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第3話 決意
私が城に着いたら、騎士達の家族の釈放とお父様達を帰してくれるという約束だったけれど、陛下を信用できなかった私は、城の二階からでいいので、お父様達が帰っていくのを確認させてほしいという事と、家族を人質にとられた騎士団の人間に家族の安否を確認させる為に、一度、家に帰らせたいとお願いした。
私の願いについて、陛下は文句は言わずに、私の好きな様にすれば良いと言ってくれたので、言葉通りにさせてもらった。
そして、私は今、城の中にある客間にいた。
私が屋敷を出て行く時には、お兄様は必ず助けると約束してくれたし、騎士団の人達も二度とこの様な真似はさせないという事と、私が逃げたくなった時には脱走の手助けをしてくれる事を約束してくれた。
脱走しても家族と一緒に逃げないと、家族が殺されてしまうから、そうならない様に念入りな計画をたてないといけない。
そんな事を考えていると、扉がノックされた。
返事を返すと、メイド服姿の若い女性が入ってきて、陛下が呼んでいるから案内してくれると言った。
ここでジッとしていても意味がないので了承して部屋を出る。
もう夜更けの為、城の中は静まり返っていて、私の履いている靴のヒールの音がとても大きく響く。
連れて来られた場所は陛下の寝室だと言われた。
嫌な予感しかしないけれど、絶対に何とかして乗り越えようと決めた。
部屋に入ると、パーティーの時に見た、金色の長い髪の男性が、キングサイズのベッドに横になっていた。
「リゼア・モロロフと申します。陛下にお会いできて光栄です」
カーテシーをすると、陛下は切れ長の目をより細めて微笑む。
「そんなに警戒しなくてもいい。僕は女性には優しい男だから」
「………」
女性には優しいですって?
人質をとって無理矢理ここまで連れてきておいてよく言うわ…。
それに…。
「メイドを殺害したとお聞きしましたが…?」
「ああ、それは僕がやったんじゃない。頼んだ人間が殺しちゃったんだよ」
「私も殺される可能性があるという事ですね?」
険しい表情で問いかけると、陛下はベッドから身を起こし、私に近付きながら答える。
「君は信用しないかもしれないけれど、僕は君に一目惚れなんだよ。運命を感じた。だから殺さない」
「たくさんの女性に運命を感じておられるのでは…?」
「愛人の事を言っているのか? 君が嫌なら愛人を作るのは止めるし、今いる愛人に関しても気になるというなら、彼女達は自由にしてあげよう」
「……陛下は私の願いをきいてくださるのですか?」
「内容によるけどね。君のお願いなら出来る限り聞いてあげたくなる」
私の目の前に立った陛下は、見上げないといけないくらいに背が高い。
白い肌に鼻も高くて、美形といえば美形だ。
今年、21歳の陛下はエメラルドグリーンの瞳を私に向けて聞いてくる。
「何が望みかな?」
「これ以上、人を殺したりする様な真似はやめて下さい」
「……そうだな。僕は殺さない」
「誰かに命令しても駄目です」
「君は偉そうに言える立場じゃないんだがな?」
「内容によっては、お願いをきいて下さると仰ったじゃないですか。ですから、断られてもしょうがないという気持ちでお願いしているんです」
これで機嫌を損ねて殺される事になっても、他の人に迷惑をかけないのなら良い。
親不孝だと言われかねないけれど、この人の妻にはなりたくない。
私が死ねば家族やルークス達が悲しむのはわかっている。
でも、私は自分の大事な人達が殺されてしまう方が嫌だった。
「君の事は殺さないと誓うし、君の態度によっては助かる命もある。これでどうだろう? 僕だって鬼じゃない。無抵抗な人間には何もしやしないよ」
