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23 リーンの復讐
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久しぶりに見たグロールは、若返りの薬の効果が切れたのか、年相応の顔……ではなく、もっと老けて見えた。体調が悪い分、余計にそう見えるのかもしれない。
「……リーン、水を私に飲ませてもらえませんか」
グロールはわたしにゆっくりと近づきながら話しかけてきた。すると、わたしの後ろにいた兵士たちが警戒態勢をとったので、グロールは足を止める。
「普通の水ならあげるわ。だけど、わたしが汲んだ水はあげない」
「そんな意地悪を言わないでくださいよ。こんなにも辛いんですよ!」
グロールは咳込んだあとに叫んだ。
体調が悪いのに馬車に乗って長時間移動するんだもの。悪化してもおかしくない。
彼には部下はもういないし、誰かを雇って取りに行かせても帰ってこない可能性が高い。だから、自分で取りに来ざるを得なかったようだった。
テッジ殿下も同じ理由のようだから、本当に呆れてしまう。
精霊から授けられたシルバートレイを握りしめ怒りを抑えていると、ラファがわたしの前に出た。
「グロール、だったか。あなたの噂は聞いているよ。僕の妻が悪い意味で、大変お世話になったようだね」
「……どのような話を聞いておられるのかはわかりませんが、私はリーンとは仲良くやっていたつもりです」
「ふざけたことを言わないで!」
声を荒らげると、ラファが言わたしを見つめ、子どもに言い聞かせるように優しい口調で言う。
「リーン、とりあえず、先に僕が話をするよ」
グロールは剣も持っていないし、これだけ大勢の前なら、ラファを傷つけることなんてできない。そう考えたわたしは、今はラファに任せることにした。
「グロール君、君に質問しても良いかな」
「……かまいませんが、その」
咳き込んだあと、グロールは苦しげな顔をしてラファに懇願する。
「この症状がなくなれば、いくらでもお話いたします。ですから、どうか……、先に水を飲ませてくれませんか」
「しょうがないな」
ラファはため息を吐くと、不機嫌そうな表情で黙って話を聞いていた辺境伯に話しかける。
「水は用意できるかな」
「もちろんです」
「違う! 私がほしいのはリーンが汲んだ水です!」
「ワガママを言うなよ。僕は王族だぞ。君に偉そうに言われる筋合いはない」
「そ、それは……っ」
グロールが言葉をつまらせた時、馬車の中からテッジ殿下が転がるように降りてきた。地面に倒れ込んだまま動かない彼を御者が助け起こす。
「たの……、たのむから……、水を……」
テッジ殿下はグロールとは比べ物にならないくらいに酷い顔色をしていた。呼吸をするのも苦しいらしく、一人で立ち上がることもできない。
優しく手を差し伸べてあげるのが、普通の人の心理なのでしょう。でも、わたしは違った。ラファの横に立って口を開く。
「テッジ殿下、グロール、わたしもあなた方に聞きたいことがあります」
「……何だ」
テッジ殿下が聞き返すと、グロールが訴えてくる。
「リーン、見たらわかるでしょう。こんな状態では話すこともままなりません。ですから…
…」
「グロール、あなたはまだまだ元気そうだから、わたしが汲んだ水は必要なさそうね」
「……っ!」
話せば余計にもらえなくなると感じたのか、グロールは口を閉ざした。
ラファはまだ質問できていないけど、先にわたしが質問させてもらう。
「……ミランという女性のことを覚えていますか?」
「覚えていますよ。あなたが姉と慕っていた人でしょう」
グロールが意気込んで答えた。
「そうよ。……で、そのお姉さまがどうして亡くなったかは覚えている?」
「覚えていますが、それはテッジ殿下に命令されただけで、私は悪くありません!」
グロールの訴えを無視して、テッジ殿下に話しかける。
「あなたは覚えていますか?」
「も……もちろん……だ」
「あなたはどういう理由で、お姉さまを傷つけたか覚えていますよね?」
「……水の……、効果を……っ……、試すために……って……、そんな……まさか」
「そうですね。わたしもあなたたちがやったことと同じことをしようと思います」
「……そんな……っ」
「大丈夫ですよ。間違いがなければ、あなたは助かります」
笑顔を作ったつもりだったけれど、上手くできていなかったようで、テッジは驚愕の表情でわたしを見つめた。
「……リーン、水を私に飲ませてもらえませんか」
グロールはわたしにゆっくりと近づきながら話しかけてきた。すると、わたしの後ろにいた兵士たちが警戒態勢をとったので、グロールは足を止める。
「普通の水ならあげるわ。だけど、わたしが汲んだ水はあげない」
「そんな意地悪を言わないでくださいよ。こんなにも辛いんですよ!」
グロールは咳込んだあとに叫んだ。
体調が悪いのに馬車に乗って長時間移動するんだもの。悪化してもおかしくない。
彼には部下はもういないし、誰かを雇って取りに行かせても帰ってこない可能性が高い。だから、自分で取りに来ざるを得なかったようだった。
テッジ殿下も同じ理由のようだから、本当に呆れてしまう。
精霊から授けられたシルバートレイを握りしめ怒りを抑えていると、ラファがわたしの前に出た。
「グロール、だったか。あなたの噂は聞いているよ。僕の妻が悪い意味で、大変お世話になったようだね」
「……どのような話を聞いておられるのかはわかりませんが、私はリーンとは仲良くやっていたつもりです」
「ふざけたことを言わないで!」
声を荒らげると、ラファが言わたしを見つめ、子どもに言い聞かせるように優しい口調で言う。
「リーン、とりあえず、先に僕が話をするよ」
グロールは剣も持っていないし、これだけ大勢の前なら、ラファを傷つけることなんてできない。そう考えたわたしは、今はラファに任せることにした。
「グロール君、君に質問しても良いかな」
「……かまいませんが、その」
咳き込んだあと、グロールは苦しげな顔をしてラファに懇願する。
「この症状がなくなれば、いくらでもお話いたします。ですから、どうか……、先に水を飲ませてくれませんか」
「しょうがないな」
ラファはため息を吐くと、不機嫌そうな表情で黙って話を聞いていた辺境伯に話しかける。
「水は用意できるかな」
「もちろんです」
「違う! 私がほしいのはリーンが汲んだ水です!」
「ワガママを言うなよ。僕は王族だぞ。君に偉そうに言われる筋合いはない」
「そ、それは……っ」
グロールが言葉をつまらせた時、馬車の中からテッジ殿下が転がるように降りてきた。地面に倒れ込んだまま動かない彼を御者が助け起こす。
「たの……、たのむから……、水を……」
テッジ殿下はグロールとは比べ物にならないくらいに酷い顔色をしていた。呼吸をするのも苦しいらしく、一人で立ち上がることもできない。
優しく手を差し伸べてあげるのが、普通の人の心理なのでしょう。でも、わたしは違った。ラファの横に立って口を開く。
「テッジ殿下、グロール、わたしもあなた方に聞きたいことがあります」
「……何だ」
テッジ殿下が聞き返すと、グロールが訴えてくる。
「リーン、見たらわかるでしょう。こんな状態では話すこともままなりません。ですから…
…」
「グロール、あなたはまだまだ元気そうだから、わたしが汲んだ水は必要なさそうね」
「……っ!」
話せば余計にもらえなくなると感じたのか、グロールは口を閉ざした。
ラファはまだ質問できていないけど、先にわたしが質問させてもらう。
「……ミランという女性のことを覚えていますか?」
「覚えていますよ。あなたが姉と慕っていた人でしょう」
グロールが意気込んで答えた。
「そうよ。……で、そのお姉さまがどうして亡くなったかは覚えている?」
「覚えていますが、それはテッジ殿下に命令されただけで、私は悪くありません!」
グロールの訴えを無視して、テッジ殿下に話しかける。
「あなたは覚えていますか?」
「も……もちろん……だ」
「あなたはどういう理由で、お姉さまを傷つけたか覚えていますよね?」
「……水の……、効果を……っ……、試すために……って……、そんな……まさか」
「そうですね。わたしもあなたたちがやったことと同じことをしようと思います」
「……そんな……っ」
「大丈夫ですよ。間違いがなければ、あなたは助かります」
笑顔を作ったつもりだったけれど、上手くできていなかったようで、テッジは驚愕の表情でわたしを見つめた。
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