27 / 62
26 執着する男
しおりを挟む
王城に住めないとわかれば、ソレイユは絶縁状にサインをしないでしょう。
そつ考え、フットマンに頼んで、少しでも早くオウガ侯爵家に向かってもらうことにした。
時刻は四時前。
オウガ侯爵家に着く頃には夜の遅い時間になる。
途中の宿屋で泊まってもらい、朝一番に訪ねるように頼んだ。
次の日の昼過ぎに、絶縁状にサインをもらってきたフットマンが疲れた顔をして帰ってきた。
フットマンと御者に特別報酬と休みを与えたあと、絶縁状のサイン欄を確認する。
可愛らしい字でソレイユの名前が書かれていた。
二度とレイハート公爵邸には戻らないことや、私に関わらないように誓約させた。
それだけでなく、約束を故意に破った場合は、北の地にある強制労働所に給仕として働かせることも、ソレイユは承諾していた。
北の地はレイハート邸からは馬車で三日かかる位置にある、寒さの厳しい場所だ。
吹雪いている日が多く、近くに民家もないため、脱走しても凍死する未来しかないと言われている。
追いかけてこないとわかっているから、逃げ出す者もいるらしいが、大体は死にたくないと言って戻ってくるそうだ。
周りは山と大きな川。
川には一つしか橋がかかっていないため、運よく辿り着けてもそこで終わりだ。
自分の可愛がっていたソレイユに待っている未来が厳しいものでしかないと知ったら、お父様はどう思うのだろうか。
私の胸の中に、父に復讐したいという負の感情が湧き上がった。
「ベェェー!」
そのことを察したかのようにベェは鳴くと、私の頬に頬ずりした。
前もこんなことがあったのに忘れていたわ。
「ありがとう、ベェ。私が幸せになることが、お父様への復讐よね」
「ベェ!」
気持ちを切り替え、ベルを鳴らして執事を呼んだ。
そして、たとえ、ソレイユがレイハート邸に入ろうとしても、絶対に追い返すようにと指示をした。
******
イライアス殿下との結婚の話が出てから、五日が経った。
ロガンは私宛に手紙とプレゼントを贈り続けてきていたが、全て受け取りを拒否している。
ソレイユのほうは、オウガ侯爵家から追い出されたあと、意気揚々と王城に向かったようだが門前払いされていた。
念の為に陛下とイライアス殿下に連絡を入れておいたため、すぐに対応することができたそうだ。
「そろそろ、結婚の件を国王陛下に返事をしなくちゃいけないわね」
謁見したい旨を書いた手紙をパンナに渡すと、彼女が暗い表情をしていることに気がついた。
「どうかしたの?」
「あの……」
パンナは少し躊躇ったあと、口を開く。
「黙っておいてもいつかお耳に入ることかと思いますので、先にお伝えしてもよいでしょうか」
「かまわないわ」
ソレイユたちの件で、使用人が少なくなってしまった。それで、仕事がつらいのかと心配になっていると、パンナは、窓の外を見つめて話し始める。
「昨日から、ロガン様が門の前に立っておられるのです」
「そうだったの?」
「はい。夜には近くの宿屋で眠り、早朝からレイハート邸に訪ねているようです」
「知らなかったわ。教えてくれてありがとう」
レイハート邸と門までのアプローチはかなりある。
二階にある私の部屋の窓から、鉄柵の向こうが見えることは見える。
だが、顔ははっきりと見えないため、相手が誰かと判断するのは難しい。
駄目元で確認してみると、やはり、門の前で人がウロウロしているくらいしかわからない。
仕事に追われて外を気にすることがなかったから気づかなかった。
「ロガンは何か言っているの?」
「ソラリア様のことを愛している。ソラリア様の相手は自分しかいない。彼女だって僕のことが忘れられないはずだと言い続けています」
「どうしてそんなことを思えるのかしら」
真正面からぶつかっても時間の無駄だ。
イライアス殿下と結婚すれば、さすがのロガンも大人しくなるはず。
いや、大人しくしてもらうことにしましょう。
「パンナ、彼のことは引き続き無視するように兵士たちに伝えて。それから、この手紙を至急、王城に届けてほしいの」
「承知いたしました」
パンナは大きくうなずくと、手紙を胸に抱きしめ部屋を出ていった。
騎士隊を呼んで捕まえてもらってもいいのだが、先に侯爵家に連絡をしておかないとうるさいだろう。
ベルで執事を呼び、オウガ侯爵家に使いを送るように頼んだ。
そつ考え、フットマンに頼んで、少しでも早くオウガ侯爵家に向かってもらうことにした。
時刻は四時前。
オウガ侯爵家に着く頃には夜の遅い時間になる。
途中の宿屋で泊まってもらい、朝一番に訪ねるように頼んだ。
次の日の昼過ぎに、絶縁状にサインをもらってきたフットマンが疲れた顔をして帰ってきた。
フットマンと御者に特別報酬と休みを与えたあと、絶縁状のサイン欄を確認する。
可愛らしい字でソレイユの名前が書かれていた。
二度とレイハート公爵邸には戻らないことや、私に関わらないように誓約させた。
それだけでなく、約束を故意に破った場合は、北の地にある強制労働所に給仕として働かせることも、ソレイユは承諾していた。
