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17 姉の暴走 ④
艶のある黒髪に、燃えるような赤い瞳が印象的な美青年――ケインは吊り目気味の目を細めて、ノーリーを見つめている。
(お姉様のことです。これは自分に見惚れていると捉えそうですね)
ティファリーは冷めた目でノーリーを一瞥した。そして、ノーリーが挨拶している間に、ポッポたちをメイドに預けることにした。
「ノーリーでございます。ケイン殿下にお会いできて光栄ですわ!」
「突然訪ねてきてすまなかった。まずは公爵に挨拶をしたいんだが」
「すぐにお呼びいたしますわ」
耳に心地好いバリトンボイスに、ノーリーはうっとりした表情で応えた。
「頼む」
ケインは愛想がないことで有名だ。そんな彼の特別になれたら、周りはさぞ驚くだろうと、想像するだけで、ノーリーの頬は緩む。
ノーリーがメイドに指示を出す前に、ティファリーはケインにカーテシーをする。
「ティファリーと申します。ケイン殿下にお会いできて光栄です。本日は足を運んでいただき、誠にありがとうございます」
ケインが押しかけてきただけなのだが、ここは社交辞令の対応をした。
「ティファリー嬢とは、あまり話をしたことがなかったな」
そう言って、ケインはメイドに抱かれているポッポたちを見つめた。
「「ホロッホー!」」
ポッポたちはケインのことを認識している。二羽にしてみれば、飼い主二人が揃ったようなもので、ご機嫌そうに鳴き始めた。
ケインの二羽を見つめる目は優しいものであったが、ノーリーはそう受け取らなかった。
ノメイドから受け取った扇を開き、鼻と口元を隠しながら、ノーリーはケインに話しかける。
「申し訳ございません。獣を邸内に入れるなんて非常識ですわよね。ティファリーにはよく言い聞かせますわ。ほら、あなたたち、鳩を逃がしてやりなさい」
「「承知いたしました」」
ポッポたちを抱きかかえていたメイドたちは、開け放たれた扉から外へ出ようとした。
「待ってください!」
「待て」
ティファリーとケインの声が重なった。メイドたちは振り返り、その場で足を止める。
ケインが止めたことが気になり、ノーリーは扇を閉じて、彼に問いかけた。
「どうかなさいましたか?」
ケインは眉間に皺を寄せて、ノーリーに尋ね返す。
「先程も獣と言っていたが、このギンバトの話をしているのか?」
鳩にも種類がある、
ギンバトというのはポッポたちのような白い鳩のことである。
鳩の種類を口にした時点で、ノーリーは気づくべきだった。しかし、まさか王族自らが鳩を飼育していると、ノーリーは考えてもいなかった。
「ええ、そうですわ。側に置いておくことで殿下まで獣臭くなっては大変です。飼い主のもとに一刻も早く返すべきですわ」
(飼い主は目の前にいますけどね)
墓穴を掘っていくノーリーをティファリーは静かに見守る。調子に乗ったノーリーは、再度メイドたちに指示した。
「何をしているの! 早く飼い主のもとに返してやりなさい!」
「……だそうだ。返してくれ」
そう言って、ケインはポッポたちを抱えているメイドたちに向かって両手を差し出した。
(お姉様のことです。これは自分に見惚れていると捉えそうですね)
ティファリーは冷めた目でノーリーを一瞥した。そして、ノーリーが挨拶している間に、ポッポたちをメイドに預けることにした。
「ノーリーでございます。ケイン殿下にお会いできて光栄ですわ!」
「突然訪ねてきてすまなかった。まずは公爵に挨拶をしたいんだが」
「すぐにお呼びいたしますわ」
耳に心地好いバリトンボイスに、ノーリーはうっとりした表情で応えた。
「頼む」
ケインは愛想がないことで有名だ。そんな彼の特別になれたら、周りはさぞ驚くだろうと、想像するだけで、ノーリーの頬は緩む。
ノーリーがメイドに指示を出す前に、ティファリーはケインにカーテシーをする。
「ティファリーと申します。ケイン殿下にお会いできて光栄です。本日は足を運んでいただき、誠にありがとうございます」
ケインが押しかけてきただけなのだが、ここは社交辞令の対応をした。
「ティファリー嬢とは、あまり話をしたことがなかったな」
そう言って、ケインはメイドに抱かれているポッポたちを見つめた。
「「ホロッホー!」」
ポッポたちはケインのことを認識している。二羽にしてみれば、飼い主二人が揃ったようなもので、ご機嫌そうに鳴き始めた。
ケインの二羽を見つめる目は優しいものであったが、ノーリーはそう受け取らなかった。
ノメイドから受け取った扇を開き、鼻と口元を隠しながら、ノーリーはケインに話しかける。
「申し訳ございません。獣を邸内に入れるなんて非常識ですわよね。ティファリーにはよく言い聞かせますわ。ほら、あなたたち、鳩を逃がしてやりなさい」
「「承知いたしました」」
ポッポたちを抱きかかえていたメイドたちは、開け放たれた扉から外へ出ようとした。
「待ってください!」
「待て」
ティファリーとケインの声が重なった。メイドたちは振り返り、その場で足を止める。
ケインが止めたことが気になり、ノーリーは扇を閉じて、彼に問いかけた。
「どうかなさいましたか?」
ケインは眉間に皺を寄せて、ノーリーに尋ね返す。
「先程も獣と言っていたが、このギンバトの話をしているのか?」
鳩にも種類がある、
ギンバトというのはポッポたちのような白い鳩のことである。
鳩の種類を口にした時点で、ノーリーは気づくべきだった。しかし、まさか王族自らが鳩を飼育していると、ノーリーは考えてもいなかった。
「ええ、そうですわ。側に置いておくことで殿下まで獣臭くなっては大変です。飼い主のもとに一刻も早く返すべきですわ」
(飼い主は目の前にいますけどね)
墓穴を掘っていくノーリーをティファリーは静かに見守る。調子に乗ったノーリーは、再度メイドたちに指示した。
「何をしているの! 早く飼い主のもとに返してやりなさい!」
「……だそうだ。返してくれ」
そう言って、ケインはポッポたちを抱えているメイドたちに向かって両手を差し出した。
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