だ! ミレイヤは私だけを愛していた! ミレイラを生んで死ぬくらいなら、生まなきゃ良かったと思っていたはずだ!」
これ以上聞きたくないと言わんばかりに、ジェラスは両手で耳を押さえた。
「いいえ。そうではありません。この字はミレイヤ様の字でしょう?」
「……う……あ、いや……」
目の前に突きつけられたのは日記帳のあるページ。
『彼は私のことを自分の操り人形だと思っている。違う。私は彼の操り人形なんかじゃない。どうしたら彼と離れて、ミレイラと共に幸せに暮らせるのかしら』
ミレイラが生まれてすぐの日付にはそう記されていた。
「あなたがミレイヤ様の筆跡を見間違えるわけはないですよね?」
ミレイヤを愛しているなら、この筆跡を否定できるわけがない。
フェルリアが尋ねると、ジェラスの目から大粒の涙が溢れた。
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします
柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。
正確には、忘れられたわけではない。
エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。
記念のディナーも、予約していた。
薔薇だって、一輪、用意していた。
ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。
「すぐ戻る」
彼が戻ったのは、三時間後だった。
蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。
それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。
「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」
完璧な微笑みで、完璧にそう言った。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。