嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに

風見ゆうみ

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15  姉の暴走 ②

 ティファリーはポッポたちが来た朝は、洗濯をして着回した服を着ている。
 白シャツの襟元には赤色のリボン。黒いロングスカート姿で、鳩たちが間違って小さな宝石などを呑み込まないように気をつけている。
 リボンが揺れることを気にしていた時期もあったが根気強く「駄目」と教えると、引っ張ったりつついたりしなくなった。
 ティファリーがこの服を着ている時は鳩が来ている時だと、ノーリーは知っている。

 鳩を傷つけるチャンスが早速やってきたと、零れそうになる笑みをなんとか抑える。

 食事中はあまり会話をしないようにしているが、禁止されているわけではない。

 黙々と食事をしていたが、黙っていられなくなったノーリーが静寂を破った。

「何だか、けもの臭いわ」

 ノーリーなりの嫌味だった。しかし、ティファリーには通じない。

「申し訳ございません。ポッポとポポーポと触れ合ったからだと思います」
「鳩は可愛いとは思うけれど、使用人じゃないのだから、あなたが世話をしなくてもいいんじゃないかしら」
「動物が好きですから苦になりません。動物の臭いのせいで不快な思いをさせるのはよくありませんので、部屋で食べることにいたしますね」

 そう言って、ティファリーが立ち上がった時だった。
 ダイニングルームの扉がノックされた。

 それと同時に執事の焦った声も聞こえてくる。

「旦那様! 第二王子殿下の使いの方がお見えになっています! 第二王子殿下が1時間後にこちらにいらっしゃると伝えてほしいとおっしゃっています!」
「何だって?」

 ノウンは食事の手を止めて聞き返し、慌てて立ち上がる。
 父が出ていったため、家族全員が食事の手を止めた。

「「来るのが早すぎる」」

 正面と斜向かいに座る兄二人が、眉間に皺を寄せて同時に呟くのを見て、ティファリーは慌てる。

(どうしましょう! まさか、今日いらっしゃるなんて思ってもいませんでした!)

 第二王子のケインがここに来る理由を、この場にいるイトメニア公爵家の中では、一人だけ知らなかった。

 それは誰か。まだ、何も知らされていないノーリーである。
 ノーリーは、当たり前だがケインに婚約者がいないことを知っている。

「どうしましょう! ケイン殿下がいらっしゃるなんて! お出迎えする準備をしなくては!」

 自分の容姿に自信のあるノーリーは、ケインが自分に会いに来るのだと思い込んだ。

 食事の途中だったにもかかわらず、ダイニングルームを出ていったノーリーを、ティファリーたちは啞然とした顔で見送った。





 
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