私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ

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3   まずは家族に相談したい

「リディア」

 放課後、ジッシーとの婚約破棄の件を、家に帰って両親に伝えなくちゃと思って、急いで教室を出ようとすると、ミランから呼び止められた。

 そうよ。
 私、彼に求婚されたのよね?
 それに関しても、話をしなくちゃいけない。
 かといって、やっぱり、朝の話は無しに、なんて言われる可能性もあるから、もう一度、ちゃんと真意を確認しないと。

「…どうしたの?」

 まずは、彼が話しかけてきたので、平静を装って尋ねる。

「どうしたのじゃないだろ。君に僕との結婚の意思があるのか知りたい」

 まだ、教室にはクラスメイトがたくさん残っているというのに、ミランは周りの目など気にせずに言った。

「私とあなただけで判断できるものじゃないでしょ? 大体、あなたのご両親は了承しないはずよ」
「了承させるよ」
「あなた、やっぱり、話をしてないのよね?」
「恋愛結婚は認めてもらえているが、君の話はしてない」
「まずは話をしてきてよ! そんな話、私達だけで決めれるものじゃない事くらい、あなただってわかるでしょう?」

 この場で話し続けるのは、人の目が気になるから嫌なので、教室を出て、並んで歩きながら話をする。

「君が了承してくれたら、両親には話をつける」
「大体、どうしていきなり!? 大勢の前で恥をかかされた私が可哀想だから? 同情してくれてるの?」

 自分が可愛くない言い方をした事くらいわかってる。
 でも、照れが勝ってしまって、強い口調になってしまった。

 すると、ミランは私の態度は気にしていない様子で、不思議そうな顔をして聞いてくる。

「気付いてると思ってたけど、もしかして気付いてない?」
「な、何が?」
「君は俺が好きだろ?」

 ミランはなぜか、私と二人だけで話す時は、自分の事を僕ではなく、俺という。
 それが当たり前になっていたので、深く追求はしていないけど。

 って、そんなことを考えてる場合じゃない!

「な、何で、どうして、そんな事!?」
「違うのか?」
「ちょっと来て」

 近くを歩く生徒達に好奇の目で見られている事に気が付いた私は、ミランの腕を引っ張り、人の通りが少ない場所に移動してから話を続ける。

「どうして私があなたを好きだと思うの」
「君はすぐに顔に出るから」
「えっ!?」

 慌てて、顔を両手でおさえると、ミランは笑う。

「間違ってないんだろ?」
「そ、それは…っ。それよりも、あなたが私にこだわる理由がわからない」
「…君は目はぱっちりしていて、口も顔も小さくて、笑顔が可愛い」
「か、かわ、可愛い!?」

 まさか、ミランにこんな事を言われる日が来るだなんて!?

「勉強は得意とまではいかないみたいだけど、行動力はあるし、運動神経も良い。スタイルだって悪くないし、友達も多いし、性格も姉御気質で」
「な、なんなのよ、いきなり…!」
「なぜ君にこだわるのかと聞いてくるから、好きだと思う事を並べてる」
「べ、別にもういいわよ! っていうか、ミラン、本気なの?」
「嘘をついて何になる?」

 ミランが小首を傾げるという可愛らしい動作を見せたので、思わず目を逸らしてから答える。

「私と結婚したって、何のメリットもないじゃない!」
「好きな女性と結婚できるというメリットはある」

 ミランの突然の告白に、私は慌ててしまう。

「な! なんなの、いきなり!」
「君が婚約を解消するってなったから言ってるだけだけど?」
「私が婚約を解消しなかったらどうするつもりだったの?」
「今まで通りだ。年をとっても、俺は独身を貫く」
「は!? 意味がわからない! というか、あなた、婚約者いなかったの!?」

 公爵令息が、この年齢になって婚約者がいないっていうのもどうなのよ!?
 って、今まで、そんな話を聞くのが怖くて聞けなかった私も私だけど…。

「昔はいたよ。だけど、君と出会ってから、好きでもない女性と結婚するのは嫌だと思った。俺が公爵家を継ぐというのを条件に、恋愛結婚を認めてもらえる事になったから、円満に婚約を解消した」
「ちょ、ちょっと待って。あなた長男なんでしょう!?」
「俺は本当は父の子じゃない。世間体的には長男で通ってるけど、本来、公爵家を継ぐのは俺の弟だ」
「え? どういう事? っていうか、そんな大事な話を私にしてもいいの!?」
「君は俺の妻になるんだからいいだろ。ちなみに俺の本当の父親は父の弟だ」
「ちょっと、パニックになりそう! そんな話はもういいわ!」

 あまりのプライベートな内容だし、内容が重すぎて、一気に受け止められない。
 こんな話を聞いてしまって、私は公爵家から暗殺されるんじゃない!?

「ミラン。とにかく、こんな事は本人同士が決める問題じゃないわ。あなたはあなたの両親と話をして! 私はまずは、ジッシーとの婚約を破棄するから」
「という事は妻になってくれるって事か?」
「そ、それは…そうかも、しれない、かな?」
「どうしてはっきりと認めないんだよ」
「だから言ってるじゃない。身分差がありすぎるわ」
「だから身分差は関係ないって言ってるだろ。君だって貴族なんだから、大体の礼儀は頭に入ってるだろ?」
「それはそうかもしれないけど…」

 このままでは堂々巡りね。
 何より、お互いが家に帰って、家族と話をしないと。

「ミラン、この件はまた来週にでも話しましょ!」
「…わかった。とにかく両親には話をしておくから」

 渋々といった感じだけど、ミランは頷いてくれた。

 それにしても、どうして本来継ぐべき弟ではなく、ミランに継がせようとしたのかしら?
 世間体的なもの?

 気にはなったけれど、本当に彼の婚約者になるか、まだわからないから、今は、この事については忘れる事にした。
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