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第10話 急変
アーク様達が帰られてから3日が過ぎた。
まだ、3日しか経っていないので、アーク様達はまだ自分の国に帰っている旅路の途中だと思われる。
ルークスはどうしているのかしら?
さすがに城の中に残った人達の中にはいないけれど、この国には残っているのかしら?
2人がいらっしゃられたその日は、テッカ様もアーク様があっさり帰られた事に驚いて怪しんでいたけれど、少しでも早く奥様のルルア様とゆっくり過ごしたいからかもしれませんと話すと、納得してくれた様だった。
そして、アーク様が残していかれた人達は王家騎士団の中に上手くまぎれ、着々と準備を進めていた。
といっても、何の準備なのかは私にはわからない。
私は城から出られないけれど、メイド達や騎士達に聞いてみると、城の外では暴君の噂が広まり、いつ何時、自分や自分の家族が巻き込まれるわからないという事で、国民達が他の国への移動を進めているらしかった。
国境付近では特にその動きが激しく、私達の国は5カ国と隣接しているのだけれど、5カ国全てが私達の国からの移住を受け入れ、仕事や住む場所なども斡旋すると発表したせいで、特に移住が激しくなったようだった。
もちろん、隣国だけでなく他の国も歓迎してくれる意思を明らかにしてくれているので、友人や遠い親戚を頼りに住む国を変える人も多いと聞いた。
それだけ、国民は今の国王陛下に絶望していた。
なぜ、国民に暴君の噂が流れ始めたかというと、今までは陛下の悪い噂が流れても、この国の新聞社などは陛下からの報復を恐れて何も出来ず、大々的に記事にする事が出来なかった。
けれど、それはこの国の内部の問題であって、他国の新聞社は関係なかった。
一度、他国で発行された新聞がこの国にも出回るようになり、噂が広まってしまうと、それ以降は新聞記事にならなくても勝手に国中にまわっていった。
他国の方でも新聞の記事に関する統制があり、今までは公にされていなかった。
けれど、それが許されたという事は、報復として我が国が戦争を仕掛けた場合でも迎え撃つ準備が出来たのだと思われる。
「陛下の事を悪く言うだなんて信じられないわ!」
シラージェは私の部屋に来るなり、原因となった他国の新聞を目の前で破りながら叫ぶ。
「リゼア、あなた、この件に関与しているわけではないわよね!?」
「どういう事?」
「正妃になれないからって、陛下を不利な方向に持っていこうとしているんじゃ…!」
「そんな訳ないでしょう。あなたが陛下の正妃になる事に関して、反対はしていないわ」
「じゃあ、どうしてこんな事になるのよ!? この記事が出てから、陛下の機嫌は悪いのよ!?」
「……シラージェ」
私は床に散らばった新聞を拾い上げながら続ける。
「あなたが陛下の傍にいて、機嫌を直してさしあげたらいいだけよ。だって、あなたは陛下のやっている事は間違っていないと思ってるんでしょう?」
「もちろんよ。陛下のやる事が正しいの」
「それが罪のない多くの人を不幸にする事だとしても?」
「そうだって言っているでしょう!」
シラージェが手に持っていた残りの新聞を私に投げつけてきた。
私がため息を吐いて書物机に散らばった新聞をのせていっていると、部屋の扉がノックされ、返事をする前に部屋の中に入ってきたのは国王陛下だった。
「陛下! 会いに来てくれたんですね!」
シラージェは瞳を輝かせて陛下に近付いていったけれど、陛下は彼女の方は見ずに私に向かって言う。
「式を挙げるぞ」
「……どういう事です?」
「他国はこの城を攻め落とすつもりだ」
陛下の言葉を聞いたシラージェが怯えた声をあげる。
「わ、私達、……こ、殺されてしまうんですか…?」
「抵抗すれば殺される可能性はあるな。だが攻め込まれないようにする方法がある」
陛下は私の所までやって来ると、手首を掴んで言う。
「結婚式を挙げる。お祝いムードの時期に攻め込もうなんていう馬鹿はいないだろう」
「どうして私に言うんです? まずは、正妃になるシラージェとの結婚式を」
「正妃を君にする」
「……お断りします」
私が言うと、陛下は私の両肩をつかんで叫ぶ。
「ワガママを言わないでくれ! 今がどういう状態かわかっているだろう!? 君はこの状態を望んでいたのかもしれないが、絶対に君の望む通りにはさせない。君は僕のものだ!」
「こんな事をしたって、いつかは攻め込まれるんです! 大人しく城を明け渡して下さい!」
「うるさい! 僕の言う事を聞け!」
陛下は叫ぶと、部屋の前で立っていた騎士に命令する。
「式まで逃げられない様に彼女を牢に閉じ込めておけ!」
「陛下、ちょっと待って下さい! 正妃は私じゃないんですか!」
シラージェが叫ぶけれど、陛下はそれどころではない様で、私の手首を掴んで部屋から連れ出そうとする。
「手をはなして下さい! あなたと結婚なんてありえません!」
「うるさい! 早く連れて行け!」
陛下は私を騎士に引き渡すと、今度はシラージェのほうに振り返って言う。
「こうしないと今までの生活が出来なくなるんだ! 我慢してくれ!」
「そんなの嫌です! 私を一番にして下さい!」
シラージェの泣き叫ぶ声など気にせずに、私は何とか逃れようともがいたけれど、騎士達に両腕を掴まれ引きずられるようにして城の地下牢に連れて行かれたのだった。
お読みいただき、ありがとうございます!