北の地はレイハート邸からは馬車で三日かかる位置にある、寒さの厳しい場所だ。
吹雪いている日が多く、近くに民家もないため、脱走しても凍死する未来しかないと言われている。
追いかけてこないとわかっているから、逃げ出す者もいるらしいが、大体は死にたくないと言って戻ってくるそうだ。
周りは山と大きな川。
川には一つしか橋がかかっていないため、運よく辿り着けてもそこで終わりだ。
自分の可愛がっていたソレイユに待っている未来が厳しいものでしかないと知ったら、お父様はどう思うのだろうか。
私の胸の中に、父に復讐したいという負の感情が湧き上がった。
「ベェェー!」
そのことを察したかのようにベェは鳴くと、私の頬に頬ずりした。
前もこんなことがあったのに忘れていたわ。
「ありがとう、ベェ。私が幸せになることが、お父様への復讐よね」
「ベェ!」
気持ちを切り替え、ベルを鳴らして執事を呼んだ。
そして、たとえ、ソレイユがレイハート邸に入ろうとしても、絶対に追い返すようにと指示をした。
******
イライアス殿下との結婚の話が出てから、五日が経った。
ロガンは私宛に手紙とプレゼントを贈り続けてきていたが、全て受け取りを拒否している。
ソレイユのほうは、オウガ侯爵家から追い出されたあと、意気揚々と王城に向かったようだが門前払いされていた。
念の為に陛下とイライアス殿下に連絡を入れておいたため、すぐに対応することができたそうだ。
「そろそろ、結婚の件を国王陛下に返事をしなくちゃいけないわね」
謁見したい旨を書いた手紙をパンナに渡すと、彼女が暗い表情をしていることに気がついた。
「どうかしたの?」
「あの……」
パンナは少し躊躇ったあと、口を開く。
「黙っておいてもいつかお耳に入ることかと思いますので、先にお伝えしてもよいでしょうか」
「かまわないわ」
ソレイユたちの件で、使用人が少なくなってしまった。それで、仕事がつらいのかと心配になっていると、パンナは、窓の外を見つめて話し始める。
「昨日から、ロガン様が門の前に立っておられるのです」
「そうだったの?」
「はい。夜には近くの宿屋で眠り、早朝からレイハート邸に訪ねているようです」
「知らなかったわ。教えてくれてありがとう」
レイハート邸と門までのアプローチはかなりある。
二階にある私の部屋の窓から、鉄柵の向こうが見えることは見える。
だが、顔ははっきりと見えないため、相手が誰かと判断するのは難しい。
駄目元で確認してみると、やはり、門の前で人がウロウロしているくらいしかわからない。
仕事に追われて外を気にすることがなかったから気づかなかった。
「ロガンは何か言っているの?」
「ソラリア様のことを愛している。ソラリア様の相手は自分しかいない。彼女だって僕のことが忘れられないはずだと言い続けています」
「どうしてそんなことを思えるのかしら」
真正面からぶつかっても時間の無駄だ。
イライアス殿下と結婚すれば、さすがのロガンも大人しくなるはず。
いや、大人しくしてもらうことにしましょう。
「パンナ、彼のことは引き続き無視するように兵士たちに伝えて。それから、この手紙を至急、王城に届けてほしいの」
「承知いたしました」
パンナは大きくうなずくと、手紙を胸に抱きしめ部屋を出ていった。
騎士隊を呼んで捕まえてもらってもいいのだが、先に侯爵家に連絡をしておかないとうるさいだろう。
ベルで執事を呼び、オウガ侯爵家に使いを送るように頼んだ。
1,080
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄されたので北の港を発展させたら
ふわふわ
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。
公爵令嬢アリアベルは、王太子カルディオンから突然の婚約破棄を告げられる。
「真実の愛を見つけた」
そう言って王太子が選んだのは、涙を流す義妹ヴィオレッタだった。
王都から追い出され、すべてを失った――
はずだった。
アリアベルが向かったのは、王国の北にある小さな港町。
しかし彼女の手腕によって港は急速に発展し、やがて王国最大の交易港へと変わっていく。
一方その頃、王太子と義妹は王都で好き勝手に振る舞っていたが――
やがてすべてが崩れ始める。
王太子は国外追放。
義妹は社交界から追放され修道院送り。
そして気づいた頃には、北の港こそが王国の中心になっていた。
「私はもう誰のものでもありません」
これは、婚約破棄された令嬢が自分の人生を取り戻し、
王国の未来を変えていく物語。
そして――
彼女の隣には、いつしか新しい王太子の姿があった。
婚約破棄から始まる、逆転ざまぁロマンス。✨
婚約破棄されたので頑張るのをやめました 〜昼寝と紅茶だけの公爵令嬢なのに、なぜか全部うまくいきます〜あ
鍛高譚
恋愛
王太子から婚約破棄された衝撃で階段から落ちた公爵令嬢シャル・ド・ネ・アルベール。
目覚めた彼女は、なんと前世の記憶——ブラック企業で働き詰めだったOL・佐伯ゆかりとしての人生を思い出してしまう。
無理して働いた末に過労死した前世の反省から、シャルは決意する。
「もう頑張らない。今度の人生は“好き”と“昼寝”だけで満たしますわ!」
貴族としての特権をフル活用し、ワイン造りやスイーツ作りなど“趣味”の延長でゆるゆる領地改革。
気づけば国王にも称賛され、周囲の評価はうなぎのぼり!?
一方、彼女を見下していた王太子と“真実の愛()”の令嬢は社交界で大炎上。
誰もざまぁされろなんて言ってないのに……勝手に転がり落ちていく元関係者たち。
本人はただ紅茶とスコーンを楽しんでいるだけなのに――
そんな“努力しない系”令嬢が、理想の白い結婚相手と出会い、
甘くてふわふわ、そしてちょっぴり痛快な自由ライフを満喫する
ざまぁ(他力本願)×スローライフ×ちょっと恋愛な物語です♪
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
『婚約破棄された公爵令嬢ですが、王国を救ったので新しい王太子に求婚されました
しおしお
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。
公爵令嬢ルシエラ・ノクティスは、婚約者である王太子エドガルドから突然の公開婚約破棄を宣言される。
理由は――
「真実の愛を見つけたから」。
隣には涙を浮かべる令嬢ヴィオレッタ。
ルシエラは“冷酷な悪女”として断罪され、社交界から追い出されてしまう。
だが、その婚約破棄こそが――
王国を揺るがす大事件の始まりだった。
王家の信用は崩れ、銀行は倒れ、商人は逃げ、王都は混乱に包まれていく。
そんな中、静かに動き始めたのは――追放されたはずのルシエラ。
冷静な知性と圧倒的な手腕で王国の危機を次々と解決していく彼女の姿に、
やがて王国中の人々が気づき始める。
「この国を救っているのは誰なのか」を。
一方、ルシエラを捨てた元王太子と“真実の愛”の令嬢は、
次々と暴かれる罪と崩壊していく地位に追い詰められていき――。
そして彼女の隣に立ったのは、冷静で鋭い眼差しを持つ辺境伯ローデリック。
「君がこの国を救うなら、俺は君の隣に立つ」
婚約破棄から始まる、
王国最大級のざまぁ逆転劇。
追放された公爵令嬢が王国を救い、
転落した王太子の代わりに――
新しい王太子妃になるまでの物語。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
【完結】本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの
鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」
そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。
ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。
誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。
周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」
――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。
そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、
家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。
だが、彼女の予言は本物だった――
数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。
国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、
あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。
「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」
皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、
滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。
信じてもらえなかった過去。
それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。
そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。
――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる