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9 勘弁してよ
リュークとの婚約が決まった日から数日後。
その日の夕食後に、私の部屋でアンナと二人でお茶を飲んでいた時だった。
アンナが突然、当主様に話しておきたい事を思い出したから、今から伝えてくるけど、すぐに戻ってくると言って部屋を出て行った。
少ししてから、手紙と私用のお茶菓子を持って戻ってきてくれた。
「王太子殿下って、国王陛下と同じで、普通の人とは変わった考え方の人なのね」
アンナがティーテーブルの上に、お茶菓子を置いた後、当主様の執務室から持ってきたらしき手紙を、汚いものでも持つ様に、指でつまんでヒラヒラさせながら言った。
「それ、どうしたの?」
「言ったでしょう? お父様に話したい事があったから、思い出した内に話しておこうと思って執務室に行ったんだけれど、話を終えた後に、お父様からミーファさんに目を通すだけ目を通すように伝えてくれって言われて、この手紙を預かったの。王太子殿下からの手紙らしいわ。必要なかったら、燃やすなりなんなりしてくれて良いと言っていたわ」
「で? 持ってる手紙の内容がどんなだったか、アンナは先に読んだの?」
「いいえ。これに関しては読んでいないわ。お父様の机の上の処理済みの所に入っていた、何枚かの手紙は読ませてもらったの。だから、さっきの言葉は、その感想よ。国王陛下もおかしな人だけれど、王太子殿下も酷いわね。何度かお会いした事しかないけれど、リーフ殿下やカイン殿下は、そんな感じはしなかったのに…」
「お二人はまともな王族よ。国王陛下と王太子殿下が変わってるだけ」
アンナから手紙を受け取って、嫌々ながらも内容に目を通す。
「え、何なの。この人、頭おかしいの?」
「どうかしたの?」
読み終えた後、私は無言でアンナに手紙を渡す。
アンナも無言で受け取ると、書かれている内容を読み進めて、眉をひそめたかと思うと言った。
「何なの、これ。あなたの事を酷く書いているくせに、自分と婚約したいくせに意地を張るなだなんて、どうしてそんな訳のわからない事を言ってるの!? ミーファの事をここまで悪く言うのなら、普通は婚約なんてしたくないでしょうに…」
アンナは早口でそう言ってから、なぜか手紙を握りしめた状態で固まった。
「アンナ?」
「も、もしかして、もしかしたら、なのかしら?」
「どうしたの?」
「ミーファさん、落ち着いて聞いてね?」
「な、何?」
ティーテーブルに身を乗り出して、アンナが私に言うので、何を言われるのだろうと、ドキドキしながら聞き返す。
「前々から思ってはいたんだけど、王太子殿下って、やっぱり、ミーファさんの事が好きなんじゃないかしら?」
「は?」
アンナの発言の意味が理解できず聞き返すと、アンナがもう一度、同じ言葉を繰り返す。
「王太子殿下って、やっぱり、ミーファさんの事が好きなんじゃないかしら?」
「ちょっとやめて。冗談でもそんな事言わないで、気持ち悪い」
「冗談じゃないわ。本気で言っているの」
真剣な表情でアンナに言われ、失礼かもしれないけれど、あまりにも嫌すぎて、大きく首を横に振る。
「ないわ、ないない! あったとしても御免だわ! あの人の事を好きになる要素なんて一つもないし! あれだけ嫌な事を言われて、私を好きだなんて言われても全く嬉しくないんだけど!?」
「でも、顔は整っているんでしょう!?」
「人を面食いみたいに言わないで! 整っているのは間違いないかもしれないけど、整っているからって、中身がどんな人間でもいいわけじゃないから!」