次話が最終話になります。
まだ、3日しか経っていないので、アーク様達はまだ自分の国に帰っている旅路の途中だと思われる。
ルークスはどうしているのかしら?
さすがに城の中に残った人達の中にはいないけれど、この国には残っているのかしら?
2人がいらっしゃられたその日は、テッカ様もアーク様があっさり帰られた事に驚いて怪しんでいたけれど、少しでも早く奥様のルルア様とゆっくり過ごしたいからかもしれませんと話すと、納得してくれた様だった。
そして、アーク様が残していかれた人達は王家騎士団の中に上手くまぎれ、着々と準備を進めていた。
といっても、何の準備なのかは私にはわからない。
私は城から出られないけれど、メイド達や騎士達に聞いてみると、城の外では暴君の噂が広まり、いつ何時、自分や自分の家族が巻き込まれるわからないという事で、国民達が他の国への移動を進めているらしかった。
国境付近では特にその動きが激しく、私達の国は5カ国と隣接しているのだけれど、5カ国全てが私達の国からの移住を受け入れ、仕事や住む場所なども斡旋すると発表したせいで、特に移住が激しくなったようだった。
もちろん、隣国だけでなく他の国も歓迎してくれる意思を明らかにしてくれているので、友人や遠い親戚を頼りに住む国を変える人も多いと聞いた。
それだけ、国民は今の国王陛下に絶望していた。
なぜ、国民に暴君の噂が流れ始めたかというと、今までは陛下の悪い噂が流れても、この国の新聞社などは陛下からの報復を恐れて何も出来ず、大々的に記事にする事が出来なかった。
けれど、それはこの国の内部の問題であって、他国の新聞社は関係なかった。
一度、他国で発行された新聞がこの国にも出回るようになり、噂が広まってしまうと、それ以降は新聞記事にならなくても勝手に国中にまわっていった。
他国の方でも新聞の記事に関する統制があり、今までは公にされていなかった。
けれど、それが許されたという事は、報復として我が国が戦争を仕掛けた場合でも迎え撃つ準備が出来たのだと思われる。
「陛下の事を悪く言うだなんて信じられないわ!」
シラージェは私の部屋に来るなり、原因となった他国の新聞を目の前で破りながら叫ぶ。
「リゼア、あなた、この件に関与しているわけではないわよね!?」
「どういう事?」
「正妃になれないからって、陛下を不利な方向に持っていこうとしているんじゃ…!」
「そんな訳ないでしょう。あなたが陛下の正妃になる事に関して、反対はしていないわ」
「じゃあ、どうしてこんな事になるのよ!? この記事が出てから、陛下の機嫌は悪いのよ!?」
「……シラージェ」
私は床に散らばった新聞を拾い上げながら続ける。
「あなたが陛下の傍にいて、機嫌を直してさしあげたらいいだけよ。だって、あなたは陛下のやっている事は間違っていないと思ってるんでしょう?」
「もちろんよ。陛下のやる事が正しいの」
「それが罪のない多くの人を不幸にする事だとしても?」
「そうだって言っているでしょう!」
シラージェが手に持っていた残りの新聞を私に投げつけてきた。
私がため息を吐いて書物机に散らばった新聞をのせていっていると、部屋の扉がノックされ、返事をする前に部屋の中に入ってきたのは国王陛下だった。
「陛下! 会いに来てくれたんですね!」
シラージェは瞳を輝かせて陛下に近付いていったけれど、陛下は彼女の方は見ずに私に向かって言う。
「式を挙げるぞ」
「……どういう事です?」
「他国はこの城を攻め落とすつもりだ」
陛下の言葉を聞いたシラージェが怯えた声をあげる。
「わ、私達、……こ、殺されてしまうんですか…?」
「抵抗すれば殺される可能性はあるな。だが攻め込まれないようにする方法がある」
陛下は私の所までやって来ると、手首を掴んで言う。
「結婚式を挙げる。お祝いムードの時期に攻め込もうなんていう馬鹿はいないだろう」
「どうして私に言うんです? まずは、正妃になるシラージェとの結婚式を」
「正妃を君にする」
「……お断りします」
私が言うと、陛下は私の両肩をつかんで叫ぶ。
「ワガママを言わないでくれ! 今がどういう状態かわかっているだろう!? 君はこの状態を望んでいたのかもしれないが、絶対に君の望む通りにはさせない。君は僕のものだ!」
「こんな事をしたって、いつかは攻め込まれるんです! 大人しく城を明け渡して下さい!」
「うるさい! 僕の言う事を聞け!」
陛下は叫ぶと、部屋の前で立っていた騎士に命令する。
「式まで逃げられない様に彼女を牢に閉じ込めておけ!」
「陛下、ちょっと待って下さい! 正妃は私じゃないんですか!」
シラージェが叫ぶけれど、陛下はそれどころではない様で、私の手首を掴んで部屋から連れ出そうとする。
「手をはなして下さい! あなたと結婚なんてありえません!」
「うるさい! 早く連れて行け!」
陛下は私を騎士に引き渡すと、今度はシラージェのほうに振り返って言う。
「こうしないと今までの生活が出来なくなるんだ! 我慢してくれ!」
「そんなの嫌です! 私を一番にして下さい!」
シラージェの泣き叫ぶ声など気にせずに、私は何とか逃れようともがいたけれど、騎士達に両腕を掴まれ引きずられるようにして城の地下牢に連れて行かれたのだった。
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