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18 自分自身で勝ち取るわ
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「ミーファ、お願い! 国王陛下のご機嫌をとるには、あなたを聖女にもどらせるしかないのよ!」
フランソワは涙で顔をぐちゃぐちゃにして言う。
「どうしてあなたの為に私が何度も犠牲にならないといけないの? あんな腹が立つ気分になるのは、あの時一回だけで十分よ!」
私は立ち上がって続ける。
「あなたの都合なんて、私の知った事ではないから、あなたには王城に戻ってもらうわ!」
「やめて! そんな事になったら、私の人生が終わってしまうわ!」
「…フランソワ、あなたって本当に自分の事しか考えていないのね」
「私がこうなるまで放っておいたのは、ミーファじゃないの! もっと強く言ってくれていたら、こんな事にならなかったのかもしれないのよ!」
「どういう意味?」
フランソワに尋ねると、彼女は顔を上げて言う。
「北の辺境伯は私の結界が甘かったから、魔物が入り込んだと言ったの。その責任をとって、この領土内を守る聖女になれって!」
「北の辺境伯の言ってる事は間違っていないけどね。じゃあ、愛人契約云々って、さっきまで言ってた話は何だったの!?」
「だから、表向きなのよ!」
「ギーシンギ辺境伯がフランソワ様を脅したという事でしょうか?」
カッカしている私をなだめる様に、リュークは私の手を優しく握ってくれた後、フランソワに尋ねた。
ちなみに、ギーシンギ辺境伯というのは、北の辺境伯の名前だ。
リュークの質問にフランソワは涙をまた流しながら頷く。
「そうよ。そうしなければ、私がミーファに罪をなすりつけたことをバラすって…」
「でも、罪をなすりつけたのは、あなたかもしれないけれど、嘘に加担したのは他の聖女達もじゃないの。それにもう、嘘をついていた事が国王陛下にバレているんなら一緒じゃない!」
「だけど、頼れる人が他にいなかったのよ! 身を隠せと言われても、実家に帰るわけにもいかないし!」
興奮するフランソワを何とか落ち着かせて、話を聞いてみると、最終的にわかったのは、北の辺境伯は今すぐにではないけれど、フランソワを自分の領地を優先的に守らせる為に、彼女を脅し、愛人として、自分の家に囲い込もうとしていた。
だけど、国王陛下にバレてしまい、北の辺境伯の脅しは関係なくなったけれど、身を隠す必要がある為、北の辺境伯を頼ったという事だった。
「何だか、大変な事になったわね。未遂に終わったとはいえ、ギーシンギ辺境伯のした事は許されるものでもないと思うわ」
奥様が右頬に手を当てて思案顔で言う。
「そうですよね。聖女を脅したんですから」
「ねえ、ミーファ、上手く解決する方法は、あなたが聖女に戻るしかないのよ!」
私と奥様の会話に、フランソワが入ってきたので、苛立ちをおさえて答える。
「同じ事を何回も言われなくてもわかってるわよ。だけど、嫌なの」
「聞いてちょうだい、ミーファ。私、あなたがいなくなってからは、キュララ達にいじめられていたのよ!」
「気の毒だとは思うけど、それ私のせいじゃないわよね? 責めるならいじめてきたキュララ達を責めたら?」
「それができたら苦労していないわ」
嗚咽を上げて泣くフランソワを黙って見つめる。
まあ、それができたらいじめられもしなかったのかもしれないけど、今回の場合は彼女にも原因があるしね。
ただ、やはり、いじめは良くない。
聖女がなんて事をしてるのよ。
「フランソワ、とにかく、あなたの言いたい事はわかった。また連絡するから、ここで大人しくしておいてちょうだい」
「……ミーファ、ありがとう! 助けてくれるのね?」
