【完結】レイハート公爵夫人の時戻し

風見ゆうみ

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13  思いがけない王命

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「あなた、今日のところは帰りましょう」

 夫人は自分たちの立場が良くないこと理解しているようだったが、侯爵は違った。

 夫人に促されても、動くつもりはないようで、イライアス殿下に尋ねる。

「息子が浮気していたことは決して許されることではありません。ですが、殿下自らが介入する必要はないのではないでしょうか?」
「そうだね。あなたの言い分は理解できる。でも、レイハート公爵家相手に意見できる立場の人はそういないだろう?」
「それはそうかもしれませんが、遣いを出せば良かったのではないでしょうか」

 侯爵は先ほど言い負かされたことが気に食わなかったのか、しつこく食い下がった。
 黙っていられなくなり、私は二人の会話に割って入る。

「オウガ侯爵、あなたはイライアス殿下の行動が納得いかないようですが、あなたにそれを責める権利はないでしょう」
「責めているつもりはない。ただ、意見する権利くらいあるだろう」
「どんな理由ででしょうか?」
「当事者の親だからだ。ロガンは離婚する気はない。お前だって今まではそうだったんだろう?」
「離婚が難しいだろうとは思っていました」
「だろう? 女一人で何もできるわけがない。だが、殿下の後ろ盾があれば別だ。殿下は幸せになる二人の未来を邪魔している。殿下にはそんなことをしてほしくないと訴えているんだ」

 侯爵は、イライアス殿下がいるから、私が遠慮しなくなったのだと思っているらしい。
 間違っているわけではないが、一番の理由はそうではない。

 生死に関わってくるのだから、必死に生きるための道を模索してもおかしくはない。ただ、彼らは自分の息子が未来で私を殺すなんて思ってもいないでしょうし、私の考えなんてわかるはずもない。

「どうして息子が悪いことをしたのに責めないのです? しなくてもいいことをしたほうが悪いでしょう」

 堂々巡りの会話になってしまうが、私は間違ったことを言っていないので、引くわけにはいかない。

「二人の関係は今始まったことじゃない。気づかなかったお前が悪い」

 侯爵は私に指を突きつけながら鼻で笑った。

 どうして、悪いことをする人間は自分のやることが間違っていないと思い込めるのだろうか。普通は良くないかもしれないと疑いそうなものなのに……。

 浮気している日数が長いなんて、威張れるものでもないわ。

 すると、イライアス殿下が軽く手を挙げる。

「父上がオウガ侯爵はそう言うだろうと言っていたよ」
「……陛下が?」

 侯爵の表情は一瞬にして変わり、焦りの色を見せ始めてる。

「浮気をしただけでなく、反省もしていな。そんな人間に公爵が務まるわけがない」
「ベェェー!」
「ウォフッ!」

 イライアス殿下の話を聞いたベェとルピは、そうだそうだと言わんばかりに鳴いた。  

「本人には正式に書状を渡すけれど、連れて帰ってもらわなければならないから、先にあなたたちに伝えておこう」

 イライアス殿下は、侯爵夫妻を見つめて話を続ける。

「父上は国王の権限で、今回のレイハート公爵代理とオウガ侯爵令息の婚姻を無効にすると決めた」
「「そんなっ!」」

 侯爵夫妻は目を見開き、同時に悲痛の声を上げた。

 国王陛下も魔法を使える方だったとしたら、私とロガンたちの話をイライアス殿下から聞いたのでしょう。
 人を殺めるような人物を公爵にすべきではない。
 そう考えてくださったのかもしれない。

「異議申し立てがあるなら、本人にさせればいい。……できるものならね」

 イライアス殿下が浮かべた笑みは、氷のように冷たく感じた。
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