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27 姉を許さない妹 ④
ノウンはノーリーが自分に助けを求めていることはわかっていた。
今までならば、ケンカは良くない。気に入らないことがあるからと言って、姉を責めてはいけないとティファリーに言い聞かせようとしていた。
この時になってやっと、自分がノーリーを贔屓していたことに気がついた。
計画性もなく子供を作ったわけではないが、ノーリーには寂しい思いをさせてしまったかもしれないという負い目を心のどこかで感じていた。
ティファリーが早々に自分たちに期待しなくなったことで、それを当たり前のように思うようになっていた。
本当ならば、もっと早くにノーリーの本性に気づけていたはずなのに、無意識に目を背けてしまっていたのだ。
「ノーリー、本当にすまない」
「……え?」
ノーリーは間の抜けた声を上げて聞き返した。ティファリーも驚いた様子でノウンを見つめる。
ノウンは自分の腕をつかむノーリーの手を優しくはがし、優しい口調で言った。
「今は私には頼らず、ティファリーと向き合って話してくれ」
「……承知いたしました」
都合が悪くなれば両親に頼っていたノーリーは、ノウンが助けてくれないことに苛立ちを覚えた。
しかし、怒りの矛先は、ノウンではなくティファリーに向けられる。
暫しの沈黙の後、ノーリーは口を開いた。
「ティファリー、お父様に嘘の話をしたのね?」
「どうしてそう思うのですか?」
「だってそうでしょう? 今までは優等生である私が正しいと味方してくれた。それなのに……!」
「お姉様、本来ならば、姉と妹が同時に正反対の話をした時、両親が無条件に姉の話だけを信じることはおかしいのです」
さすがのノーリーも、この意見に言い返すことはできなかった。目を伏せた父を見て、このままでは良くないと、ノーリーは焦る。
「ティファリー、そんな話をしに来たの? もうやめて。あなたがどんなに調査したって一緒。あなたや元夫が調べたことが書かれている報告書なんて、私を陥れるための嘘が書かれているに決まっているわ。そんなの証拠ではないの」
「お姉様、それが違うんです」
ティファリーは満面の笑みを浮かべて頭を振った。
それを見たノーリーの表情が歪む。
「……は? どういうこと?」
「ケイン殿下も調べてくださったんです。そして、その報告書には、お姉様とゲッティの浮気は事実だと書かれていました」
「何ですって?」
笑顔のティファリーとは裏腹に、ノーリーは涙目になって聞き返した。
「ですから、私やウノユ侯爵が調べたのではなく、ケイン殿下から頼まれた方が調べたのです。そして、ケイン殿下がこれは事実だろうと認めたのです。もしかしてお姉様は、ケイン殿下の報告書も私が手を加えたとおっしゃるのですか?」
そうだと言いたいところだが、そんなことを言えば、王族への不敬に当たる。
ノーリーの額から汗がじんわりとにじみ始めた。
今までならば、ケンカは良くない。気に入らないことがあるからと言って、姉を責めてはいけないとティファリーに言い聞かせようとしていた。
この時になってやっと、自分がノーリーを贔屓していたことに気がついた。
計画性もなく子供を作ったわけではないが、ノーリーには寂しい思いをさせてしまったかもしれないという負い目を心のどこかで感じていた。
ティファリーが早々に自分たちに期待しなくなったことで、それを当たり前のように思うようになっていた。
本当ならば、もっと早くにノーリーの本性に気づけていたはずなのに、無意識に目を背けてしまっていたのだ。
「ノーリー、本当にすまない」
「……え?」
ノーリーは間の抜けた声を上げて聞き返した。ティファリーも驚いた様子でノウンを見つめる。
ノウンは自分の腕をつかむノーリーの手を優しくはがし、優しい口調で言った。
「今は私には頼らず、ティファリーと向き合って話してくれ」
「……承知いたしました」
都合が悪くなれば両親に頼っていたノーリーは、ノウンが助けてくれないことに苛立ちを覚えた。
しかし、怒りの矛先は、ノウンではなくティファリーに向けられる。
暫しの沈黙の後、ノーリーは口を開いた。
「ティファリー、お父様に嘘の話をしたのね?」
「どうしてそう思うのですか?」
「だってそうでしょう? 今までは優等生である私が正しいと味方してくれた。それなのに……!」
「お姉様、本来ならば、姉と妹が同時に正反対の話をした時、両親が無条件に姉の話だけを信じることはおかしいのです」
さすがのノーリーも、この意見に言い返すことはできなかった。目を伏せた父を見て、このままでは良くないと、ノーリーは焦る。
「ティファリー、そんな話をしに来たの? もうやめて。あなたがどんなに調査したって一緒。あなたや元夫が調べたことが書かれている報告書なんて、私を陥れるための嘘が書かれているに決まっているわ。そんなの証拠ではないの」
「お姉様、それが違うんです」
ティファリーは満面の笑みを浮かべて頭を振った。
それを見たノーリーの表情が歪む。
「……は? どういうこと?」
「ケイン殿下も調べてくださったんです。そして、その報告書には、お姉様とゲッティの浮気は事実だと書かれていました」
「何ですって?」
笑顔のティファリーとは裏腹に、ノーリーは涙目になって聞き返した。
「ですから、私やウノユ侯爵が調べたのではなく、ケイン殿下から頼まれた方が調べたのです。そして、ケイン殿下がこれは事実だろうと認めたのです。もしかしてお姉様は、ケイン殿下の報告書も私が手を加えたとおっしゃるのですか?」
そうだと言いたいところだが、そんなことを言えば、王族への不敬に当たる。
ノーリーの額から汗がじんわりとにじみ始めた。
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