【4月29日完結予定】嘘ばかりの婚約者様、どうぞ愛する人とお幸せに

風見ゆうみ

文字の大きさ
47 / 50

47  どうぞ愛する人とお幸せに ⑤

「私を愛しているんですよね!?」
「私でしょう!?」
「違うわよ! 私よ!」

 ここに集まってもらったのは、ティファリーの話を信じなかった人物たちだった。
 ゲッティに騙されていた多くの人は、真実を知って、ゲッティから離れていった。しかし、今、店の前にいる女性たちは、自分こそが一番だと思い込んでいた。

 ゲッティにとっての一番は、ティファリーである。婚約者ではなくなったものの、何かのきっかけがあれば、また愛し合えるのではないかと、都合のいいことを考えていた。

 ゲッティはへらへらと笑いながら、彼女たちを促す。

「こんな所で話をしたら、みんなの邪魔になるよ。とにかく中に入ってくれないか」
「嫌よ! この場ではっきりと言って!」
「そうよ! みんなの前で本当のことを伝えてよ!」

 女性たちはどこかで、ティファリーが話を聞いていることを知っている。自分が特別なのだとティファリーへの対抗心を燃やしていた。

(恋をしている時は、相手の欠点に気づかない。もしくは、欠点さえも好きだと思ってしまっていたのですね)
 
 情けない姿のゲッティを見つめ、ティファリーはしみじみと思った。

「えーっと、あの、その、落ち着いてよ。ほら、僕はその、みんなのものだから、一人のものになれないっていうか」
「「何ですって!?」」

 女性たちはへらへらと笑うゲッティを囲んで訴える。

「私を妻にしてくれるって言いましたよね!?」
「僕は君のものだって愛を囁いてくれたのは嘘だったんですか!?」
「一緒に宝石店を経営したいって言ってくれましたよね!」
「ちょ、ちょっと、落ち着いてよ! とにかく中に入ってくれってば!」

 通行人に冷たい視線を向けられ、ゲッティは目を潤ませた。

 泣きべそをかくゲッティを見た女性たちは、急に冷静になる。

「もういいです! 結婚のために必要だからと言われて渡したお金を返してください!」
「私もです! あと、宝石も返しますから返金してください!」
「へ、返金なんてそんな……っ」

 彼女たちからもらったお金や、宝石の売上金はほとんど使い切ってしまっている。返せるはずなどなかった。

「愛する人のためですもの。頑張ってくださいね。どうぞ愛する人とお幸せに」

 ティファリーはゲッティを見つめてそう呟いた。

「少しはスッキリしたか?」
「はい。情けない姿を見て彼への愛情がこれっぽっちも残っていないことも確認できました」
「……そうか」

 ケインは安堵して微笑んだあと、ティファリーを誘う。

「この後、まだ時間があるなら動物を連れ込んでもいいカフェに行かないか」
「そんなお店があるのですか!?」
「ああ。この近くにあるらしい」
「素敵です!」

 馬車に向かって歩きながら、ティファリーが手を叩いて喜んだ時だった。

「ティファリーじゃないの! あなた、こんな所で何をしているのよ!」

 背後から厳しい声が聞こえ、ティファリーは足を止めて振り返る。
 気難しそうな顔をして立っていたのは、母方の祖母だった。

 


感想 71

あなたにおすすめの小説

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪

山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」 「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」 「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」 「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」 「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」 そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。 私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。 さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。 誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然1人の少女の登場によって揺らぎ始める。 無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。 ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。 「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。 アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。 そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?! ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています

うまくやった、つもりだった

ひがん さく
恋愛
四大貴族、バルディストン公爵家の分家に生まれたオスカーは、ここまでうまくやってきた。 本家の一人娘シルヴィアが王太子の婚約者に選ばれ、オスカーは本家の後継ぎとして養子になった。 シルヴィアを姉と慕い、養父に気に入られ、王太子の側近になり、王太子が子爵令嬢と愛を深めるのを人目につかぬよう手助けをし、シルヴィアとの婚約破棄の準備も整えた。 誠実と王家への忠義を重んじるこの国では、シルヴィアの冷徹さは瑕疵であり、不誠実だと示せば十分だった。 かつてシルヴィアはオスカーが養子になることに反対した。 その姉が後妻か商家の平民に落ちる時が来た。 王太子の権威や素晴らしさを示すという一族の教えすら忘れた姉をオスカーは断罪する。 だが、シルヴィアは絶望もせずに呟いた。 「これだから、分家の者を家に入れるのは嫌だったのよ……」  

王太子とさようならしたら空気が美味しくなりました

きららののん
恋愛
「リリエル・フォン・ヴァレンシュタイン、婚約破棄を宣言する」 王太子の冷酷な一言 王宮が凍りついた——はずだった。

完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール
恋愛
婚姻前から愛人のいる王子に嫁げと王命が降る、執務は全て私達皆んなに押し付け、王子は今日も愛人と観劇ですか? どうぞお好きに。