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第4話 変な誤解はしないでね
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わたしから話を聞いたお父様は、ローリーのしていることや彼がわたしに話した内容について納得できないと言って、ローリーのご両親に抗議してくれることになった。
とても怒ってくれたけれど、すぐに婚約解消などと言い出さないのは、大人の事情というものがあるんだと思う。
ローリーの両親は彼が最近、頻繁にどこかに出かけていることは知っていた。でも、どこに行っているかまでは把握していなかった。婚活パーティーなどに連れて行った御者はローリーに口止めされていたので言えなかったし、今回のお茶会についても貴族の家に訪問したというくらいにしか思っていなかったから、当主に報告はしていなかったそうだ。
「ローリーの両親も彼にどうしてそんなことをするのか聞いたらしいが、理解できなかったと言っていた」
お父様は大きなため息を吐いたあと、そう話してくれた。
「その様子だとローリーは自分が悪いことをしたなんて、本当に思っていないんですね?」
「ああ。全てはリリアーナに似合う男になるためだと言い張っているようだよ」
「お父様は、本当にそう思いますか?」
向かいに座るお父様に尋ねると、悲しげな表情になって首を横に振った。
「私には理解できない。ただ、ローリーなりの考えもあるだろうから難しいところだ。それよりもリリアーナ、君はどうしたい? ローリーとの婚約を解消したいかい?」
「……わからないんです。本当にローリーがわたしのことを思ってくれていると言うなら、彼が馬鹿なことをしなくていいようなわたしになればいいだけだとも思いますし……」
こんなことを考えるなんて甘いかしら。
ローリーに大しての愛情が以前と変わらないかと問われれば、そういうわけでもない。ただ、ローリーが私の好きだった彼に戻ってくれるなら……と迷う気持ちもある。
それにしても、ローリーはどうしていきなり、あんな事を言い出したのかしら? ジェインのことを気にしていたみたいだけど、ジェインと何かあったのかしら?
明日は学園の登校日だし、改めてローリーに聞いてみる事にしよう。
「私たちとしては、ローリーがこのままでいるなら、婚約の解消を考えようと思っている。だけどリリアーナがローリーとどうしても一緒になりたいというなら、もう少し様子見でもいい」
お父様の表情だけ見ると、婚約を解消した方が良いと思っているのがよくわかった。わたしだってお父様の立場ならそう思うと思う。
このままだと、婚約の解消か破棄は確実でしょう。とにかく、ローリーがどうして変わってしまったのか、納得できるまで調べてみようと思った。
*******
次の日、自分のクラスに入ると、すぐにローリーの姿を探した。
ローリーはいつも私よりも早くに来ているから、席に座って本を読んでいるローリーの姿をすぐに見つけられた。
「おはよう、ローリー」
「おはよう、僕の可愛いリリアーナ」
挨拶をしながら近付くと、ローリーは読んでいた本を閉じて挨拶してくれた。
「もう機嫌は直してくれたかな?」
「いいえ。それよりもいくつか気になることがあるから聞いても良いかしら?」
「それはかまわないけど、そんなに怖い顔してどうしたんだい?」
ローリーはどこか不安げな顔でわたしを見つめた。
もしかしたら、彼も両親から婚約の件で何か言われたのかもしれない。
「どうして、悪い男になろうと思ったの? しかも、ジェインみたいになりたいと言っていたわよね? あなたはあなたでいいじゃない。わたしを傷つけてまでしなくちゃいけないことなの?」
尋ねてみると、ローリーは気まずそうな顔をして、わたしから視線をそらした。
「ねえ、ローリー、どういうことか教えてほしいの」
「わかったよ」
ローリーは頷くと、ぽつりぽつりと話し始める。
「……実は、以前、僕のファンの子が、君とジェインのほうがお似合いだという話をしているのを聞いたんだ」
「……わたしとジェインが?」
「うん。僕にはもっとおしとやかな女性が似合っていて、君のようながさつな人間にはジェインのような相手が良いって! 僕はそれを聞いてショックだった! だから、ジェインのように少し悪い男になろうと思ったんだ!」
「ま、待って! わたしのことを考えてくれたのは嬉しいけれど、ジェインは悪い人じゃないし、彼は女性と遊び歩いたりしていないわ!」
ジェインには最近まで婚約者がいたが、女性の浮気が原因で、婚約は解消されていた。でも、婚約者を求めているという話も聞いたことがない。
どうして、ジェインのようになりたいと言っているのに、彼がしていないことをしようとするのかしら?
「ジェインより目立たないといけないと思ったんだ」
「ねえ、ローリー、あなたはジェインにこだわりすぎてるわ。あなたとジェインは仲が良かったでしょう? それに、わたしとあなたとの婚約が決まってからは、ジェインはわたし達から距離を置くようになったし、変な誤解はしないでね」
ジェインから、わたしと離れると言われたことを思い出す。
最初は悲しかったけれど、婚約者のいるわたしが異性であるジェインと仲良くしていたら、世間体が良くないのはわかる。
「誤解されるようなことをする君が悪いんだ」
「だから、ジェインと会ったのは学園以外では、昨日のお茶会が久しぶりのことで、あなたに誤解されるような関係じゃない!」
否定すると、ローリーはやれやれといった感じで話し始める。
「可愛い、リリアーナ。君はわかっていない。ジェインはね、君のことが好きだったんだ。だから、僕たちと離れたんだよ。だけど、僕よりも自分のほうがリリアーナとお似合いだと言われていることがわかれば、ジェインは君を僕から奪おうとするかもしれない。それが怖いんだ! だから、君に好かれるように努力するから、僕を捨てないでくれ!」
ジェインがわたしを好きかどうかはわからない。もし、本当だったとしても、ローリーが言っていい話ではない。
「ローリー、捨てないでと思うなら、女性ばかりいる所に出かけないでほしい」
「ほ、本当に君は僕だけを愛してくれるの?」
「あなたが浮気したり、浮気まがいのことをしなければね?」
クラスメイトが挨拶する声が聞こえて振り返ると、ジェインが教室に入ってきたところだった。
ローリーが彼のことを気にしているようだし、今は話を終えることにする。
「ローリー、詳しい話は放課後にしましょう」
話しかけられたローリーは首を大きく縦に振った。
とても怒ってくれたけれど、すぐに婚約解消などと言い出さないのは、大人の事情というものがあるんだと思う。
ローリーの両親は彼が最近、頻繁にどこかに出かけていることは知っていた。でも、どこに行っているかまでは把握していなかった。婚活パーティーなどに連れて行った御者はローリーに口止めされていたので言えなかったし、今回のお茶会についても貴族の家に訪問したというくらいにしか思っていなかったから、当主に報告はしていなかったそうだ。
「ローリーの両親も彼にどうしてそんなことをするのか聞いたらしいが、理解できなかったと言っていた」
お父様は大きなため息を吐いたあと、そう話してくれた。
「その様子だとローリーは自分が悪いことをしたなんて、本当に思っていないんですね?」
「ああ。全てはリリアーナに似合う男になるためだと言い張っているようだよ」
「お父様は、本当にそう思いますか?」
向かいに座るお父様に尋ねると、悲しげな表情になって首を横に振った。
「私には理解できない。ただ、ローリーなりの考えもあるだろうから難しいところだ。それよりもリリアーナ、君はどうしたい? ローリーとの婚約を解消したいかい?」
「……わからないんです。本当にローリーがわたしのことを思ってくれていると言うなら、彼が馬鹿なことをしなくていいようなわたしになればいいだけだとも思いますし……」
こんなことを考えるなんて甘いかしら。
ローリーに大しての愛情が以前と変わらないかと問われれば、そういうわけでもない。ただ、ローリーが私の好きだった彼に戻ってくれるなら……と迷う気持ちもある。
それにしても、ローリーはどうしていきなり、あんな事を言い出したのかしら? ジェインのことを気にしていたみたいだけど、ジェインと何かあったのかしら?
明日は学園の登校日だし、改めてローリーに聞いてみる事にしよう。
「私たちとしては、ローリーがこのままでいるなら、婚約の解消を考えようと思っている。だけどリリアーナがローリーとどうしても一緒になりたいというなら、もう少し様子見でもいい」
お父様の表情だけ見ると、婚約を解消した方が良いと思っているのがよくわかった。わたしだってお父様の立場ならそう思うと思う。
このままだと、婚約の解消か破棄は確実でしょう。とにかく、ローリーがどうして変わってしまったのか、納得できるまで調べてみようと思った。
*******
次の日、自分のクラスに入ると、すぐにローリーの姿を探した。
ローリーはいつも私よりも早くに来ているから、席に座って本を読んでいるローリーの姿をすぐに見つけられた。
「おはよう、ローリー」
「おはよう、僕の可愛いリリアーナ」
挨拶をしながら近付くと、ローリーは読んでいた本を閉じて挨拶してくれた。
「もう機嫌は直してくれたかな?」
「いいえ。それよりもいくつか気になることがあるから聞いても良いかしら?」
「それはかまわないけど、そんなに怖い顔してどうしたんだい?」
ローリーはどこか不安げな顔でわたしを見つめた。
もしかしたら、彼も両親から婚約の件で何か言われたのかもしれない。
「どうして、悪い男になろうと思ったの? しかも、ジェインみたいになりたいと言っていたわよね? あなたはあなたでいいじゃない。わたしを傷つけてまでしなくちゃいけないことなの?」
尋ねてみると、ローリーは気まずそうな顔をして、わたしから視線をそらした。
「ねえ、ローリー、どういうことか教えてほしいの」
「わかったよ」
ローリーは頷くと、ぽつりぽつりと話し始める。
「……実は、以前、僕のファンの子が、君とジェインのほうがお似合いだという話をしているのを聞いたんだ」
「……わたしとジェインが?」
「うん。僕にはもっとおしとやかな女性が似合っていて、君のようながさつな人間にはジェインのような相手が良いって! 僕はそれを聞いてショックだった! だから、ジェインのように少し悪い男になろうと思ったんだ!」
「ま、待って! わたしのことを考えてくれたのは嬉しいけれど、ジェインは悪い人じゃないし、彼は女性と遊び歩いたりしていないわ!」
ジェインには最近まで婚約者がいたが、女性の浮気が原因で、婚約は解消されていた。でも、婚約者を求めているという話も聞いたことがない。
どうして、ジェインのようになりたいと言っているのに、彼がしていないことをしようとするのかしら?
「ジェインより目立たないといけないと思ったんだ」
「ねえ、ローリー、あなたはジェインにこだわりすぎてるわ。あなたとジェインは仲が良かったでしょう? それに、わたしとあなたとの婚約が決まってからは、ジェインはわたし達から距離を置くようになったし、変な誤解はしないでね」
ジェインから、わたしと離れると言われたことを思い出す。
最初は悲しかったけれど、婚約者のいるわたしが異性であるジェインと仲良くしていたら、世間体が良くないのはわかる。
「誤解されるようなことをする君が悪いんだ」
「だから、ジェインと会ったのは学園以外では、昨日のお茶会が久しぶりのことで、あなたに誤解されるような関係じゃない!」
否定すると、ローリーはやれやれといった感じで話し始める。
「可愛い、リリアーナ。君はわかっていない。ジェインはね、君のことが好きだったんだ。だから、僕たちと離れたんだよ。だけど、僕よりも自分のほうがリリアーナとお似合いだと言われていることがわかれば、ジェインは君を僕から奪おうとするかもしれない。それが怖いんだ! だから、君に好かれるように努力するから、僕を捨てないでくれ!」
ジェインがわたしを好きかどうかはわからない。もし、本当だったとしても、ローリーが言っていい話ではない。
「ローリー、捨てないでと思うなら、女性ばかりいる所に出かけないでほしい」
「ほ、本当に君は僕だけを愛してくれるの?」
「あなたが浮気したり、浮気まがいのことをしなければね?」
クラスメイトが挨拶する声が聞こえて振り返ると、ジェインが教室に入ってきたところだった。
ローリーが彼のことを気にしているようだし、今は話を終えることにする。
「ローリー、詳しい話は放課後にしましょう」
話しかけられたローリーは首を大きく縦に振った。
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