陛下は笑って見せると、私の頬に触れる。
「君の事が大事だとわかってもらう為に、初夜までは手を出さないと誓おう」
今、私の頬に触れている事は手を出すとは、また違うらしい。
この日は、すんなりと用意された部屋に戻らされ、メイドに寝巻きに着替えさせられ、ベッドに横になった私は泣いて、泣いて、これ以上涙が出なくなるくらいに泣いた。
そして、泣き終えた後は、これから王城にいる間は絶対に泣かない事を決めた。
夜が明けて、窓の外を見ると、嫌になるくらいの晴天だった。
私に用意された部屋はとても広く、実家の私の部屋くらいの大きさと変わらないけれど、家具などがあまり置かれていない為、大人でも部屋の中を走り回れるくらい広く、床に敷かれた赤いカーペットはふかふかでヒールがひっかかりそうになるので、部屋の中では靴を脱ぐ事にした。
部屋から出る事は許されず、陛下が思い立った時に私の部屋にやって来て、話をして帰っていった。
その話とはルークスとの婚約を解消させた事、そして、正式に私と陛下の婚約が決まった事などだった。
どうせ、家族には承諾しなければ私を殺すとでも伝えたんでしょう。
そう思い、無礼にはならない程度に素っ気ない態度を取り続けていると、城に来て3日目、私の元に友人のシラージェ・イヒードがやって来た。
友人が侍女になれば、私も笑顔を見せる様になるのでは、と陛下が考えて呼び寄せたらしかった。
子爵令嬢のシラージェは小柄でウエーブのかかった長い髪をそのまま背中におろし、潤みがちな綺麗な水色の瞳を持つ、庇護欲をそそる可愛らしい外見だった。
ピンク色のドレスに身を包んだ彼女を見た時、陛下は呟いた。
「美しい…」
その言葉が聞こえたのか、シラージェは白い頬をピンク色に染めて、恥ずかしそうに俯いた。
この日から陛下が私の部屋にやってくる目的は、私に会うためと、シラージェに会うために変わった。
シラージェは世間に疎い子だったから、陛下がどの様な人物かを知らず、彼の見た目と私達への優しい態度のせいか、いつしか陛下の事を熱のこもった目で見る様になった。
そして、陛下のシラージェへの態度があからさまになってきた頃、私は陛下にお願いした。
「お願いします。私との婚約を解消して下さい」
私の願いについて、陛下は文句は言わずに、私の好きな様にすれば良いと言ってくれたので、言葉通りにさせてもらった。
そして、私は今、城の中にある客間にいた。
私が屋敷を出て行く時には、お兄様は必ず助けると約束してくれたし、騎士団の人達も二度とこの様な真似はさせないという事と、私が逃げたくなった時には脱走の手助けをしてくれる事を約束してくれた。
脱走しても家族と一緒に逃げないと、家族が殺されてしまうから、そうならない様に念入りな計画をたてないといけない。
そんな事を考えていると、扉がノックされた。
返事を返すと、メイド服姿の若い女性が入ってきて、陛下が呼んでいるから案内してくれると言った。
ここでジッとしていても意味がないので了承して部屋を出る。
もう夜更けの為、城の中は静まり返っていて、私の履いている靴のヒールの音がとても大きく響く。
連れて来られた場所は陛下の寝室だと言われた。
嫌な予感しかしないけれど、絶対に何とかして乗り越えようと決めた。
部屋に入ると、パーティーの時に見た、金色の長い髪の男性が、キングサイズのベッドに横になっていた。
「リゼア・モロロフと申します。陛下にお会いできて光栄です」
カーテシーをすると、陛下は切れ長の目をより細めて微笑む。
「そんなに警戒しなくてもいい。僕は女性には優しい男だから」
「………」
女性には優しいですって?
人質をとって無理矢理ここまで連れてきておいてよく言うわ…。
それに…。
「メイドを殺害したとお聞きしましたが…?」
「ああ、それは僕がやったんじゃない。頼んだ人間が殺しちゃったんだよ」
「私も殺される可能性があるという事ですね?」
険しい表情で問いかけると、陛下はベッドから身を起こし、私に近付きながら答える。
「君は信用しないかもしれないけれど、僕は君に一目惚れなんだよ。運命を感じた。だから殺さない」
「たくさんの女性に運命を感じておられるのでは…?」
「愛人の事を言っているのか? 君が嫌なら愛人を作るのは止めるし、今いる愛人に関しても気になるというなら、彼女達は自由にしてあげよう」
「……陛下は私の願いをきいてくださるのですか?」
「内容によるけどね。君のお願いなら出来る限り聞いてあげたくなる」
私の目の前に立った陛下は、見上げないといけないくらいに背が高い。
白い肌に鼻も高くて、美形といえば美形だ。
今年、21歳の陛下はエメラルドグリーンの瞳を私に向けて聞いてくる。
「何が望みかな?」
「これ以上、人を殺したりする様な真似はやめて下さい」
「……そうだな。僕は殺さない」
「誰かに命令しても駄目です」
「君は偉そうに言える立場じゃないんだがな?」
「内容によっては、お願いをきいて下さると仰ったじゃないですか。ですから、断られてもしょうがないという気持ちでお願いしているんです」
これで機嫌を損ねて殺される事になっても、他の人に迷惑をかけないのなら良い。
親不孝だと言われかねないけれど、この人の妻にはなりたくない。
私が死ねば家族やルークス達が悲しむのはわかっている。
でも、私は自分の大事な人達が殺されてしまう方が嫌だった。
「君の事は殺さないと誓うし、君の態度によっては助かる命もある。これでどうだろう? 僕だって鬼じゃない。無抵抗な人間には何もしやしないよ」
陛下は笑って見せると、私の頬に触れる。
「君の事が大事だとわかってもらう為に、初夜までは手を出さないと誓おう」
今、私の頬に触れている事は手を出すとは、また違うらしい。
この日は、すんなりと用意された部屋に戻らされ、メイドに寝巻きに着替えさせられ、ベッドに横になった私は泣いて、泣いて、これ以上涙が出なくなるくらいに泣いた。
そして、泣き終えた後は、これから王城にいる間は絶対に泣かない事を決めた。
夜が明けて、窓の外を見ると、嫌になるくらいの晴天だった。
私に用意された部屋はとても広く、実家の私の部屋くらいの大きさと変わらないけれど、家具などがあまり置かれていない為、大人でも部屋の中を走り回れるくらい広く、床に敷かれた赤いカーペットはふかふかでヒールがひっかかりそうになるので、部屋の中では靴を脱ぐ事にした。
部屋から出る事は許されず、陛下が思い立った時に私の部屋にやって来て、話をして帰っていった。
その話とはルークスとの婚約を解消させた事、そして、正式に私と陛下の婚約が決まった事などだった。
どうせ、家族には承諾しなければ私を殺すとでも伝えたんでしょう。
そう思い、無礼にはならない程度に素っ気ない態度を取り続けていると、城に来て3日目、私の元に友人のシラージェ・イヒードがやって来た。
友人が侍女になれば、私も笑顔を見せる様になるのでは、と陛下が考えて呼び寄せたらしかった。
子爵令嬢のシラージェは小柄でウエーブのかかった長い髪をそのまま背中におろし、潤みがちな綺麗な水色の瞳を持つ、庇護欲をそそる可愛らしい外見だった。
ピンク色のドレスに身を包んだ彼女を見た時、陛下は呟いた。
「美しい…」
その言葉が聞こえたのか、シラージェは白い頬をピンク色に染めて、恥ずかしそうに俯いた。
この日から陛下が私の部屋にやってくる目的は、私に会うためと、シラージェに会うために変わった。
シラージェは世間に疎い子だったから、陛下がどの様な人物かを知らず、彼の見た目と私達への優しい態度のせいか、いつしか陛下の事を熱のこもった目で見る様になった。
そして、陛下のシラージェへの態度があからさまになってきた頃、私は陛下にお願いした。
「お願いします。私との婚約を解消して下さい」
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