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3 出ていってやる
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キュララは私の質問にちゃんと答えてくれなかったので、彼女と一緒に他の聖女達の所へ向かった。
どれくらい結界が破られたかわからないから、誰かに付いてきてもらおうと思ったら、四人全員が嫌がった。
「魔物がいるんでしょう? 怖いから嫌よ! 皆、そう思ってるわ!」
「はあ? 魔物が怖いのは私も一緒だし、だからこそ一生懸命、結界を張ってるんじゃないの!」
聖女達の間では年齢や能力など関係なく、対等な立場の為、年上の聖女に食ってかかったけど、他の聖女と顔を見合わせるだけだった。
こんな事に費やしてる時間がもったいない。
結局、私一人が最北の地へ向かい、結界が破られてしまっていた場所を特定して張り直した。
私が着くまでに中に入ってきてしまった魔物は、北の辺境伯の騎士さん達が対応して退治してくれたようだったけれど、やはり、住民に犠牲者が出てしまったらしい。
落ち込んでいる私に、緊急事態という事で転移ができる魔道具を使って来てくれたから、破られた結界がすぐに修復されて被害が少なかったのだと、騎士さん達は慰めてくれた。
だけど、こんな事、実際はあってはならないミスだった。
もちろん、結界が弱まる事はあってもおかしくないし、そこが狙われたというのならわかるけれど、結界が破られた場所が一箇所ではなかった。
不安になり、何日かかけて確認すると、危ない箇所や結界が張られていない場所が他に何箇所もあった。
誰だってミスはある。
だけど、これは酷すぎる。
王太子殿下の事があるから、少しでも早く城に帰ろうとして、こんな結果になったんだわ…。
一緒に付いてきてくれた侍女に、この地の結界を最後に張った人間を調べるようにお願いし、怪我をした人の達の治療をした後、魔道具を使って王城に戻った。
そして、私が王城に戻った次の日の事だった。
国王陛下から聖女と上位貴族に呼び出しがかかり、昼過ぎの現在、私は謁見の間にいた。
「あの地域の結界を張ったのは誰だ?」
聖女が赴いた地域などは、書類に記入されているはずだから、そんな事は私達に聞かなくてもわかるはずなのに、国王陛下は聖女五人を壇上から見下ろして言った。
何の毛皮かはわからないけれど、灰色のふわふわの毛のマントを羽織った、大柄な体格の国王陛下は、玉座にふんぞり返った状態で、跪いている私達を蔑んだ目で見ながら続ける。
「発言を許す。とっとと名乗り出ろ」
「あ…あの…」
侍女から聞いたところによると、今回、魔物が入り込んだ地域を担当していたのは、フランソワという、私より3つ年上の女性だった。
別に私とは仲が良くも悪くもないといったところで、その彼女は、ガリガリに痩せた細い体を震わせながら、手を挙げたかと思うと、隣に跪いていた私を指差した。
「彼女、彼女です! 彼女はいつも遊んでばかりなんです!」
は?
何、考えてんの?
頭、おかしくなった?
いや、もう昔から、あんたの頭は色ボケでおかしかったっけ!?
「ミーファです! ミーファがミスをしたんだと思います! 信じられないミスです! 許されないと思います!」
「彼女のミスです! 聖女として、ありえません」
「あの結界を張ったのはミーファで間違いありません!」
無実を訴えようとしたけれど、他の聖女二人とキュララまでもが一緒になって、私が犯人だと言い出し始めた。
ふざけないでよ。
「陛下! 調べていただければわかるとは思いますが、私ではありません!」
「なぜ、調べねばならん。他の四人はお前だと言っている。犯人はお前で決まりだろう」
はあ!?
日頃、国民の意見は少数でも大事だとかいっておきながら、こんな時に多数決で決めようとするの!?
国王陛下のくせに!?
私だって、一国民なんですけど!?
というか、リーフ殿下が国王陛下は国民を本当は大事にしてないって言ってたっけ!?
ああ、もうそんな事、どうだっていいわ!
「私ではありません!」
「信じられないな。お前は息子達に媚も売らずに、ほとんど王城にはいないようだな。どうせ、遊び呆けていたのだろう?」
「…何を仰っておられるのでしょうか…」
「そんな軽い気持ちの聖女などいらん! もうお前を聖女とは認めん! 今すぐに王城から、いや、王都から立ち去れ! 聖女が四人もいれば国は何とかなるのだ」
国王陛下はそう言って、謁見の間の出入り口である、大きな二枚扉を指差した。
出ていけという事だろう。
国王陛下の横に座っている王太子殿下は、この状況が楽しくてしょうがないのか、ニヤニヤして私を見ていた。
気持ち悪い…。
「何をしている! 早く出ていけ! 二度と王都に足を踏み入れるな!」
国王陛下の叫びに、他の四人の聖女達が慌てて、言葉を発する。
「ミーファも一応は頑張っています! 今回だけのミスだと思われますので、そこまでされなくても!」
「そうです、陛下。誰にだってミスはありますから。それだけ仰れば、さすがに遊び呆ける事はやめると思いますわ」
何を焦ってるのよ。
今回、魔物が入り込んだ地域は、私がチェック入れてない地域だった。
そして、チェック出来てない地域はたくさんある。
これから、こういう事が頻繁に起きる様になるかもしれない。
後は、自分たちで責任取りなさいよ!
言ってやりたいけれど、ここにいるのは国王陛下だけでなく、王太子殿下もいるし、私達の後ろには、辺境伯家以上の貴族達が集まっている。
たとえ、王族と同じ様な特権が与えられているとしても、一番、偉いのは国王陛下なのだから、口汚く罵る訳にはいかない。
出ていってやる。
そして、少しは困ればいい。
私は、私の周りにいる人達だけ守ろう。
あとは、ご立派な四人の聖女達が頑張ってくれるはずよ。
「承知いたしました」
私が言葉を発すると、私をはさんで座っていたフランソワとキュララが腕を掴んでくる。
「駄目よ、ミーファ」
「そうよ、あなたがいなかったら…」
「今回のミスは私のせいなんでしょう? ですから、私はその責任をとって、聖女と名乗ることはやめて、王都から出ます」
二人の手を振り払って、立ち上がった時だった。
「陛下、発言の許可をいただけますか」
背後から聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、黒色の髪に同じ色の瞳、長めの短髪、整った顔立ちに均整の取れた体をした青年、リューク・スコッチが顔を上げていた。
貴族達は、私達の少し後ろに跪いて座っていて、一番、後ろの列にいるリューク以外は頭を下げたままだ。
「良かろう」
陛下が頷かれたので、リュークは立ち上がると言った。
騎士の正装をしていて、いつもとイメージが違って、大人っぽく見えた。
「彼女が聖女ではなくなり、王都に必要ないと仰られるのであれば、私の父の屋敷に来てもらおうと思うのですが、よろしいでしょうか」
しん、と静まり返った室内に、リュークの低い声が響き渡った。
「リューク…」
「ミーファの力を信用しています。ですから、彼女を王都から追放すると言うなら、私に下さい」
リュークは国王陛下の方を見つめて、迷いの見られない口調で言った。
「いいだろう。使えない聖女など、王城においておいても意味がないし、出て行けと言ったのも私だ。王都から駄目な聖女を追放してやったと国民に伝えれば納得するだろうから、元聖女がどこへ行こうと知った事ではない」
「寛大な御心に感謝致します」
リュークは頭を下げると、唖然としている私の方を見て微笑んだ。
すぐに国王陛下が口を開く。
「今日はこれで終わりだ。出来損ないの聖女が結界を張る事はなくなる。これで、民も安心するだろう」
「そんな、お待ち下さい、陛下!」
聖女達四人は立ち上がって歩いていく陛下を追いすがっていく。
王太子殿下は楽しそうにしているかと思いきや、不機嫌そうな顔で私を見つめていた。
そんな彼から視線を外し、リュークの方に振り返る。
リュークの周りにいた貴族の何人かは、私を気の毒そうな顔をして見ただけで、何も言わずに去っていった。
たぶん、私じゃないと思ってくれている人達だろう。
聖女の発言は公爵家よりも強い。
だから、口を挟めなかったみたいで、何人かは「困った事があればうちに来てくれたらいい」や「公には無理だが、何かあれば力になろう」と優しい言葉をかけてくれた人もいた。
私の頑張りに気が付いてくれていた人もいたって事よね。
そういえば、結界が破られた辺境伯は、結界を張ったのは私じゃないってわかってるはずなのに、味方になってくれなかった。
この件に関しては、ちょっと許せない。
何で、名乗り出てくれなかったのかしら?
もしや、フランソワと…じゃないわよね。
そうだったら、本当にムカつく。
「ミーファ」
私の名を呼んで、近付いてきたリュークに笑顔で話しかける。
「リューク。今日はお父様が来られたんじゃなかったのね」
「年だから遠出は辛いって言われて代理で来たんだ。魔道具を使うから一緒なのにな。たぶん、その、色々と気を遣ってくれたんだと思う。まあ、父上が来ていても、ミーファを連れて帰っただろうけど」
二人並んで謁見の間を出る。
リュークは私よりも背が高いから、少し見上げつつ、廊下を歩きながら話を続ける。
「あなたのお父様の所に行こうと思っていたところだったの。だから旅の用意は出来ているし、申し訳ないけど、独り立ち出来る様になるまでは、お言葉に甘えて養ってもらえないかしら? その分、使える力は、あなた達家族や領民の為に使うわ」
「ああ。ありがとう。でも、まさか、こんな大勢の前でプロポーズする事になるとは思わなかったけど」
「ん? プロポーズ?」
「え? プロポーズだったろ?」
「は?」
何を言ってるのか、と聞き返してから、さっきのリュークの発言を思い出す。
「もしかして、下さい、って発言の事?」
「そ、そうだよ!」
「大丈夫よ、リューク。あれをプロポーズだと思ってる人なんていないって!」
笑いながら言うと、リュークがなぜか立ち止まる。
「え? 伝わってない?」
「大丈夫よ。あ、お礼が遅くなってごめんなさい。さっきは、助けてくれてありがとう」
「……そりゃそうだよな」
心からお礼を言ったのに、なぜかリュークは両手で頭を抱えてしまったのだった。
どれくらい結界が破られたかわからないから、誰かに付いてきてもらおうと思ったら、四人全員が嫌がった。
「魔物がいるんでしょう? 怖いから嫌よ! 皆、そう思ってるわ!」
「はあ? 魔物が怖いのは私も一緒だし、だからこそ一生懸命、結界を張ってるんじゃないの!」
聖女達の間では年齢や能力など関係なく、対等な立場の為、年上の聖女に食ってかかったけど、他の聖女と顔を見合わせるだけだった。
こんな事に費やしてる時間がもったいない。
結局、私一人が最北の地へ向かい、結界が破られてしまっていた場所を特定して張り直した。
私が着くまでに中に入ってきてしまった魔物は、北の辺境伯の騎士さん達が対応して退治してくれたようだったけれど、やはり、住民に犠牲者が出てしまったらしい。
落ち込んでいる私に、緊急事態という事で転移ができる魔道具を使って来てくれたから、破られた結界がすぐに修復されて被害が少なかったのだと、騎士さん達は慰めてくれた。
だけど、こんな事、実際はあってはならないミスだった。
もちろん、結界が弱まる事はあってもおかしくないし、そこが狙われたというのならわかるけれど、結界が破られた場所が一箇所ではなかった。
不安になり、何日かかけて確認すると、危ない箇所や結界が張られていない場所が他に何箇所もあった。
誰だってミスはある。
だけど、これは酷すぎる。
王太子殿下の事があるから、少しでも早く城に帰ろうとして、こんな結果になったんだわ…。
一緒に付いてきてくれた侍女に、この地の結界を最後に張った人間を調べるようにお願いし、怪我をした人の達の治療をした後、魔道具を使って王城に戻った。
そして、私が王城に戻った次の日の事だった。
国王陛下から聖女と上位貴族に呼び出しがかかり、昼過ぎの現在、私は謁見の間にいた。
「あの地域の結界を張ったのは誰だ?」
聖女が赴いた地域などは、書類に記入されているはずだから、そんな事は私達に聞かなくてもわかるはずなのに、国王陛下は聖女五人を壇上から見下ろして言った。
何の毛皮かはわからないけれど、灰色のふわふわの毛のマントを羽織った、大柄な体格の国王陛下は、玉座にふんぞり返った状態で、跪いている私達を蔑んだ目で見ながら続ける。
「発言を許す。とっとと名乗り出ろ」
「あ…あの…」
侍女から聞いたところによると、今回、魔物が入り込んだ地域を担当していたのは、フランソワという、私より3つ年上の女性だった。
別に私とは仲が良くも悪くもないといったところで、その彼女は、ガリガリに痩せた細い体を震わせながら、手を挙げたかと思うと、隣に跪いていた私を指差した。
「彼女、彼女です! 彼女はいつも遊んでばかりなんです!」
は?
