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第9話 信じられない!
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その日の晩、お父様に今日のローリーとのやり取りについて話をした。
お父様はわたしが知らない間に、ローリーの両親と話をしていたらしく、ローリーが変わってしまった原因について仮説を立ててくれていた。
「皆がジェインのことを褒めていたから、あんな風になったわけじゃないんですか?」
「それもあるかもしれないが、元々、リリアーナとローリーが婚約する以前の話をローリーは聞いたようなんだ」
「……どういうことですか?」
「本来ならば、リリアーナとジェインが婚約するはずだったんだよ」
「わたしとジェインがですか!?」
驚いて聞き返すと、お父様は深刻そうな表情で頷いてから教えてくれる。
「だけど、幼い頃からリリアーナはローリーが好きだっただろう?」
「昔のわたしはジェインのことを乱暴だと思っていましたし、恋愛対象ではなかったんですよね。言葉遣いが悪いだけで、実際に何かされたわけじゃなくかったんですが、ただ、怖かったことは覚えています。ジェインが精神的に大人になってからは、そんなことは思わないようになったんですけど」
わたしも気が強いほうだと思うけど、ガキ大将みたいな人は好きじゃなかった。一緒に成長するにつれて、いつしかジェインは今みたいに落ち着いた正義感の強い人になったけれど、会った頃はジェインが怖かったから、ローリーが天使みたいに見えていたのよね。
そんなことを考えていると、お父様は話を続ける。
「当時、ジェインとリリアーナの婚約の話をしたら、その時のリリアーナが嫌がっただけでなく、ローリーもそんなの嫌だって暴れたんだよ。それを見たジェインがリリアーナの婚約者はローリーのほうが良いと言ってくれたんだ」
お父様の言葉を聞いて、何だか申し訳ない気持ちになった。
わたしとローリーの婚約が決まったのは、わたしたちが5歳になる年だったと聞いている。そんなことを言ったことは覚えていないけど、今となってはジェインに失礼だったと思う。
子供の頃の話とはいえ、色んな人に迷惑をかけてしまっていたのね。
「リリアーナもローリーも16歳だから子供であることは確かだ。それに婚約を解消したら、リリアーナを嫁にもらいたいと思う貴族も、一人を除いてはいなくるなだろう」
「……もしかして、ジェインですか?」
「今のジェインはリリアーナのことをどう思っているのかわからないが、彼に意中の女性がいない限りは、こちらから申し込んでも断ってきたりはしないと思う。ジェインの家族とリリアーナは仲も良いからね」
「でも、お父様、そんなことをしたらローリーがまた何か言い出すかもしれません」
「わかっているよ。たとえ人が変わったみたいになってしまったとしても、好きだった人をそう簡単に忘れられることなんて、よっぽどじゃない限りできないだろう。若い頃なんてそんなもんだ。私たち家族は、お前に駆け落ちなんかしてほしくない。婚約の解消についてはローリーのことを吹っ切れてからで良いと思っているよ」
お父様の気持ちはとても嬉しかった。だけど、今日のローリーのことを思うと、冷たいと言われてしまうかもしれないが、わたしの気持ちはもうほとんど冷めてしまっている。
彼はそれを恐れていて必死に頑張ってくれていたみたいだけど、彼のしたことはわたしにとっては逆効果だった。こんなことを言ったら冷たい人だと周りには思われるかしら。
「ローリーは婚約の解消を認めてくれるでしょうか」
「ローリーの両親は認めてくれているんだが、何か気になるのかい?」
「彼自身が納得してくれるかがわからなくて…」
「そういうことか。でも、自分から遊びに出歩いているのに婚約の解消を認めないなんておかしいじゃないか」
不思議そうにするお父様に、ローリーから聞いた話をすると、お父様は眉根を寄せて唸る。
