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19 見事な連携プレーなのです
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「ラルフの悪い噂って、母親の話か?」
「カーミラ様のお話ではありません。他の噂です」
「他の噂って、例えばどんなのだよ」
ランドン辺境伯は私とは一切目を合わさずに聞いてこられるので、明らかにうしろめたそうな感じです。
もしかすると、その場その場で思いついた事を述べただけで、自分が何を言ったのか、もう忘れておられるのかもしれません。
なので、教えてあげる事にします。
「ラルフ様の女性関係の事もそうですが、クラーク邸の内部での悪い噂も流れておりました。私がラルフ様に相手にされていないから使用人をいじめているだとか、クラーク家は火の車だとか、色々です」
使用人をいじめているという噂は、私も最近知りまして、もし、気が付かない内に嫌な思いをさせていたらと思い、慌てて、クラーク邸の皆さんに確認した事もあり、個人的に腹が立っているので口にしました。
「でも、火のないところに煙は立たないっていうだろ? 君は気付かない内に相手を傷つける様な事をしてたんじゃないのか?」
「おい」
「ちょっと!」
ランドン辺境伯の発言に、ラルフ様とアリスさんが声を上げてくれましたが、2人を笑顔で制してから答える。
「一応、使用人たち全てに確認を入れましたが、特にその様な事は言われませんでしたが?」
「そりゃ本人に向かってバカ正直に、あなたにいじめられてますだなんて言わないだろう」
「まあ、そう言われてみればそうですね。そう仰られるならそれはそれで良いでしょう。これからそんな事を思われない様に気をつけるようにいたします。ただ、それ以外に関しては明らかに嘘ですから、なぜそんな噂が流れたのか、さっぱりわからないのです」
「それは、その犯人に聞かないとわからないだろう」
「そうですね。お聞きしたいんですが、その犯人がどこの誰なのか、まったくわからないのですよね」
わざとらしく頬に手を当ててため息を吐きながら続ける。
「ここまで嫌な噂を立てるという事は、ラルフ様を羨ましがっている方じゃないかと思うんですが、どう思われます?」
「どういう事だ?」
「だって、婚約者の私が言うのもなんですが、ラルフ様って見た目は言わずもがな素敵ですし、辺境伯という地位もありますし、お仕事も出来て、部下の方にも信頼されておられますし、なんていっても、ランドン辺境伯様の領民の方にも人気があるくらいじゃないですか」
ね?
と小首をかしげて笑顔で聞いてみると、ランドン辺境伯の表情が歪みました。
「俺の領民に人気があるかどうかはわからないだろ」
「そりゃあ、ランドン辺境伯様はおわかりになりませんよね? 本人に向かってラルフ様の方が信頼できるだなんて、普通の方は言えませんよ。あなただってさっき、私の時に同じ事を言われてましたよね?」
「そ、それは! でも、お前だってその話を直接聞いたわけじゃないだろ!?」
冷静さがなくなってきたのか、私のことをさす言葉が君からお前に変わりました。
良い感じです。
もっとイラつかせてさしあげねば。
「聞かなくてもわかりますよ。だって、ランドン辺境伯様は普段、何をされてらっしゃいますの? 遊び呆けていらっしゃるとお聞きしましたし、大した事はやっていらっしゃないんでしょう?」
「誰がそんな事を言ったんだ!」
「さあ、誰でしょう? ラルフ様の悪い噂を立てた方と同じ方かもしれませんね。だって、言う事が低俗ですものね?」
「そんな訳ないだろ! 俺が流したのはラルフの噂だけだ! 自分の悪い噂なんて流すわけないだろ!」
ランドン辺境伯の叫びを聞いて、私は無言でにっこりと笑みを浮かべました。
それと同時に、騒がしかったパーティー会場が静まり返っていた事に、私も初めて気付きました。
という事は、たくさんの人が、ランドン辺境伯の自白を聞いておられるはずです。
「思ってはいたけど、本当にバカねぇ。よく言えば素直っちゃ素直なのかもしれないけど」
静寂を破ったのはアリスさんの言葉と笑い声でした。
そして、その時にランドン辺境伯も自分が何を口にしたのか、気付いたようでした。
「謀ったんだな!!」
「知りませんよ。あなたが勝手に叫んだだけです」
「許せない!」
そう言って、ランドン辺境伯が私につかみかかろうとしましたが、隣にいたアリスさんが前に出て、ランドン辺境伯の膝に蹴りを入れて、彼の足をふらつかせたと思うと、ラルフ様が私を抱き寄せ、テツくんがランドン辺境伯を取り押さえたのです。
私は何もしていませんが、見事な連携プレーなのです。
「女に暴力ふるおうとするなんて最低ね。私があんたを好きになる事なんて、一生ないわ」