何、考えてんの?
頭、おかしくなった?
いや、もう昔から、あんたの頭は色ボケでおかしかったっけ!?
「ミーファです! ミーファがミスをしたんだと思います! 信じられないミスです! 許されないと思います!」
「彼女のミスです! 聖女として、ありえません」
「あの結界を張ったのはミーファで間違いありません!」
無実を訴えようとしたけれど、他の聖女二人とキュララまでもが一緒になって、私が犯人だと言い出し始めた。
ふざけないでよ。
「陛下! 調べていただければわかるとは思いますが、私ではありません!」
「なぜ、調べねばならん。他の四人はお前だと言っている。犯人はお前で決まりだろう」
はあ!?
日頃、国民の意見は少数でも大事だとかいっておきながら、こんな時に多数決で決めようとするの!?
国王陛下のくせに!?
私だって、一国民なんですけど!?
というか、リーフ殿下が国王陛下は国民を本当は大事にしてないって言ってたっけ!?
ああ、もうそんな事、どうだっていいわ!
「私ではありません!」
「信じられないな。お前は息子達に媚も売らずに、ほとんど王城にはいないようだな。どうせ、遊び呆けていたのだろう?」
「…何を仰っておられるのでしょうか…」
「そんな軽い気持ちの聖女などいらん! もうお前を聖女とは認めん! 今すぐに王城から、いや、王都から立ち去れ! 聖女が四人もいれば国は何とかなるのだ」
国王陛下はそう言って、謁見の間の出入り口である、大きな二枚扉を指差した。
出ていけという事だろう。
国王陛下の横に座っている王太子殿下は、この状況が楽しくてしょうがないのか、ニヤニヤして私を見ていた。
気持ち悪い…。
「何をしている! 早く出ていけ! 二度と王都に足を踏み入れるな!」
国王陛下の叫びに、他の四人の聖女達が慌てて、言葉を発する。
「ミーファも一応は頑張っています! 今回だけのミスだと思われますので、そこまでされなくても!」
「そうです、陛下。誰にだってミスはありますから。それだけ仰れば、さすがに遊び呆ける事はやめると思いますわ」
何を焦ってるのよ。
今回、魔物が入り込んだ地域は、私がチェック入れてない地域だった。
そして、チェック出来てない地域はたくさんある。
これから、こういう事が頻繁に起きる様になるかもしれない。
後は、自分たちで責任取りなさいよ!
言ってやりたいけれど、ここにいるのは国王陛下だけでなく、王太子殿下もいるし、私達の後ろには、辺境伯家以上の貴族達が集まっている。
たとえ、王族と同じ様な特権が与えられているとしても、一番、偉いのは国王陛下なのだから、口汚く罵る訳にはいかない。
出ていってやる。
そして、少しは困ればいい。
私は、私の周りにいる人達だけ守ろう。
あとは、ご立派な四人の聖女達が頑張ってくれるはずよ。
「承知いたしました」
私が言葉を発すると、私をはさんで座っていたフランソワとキュララが腕を掴んでくる。
「駄目よ、ミーファ」
「そうよ、あなたがいなかったら…」
「今回のミスは私のせいなんでしょう? ですから、私はその責任をとって、聖女と名乗ることはやめて、王都から出ます」
二人の手を振り払って、立ち上がった時だった。
「陛下、発言の許可をいただけますか」
背後から聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、黒色の髪に同じ色の瞳、長めの短髪、整った顔立ちに均整の取れた体をした青年、リューク・スコッチが顔を上げていた。
貴族達は、私達の少し後ろに跪いて座っていて、一番、後ろの列にいるリューク以外は頭を下げたままだ。
「良かろう」
陛下が頷かれたので、リュークは立ち上がると言った。
騎士の正装をしていて、いつもとイメージが違って、大人っぽく見えた。
「彼女が聖女ではなくなり、王都に必要ないと仰られるのであれば、私の父の屋敷に来てもらおうと思うのですが、よろしいでしょうか」
しん、と静まり返った室内に、リュークの低い声が響き渡った。
「リューク…」
「ミーファの力を信用しています。ですから、彼女を王都から追放すると言うなら、私に下さい」
リュークは国王陛下の方を見つめて、迷いの見られない口調で言った。
「いいだろう。使えない聖女など、王城においておいても意味がないし、出て行けと言ったのも私だ。王都から駄目な聖女を追放してやったと国民に伝えれば納得するだろうから、元聖女がどこへ行こうと知った事ではない」
「寛大な御心に感謝致します」
リュークは頭を下げると、唖然としている私の方を見て微笑んだ。
すぐに国王陛下が口を開く。
「今日はこれで終わりだ。出来損ないの聖女が結界を張る事はなくなる。これで、民も安心するだろう」
「そんな、お待ち下さい、陛下!」
聖女達四人は立ち上がって歩いていく陛下を追いすがっていく。
王太子殿下は楽しそうにしているかと思いきや、不機嫌そうな顔で私を見つめていた。
そんな彼から視線を外し、リュークの方に振り返る。
リュークの周りにいた貴族の何人かは、私を気の毒そうな顔をして見ただけで、何も言わずに去っていった。
たぶん、私じゃないと思ってくれている人達だろう。
聖女の発言は公爵家よりも強い。
だから、口を挟めなかったみたいで、何人かは「困った事があればうちに来てくれたらいい」や「公には無理だが、何かあれば力になろう」と優しい言葉をかけてくれた人もいた。
私の頑張りに気が付いてくれていた人もいたって事よね。
そういえば、結界が破られた辺境伯は、結界を張ったのは私じゃないってわかってるはずなのに、味方になってくれなかった。
この件に関しては、ちょっと許せない。
何で、名乗り出てくれなかったのかしら?
もしや、フランソワと…じゃないわよね。
そうだったら、本当にムカつく。
「ミーファ」
私の名を呼んで、近付いてきたリュークに笑顔で話しかける。
「リューク。今日はお父様が来られたんじゃなかったのね」
「年だから遠出は辛いって言われて代理で来たんだ。魔道具を使うから一緒なのにな。たぶん、その、色々と気を遣ってくれたんだと思う。まあ、父上が来ていても、ミーファを連れて帰っただろうけど」
二人並んで謁見の間を出る。
リュークは私よりも背が高いから、少し見上げつつ、廊下を歩きながら話を続ける。
「あなたのお父様の所に行こうと思っていたところだったの。だから旅の用意は出来ているし、申し訳ないけど、独り立ち出来る様になるまでは、お言葉に甘えて養ってもらえないかしら? その分、使える力は、あなた達家族や領民の為に使うわ」
「ああ。ありがとう。でも、まさか、こんな大勢の前でプロポーズする事になるとは思わなかったけど」
「ん? プロポーズ?」
「え? プロポーズだったろ?」
「は?」
何を言ってるのか、と聞き返してから、さっきのリュークの発言を思い出す。
「もしかして、下さい、って発言の事?」
「そ、そうだよ!」
「大丈夫よ、リューク。あれをプロポーズだと思ってる人なんていないって!」
笑いながら言うと、リュークがなぜか立ち止まる。
「え? 伝わってない?」
「大丈夫よ。あ、お礼が遅くなってごめんなさい。さっきは、助けてくれてありがとう」
「……そりゃそうだよな」
心からお礼を言ったのに、なぜかリュークは両手で頭を抱えてしまったのだった。
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