「うーん。今いちローリーが何を考えているのかわからないなぁ。言えるのは、ジェインに勝てる何かを探したいのかなってとこか」
「どうしてジェイン限定で張り合うのかしら。お父様、わたしはそんなにジェインのことを好きそうに見えましたか?」
「いや、リリアーナはローリーしか見ていないと思っていたよ」
そんな話をしていた時だった。ローリーの両親が訪ねてきたと執事から連絡があった。わたしにも聞いてほしい話だと言うので、お父様と一緒に応接室で話を聞くことになった。
夜に訪ねてくるなんてよっぽどのことだ。ローリーに何かあったのだろうかと、不安な気持ちになった。
「申し訳ございません!」
お父様と私が応接室に入ると、ローリーの両親である、エルゼバン子爵と夫人がカーペットに額を付けて謝ってきた。
「ど、どうしたんだ、いきなり。ローリのことかい? 話を聞くから、とにかく顔を上げてくれ」
お父様が二人にソファに座るように促すと、顔を上げたエルゼバン子爵が、わたしを見つめる。
「リリアーナ様にも本当に申し訳ない」
「あの、何があったんですか?」
ローリーに暴力をふるわれたり、不快な思いをさせられたことは確か。だけど、二人の様子からして、それだけのことじゃないような気がした。すると、子爵夫人が涙しながら口を開く。
「勝手なお願いで申し訳ないのですが、ローリーとの婚約を破棄させていただけないでしょうか」
「えっ!?」
まさか、向こうから申し出があるとは思っていなかったので驚くと、お父様が尋ねる。
「婚約の破棄についてだが、一体何があったんだい? とりあえず話を聞かせてくれないか」
顔は上げたけれど、その場に両膝を付けたままだった子爵夫妻は顔を見合わせた。少しの間が空いたあと、子爵が代表して口を開く。
「私たちの管理不足で申し訳ございません。ローリーが………」
え?
まさか、死んじゃったとかではないわよね!?
嫌な考えが頭をよぎったけれど、そうではなかった。
「合意の上ではありますが、ローリーが自分に好意を持ってくれている女性と体の関係を持ってしまいました」
信じられない!
悪い男になる、ってそういう意味だったの!?
お父様はわたしが知らない間に、ローリーの両親と話をしていたらしく、ローリーが変わってしまった原因について仮説を立ててくれていた。
「皆がジェインのことを褒めていたから、あんな風になったわけじゃないんですか?」
「それもあるかもしれないが、元々、リリアーナとローリーが婚約する以前の話をローリーは聞いたようなんだ」
「……どういうことですか?」
「本来ならば、リリアーナとジェインが婚約するはずだったんだよ」
「わたしとジェインがですか!?」
驚いて聞き返すと、お父様は深刻そうな表情で頷いてから教えてくれる。
「だけど、幼い頃からリリアーナはローリーが好きだっただろう?」
「昔のわたしはジェインのことを乱暴だと思っていましたし、恋愛対象ではなかったんですよね。言葉遣いが悪いだけで、実際に何かされたわけじゃなくかったんですが、ただ、怖かったことは覚えています。ジェインが精神的に大人になってからは、そんなことは思わないようになったんですけど」
わたしも気が強いほうだと思うけど、ガキ大将みたいな人は好きじゃなかった。一緒に成長するにつれて、いつしかジェインは今みたいに落ち着いた正義感の強い人になったけれど、会った頃はジェインが怖かったから、ローリーが天使みたいに見えていたのよね。
そんなことを考えていると、お父様は話を続ける。
「当時、ジェインとリリアーナの婚約の話をしたら、その時のリリアーナが嫌がっただけでなく、ローリーもそんなの嫌だって暴れたんだよ。それを見たジェインがリリアーナの婚約者はローリーのほうが良いと言ってくれたんだ」
お父様の言葉を聞いて、何だか申し訳ない気持ちになった。
わたしとローリーの婚約が決まったのは、わたしたちが5歳になる年だったと聞いている。そんなことを言ったことは覚えていないけど、今となってはジェインに失礼だったと思う。
子供の頃の話とはいえ、色んな人に迷惑をかけてしまっていたのね。
「リリアーナもローリーも16歳だから子供であることは確かだ。それに婚約を解消したら、リリアーナを嫁にもらいたいと思う貴族も、一人を除いてはいなくるなだろう」
「……もしかして、ジェインですか?」
「今のジェインはリリアーナのことをどう思っているのかわからないが、彼に意中の女性がいない限りは、こちらから申し込んでも断ってきたりはしないと思う。ジェインの家族とリリアーナは仲も良いからね」
「でも、お父様、そんなことをしたらローリーがまた何か言い出すかもしれません」
「わかっているよ。たとえ人が変わったみたいになってしまったとしても、好きだった人をそう簡単に忘れられることなんて、よっぽどじゃない限りできないだろう。若い頃なんてそんなもんだ。私たち家族は、お前に駆け落ちなんかしてほしくない。婚約の解消についてはローリーのことを吹っ切れてからで良いと思っているよ」
お父様の気持ちはとても嬉しかった。だけど、今日のローリーのことを思うと、冷たいと言われてしまうかもしれないが、わたしの気持ちはもうほとんど冷めてしまっている。
彼はそれを恐れていて必死に頑張ってくれていたみたいだけど、彼のしたことはわたしにとっては逆効果だった。こんなことを言ったら冷たい人だと周りには思われるかしら。
「ローリーは婚約の解消を認めてくれるでしょうか」
「ローリーの両親は認めてくれているんだが、何か気になるのかい?」
「彼自身が納得してくれるかがわからなくて…」
「そういうことか。でも、自分から遊びに出歩いているのに婚約の解消を認めないなんておかしいじゃないか」
不思議そうにするお父様に、ローリーから聞いた話をすると、お父様は眉根を寄せて唸る。
「うーん。今いちローリーが何を考えているのかわからないなぁ。言えるのは、ジェインに勝てる何かを探したいのかなってとこか」
「どうしてジェイン限定で張り合うのかしら。お父様、わたしはそんなにジェインのことを好きそうに見えましたか?」
「いや、リリアーナはローリーしか見ていないと思っていたよ」
そんな話をしていた時だった。ローリーの両親が訪ねてきたと執事から連絡があった。わたしにも聞いてほしい話だと言うので、お父様と一緒に応接室で話を聞くことになった。
夜に訪ねてくるなんてよっぽどのことだ。ローリーに何かあったのだろうかと、不安な気持ちになった。
「申し訳ございません!」
お父様と私が応接室に入ると、ローリーの両親である、エルゼバン子爵と夫人がカーペットに額を付けて謝ってきた。
「ど、どうしたんだ、いきなり。ローリのことかい? 話を聞くから、とにかく顔を上げてくれ」
お父様が二人にソファに座るように促すと、顔を上げたエルゼバン子爵が、わたしを見つめる。
「リリアーナ様にも本当に申し訳ない」
「あの、何があったんですか?」
ローリーに暴力をふるわれたり、不快な思いをさせられたことは確か。だけど、二人の様子からして、それだけのことじゃないような気がした。すると、子爵夫人が涙しながら口を開く。
「勝手なお願いで申し訳ないのですが、ローリーとの婚約を破棄させていただけないでしょうか」
「えっ!?」
まさか、向こうから申し出があるとは思っていなかったので驚くと、お父様が尋ねる。
「婚約の破棄についてだが、一体何があったんだい? とりあえず話を聞かせてくれないか」
顔は上げたけれど、その場に両膝を付けたままだった子爵夫妻は顔を見合わせた。少しの間が空いたあと、子爵が代表して口を開く。
「私たちの管理不足で申し訳ございません。ローリーが………」
え?
まさか、死んじゃったとかではないわよね!?
嫌な考えが頭をよぎったけれど、そうではなかった。
「合意の上ではありますが、ローリーが自分に好意を持ってくれている女性と体の関係を持ってしまいました」
信じられない!
悪い男になる、ってそういう意味だったの!?
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