アリスさんが押し倒されたランドン辺境伯を見下ろして言うと、彼は悲しげな表情を浮かべたあと、床に顔をつけられました。
「カーミラ様のお話ではありません。他の噂です」
「他の噂って、例えばどんなのだよ」
ランドン辺境伯は私とは一切目を合わさずに聞いてこられるので、明らかにうしろめたそうな感じです。
もしかすると、その場その場で思いついた事を述べただけで、自分が何を言ったのか、もう忘れておられるのかもしれません。
なので、教えてあげる事にします。
「ラルフ様の女性関係の事もそうですが、クラーク邸の内部での悪い噂も流れておりました。私がラルフ様に相手にされていないから使用人をいじめているだとか、クラーク家は火の車だとか、色々です」
使用人をいじめているという噂は、私も最近知りまして、もし、気が付かない内に嫌な思いをさせていたらと思い、慌てて、クラーク邸の皆さんに確認した事もあり、個人的に腹が立っているので口にしました。
「でも、火のないところに煙は立たないっていうだろ? 君は気付かない内に相手を傷つける様な事をしてたんじゃないのか?」
「おい」
「ちょっと!」
ランドン辺境伯の発言に、ラルフ様とアリスさんが声を上げてくれましたが、2人を笑顔で制してから答える。
「一応、使用人たち全てに確認を入れましたが、特にその様な事は言われませんでしたが?」
「そりゃ本人に向かってバカ正直に、あなたにいじめられてますだなんて言わないだろう」
「まあ、そう言われてみればそうですね。そう仰られるならそれはそれで良いでしょう。これからそんな事を思われない様に気をつけるようにいたします。ただ、それ以外に関しては明らかに嘘ですから、なぜそんな噂が流れたのか、さっぱりわからないのです」
「それは、その犯人に聞かないとわからないだろう」
「そうですね。お聞きしたいんですが、その犯人がどこの誰なのか、まったくわからないのですよね」
わざとらしく頬に手を当ててため息を吐きながら続ける。
「ここまで嫌な噂を立てるという事は、ラルフ様を羨ましがっている方じゃないかと思うんですが、どう思われます?」
「どういう事だ?」
「だって、婚約者の私が言うのもなんですが、ラルフ様って見た目は言わずもがな素敵ですし、辺境伯という地位もありますし、お仕事も出来て、部下の方にも信頼されておられますし、なんていっても、ランドン辺境伯様の領民の方にも人気があるくらいじゃないですか」
ね?
と小首をかしげて笑顔で聞いてみると、ランドン辺境伯の表情が歪みました。
「俺の領民に人気があるかどうかはわからないだろ」
「そりゃあ、ランドン辺境伯様はおわかりになりませんよね? 本人に向かってラルフ様の方が信頼できるだなんて、普通の方は言えませんよ。あなただってさっき、私の時に同じ事を言われてましたよね?」
「そ、それは! でも、お前だってその話を直接聞いたわけじゃないだろ!?」
冷静さがなくなってきたのか、私のことをさす言葉が君からお前に変わりました。
良い感じです。
もっとイラつかせてさしあげねば。
「聞かなくてもわかりますよ。だって、ランドン辺境伯様は普段、何をされてらっしゃいますの? 遊び呆けていらっしゃるとお聞きしましたし、大した事はやっていらっしゃないんでしょう?」
「誰がそんな事を言ったんだ!」
「さあ、誰でしょう? ラルフ様の悪い噂を立てた方と同じ方かもしれませんね。だって、言う事が低俗ですものね?」
「そんな訳ないだろ! 俺が流したのはラルフの噂だけだ! 自分の悪い噂なんて流すわけないだろ!」
ランドン辺境伯の叫びを聞いて、私は無言でにっこりと笑みを浮かべました。
それと同時に、騒がしかったパーティー会場が静まり返っていた事に、私も初めて気付きました。
という事は、たくさんの人が、ランドン辺境伯の自白を聞いておられるはずです。
「思ってはいたけど、本当にバカねぇ。よく言えば素直っちゃ素直なのかもしれないけど」
静寂を破ったのはアリスさんの言葉と笑い声でした。
そして、その時にランドン辺境伯も自分が何を口にしたのか、気付いたようでした。
「謀ったんだな!!」
「知りませんよ。あなたが勝手に叫んだだけです」
「許せない!」
そう言って、ランドン辺境伯が私につかみかかろうとしましたが、隣にいたアリスさんが前に出て、ランドン辺境伯の膝に蹴りを入れて、彼の足をふらつかせたと思うと、ラルフ様が私を抱き寄せ、テツくんがランドン辺境伯を取り押さえたのです。
私は何もしていませんが、見事な連携プレーなのです。
「女に暴力ふるおうとするなんて最低ね。私があんたを好きになる事なんて、一生ないわ」
アリスさんが押し倒されたランドン辺境伯を見下ろして言うと、彼は悲しげな表情を浮かべたあと、床に顔をつけられました。
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