「そうね。それに顔が整っているなら、お兄様だって整ってるわ!」
「そうね! それは私も否定しない!」
リュークとの婚約が決まった時には、アンナも奥様も、とても喜んでくれた。
アンナはお兄様大好きっ子だけど、束縛したいタイプではないらしいのと、彼女自身にも好きな人がいるから、私に対して悪い印象を持ってくれていないのは助かる。
色々と話をして、友人関係を築けているのもあるからかもしれないけれど。
というか、アンナは私がリュークを顔で選んだと思ってるのかしら。
そんな訳ないのに…。
いや、もちろん、顔も好きだけど、顔で選んだわけじゃない事は確か。
「でも、この感じだと、王太子殿下はミーファさんと婚約したい様にしか思えないわ」
「そうかしら? でも、どんな理由であれ、王太子殿下は私とリュークが婚約した事は知っているはずよ。それなのに、どうして婚約の話を持ち出してくるの? 婚約破棄だなんて簡単に出来ると思ってるって事?」
「わからないけれど、あなたが意地を張って、お兄様と婚約したと思ってるとか?」
「どうしてそんな発想に行き着くの!?」
「そういう人だからよ。世の中には色々な人がいるわ。どんな理由かはわからないけれど、王太子殿下はあなたが自分の事を好きだと思っているんじゃないかしら?」
「私が、私を?」
「そうじゃなくて! ミーファさん、認めたくないのはわかるけど、しっかりして! あなたが王太子殿下を好きだと、王太子殿下は思っているんじゃないの? と言いたいの!」
アンナの表情からは冗談で、そんな事を言っている様には見えなかった。
冗談でしょう。
人からの好意がこんなに嫌だと思う事なんて初めてだわ。
いや、でもまだわからない。
アンナの勘違いという可能性もある。
いや、王太子殿下なら、思い込みが激しそうだし、ありえるか…。
「私、あの人に優しくした事なんて一つもないんだけど」
「冷たい態度を取る人が好きなのかもしれないわよ。市井では塩対応とかいうのよね? もしくは、恥ずかしくて好きな人には素直になれない、みたいな感じで受け止めているのかも。そして、王太子殿下はあなたの事が好きだから、自分達は両思いだと思い込んだとか?」
どうしたら、そんなポジティブに考えられるのよ!
だけど、それなら、聖女が近くにいないと怒っていたのはなぜなの?
「でも、アンナ。王太子殿下は、他の聖女が自分の近くにいないと怒っていたのよ? それはどうして?」
「自分の身を守りたいんじゃないかしら?」
「自分の身を守る?」
「だって、魔族に襲われても聖女様が近くにいたら、すぐに結界を張ってもらえるじゃない」
「そんな理由!?」
「わからないけれど、怪我をしてもすぐに治してもらえるし、それに聖女様って綺麗な人が多いから、チヤホヤされて嬉しいとか、そんなのじゃない?」
アンナが顎に右手の人差し指を当て、思案しながら言う。
そんな馬鹿な。
だからといって、あんなやり方したら嫌われるとか思わないの!?
「いや、どう考えてもない! だって、王太子殿下は私から嫌われる様な事しかしてないのよ!?」
「我慢強くて従順だと思われたのかも?」
「そんなの嫌ぁ!」
アンナの言葉を聞いて頭を抱えて叫ぶ。
こんなの何やっても、王太子殿下からしたら、私が彼を好きだと思うって事じゃない!
「魔法での手紙も、私に直接届かない様にしてもらってるんだから、普通は嫌われてるって気付くでしょ!?」
王太子殿下から私宛の手紙が一日に何度も届くものだから、当主様が迷惑していると連絡してくれた為、最近は当主様宛で私への手紙が送られてきていた。
私が返事をしない時点で、私に嫌がられている事くらいわかるでしょうに!
「私が手紙を受け取らない事をどう思ってるのかしら」
「素直になれなくて、意地を張って受け取らないとでも思ってるのかも?」
「勘弁してよ。もう無理。無視するわ、無視!」
「無視って、今の状態と同じだと思うけど…。あと、王太子殿下に会いたくないミーファさんに、相談したい事があるんだけど」
「どうかしたの?」
アンナは俯いた後、顔を上げて口を開こうとしたけれど、よっぽど言い出しにくいのか、すぐにまた俯いてしまう。
「もしかして、国王陛下が何か言ってきた?」
尋ねると、アンナはティーテーブルの上で拳を握りしめて、無言で頷いた。
「会うのをなんだかんだ言って断っていたら、パーティーに誘われたの。最初は場所が王都ばかりだったから、パーティーはミーファさんが行ける所しか行かないってお返事したら、しばらくは大人しかったのに」
「で、今回は違う場所でのパーティーに誘ってきたって事?」
「北の辺境伯が主催するパーティーなの。聖女をたたえるっていう…」
「よし、断りましょ!」
明らかに行かなくて良さそうなパーティーだったので、はっきり言うと、アンナが少しだけ明るい表情になる。
「断ってもいいかしら?」
「当たり前じゃない! 私が行くなら行くって言ってるのに、北の辺境伯が主催で、しかも聖女をたたえるパーティーなんかに、私が行くわけないでしょ! それに、聖女達もそんな事をしている暇があったら、休息に使うべきよ」
パーティーはどうせ夜会だろうから、さすがに聖女達にその時間まで働けとは思わない。
それこそ、身体を壊してしまうから。
彼女達が倒れたら、結界を張る人が私以外、いなくなってしまうので、それはそれで困る。
「北の辺境伯のパーティーなんか行かなくていいわ!」
北の辺境伯が庇ってくれなかった事を思い出して怒りながら言うと、アンナはホッとした様に笑って頷く。
「そうよね。そんなパーティー、お友達を悪く言われてるのと一緒だものね! 私にとっての聖女様はミーファさんだけだからパーティーには行きません、ってお返事するわ!」
「そうよ。それでいいと思う。って、私が言うなって感じかもしれないけど」
「そんな事ないわ。ありがとう、ミーファさん。ミーファさんに相談して良かったわ。私は本当に駄目ね」
アンナはホッとした顔で言った後、苦笑した。
落ち着いて考えればわかる事なのかもしれないけど、アンナはまだ十五歳になったばかりだし、経験値が少ないというのもあるんだろうな。
そんな事を呑気に考えてから、違う話題を持ち出してきたアンナと盛り上がる事なったのだけれど、この時の私も、本当に呑気だったと後から思う事になる。
なぜなら、国王陛下がアンナに会いたがっている様に、王太子殿下と聖女達四人が私にどうにかして会おうと画策している事なんて考えもしなかったのだから。
その日の夕食後に、私の部屋でアンナと二人でお茶を飲んでいた時だった。
アンナが突然、当主様に話しておきたい事を思い出したから、今から伝えてくるけど、すぐに戻ってくると言って部屋を出て行った。
少ししてから、手紙と私用のお茶菓子を持って戻ってきてくれた。
「王太子殿下って、国王陛下と同じで、普通の人とは変わった考え方の人なのね」
アンナがティーテーブルの上に、お茶菓子を置いた後、当主様の執務室から持ってきたらしき手紙を、汚いものでも持つ様に、指でつまんでヒラヒラさせながら言った。
「それ、どうしたの?」
「言ったでしょう? お父様に話したい事があったから、思い出した内に話しておこうと思って執務室に行ったんだけれど、話を終えた後に、お父様からミーファさんに目を通すだけ目を通すように伝えてくれって言われて、この手紙を預かったの。王太子殿下からの手紙らしいわ。必要なかったら、燃やすなりなんなりしてくれて良いと言っていたわ」
「で? 持ってる手紙の内容がどんなだったか、アンナは先に読んだの?」
「いいえ。これに関しては読んでいないわ。お父様の机の上の処理済みの所に入っていた、何枚かの手紙は読ませてもらったの。だから、さっきの言葉は、その感想よ。国王陛下もおかしな人だけれど、王太子殿下も酷いわね。何度かお会いした事しかないけれど、リーフ殿下やカイン殿下は、そんな感じはしなかったのに…」
「お二人はまともな王族よ。国王陛下と王太子殿下が変わってるだけ」