フランソワは笑顔を浮かべたけれど、私は大きく首を横に振る。
「あなたを助けるんじゃないわ。自分の幸せの為に動くだけよ」
きっぱりと答えてから、リュークと奥様を促して、スコッチ邸に戻る事にした。
そして、次の日の朝、学校が休みだったリュークと一緒に、当主様に昨日の話をした。
昨日の内に奥様の方から話を聞いて下さっていたみたいで、詳しい話はしなくても良くて、これからどうするか、という相談をする事になったんだけど、まずは、当主様が先日出席した、フランソワの件で私を聖女に戻すかどうかの話し合いについて話をしてくれた。
「フランソワ様がこのまま見つからなければ、ミーファを復帰させた方が良いという声がないわけではないが、ミーファ
の意思を伝えたところ、ミーファの意思を尊重したいといってくれる貴族もいた。ギークス公爵も味方についてくれたよ」
当主様の言葉を聞いて、心の中で味方になってくれた人達に感謝する。
全て上手くいったら、お礼に結界を張りに行こう。
「宰相閣下もこっち側についてくれた。先日の王太子殿下の事もあるからかもしれないが、追放してみたり、やっぱり復帰させると言い出したりする国王陛下への不満もあるのかもしれない」
「そういえば、王太子殿下はどうなったんですか?」
「今のところは1ヶ月の謹慎のみみたいだな。謹慎といっても、部屋からも出させてもらえないようだ」
「私の事は諦めてくれそうでしょうか」
「そうせざるを得ない状況にしたつもりではあるが、殿下の事だからわからん」
当主様は吐き捨てる様に答えた。
当主様自身もうんざりしているのかもしれない。
それにわざわざ、私を諦めたかどうか確認なんてしたくないわよね…。
「フランソワ様をやはり国王陛下の前に連れて行ったら良いのですか?」
リュークが当主様に尋ねると、頷かれてから口を開く。
「もしくは新しい聖女様が現れたら良いのだが…」
「…どうかされましたか?」
「新聞では誤魔化していたが、人の噂が広まり、追放された聖女様がミーファだと多くの人間に知られてしまった。そのせいで、聖女の力をもっていたとしても、名乗り出ない人が増えるのではないかと懸念されている」
「そんな…」
呟いてから、頭に浮かんだのは、普通の人ならそう思うかもしれないって事だった。
だって、一生懸命頑張っても、国王陛下の一言で聖女じゃなくなり、王都から追放されるんだもの。
普通の人なら、いつ追放されるかわからない恐怖のある生活を選ぶより、平穏な暮らしを望むはず。
「私が追放されたと言わない方が良かったんでしょうか…」
私のせいで聖女の後継者がいなくなってしまう?
そんな不安を感じて呟いた。
「ミーファ、君は何も悪くない。君が追放された事は、どうせ貴族の多くは知っていた。だから、君が話さなくても噂は広がるから一緒だ。君が結界を張りに来ないのはなぜだと思う人だって出てくるんだから」
隣に座るリュークが私の背中を優しくなでながら続ける。
「だから、ミーファが気にする必要はない。自分を責めたりするなよ?」
「リューク…」
抱きつきたい気持ちになったけれど、当主様の前だし我慢した。
「ありがとう。だけど、私のせいで聖女に悪いイメージがついてしまったかも」
「どういう事だ?」
当主様に聞かれて、素直に答える。
「聖女のイメージって、可愛かったり美人だったり、しかも性格も優しくて謙虚とかいう綺麗なイメージがあったと思うんです。今回の件で、そうではなくなった気がして…。私は外見が悪いので、せめて中身だけでも綺麗にしていたつもりでしたが…」
「そんな事をミーファは気にしなくて良い。元々は国王陛下が決めた事だ。ミーファにはどうしようも出来ない事だったんだからな」
「…ありがとうございます」
当主様にまで慰めてもらってしまった。
しっかりしないと!
「何にしても、貴族の間での陛下への不信感が強まっている今の間に、この件を解決してしまわないとな」
そう言った当主様にリュークが言う。
「父上に相談したい事があるのですが」
「何だ?」
「王太子殿下はこのまま、陛下の跡を継がれるのでしょうか」
「今のままならそうなるな」
「では、どうすれば良いでしょうか」
リュークの言おうとしている事がわからず、彼の方を見て眉を寄せる。
それは、当主様も同じだったみたいで、リュークに訝しげな顔で尋ねた。
「リューク、何が言いたい?」
「王太子殿下の王位継承権を剥奪するにはどうしたら良いのか教えていただきたくて」
リュークの爆弾発言に私だけでなく、当主様までもが言葉をなくしてまった。
こんな発言した事を王太子殿下に聞かれてしまったら、いくらリュークでも危ない気がする…。
「これは、俺だけの質問ではなく、ある方もそう思っていて、どうしたら良いか、頭を悩ませています。ミーファの事だって、今を乗り切れたとしても、王太子殿下が国王陛下になれば、ミーファをどうにかして自分のものにしようとするかもしれません」
「…それは、そうかもしれんな」
リュークの言葉に当主様は頷いてから、リュークに尋ねる。
「そんな話をするという事は、ある程度、話はついているんだな?」
「はい」
「えっと、どういう事なの? それにある方って誰の事なの?」
私が尋ねると、リュークは微笑む。
「ミーファもよく知っている人だよ。俺と同じ様に君だって信頼している人だ」
リュークの言葉を聞いて、この件に関して深く関われそうな人物といえば、一人しか思いつかなかった。
当主様も同じ人を思い浮かべたみたいで、神妙な面持ちで口を開く。
「自分の口からそう言われたのか?」
「はい」
リュークが大きく頷くと、当主様は大きく息を吐いてから立ち上がる。
「わかった。協力を仰げる人間を募ってみよう」
「ありがとうございます」
リュークは当主様に頭を下げた後、その方とはいつでも通信の出来る魔道具を使って話せるし、顔も見れる状態であるという事を話した。
そんな事が出来るんだったら、もっと早くに教えてもらいたかった。
当主様の執務室から出ると、早速、リュークに文句を言う。
「リューク、どうして、そんな事が出来るなら、私に教えてくれなかったの」
「向こうから連絡が来たから話をしてただけで、約束をしてないとこっちから連絡出来なかったんだ。あの方も忙しいだろうから」
「私もお話したいんだけど」
「わかった。今日、連絡をもらえる事になっているから、連絡が来たら、ミーファを呼ぶようにするよ」
リュークは、私の部屋に向かって並んで歩きながら話を続ける。
「それから、一番頑張ってもらわないといけないのはミーファになると思う。それに、俺はミーファが頑張ってるのに、近くにいてあげる事もできない」
そう言った後、悲しそうな顔をするリュークの頬に手を当てて言う。
彼が言っているのは、私が国王陛下に話をする時の事だと思う。
大事な場面だから、自分よりも当主様が近くにいる方が良いと思ってくれたみたい。
そして、それは正直に言うと間違ってない。
だって、彼は辺境伯の令息であって、辺境伯ではないのだから。
「大丈夫よ。私の幸せだもの。自分自身で勝ち取るわ」
何より、私には味方がたくさんいる。
私は一人じゃないと思うだけでも、私は強くなれるから。
フランソワは涙で顔をぐちゃぐちゃにして言う。
「どうしてあなたの為に私が何度も犠牲にならないといけないの? あんな腹が立つ気分になるのは、あの時一回だけで十分よ!」
私は立ち上がって続ける。
「あなたの都合なんて、私の知った事ではないから、あなたには王城に戻ってもらうわ!」
「やめて! そんな事になったら、私の人生が終わってしまうわ!」
「…フランソワ、あなたって本当に自分の事しか考えていないのね」
「私がこうなるまで放っておいたのは、ミーファじゃないの! もっと強く言ってくれていたら、こんな事にならなかったのかもしれないのよ!」
「どういう意味?」
フランソワに尋ねると、彼女は顔を上げて言う。
「北の辺境伯は私の結界が甘かったから、魔物が入り込んだと言ったの。その責任をとって、この領土内を守る聖女になれって!」
「北の辺境伯の言ってる事は間違っていないけどね。じゃあ、愛人契約云々って、さっきまで言ってた話は何だったの!?」
「だから、表向きなのよ!」
「ギーシンギ辺境伯がフランソワ様を脅したという事でしょうか?」
カッカしている私をなだめる様に、リュークは私の手を優しく握ってくれた後、フランソワに尋ねた。
ちなみに、ギーシンギ辺境伯というのは、北の辺境伯の名前だ。
リュークの質問にフランソワは涙をまた流しながら頷く。
