【完結】レイハート公爵夫人の時戻し

風見ゆうみ

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26  執着する男

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 王城に住めないとわかれば、ソレイユは絶縁状にサインをしないでしょう。
 そつ考え、フットマンに頼んで、少しでも早くオウガ侯爵家に向かってもらうことにした。
 時刻は四時前。
 オウガ侯爵家に着く頃には夜の遅い時間になる。
 途中の宿屋で泊まってもらい、朝一番に訪ねるように頼んだ。

 次の日の昼過ぎに、絶縁状にサインをもらってきたフットマンが疲れた顔をして帰ってきた。

 フットマンと御者に特別報酬と休みを与えたあと、絶縁状のサイン欄を確認する。

 可愛らしい字でソレイユの名前が書かれていた。

 二度とレイハート公爵邸には戻らないことや、私に関わらないように誓約させた。
 それだけでなく、約束を故意に破った場合は、北の地にある強制労働所に給仕として働かせることも、ソレイユは承諾していた。

 北の地はレイハート邸からは馬車で三日かかる位置にある、寒さの厳しい場所だ。
 吹雪いている日が多く、近くに民家もないため、脱走しても凍死する未来しかないと言われている。

 追いかけてこないとわかっているから、逃げ出す者もいるらしいが、大体は死にたくないと言って戻ってくるそうだ。
 周りは山と大きな川。
 川には一つしか橋がかかっていないため、運よく辿り着けてもそこで終わりだ。

 自分の可愛がっていたソレイユに待っている未来が厳しいものでしかないと知ったら、お父様はどう思うのだろうか。

 私の胸の中に、父に復讐したいという負の感情が湧き上がった。

「ベェェー!」

 そのことを察したかのようにベェは鳴くと、私の頬に頬ずりした。

 前もこんなことがあったのに忘れていたわ。

「ありがとう、ベェ。私が幸せになることが、お父様への復讐よね」
「ベェ!」

 気持ちを切り替え、ベルを鳴らして執事を呼んだ。
 そして、たとえ、ソレイユがレイハート邸に入ろうとしても、絶対に追い返すようにと指示をした。

******

 イライアス殿下との結婚の話が出てから、五日が経った。
 ロガンは私宛に手紙とプレゼントを贈り続けてきていたが、全て受け取りを拒否している。

 ソレイユのほうは、オウガ侯爵家から追い出されたあと、意気揚々と王城に向かったようだが門前払いされていた。

 念の為に陛下とイライアス殿下に連絡を入れておいたため、すぐに対応することができたそうだ。

「そろそろ、結婚の件を国王陛下に返事をしなくちゃいけないわね」

 謁見したい旨を書いた手紙をパンナに渡すと、彼女が暗い表情をしていることに気がついた。

「どうかしたの?」
「あの……」

 パンナは少し躊躇ったあと、口を開く。

「黙っておいてもいつかお耳に入ることかと思いますので、先にお伝えしてもよいでしょうか」
「かまわないわ」

 ソレイユたちの件で、使用人が少なくなってしまった。それで、仕事がつらいのかと心配になっていると、パンナは、窓の外を見つめて話し始める。

「昨日から、ロガン様が門の前に立っておられるのです」
「そうだったの?」
「はい。夜には近くの宿屋で眠り、早朝からレイハート邸に訪ねているようです」
「知らなかったわ。教えてくれてありがとう」

 レイハート邸と門までのアプローチはかなりある。
 二階にある私の部屋の窓から、鉄柵の向こうが見えることは見える。
 だが、顔ははっきりと見えないため、相手が誰かと判断するのは難しい。

 駄目元で確認してみると、やはり、門の前で人がウロウロしているくらいしかわからない。

 仕事に追われて外を気にすることがなかったから気づかなかった。

「ロガンは何か言っているの?」
「ソラリア様のことを愛している。ソラリア様の相手は自分しかいない。彼女だって僕のことが忘れられないはずだと言い続けています」
「どうしてそんなことを思えるのかしら」

 真正面からぶつかっても時間の無駄だ。
 イライアス殿下と結婚すれば、さすがのロガンも大人しくなるはず。
 いや、大人しくしてもらうことにしましょう。

「パンナ、彼のことは引き続き無視するように兵士たちに伝えて。それから、この手紙を至急、王城に届けてほしいの」
「承知いたしました」

 パンナは大きくうなずくと、手紙を胸に抱きしめ部屋を出ていった。

 騎士隊を呼んで捕まえてもらってもいいのだが、先に侯爵家に連絡をしておかないとうるさいだろう。

 ベルで執事を呼び、オウガ侯爵家に使いを送るように頼んだ。

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