アンナから手紙を受け取って、嫌々ながらも内容に目を通す。
「え、何なの。この人、頭おかしいの?」
「どうかしたの?」
読み終えた後、私は無言でアンナに手紙を渡す。
アンナも無言で受け取ると、書かれている内容を読み進めて、眉をひそめたかと思うと言った。
「何なの、これ。あなたの事を酷く書いているくせに、自分と婚約したいくせに意地を張るなだなんて、どうしてそんな訳のわからない事を言ってるの!? ミーファの事をここまで悪く言うのなら、普通は婚約なんてしたくないでしょうに…」
アンナは早口でそう言ってから、なぜか手紙を握りしめた状態で固まった。
「アンナ?」
「も、もしかして、もしかしたら、なのかしら?」
「どうしたの?」
「ミーファさん、落ち着いて聞いてね?」
「な、何?」
ティーテーブルに身を乗り出して、アンナが私に言うので、何を言われるのだろうと、ドキドキしながら聞き返す。
「前々から思ってはいたんだけど、王太子殿下って、やっぱり、ミーファさんの事が好きなんじゃないかしら?」
「は?」
アンナの発言の意味が理解できず聞き返すと、アンナがもう一度、同じ言葉を繰り返す。
「王太子殿下って、やっぱり、ミーファさんの事が好きなんじゃないかしら?」
「ちょっとやめて。冗談でもそんな事言わないで、気持ち悪い」
「冗談じゃないわ。本気で言っているの」
真剣な表情でアンナに言われ、失礼かもしれないけれど、あまりにも嫌すぎて、大きく首を横に振る。
「ないわ、ないない! あったとしても御免だわ! あの人の事を好きになる要素なんて一つもないし! あれだけ嫌な事を言われて、私を好きだなんて言われても全く嬉しくないんだけど!?」
「でも、顔は整っているんでしょう!?」
「人を面食いみたいに言わないで! 整っているのは間違いないかもしれないけど、整っているからって、中身がどんな人間でもいいわけじゃないから!」
「そうね。それに顔が整っているなら、お兄様だって整ってるわ!」
「そうね! それは私も否定しない!」
リュークとの婚約が決まった時には、アンナも奥様も、とても喜んでくれた。
アンナはお兄様大好きっ子だけど、束縛したいタイプではないらしいのと、彼女自身にも好きな人がいるから、私に対して悪い印象を持ってくれていないのは助かる。
色々と話をして、友人関係を築けているのもあるからかもしれないけれど。
というか、アンナは私がリュークを顔で選んだと思ってるのかしら。
そんな訳ないのに…。
いや、もちろん、顔も好きだけど、顔で選んだわけじゃない事は確か。
「でも、この感じだと、王太子殿下はミーファさんと婚約したい様にしか思えないわ」
「そうかしら? でも、どんな理由であれ、王太子殿下は私とリュークが婚約した事は知っているはずよ。それなのに、どうして婚約の話を持ち出してくるの? 婚約破棄だなんて簡単に出来ると思ってるって事?」
「わからないけれど、あなたが意地を張って、お兄様と婚約したと思ってるとか?」
「どうしてそんな発想に行き着くの!?」
「そういう人だからよ。世の中には色々な人がいるわ。どんな理由かはわからないけれど、王太子殿下はあなたが自分の事を好きだと思っているんじゃないかしら?」
「私が、私を?」
「そうじゃなくて! ミーファさん、認めたくないのはわかるけど、しっかりして! あなたが王太子殿下を好きだと、王太子殿下は思っているんじゃないの? と言いたいの!」
アンナの表情からは冗談で、そんな事を言っている様には見えなかった。
冗談でしょう。
人からの好意がこんなに嫌だと思う事なんて初めてだわ。
いや、でもまだわからない。
アンナの勘違いという可能性もある。
いや、王太子殿下なら、思い込みが激しそうだし、ありえるか…。
「私、あの人に優しくした事なんて一つもないんだけど」
「冷たい態度を取る人が好きなのかもしれないわよ。市井では塩対応とかいうのよね? もしくは、恥ずかしくて好きな人には素直になれない、みたいな感じで受け止めているのかも。そして、王太子殿下はあなたの事が好きだから、自分達は両思いだと思い込んだとか?」
どうしたら、そんなポジティブに考えられるのよ!
だけど、それなら、聖女が近くにいないと怒っていたのはなぜなの?
「でも、アンナ。王太子殿下は、他の聖女が自分の近くにいないと怒っていたのよ? それはどうして?」
「自分の身を守りたいんじゃないかしら?」
「自分の身を守る?」
「だって、魔族に襲われても聖女様が近くにいたら、すぐに結界を張ってもらえるじゃない」
「そんな理由!?」
「わからないけれど、怪我をしてもすぐに治してもらえるし、それに聖女様って綺麗な人が多いから、チヤホヤされて嬉しいとか、そんなのじゃない?」
アンナが顎に右手の人差し指を当て、思案しながら言う。
そんな馬鹿な。
だからといって、あんなやり方したら嫌われるとか思わないの!?
「いや、どう考えてもない! だって、王太子殿下は私から嫌われる様な事しかしてないのよ!?」
「我慢強くて従順だと思われたのかも?」
「そんなの嫌ぁ!」
アンナの言葉を聞いて頭を抱えて叫ぶ。
こんなの何やっても、王太子殿下からしたら、私が彼を好きだと思うって事じゃない!
「魔法での手紙も、私に直接届かない様にしてもらってるんだから、普通は嫌われてるって気付くでしょ!?」
王太子殿下から私宛の手紙が一日に何度も届くものだから、当主様が迷惑していると連絡してくれた為、最近は当主様宛で私への手紙が送られてきていた。
私が返事をしない時点で、私に嫌がられている事くらいわかるでしょうに!
「私が手紙を受け取らない事をどう思ってるのかしら」
「素直になれなくて、意地を張って受け取らないとでも思ってるのかも?」
「勘弁してよ。もう無理。無視するわ、無視!」
「無視って、今の状態と同じだと思うけど…。あと、王太子殿下に会いたくないミーファさんに、相談したい事があるんだけど」
「どうかしたの?」
アンナは俯いた後、顔を上げて口を開こうとしたけれど、よっぽど言い出しにくいのか、すぐにまた俯いてしまう。
「もしかして、国王陛下が何か言ってきた?」
尋ねると、アンナはティーテーブルの上で拳を握りしめて、無言で頷いた。
「会うのをなんだかんだ言って断っていたら、パーティーに誘われたの。最初は場所が王都ばかりだったから、パーティーはミーファさんが行ける所しか行かないってお返事したら、しばらくは大人しかったのに」
「で、今回は違う場所でのパーティーに誘ってきたって事?」
「北の辺境伯が主催するパーティーなの。聖女をたたえるっていう…」
「よし、断りましょ!」
明らかに行かなくて良さそうなパーティーだったので、はっきり言うと、アンナが少しだけ明るい表情になる。
「断ってもいいかしら?」
「当たり前じゃない! 私が行くなら行くって言ってるのに、北の辺境伯が主催で、しかも聖女をたたえるパーティーなんかに、私が行くわけないでしょ! それに、聖女達もそんな事をしている暇があったら、休息に使うべきよ」
パーティーはどうせ夜会だろうから、さすがに聖女達にその時間まで働けとは思わない。
それこそ、身体を壊してしまうから。
彼女達が倒れたら、結界を張る人が私以外、いなくなってしまうので、それはそれで困る。
「北の辺境伯のパーティーなんか行かなくていいわ!」
北の辺境伯が庇ってくれなかった事を思い出して怒りながら言うと、アンナはホッとした様に笑って頷く。
「そうよね。そんなパーティー、お友達を悪く言われてるのと一緒だものね! 私にとっての聖女様はミーファさんだけだからパーティーには行きません、ってお返事するわ!」
「そうよ。それでいいと思う。って、私が言うなって感じかもしれないけど」
「そんな事ないわ。ありがとう、ミーファさん。ミーファさんに相談して良かったわ。私は本当に駄目ね」
アンナはホッとした顔で言った後、苦笑した。
落ち着いて考えればわかる事なのかもしれないけど、アンナはまだ十五歳になったばかりだし、経験値が少ないというのもあるんだろうな。
そんな事を呑気に考えてから、違う話題を持ち出してきたアンナと盛り上がる事なったのだけれど、この時の私も、本当に呑気だったと後から思う事になる。
なぜなら、国王陛下がアンナに会いたがっている様に、王太子殿下と聖女達四人が私にどうにかして会おうと画策している事なんて考えもしなかったのだから。
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