「そうよ。そうしなければ、私がミーファに罪をなすりつけたことをバラすって…」
「でも、罪をなすりつけたのは、あなたかもしれないけれど、嘘に加担したのは他の聖女達もじゃないの。それにもう、嘘をついていた事が国王陛下にバレているんなら一緒じゃない!」
「だけど、頼れる人が他にいなかったのよ! 身を隠せと言われても、実家に帰るわけにもいかないし!」
興奮するフランソワを何とか落ち着かせて、話を聞いてみると、最終的にわかったのは、北の辺境伯は今すぐにではないけれど、フランソワを自分の領地を優先的に守らせる為に、彼女を脅し、愛人として、自分の家に囲い込もうとしていた。
だけど、国王陛下にバレてしまい、北の辺境伯の脅しは関係なくなったけれど、身を隠す必要がある為、北の辺境伯を頼ったという事だった。
「何だか、大変な事になったわね。未遂に終わったとはいえ、ギーシンギ辺境伯のした事は許されるものでもないと思うわ」
奥様が右頬に手を当てて思案顔で言う。
「そうですよね。聖女を脅したんですから」
「ねえ、ミーファ、上手く解決する方法は、あなたが聖女に戻るしかないのよ!」
私と奥様の会話に、フランソワが入ってきたので、苛立ちをおさえて答える。
「同じ事を何回も言われなくてもわかってるわよ。だけど、嫌なの」
「聞いてちょうだい、ミーファ。私、あなたがいなくなってからは、キュララ達にいじめられていたのよ!」
「気の毒だとは思うけど、それ私のせいじゃないわよね? 責めるならいじめてきたキュララ達を責めたら?」
「それができたら苦労していないわ」
嗚咽を上げて泣くフランソワを黙って見つめる。
まあ、それができたらいじめられもしなかったのかもしれないけど、今回の場合は彼女にも原因があるしね。
ただ、やはり、いじめは良くない。
聖女がなんて事をしてるのよ。
「フランソワ、とにかく、あなたの言いたい事はわかった。また連絡するから、ここで大人しくしておいてちょうだい」
「……ミーファ、ありがとう! 助けてくれるのね?」
フランソワは笑顔を浮かべたけれど、私は大きく首を横に振る。
「あなたを助けるんじゃないわ。自分の幸せの為に動くだけよ」
きっぱりと答えてから、リュークと奥様を促して、スコッチ邸に戻る事にした。
そして、次の日の朝、学校が休みだったリュークと一緒に、当主様に昨日の話をした。
昨日の内に奥様の方から話を聞いて下さっていたみたいで、詳しい話はしなくても良くて、これからどうするか、という相談をする事になったんだけど、まずは、当主様が先日出席した、フランソワの件で私を聖女に戻すかどうかの話し合いについて話をしてくれた。
「フランソワ様がこのまま見つからなければ、ミーファを復帰させた方が良いという声がないわけではないが、ミーファ
の意思を伝えたところ、ミーファの意思を尊重したいといってくれる貴族もいた。ギークス公爵も味方についてくれたよ」
当主様の言葉を聞いて、心の中で味方になってくれた人達に感謝する。
全て上手くいったら、お礼に結界を張りに行こう。
「宰相閣下もこっち側についてくれた。先日の王太子殿下の事もあるからかもしれないが、追放してみたり、やっぱり復帰させると言い出したりする国王陛下への不満もあるのかもしれない」
「そういえば、王太子殿下はどうなったんですか?」
「今のところは1ヶ月の謹慎のみみたいだな。謹慎といっても、部屋からも出させてもらえないようだ」
「私の事は諦めてくれそうでしょうか」
「そうせざるを得ない状況にしたつもりではあるが、殿下の事だからわからん」
当主様は吐き捨てる様に答えた。
当主様自身もうんざりしているのかもしれない。
それにわざわざ、私を諦めたかどうか確認なんてしたくないわよね…。
「フランソワ様をやはり国王陛下の前に連れて行ったら良いのですか?」
リュークが当主様に尋ねると、頷かれてから口を開く。
「もしくは新しい聖女様が現れたら良いのだが…」
「…どうかされましたか?」
「新聞では誤魔化していたが、人の噂が広まり、追放された聖女様がミーファだと多くの人間に知られてしまった。そのせいで、聖女の力をもっていたとしても、名乗り出ない人が増えるのではないかと懸念されている」
「そんな…」
呟いてから、頭に浮かんだのは、普通の人ならそう思うかもしれないって事だった。
だって、一生懸命頑張っても、国王陛下の一言で聖女じゃなくなり、王都から追放されるんだもの。
普通の人なら、いつ追放されるかわからない恐怖のある生活を選ぶより、平穏な暮らしを望むはず。
「私が追放されたと言わない方が良かったんでしょうか…」
私のせいで聖女の後継者がいなくなってしまう?
そんな不安を感じて呟いた。
「ミーファ、君は何も悪くない。君が追放された事は、どうせ貴族の多くは知っていた。だから、君が話さなくても噂は広がるから一緒だ。君が結界を張りに来ないのはなぜだと思う人だって出てくるんだから」
隣に座るリュークが私の背中を優しくなでながら続ける。
「だから、ミーファが気にする必要はない。自分を責めたりするなよ?」
「リューク…」
抱きつきたい気持ちになったけれど、当主様の前だし我慢した。
「ありがとう。だけど、私のせいで聖女に悪いイメージがついてしまったかも」
「どういう事だ?」
当主様に聞かれて、素直に答える。
「聖女のイメージって、可愛かったり美人だったり、しかも性格も優しくて謙虚とかいう綺麗なイメージがあったと思うんです。今回の件で、そうではなくなった気がして…。私は外見が悪いので、せめて中身だけでも綺麗にしていたつもりでしたが…」
「そんな事をミーファは気にしなくて良い。元々は国王陛下が決めた事だ。ミーファにはどうしようも出来ない事だったんだからな」
「…ありがとうございます」
当主様にまで慰めてもらってしまった。
しっかりしないと!
「何にしても、貴族の間での陛下への不信感が強まっている今の間に、この件を解決してしまわないとな」
そう言った当主様にリュークが言う。
「父上に相談したい事があるのですが」
「何だ?」
「王太子殿下はこのまま、陛下の跡を継がれるのでしょうか」
「今のままならそうなるな」
「では、どうすれば良いでしょうか」
リュークの言おうとしている事がわからず、彼の方を見て眉を寄せる。
それは、当主様も同じだったみたいで、リュークに訝しげな顔で尋ねた。
「リューク、何が言いたい?」
「王太子殿下の王位継承権を剥奪するにはどうしたら良いのか教えていただきたくて」
リュークの爆弾発言に私だけでなく、当主様までもが言葉をなくしてまった。
こんな発言した事を王太子殿下に聞かれてしまったら、いくらリュークでも危ない気がする…。
「これは、俺だけの質問ではなく、ある方もそう思っていて、どうしたら良いか、頭を悩ませています。ミーファの事だって、今を乗り切れたとしても、王太子殿下が国王陛下になれば、ミーファをどうにかして自分のものにしようとするかもしれません」
「…それは、そうかもしれんな」
リュークの言葉に当主様は頷いてから、リュークに尋ねる。
「そんな話をするという事は、ある程度、話はついているんだな?」
「はい」
「えっと、どういう事なの? それにある方って誰の事なの?」
私が尋ねると、リュークは微笑む。
「ミーファもよく知っている人だよ。俺と同じ様に君だって信頼している人だ」
リュークの言葉を聞いて、この件に関して深く関われそうな人物といえば、一人しか思いつかなかった。
当主様も同じ人を思い浮かべたみたいで、神妙な面持ちで口を開く。
「自分の口からそう言われたのか?」
「はい」
リュークが大きく頷くと、当主様は大きく息を吐いてから立ち上がる。
「わかった。協力を仰げる人間を募ってみよう」
「ありがとうございます」
リュークは当主様に頭を下げた後、その方とはいつでも通信の出来る魔道具を使って話せるし、顔も見れる状態であるという事を話した。
そんな事が出来るんだったら、もっと早くに教えてもらいたかった。
当主様の執務室から出ると、早速、リュークに文句を言う。
「リューク、どうして、そんな事が出来るなら、私に教えてくれなかったの」
「向こうから連絡が来たから話をしてただけで、約束をしてないとこっちから連絡出来なかったんだ。あの方も忙しいだろうから」
「私もお話したいんだけど」
「わかった。今日、連絡をもらえる事になっているから、連絡が来たら、ミーファを呼ぶようにするよ」
リュークは、私の部屋に向かって並んで歩きながら話を続ける。
「それから、一番頑張ってもらわないといけないのはミーファになると思う。それに、俺はミーファが頑張ってるのに、近くにいてあげる事もできない」
そう言った後、悲しそうな顔をするリュークの頬に手を当てて言う。
彼が言っているのは、私が国王陛下に話をする時の事だと思う。
大事な場面だから、自分よりも当主様が近くにいる方が良いと思ってくれたみたい。
そして、それは正直に言うと間違ってない。
だって、彼は辺境伯の令息であって、辺境伯ではないのだから。
「大丈夫よ。私の幸せだもの。自分自身で勝ち取るわ」
何より、私には味方がたくさんいる。
私は一人じゃないと思うだけでも、私は強くなれるから。
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