8 / 43
6 ご迷惑おかけして申し訳ございません
しおりを挟む
旦那様が私の部屋から出て行かれて少ししてから、ジャスミンが戻ってきました。
自分がいない間に何もなかったかと聞かれましたが、色々とありましたので、説明するのも面倒で、旦那様が来てくださった事だけは話をしました。
すると、驚いた表情でジャスミンが聞いてきます。
「昨日は嫌な感じでしたが、態度ががらりと変わられたのですね。一体、旦那様は何を考えていらっしゃるのでしょうか? まさか、奥様と話をしてみて、奥様に興味を持たれたとか?」
「それはなきにしもあらずかもしれません」
興味を持たざるを得なくなった、というのが正しいかもしれませんが。
あそこで躓いたのは、何か運命的なものを感じます。
そうでないと、私と旦那様は、お互いに嫌な感情の方が多かったかもしれません。
「一体、何があったのか気になりますが、教えてもらえないのですよね?」
「ごめんなさいね。でも、ジャスミンが心配する事案ではないから安心して」
「奥様の今日の様子を見ていますと、ちっとも安心できません」
きっぱりと言われてしまい、返す言葉がありません。
ローラ様やキックス様に言いたい事をしょっぱなから言ってしまいましたからね。
我慢を覚えなければいけないというのに!
「反省はしていますよ。これからは気を付けようと思います」
「旦那様が、思っていたより常識のある方でしたから良かったものの、そうでなければ大変な事になっていたかもしれないんですから! 結婚してすぐに追い出される様な事にならなくて本当に良かったです」
興奮した様子でジャスミンは言った後、すぐに何かを思い出したのか、エプロンドレスのポケットを探り、一通の手紙を取り出しました。
「もう、ローラ様の件についてお返事が来たんですか?」
「違います。ヒート様からです」
「お兄様から?」
聞き返しながら、ジャスミンの手から封の切られた封筒を受け取ります。
封が切られているのは危険なものが入っていたりしたら大変なので、いつもジャスミンやメイド達が先に開けて、中身を確認してくれていたので、こちらの屋敷に来ても同じようにしてくれたようです。
手紙を取り出して読んでみると、驚き、という程ではないですが、旦那様にお伝えしなければいけない内容が書かれてありました。
「大変です。これは旦那様にお伝えしないと」
「何が書かれていたのですか?」
他人からの手紙は、ジャスミン達に先に読んでもらっているのですが、家族からの手紙は封筒に書かれている宛名や差出人の筆跡などでわかるため、中身は読まないようにしてくれているので、ジャスミンが聞いてきます。
「お兄様が様子を見にいらっしゃるそうです」
「え? ヒート様が? 奥様はまだ結婚して二日目ですよね? いつ、いらっしゃるんです?」
「五日後だそうです」
「相変わらずの溺愛ぶりですね…」
ジャスミンが呆れた様な顔をして言いました。
そうなのです。
お兄様は家族というつながりをとても大事にしていらして、もちろん、私の義理の姉である奥様の事もとても大事にしていますし、お父様の事もお母様の事も、そして、妹である私の事もとても大事に、いや、私の場合は愛玩動物の様に可愛がってくれています。
お兄様の手紙の最後には、お兄様の奥様から、ヒートを止められなくてごめんなさい、という謝罪の言葉が書かれていました。
「お義姉さまが離婚すると、お兄様に言うくらいしないと来るでしょうし、しょうがないですね」
お兄様の中では、もし、私とお義姉さま、どっちを取るかといったら、恋愛ではお義姉さま、命なら両方というタイプです。
お義姉さまであるジーニ様も、お兄様の気持ちはわかっていらっしゃるので、必要以上に妹を可愛がっているお兄様を許して差し上げてるのだと思われます。
ただ、呆れてはいらっしゃいますが…。
そういえば、お兄様は旦那様の呪いの事を知っているのかしら?
旦那様に聞いてみないといけません。
いえ、それよりも、まずはお兄様の来訪の日にちを伝えなければいけません。
いくら仲が良かったといっても、旦那様は公爵です。
友人であり、妻の兄とはいえ、屋敷にいきなり押しかけてくるのは失礼でしょうからね。
そう思った私は、慌てて、旦那様の部屋に向かったのでした。
旦那様は私からの報告を聞いて、最初は呆れていらっしゃいましたが「そういえば…」と呟いてから、手紙の束から、封筒を一つ抜き出して、私に渡して下さいました。
見てみると、差出人はお兄様からで、妹の様子を知りたいから、五日後に伺いたいという内容の手紙でした。
「返事をしないといけないな」
「私からしておきますので」
「いや、俺からもするよ。それから、君が望むなら、ヒートを歓迎しよう」
「私が嫌だと言ったら、夫婦仲が上手くいっていないのかと心配して、余計に様子を見に来たがると思います。泊まっていったりはしませんので、兄に来てもらっても良いでしょうか」
「困った奴だな」
旦那様は、呆れながらも、お兄様の来訪を許可して下さいました。
「ご迷惑おかけして申し訳ございません」
「君は気にしなくていい。ヒートは君の事を変わった妹だと言っていたが、女性の話が出ると、君の話ばかりしていたから、シスコンだろうな、とは思っていたら、やはりそうだったのだな」
「学生時代からご迷惑おかけしていた様で申し訳ございません。そういえば、兄は、旦那様の呪いについては知っているのですか?」
「いや。呪いは学園を卒業後だからな」
「お話されるおつもりは?」
私の問いに旦那様は少し考えてから答えてくれます。
「話すなら、まずは試してからだ」
「試す…? という事は…?」
「瞳を輝かせるのはやめてくれ」
期待を込めて旦那様を見ると、呆れた顔をされてしまいました。
そういえば、お兄様は犬が苦手だけれど大丈夫かしら?
アレルギーという訳ではないので、中身が旦那様とわかれば何とかなるでしょうか…。
お兄様が旦那様と会話が出来なければ、お兄様を見る目も変わってきますので、会話できる事を祈らなければ…。
そして、五日後の日の朝、お兄様がクロフォード邸を訪れたのでした。
自分がいない間に何もなかったかと聞かれましたが、色々とありましたので、説明するのも面倒で、旦那様が来てくださった事だけは話をしました。
すると、驚いた表情でジャスミンが聞いてきます。
「昨日は嫌な感じでしたが、態度ががらりと変わられたのですね。一体、旦那様は何を考えていらっしゃるのでしょうか? まさか、奥様と話をしてみて、奥様に興味を持たれたとか?」
「それはなきにしもあらずかもしれません」
興味を持たざるを得なくなった、というのが正しいかもしれませんが。
あそこで躓いたのは、何か運命的なものを感じます。
そうでないと、私と旦那様は、お互いに嫌な感情の方が多かったかもしれません。
「一体、何があったのか気になりますが、教えてもらえないのですよね?」
「ごめんなさいね。でも、ジャスミンが心配する事案ではないから安心して」
「奥様の今日の様子を見ていますと、ちっとも安心できません」
きっぱりと言われてしまい、返す言葉がありません。
ローラ様やキックス様に言いたい事をしょっぱなから言ってしまいましたからね。
我慢を覚えなければいけないというのに!
「反省はしていますよ。これからは気を付けようと思います」
「旦那様が、思っていたより常識のある方でしたから良かったものの、そうでなければ大変な事になっていたかもしれないんですから! 結婚してすぐに追い出される様な事にならなくて本当に良かったです」
興奮した様子でジャスミンは言った後、すぐに何かを思い出したのか、エプロンドレスのポケットを探り、一通の手紙を取り出しました。
「もう、ローラ様の件についてお返事が来たんですか?」
「違います。ヒート様からです」
「お兄様から?」
聞き返しながら、ジャスミンの手から封の切られた封筒を受け取ります。
封が切られているのは危険なものが入っていたりしたら大変なので、いつもジャスミンやメイド達が先に開けて、中身を確認してくれていたので、こちらの屋敷に来ても同じようにしてくれたようです。
手紙を取り出して読んでみると、驚き、という程ではないですが、旦那様にお伝えしなければいけない内容が書かれてありました。
「大変です。これは旦那様にお伝えしないと」
「何が書かれていたのですか?」
他人からの手紙は、ジャスミン達に先に読んでもらっているのですが、家族からの手紙は封筒に書かれている宛名や差出人の筆跡などでわかるため、中身は読まないようにしてくれているので、ジャスミンが聞いてきます。
「お兄様が様子を見にいらっしゃるそうです」
「え? ヒート様が? 奥様はまだ結婚して二日目ですよね? いつ、いらっしゃるんです?」
「五日後だそうです」
「相変わらずの溺愛ぶりですね…」
ジャスミンが呆れた様な顔をして言いました。
そうなのです。
お兄様は家族というつながりをとても大事にしていらして、もちろん、私の義理の姉である奥様の事もとても大事にしていますし、お父様の事もお母様の事も、そして、妹である私の事もとても大事に、いや、私の場合は愛玩動物の様に可愛がってくれています。
お兄様の手紙の最後には、お兄様の奥様から、ヒートを止められなくてごめんなさい、という謝罪の言葉が書かれていました。
「お義姉さまが離婚すると、お兄様に言うくらいしないと来るでしょうし、しょうがないですね」
お兄様の中では、もし、私とお義姉さま、どっちを取るかといったら、恋愛ではお義姉さま、命なら両方というタイプです。
お義姉さまであるジーニ様も、お兄様の気持ちはわかっていらっしゃるので、必要以上に妹を可愛がっているお兄様を許して差し上げてるのだと思われます。
ただ、呆れてはいらっしゃいますが…。
そういえば、お兄様は旦那様の呪いの事を知っているのかしら?
旦那様に聞いてみないといけません。
いえ、それよりも、まずはお兄様の来訪の日にちを伝えなければいけません。
いくら仲が良かったといっても、旦那様は公爵です。
友人であり、妻の兄とはいえ、屋敷にいきなり押しかけてくるのは失礼でしょうからね。
そう思った私は、慌てて、旦那様の部屋に向かったのでした。
旦那様は私からの報告を聞いて、最初は呆れていらっしゃいましたが「そういえば…」と呟いてから、手紙の束から、封筒を一つ抜き出して、私に渡して下さいました。
見てみると、差出人はお兄様からで、妹の様子を知りたいから、五日後に伺いたいという内容の手紙でした。
「返事をしないといけないな」
「私からしておきますので」
「いや、俺からもするよ。それから、君が望むなら、ヒートを歓迎しよう」
「私が嫌だと言ったら、夫婦仲が上手くいっていないのかと心配して、余計に様子を見に来たがると思います。泊まっていったりはしませんので、兄に来てもらっても良いでしょうか」
「困った奴だな」
旦那様は、呆れながらも、お兄様の来訪を許可して下さいました。
「ご迷惑おかけして申し訳ございません」
「君は気にしなくていい。ヒートは君の事を変わった妹だと言っていたが、女性の話が出ると、君の話ばかりしていたから、シスコンだろうな、とは思っていたら、やはりそうだったのだな」
「学生時代からご迷惑おかけしていた様で申し訳ございません。そういえば、兄は、旦那様の呪いについては知っているのですか?」
「いや。呪いは学園を卒業後だからな」
「お話されるおつもりは?」
私の問いに旦那様は少し考えてから答えてくれます。
「話すなら、まずは試してからだ」
「試す…? という事は…?」
「瞳を輝かせるのはやめてくれ」
期待を込めて旦那様を見ると、呆れた顔をされてしまいました。
そういえば、お兄様は犬が苦手だけれど大丈夫かしら?
アレルギーという訳ではないので、中身が旦那様とわかれば何とかなるでしょうか…。
お兄様が旦那様と会話が出来なければ、お兄様を見る目も変わってきますので、会話できる事を祈らなければ…。
そして、五日後の日の朝、お兄様がクロフォード邸を訪れたのでした。
74
あなたにおすすめの小説
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
【完結】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした
迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」
結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。
彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。
見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。
けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。
筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。
人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。
彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。
たとえ彼に好かれなくてもいい。
私は彼が好きだから!
大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。
ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。
と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる