【完結】レイハート公爵夫人の時戻し

風見ゆうみ

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53  元婚約者の末路 ③

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 腰を下ろしたロガンは困惑した様子で、私を見つめた。
 私がイライアス様に洗脳されていると思っているのなら、こんな態度を取るのは普通だと思うのだけど、予想していなかったのかしら。
 もしくは、リット殿下から私もロガンと仲直りしたがっていると嘘でもつかれたとか?

 まあ、私にしてみればどうでもいいことね。

「ロガン、今の私はあなたと別れて幸せに暮らしているの。自分が幸せではないからといって、私まで幸せじゃないと決めつけるのはやめてちょうだい」
「君は幸せだと思い込まされているだけだ!」

 ロガンが怒りに任せてテーブルを叩いたため、カップとソーサーが激しく音を立てて揺れた。


「イライアス様が君の良さに気づいているとは思えない」
「たとえ気づいてくれていなくても、大事にしてもらっているわ。大体、あなたが思う私のいいところって何なの? すぐ近くで婚約者が浮気をしているのに全く気づかない鈍感なところ?」
「そ、そういうわけじゃ……」

 焦るロガンに笑顔で尋ねる。

「じゃあ、あなたは私のどこを好きになったの?」
「君の、その、人とは違う雰囲気だよ。細かいことを気にしないところは君らしくていいと思うし」
「細かいことを気にしない性格だから、あなたとソレイユの浮気も気にしないと思ったの?」

 わざと声を荒らげると、ロガンは周りを気にするように首を左右に動かした。
 護衛以外の一般客も会話を止めて、私たちの様子を見つめている。
 それだけではなく、通りを歩いていた人たちも立ち止まってこちらに目を向けていた。

 望み通りの状況になり満足した私は、言葉を発しないロガンに答えを急かす。

「ねえ、答えてよ。どうなの? あなたも多くの貴族と同じで浮気くらいしてもいいと思っていたの?」
「そ、そういうわけじゃない! 浮気は君の父親に強制されてやったことなんだ!」
「父が私を疎ましく思っていたことは知っていたのよね?」
「そうだよ。それがどうしたって言うんだ! 義理の父親になる人の言うことだから、言われるがままにした。そのことの何が悪いって言うんだ!」

 興奮しているからか、ロガンも私と変わらないくらい大きな声で訴えた。
 そのおかげで、こちらに好奇の目を向ける人たちが多くなった。

 ロガンが気づいているかはわからないが、店内にいる客も窓ガラス越しに私たちのほうを見ている。一般的な人なら、見世物ではないと怒るべきところなのだろうが、証人を作りたい私には野次馬は多ければ多いほどいい。

 より多くの人に聞こえるように、声を張り上げる。

「じゃあ、あなたは父から死ねと言われたら死んでいたの?」
「それとこれとは話が別だよ! 常識的に考えてできることはするし、できないことはしない!」
「常識的に?」
「そうだよ。なんでもかんでも言うことをきくわけじゃない!」
「拒否する時は拒否すると言うのね?」
「そうだって言ってるだろ!」

 怒りに任せて、またテーブルを叩いたロガンを見上げて失笑する。

「あなたの考えはよくわかったわ」
「……どういうことだ?」
「あなたにとって浮気は、拒否しないものなのよね?」
「そ、それはっ」
「そんな価値観の人はお断りよ。そんなあなたでもいいという女性を探してちょうだい。ロガン、私のことをわかっていると言うのなら、私の価値観とあなたの価値観が違うことくらい理解できるわよね?」
「ううっ」

 ロガンは情けない声を出し、すがるような目で私を見つめた。
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